積み立て?それとも掛け捨て?死亡保険はどっちがお得

Column

保険の基礎知識
積み立て?それとも掛け捨て?死亡保険はどっちがお得

死亡や高度障害状態など「万が一」の事態に陥ったときに保障金が支払われる死亡保険。いわゆる生命保険のひとつで、医療保険と並び多くの商品が存在しています。同じ保険会社であっても複数の死亡保険を扱っていることもあり、これから加入を考えている方のなかには、どの保険が自分に合っているのかよく分からないという人も少なくないようです。

死亡保険を選ぶ際にポイントとなるのが「積立型」と「掛け捨て型」のどちらを選ぶか、という問題です。「掛け捨てはお金が戻ってこないからもったいない」と思われがちですが、実はそうではありません。捨てるという単語からマイナスイメージがある掛け捨て型も、使い方によっては大きなメリットを得ることができるのです。

今回は、死亡保険を選ぶ際に知っておきたい「積立型」と「掛け捨て型」について、どのような違いがあるのか比較してみたいと思います。保険選びの基礎となる知識なので、知っておいて損はありません。これから初めて保険に加入するという方は、ぜひご覧ください。

1. 死亡保険にはどのような種類があるの?

1-1 積立型と掛け捨て型

死亡保険は大きく分けると「積立型」と「掛け捨て型」に分類することができます。 それぞれの違いを見てみましょう。

・積立型の特徴
死亡時の保障が得られるのと同時に、貯蓄ができます。途中で解約した場合には解約返戻金が支払われます。ただし、掛け捨て型と比べて保障額は少なくなります。

・掛け捨て型の特徴
死亡時の保障のみに特化した保険です。途中で解約した場合、返戻金は支払われません。商品によっては返戻金が戻ってきますが、積立型と比べるとわずかな金額です。ただし、積立型と比べて保障額が高めに設定されています。

「積立型はお金が戻ってくる」「掛け捨て型はお金が戻ってこない」という点に注目されがちですが、保障金に注目した場合は、掛け捨て型のほうに軍配が上がります。

1-2 なぜ2種類の保険があるの?

積立型の死亡保険も、掛け捨て型の死亡保険も、根本的な部分は「死亡時の負担をカバーする」という点で共通しています。積立型は「保障」に「貯蓄」を加えたハイブリッドなプラン。一方の掛け捨て型は「保障」のみのプランと考えればイメージしやすいかもしれません。

よくある間違いとして挙げられるのが、「積立型はすべてのお金が戻ってくる」という誤解です。積立型も掛け捨て型も、「保障」に関する掛け金は戻ってきません。どちらも掛け捨てとなっています。積立型で戻ってくるのはあくまで「貯蓄」の部分です。

つまり、積立型は死亡時の保障と同時に、お金を貯めたいというニーズに応えた商品となっています。死亡時の保障だけを考えているのならば、掛け捨て型でもまったく問題はありません。

1-3 リスクに備えることが大事

お金が戻ってくるから積立型はお得、解約してもお金が戻ってこない掛け捨て型は損、と思ってしまいがちです。

確かに条件がまったく同じだった場合には、お金が返ってくる方が有利です。しかし実際は、月々の保険料や有事の際に支払われる金額など、細かい点で差があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、一概にどちらがお得だとはいえません。

保険選びで最も重要なのは「必要な保障が受けられるかどうか」という点です。万が一の事態になったとき、保障外だったので保険金が下りなかったとなれば大変です。「お金が戻ってくる」「お金が戻ってこない」だけで判断するのではなく、まずはどのようなリスクに備えられるのかをチェックしましょう。

2. 積立型の死亡保険

2-1 終身保険

積立型死亡保険の代表的な商品といえば「終身保険」です。その名のとおり、一生涯にわたって保障される保険プランとなっており、加入さえしていれば死亡時に必ず保険金を受け取れます。医療保険のように保険加入者のリスクをカバーするものではなく、どちらかというと遺族のリスクを軽減する保険プランです。

終身保険の支払いと解約返戻金の推移

また終身保険には「貯蓄性がある」という特徴もあります。

解約時にお金が戻ってくる商品が多く、保険の加入期間が長いほど払戻率は上昇します。一定の年数を超えると支払った金額を上回る金額が返ってくる場合もあるため、そのまま生涯にわたって保険に加入し続ける人もいれば、一定期間における貯蓄を目的として加入する人もいます。

終身保険は一度加入すれば更新する必要はありません。掛け捨て型と比べて月々の保険料は高めに設定されていますが、保険料は加入時からほとんど変わらないため、健康リスクが低い20代~30代ごろに加入すれば、少ない投資で長期の保障を得ることができます。

一方で、終身保険のデメリットは「インフレに弱い」という点です。

インフレになると相対的にお金の価値が下がってしまいますが、終身保険は長期にわたる固定金利商品であり、金銭的価値の変化に対応できません。受け取り時の状況によっては葬式代を確保できなかった…というケースもあります。

2-2 低解約返戻金型終身保険

最近、登場したのが「低解約返戻金型終身保険」という保険商品です。加入すれば一生涯の保障が受けられる点では、通常の終身保険と変わりません。このプランは途中解約時の払戻金が少ない一方で、月々の保険料が安めになっているのが特徴です。

低解約返戻金型終身保険の支払いと解約返戻金の推移

通常の終身保険でも満期前に解約すれば元本を下回りますが、低解約返戻金型終身保険では受け取れる金額がさらに減ってしまうので要注意です。ただし、満期を迎えると払戻金が跳ね上がり、通常の終身保険とほとんど同じ金額を受け取ることができます。

満期まで、保険料を絶対に払い続けられるという人にとってはリターンが大きい保険です。

2-3 積立利率変動型終身保険

通常の終身保険はインフレに対応できないのですが、それを克服したのが「積立利率変動型終身保険」です。積立利率変動型終身保険とは保険料の一部を株式などの資産運用に充て、その運用実績に基づいて死亡保険金や解約払戻金が変動するタイプの保険です。

金利が固定されていないため、保険金を受け取る時の経済状況に合わせた金額をもらえるのが特徴となっています。ただし、デメリットとして株価の低下、為替レートの変動などのリスクがある点に注意したいところです。場合によっては死亡保険金や解約払戻金が元金割れしてしまう恐れもあります。

2-4 外貨建て終身保険

外貨建て終身保険とは、保険金の運用および支払いを原則として外貨で行うタイプの保険です。対応している外貨は保険会社によって異なりますが、具体的には米ドルや豪ドル、ユーロなどで運用が行われています。

利回りは円建てよりも高く設定されているため、貯蓄性の高い保険となっています。また資産を外貨として保有することで、円が暴落したときの備えとしても有効です。

デメリットとしては為替リスクが挙げられます。為替相場の変動によって利益が増減するリスクのことです。

保険金や解約返戻金を円で受け取る場合、契約時より円安になっていれば運用に差益が生まれますが、逆に円高になっているときには貯蓄性が低くなってしまうだけでなく、場合によっては元金割れしてしまう可能性もあります。

3. 掛け捨て型の死亡保険

3-1 定期保険

掛け捨て型の代表ともいえるのが「定期保険」です。契約はシンプルで、期間中に契約者が死亡または重篤な障害が発生した場合に、保険金を受け取れるプランとなっています。

定期保険のイメージ

月々の保険料は保障に充てられるので、解約しても払戻金は出ません。保険商品によっては払戻金が出るものもありますが、あったとしてもわずかな金額です。貯蓄性はありません。

定期保険の魅力は「安い保険料で大きな保障を受けられる」という点です。貯蓄性がない代わりに、終身保険と比べて月々の保険料が安めに設定されています。保険料の負担は減らしつつも、しっかりとした保障を受けたい人には向いている保険といえるでしょう。

定期保険のデメリットとしては、契約更新時に保険料が高くなってしまう点が挙げられます。保険料は、被保険者の年齢や性別などから算出された死亡率によって決められ、リスクに応じて保険料が高くなっていきます。契約終了後に、高くなった保険料が払えずに再加入できなくなってしまうケースもあるので注意したいところです。

10年満期の定期保険の自動更新のイメージ

定期保険は「10年プラン」「20年プラン」「30年プラン」など10年単位で区切られていることが多く、初めのうちは保険料が安価なため、お試しとして加入できる10年プランを選びがちです。ただし契約を更新する場合は、その時の年齢に応じて保険料が高くなります。

仮に子どもが大人になるまでの20年間の保障を受けたいとき、10年プランを2回加入するのと、20年プランに1回加入するのとでは、まとめて加入する後者のほうが安くなる傾向があります。加入したい期間が決まっている場合は、長期プランに加入するのもひとつの節約術です。

また、注意したいのが「新規加入には審査が必要」だという点です。

満期を迎えたときは被保険者が契約解除を申し出ない限り、健康状態にかかわらず自動的に更新されます。ただし、異なる保険に新規加入する場合には審査が必要です。健康状態や病歴によっては加入できないこともあるので、保険を見直しする際は気をつけましょう。

3-2 収入保障型定期保険

大黒柱に万が一のことがあった場合、残された遺族には経済的負担がのしかかります。

文部科学省によると、幼稚園から高等学校(全日制)までにかかる学習費は、すべて公立だった場合は約540万円、すべて私立だった場合には約1,830万円がかかるといわれています(*1)。これに生活費が加わるだけでなく、大学の費用も加わるとより多くのお金が必要になります。

こうした学費や生活費のすべてを終身保険でまかなおうとすると、必然的に月々の保険料が高額になってしまいます。そこで役立つのが「収入保障型定期保険」です。被保険者が死亡または重篤な障害が発生したときに、保険金を年金のように毎月受け取れるプランとなっています。

保険金は加入直後に死亡したときが最も多く、加入期間に応じて保険金は下がっていきます。掛け捨てではありますが、安い保険料で教育費や生活費などを保障できるため、子育て世代から選ばれている保険です。

収入保障型保険のイメージ

3-3 逓減定期保険

通常の定期保険の場合、同じプランならば年齢にかかわらず、死亡時に支払われる保険料はほぼ一定です。しかし、小さな子どもを持つ30代の男性が亡くなった場合と、既に子どもも自立していて年金生活をしている70歳の男性が亡くなった場合とでは、経済的リスクは大きく異なります。

逓減定期保険は「必要な保険金はライフステージによって変動する」という考えを元に作られた保険で、期間の経過とともに死亡保険金、または高度障害保険金を過不足のないように削減することで、月々の保険料を少なくしたプランです。更新のたびに保険料が高くなっていく定期保険と比べて、合理的な保険といえるでしょう。

逓減定期保険のイメージ

3-2でご紹介した収入保障型定期保険と似ていますが、そちらは年金形式で徐々に受け取れる一方、こちらの逓減定期保険はまとまった金額で受け取れる点で大きく異なります。デメリットとしては、取り扱っている保険会社が少ないという点が挙げられます。

4. 積立型と掛け捨て型を組み合わせた保険

4-1 定期付終身保険

定期付終身保険とは、積立型の終身保険をベースにして、掛け捨て型の定期保険をプラスしたハイブリッドな保険です。終身保険で生涯にわたって保障を受けつつ、定期保険部分で子どもが大人になるまでの金銭リスクをカバーできます。

定期付終身保険のイメージ

かつて保険会社の主力商品として販売されてきたため、今現在加入しているという方も多いのではないでしょうか。定期付終身保険で注意したいのは、以下の2点です。

(1)掛け捨て部分が多い
定期付終身保険の保険料は、ほとんどが掛け捨て型の定期保険に充てられます。積立型の終身保険部分に充てられるお金は少なく、生涯にわたって保障を受けられるものの、その保障金は通常の終身保険と比べると少額です。定期保険部分の保障金をずっと受け取れるわけではないので注意しましょう。

(2)更新時に保険料が上がる
定期付終身保険は定期部分の全期間を保障する「全期型」と、定期的に更新する「更新型」に分類できます。 更新型の場合、保険料は更新時の年齢によって上昇するため、その時の経済状況によっては保険を継続するのが難しくなることもあります。

このように月々の保険料を抑えつつ、保障額が大きくなっている定期付終身保険。積立型と掛け捨て型のメリットを持つ一方で、両者のデメリットも併せ持っている保険です。

4-2 アカウント型終身保険

アカウント型終身保険とは、保障とアカウント(銀行口座のように出し入れできる積み立て部分)が合わさった保険です。定期付終身保険の終身保険部分が貯蓄になったと考えればイメージしやすいかもしれません。ライフスタイルに合わせて各種特約を自由に設定できることから、「自由設計型」とも呼ばれています。

アカウント型終身保険のイメージ

手厚い保障を受けつつ貯蓄ができ、経済的事情でお金が必要になったときには積み立て部分を引き出せるのが特徴です。ただし、アカウント型終身保険には以下のような問題点があります。

(1)終身保険ではない
終身保険という名前が付いていますが、正確には終身保険ではありません。定期保険の支払期間が満期を迎えたときに終身保険へ移行する権利が与えられるだけであって、それまでは通常の定期保険と同じです。

(2)積み立て部分はほとんど増えない
アカウント保険は定期保険であるため、期限が来ると更新する必要があります。保険料は更新時の年齢に応じて上昇します。高くなった保険料分をアカウント部から充てられるため、負担が少なくなるというメリットはありますが、その分積立金は減ってしまいます。

このようにアカウント型終身保険は、基本的に定期付終身保険と同じ仕組みとなっています。そのため積立型と掛け捨て型のメリットを併せ持ちながら、両者のデメリットを有しています。また終身保険に移行する場合は積み立て部分だけでまかなうのは難しいので、ある程度の資金を準備しておく必要があります。

まとめ:積立型も掛け捨て型も一長一短! 目的によって使い分けを

保険は大別すると、「積立型」と「掛け捨て型」の2種類に分けることができます。

積立型は解約時や満期時にお金が返ってくるタイプの保険です。保険加入期間が長いほど払戻金が高くなり、保険商品によっては、払った金額よりも多い金額が返ってくるものもあります。ただし、満期より前に解約してしまうと元金割れするケースがほとんどです。保険選びの際には保障内容の検討だけでなく、保険料を支払い続けられるかどうかも重要になってきます。

代表的なプランには終身保険が挙げられます。生涯にわたって保障を受けられるのが魅力ですが、月々の保険料は掛け捨てタイプよりも高くなりやすいです。「死後の葬式代などを確保したい」「将来に備えて貯蓄もしたい」という人には積立型が向いているかもしれません。

掛け捨て型は解約時や満期時にお金が返ってこないタイプの保険です。「捨てる」という響きから誤解されがちですが、積立型も保険部分においてはお金が返ってきません。戻ってくるのは積み立て部分のお金であり、そちらは保険料に上乗せして徴収されています。掛け捨て型は保障部分だけのお金を支払うコンパクトな保険で、積立型と比べて月々の保険料が少なくなっているのが特徴です。

代表的なプランとしては定期保険があります。安い保険料で大きな保障を受けられますが、更新時には保険料が高くなります。「子どもが独り立ちするまで」「住宅ローンを支払い終えるまで」など、特定の期間だけ加入したい人は、掛け捨て型を検討してみてはいかがでしょうか。

このように「積立型」と「掛け捨て型」はどちらも一長一短です。どちらが一概に優れているとはいえません。商品によっても保険の性格や目的が大きく異なるので、まずは自分が死亡保険(生命保険)に何を求めているのかを考え、検討中のプランが要件に合致しているかどうかを見極めることが大切です。

「約款が細かくて比較検討が難しい」「保険商品が多すぎて自分が求めているプランが見つからない」という方は、保険見直し本舗までお気軽にご相談ください。保険のプロのコンサルティングアドバイザーに無料で保険相談ができます。数多くのタイプがある死亡保険(生命保険)から、一人ひとりのニーズに合わせた最適なプランをご紹介いたします。