就業不能保険の必要性は? 医療費のほかに生活費はどうする?

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公的制度
就業不能保険の必要性は? 医療費のほかに生活費はどうする?

一家の収入の大部分を支える大黒柱が、突然の病気やケガで働けなくってしまったら、その家族の生活はどうなるのでしょうか? 普段はあまりイメージしたくないことではありますが、“いざというとき”を迎えるまえにしっかりと準備をしておきたいところです。

そのような病気やケガで働けなくなったときの備えの一つに就業不能保険があります。しかしながら、生命保険や医療保険と比べ歴史の浅い就業不能保険の必要性は、あまり認識されていないように見えます。

たとえば、生命保険であれば亡くなった時の葬祭費用や残された家族のために、医療保険であれば入院・手術の時の治療費の補填のために必要だと想像しやすいと思います。ですが、就業不能保険の必要性となると、具体的にイメージすることが難しい方も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、病気やケガで働けなくなったときの負担と、それを軽減するのに利用できる公的な医療保険制度をご紹介し、そのうえで就業不能保険の必要性について分かやすくお伝えしていきます。

1.働けなくなった時の負担~医療費による支出増と収入減

多くの場合、病気やケガにより働けなくなると、そのぶん今までよりも収入が少なくなってしまいます。しかし、たとえ収入が減少したとしても、「病気やケガによる医療費」と元々の「生活費や住宅ローン」といった諸費用の支払いは待ってはくれません。

言いかえると、働けなくなったときの負担とは「収入が減少するなかで医療費と生活費を支払わなければならないこと」です。それぞれ具体的に見ていきましょう。

1-1 病気やケガで入院したときの医療費の負担

病気やケガで働けなくなった場合、真っ先に思い浮かぶのが入院や手術にかかる医療費です。生命保険文化センターの調査(*1)によると、入院したときの医療費は1日につき平均23,300円となっています。たとえば、1ヶ月間の入院をしたら約70万円近くかかる計算です。

詳しくは後述しますが、日本には優れた公的医療保険制度が用意されているので、「本当にこんなにかかるのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、公的医療保険制度の適用外となる費用もあることには注意が必要です。たとえば、個室で入院したときの差額ベッド代を始めとして、食費、交通費、被服費といった医療費以外の費用はほとんど全額自己負担になります。また、医療費のなかでも先進医療などは公的医療保険制度の対象になりません。

これらの負担を合わせると、おおよそ入院1日につき23,000円ほどの費用が必要になってくるようです。ただでさえ収入が少なくなるなかで、その医療費の負担は決して軽くはなさそうです。

1-2 継続して支払いをしないといけない生活費の負担

病気やケガで働けなくなったとしても、生きていくうえで最低限の生活費については継続的に支払っていかなければなりません。食費、水道・光熱費などのライフラインはもちろん、家賃や住宅ローン、保健医療費、交通・通信費から、子供の教育費・習い事費用まで、支払いを絶やすわけにはいかないでしょう。

ですが、収入が減少していくなかで、今まで通りの生活水準を保ち、滞りなく諸費用の支払いをしていくのは至難の業です。何も準備がなければ、最初のうちは貯金を切り崩しつつやり過ごせるかも知れませんが、徐々に家計は苦しくなり、いずれ立ち行かなくなってしまいます。場合によっては、子供にやりたい事や将来の夢を諦めさせることになったり、苦労して手にしたマイホームを売り払わざるを得なくなったりするかもしれません。

そうした病気やケガで働けなくなり収入が減少したときの備えは、何かしらの形であった方が良いと言えそうです。

2.働けなくなったときに使える公的制度

前章では、病気やケガで働けなくなったときのリスクは「収入が減少するなかで医療費や生活費を支払わなければならないこと」だとお伝えしてきました。しかし、そのようなときに何もすべてを自己負担するわけではありません。公的医療保険制度を活用すれば、その保障で多少なりとも負担を和らげることができます。

ここでは、働けなくなったときに使える主な3つの制度について解説していきます。

2-1 公的医療保険制度で治療費は軽減される

就業不能状態になると、長期にわたって入院が必要になり、医療費が大きくかかる懸念が出てきます。先程お伝えしたように、入院したときは1日につき約23,000円かかるので、入院が短期間であればまだしも、長期間に及んだときに家計の負担はかなりのものになります。

とはいえ、日本ではすべての国民が公的健康保険制度に加入していますから、かかった医療費が全額自己負担になることはありません。具体的に、医療費の自己負担を軽減する公的医療保険制度の代表的な保障は次のようなものがあります。

■治療費の自己負担は3割
原則的に日本の公的医療保険制度では、収入や年齢によって違いはありますが、病院でかかった医療費のうち自己負担は3割となっています。たとえば、入院・手術で20万円の費用がかかったとしたら、そのうち個人で負担するのは6万円となります。

■月ごとの治療費の自己負担の限度は80,100円+αまで
高額療養費制度は、月の初めから終わりまでの医療費の自己負担が高額になり一定の上限額を超えた場合、その超過分を払い戻してもらえる制度です。収入や年齢によって変わってきますが、一般的に月ごとの自己負担の上限額は8万100円+αとなっており、それを超過した分については国から払い戻しを受けることができます(*2)。

2-2 傷病手当金で給与の約2/3はカバーできる

もしも会社員の方が働くことができなくなった場合、すぐに収入が途切れるわけではありません。

健康保険に加入している会社員の方は、就業不能状態が続くかぎり、働けなくなって4日目から通算して1年6カ月にわたり、給料(標準月額)の約2/3に当たる傷病手当金を受け取ることができます(*3)。もしも月給が30万円の方であれば、20万円の傷病手当金を受け取れる計算になります。

傷病手当金を受け取るには、次の4つの条件を満たしている必要があります。

  • ■傷病手当金の支給条件
  • ・業務外の病気やケガで療養中であること
  • ・療養のために働くことができないこと
  • ・連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること
  • ・給与の支払いがないこと

ただし注意したいのは、健康保険ではなく国民健康保険に加入している自営業の方は、働けなくなっても傷病手当金を受け取ることができません。より正確に言えば、公的医療保険制度は会社員の方などが加入する「健康保険」と、自営業の方などが加入する「国民健康保険」があり、国民健康保険には働けなくなったときに受け取れる傷病手当金が付いていないのです。

ですから、自営業の方は会社員の方と比べ、自らの手で思わぬ病気やケガにより働けなくなった時の備えをしておく必要があると言えます。

2-3 障害年金である程度はカバーできる可能性も

公的年金制度というと、65歳以上になったら受け取れる「老齢年金」のイメージが先行しますが、実は公的年金制度の1つに65歳未満で所定の条件を満たした場合に受け取れる「障害年金」があります。

障害年金とは、病気やケガなどにより身体に障害が残り仕事や日常生活に支障をきたすとき、国から年金や一時金を受け取れる公的年金制度の1つです(*4)。

障害年金を受け取るための条件は、おおよそ次のようになっています。

  • ■障害年金の受給条件
  • ・初診日に何かしらの公的年金制度に加入している
  • ・初診日の前日までの時点で2/3以上の期間に及び公的年金制度の保険料を納めている
  • ・初診日から1年6か月を経過している
  • ・所定の基準以上に重い障害状態である
  • ・20歳以上65歳未満である

受け取れる金額については、加入している公的年金制度や、定められている障害の等級(重軽度)、および子供の有無に応じて変わってきます。ですので一概に受け取れる金額を明言できませんが、働けない状態が長期間に及んだ場合、かなりの助けになることは確かです。

3.結局、就業不能保険は必要??

前章まで病気やケガで働けなくなったときの負担と、それに対する公的制度を見てきました。

お伝えしてきたように、働けなくなったときには公的制度も用意されているものの、それで負担のすべてをカバーできるわけではありません。働けなくなったときに、今までの生活水準を落さずに家族へ負担をかけないようにする為には、「働けないことによる収入の減少」と「医療費を含む生活費の支出の増加」の差分を埋める何かしらの備えが必要になります。その選択肢の一つとして考えられるのが就業不能保険です。

就業不能保険は、働けなくなったときに、給料のような形で毎月一定の金額を受け取れる保険。ここでは、就業不能保険の必要性について具体的に見ていきたいと思います。

3-1 就業不能保険の必要性

もし病気やケガに見舞われ、長期間にわたって働くことができない場合、それまでの収入をキープしていくのは難しくなります。

もちろん有給休暇、傷病手当金、障害年金など、働けない間にも収入の代わりになるような公的制度は用意されていますが、それらがもともと得ていた収入額を上回るケースはほとんどないと言っていいでしょう。

また、一般的に働けない時期が長期間に及んだ場合、その間の収入の補てんとして利用する公的制度は、”有給休暇”⇒”傷病手当金”⇒”障害年金”の順番になりますが、働けない期間が長期になればなるほど、どんどん収入は減っていきます。

長期間働けなくなった時の収入減少のイメージ

それに対して、今までの生活を維持するためには、生活費、家賃・住宅ローン、子供の教育費・習い事費といった費用を払い続けなければいけません。加えて、働けない状態に置かれているということは、継続した治療や介護の費用も余計にかかる可能性が高いことを意味しています。

もしも、この「収入の減少」と「支出の増加」による家計の負担に対して何も備えがなかったとしたら、場合によっては著しく生活水準を下げざるを得ないことも想定できます。もちろん働けなくなった時の図表の「不足部分」を貯蓄やその他の資産で十分にカバーできれば良いのですが、そうではないなら就業不能保険の必要性はかなり高いと言えそうです。

3-2 就業不能保険はどんな保険?

前述したように就業不能保険は、働けなくなった場合、給料のような形で毎月一定の金額の保険金を受け取れる保険です。もしも就業不能状態=働けない状態になったとしても、就業不能保険に加入していれば、その保険金をもとに収入の減少と支出の増加をカバーすることができます。

いざというときに受け取れる保険金額は、基本的に自身の収入に合わせて、おおよそ月10万円~50万円の間から選べます。原則的に保険金の支払いは、働けない状態が続く限り、満期まで続きます。満期に関しては、それぞれの目的に応じて40歳~70歳程度の間で設定が可能です。

就業不能保険で特に注意したいのは、支払い条件です。原則として就業不能保険は、就業不能状態に陥った時に保険金を受け取ることができます。

一般的な就業不能状態とは、

  • ・病気やケガの治療を目的として、病院もしくは診療所で入院している状態
  • ・病気やケガにより、医師の指示のもと在宅療養で治療に専念している状態

を指しています。

しかしながら、就業不能保険はまだ発展途上の保険なので、医療保険や死亡保険のように各保険会社で一律の支払い条件が設けられているわけではありません。就業不能保険の場合、保険会社によって保険金の支払い条件もマチマチなので、加入前に必ず確認をしましょう。

3-3 就業不能保険が必要な人/不必要な人

これまで「病気やケガで働けなくなったときのリスク」と「就業不能保険の保障内容」について見てきました。最後にそれらを踏まえたうえで、就業不能保険が必要な人と、不必要な人の特徴をまとめました。自身に就業不能保険が必要かどうかを考えてみる上での一つの参考にしてみてください。

  • ■就業不能保険が必要な人
  • ・病気やケガで働けなくなったときの支出増や収入減に対して対策ができていない方
  • ・病気やケガで働けなくなってもそれまでの生活水準を維持したい方
  • ・働けなくなったときに公的医療保険制度から手厚い保障を受けられない自営業の方

  • ■就業不能保険が不必要な人
  • ・既に貯蓄などで病気やケガで働けなくなったときの費用の準備ができている方
  • ・働けなくなったときに生活水準を落とせる方
  • ・すでに仕事をリタイアしており仕事での定期的な収入が特にない方

まとめ:働けなくなっても生活水準を維持するために就業不能保険は必要!

いかがでしたか? ここまで、

  • ・働けなくなったときの負担は「収入が減少するなかで継続して生活費や医療費を支払っていかなければならないこと」
  • ・働けなくなった時に利用できる公的医療保険制度としては「治療費の自己負担3割」「高額療養費制度」「傷病手当金」「障害年金」などがある
  • ・基本的に働けなくなった場合、公的医療保険制度を活用したとしても収入は減少するので、生活水準を維持する為に就業不能保険は必要

といった事についてお伝えしてきました。

この記事に目を通して頂いたことで、就業不能保険の必要性の大まかなイメージは掴んで頂けたのではないかと思います。ですが、実際に就業不能保険を選ぶとなると、ここでお伝えした知識だけでは不十分です。

たとえば、人によって子供がいるかどうか、住宅ローンがあるかどうか、傷病手当金や障害年金を受け取れるかどうか。そうした基準に応じて、一人ひとりに合った就業不能保険の内容は変わってきます。

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