保険選びで大切なのは「たくさんの保険に入ること」ではありません。必要最低限の保障を見極め、適切な保険に加入することも1つの選択肢です。むしろ、必要以上の保険に加入することで、本来の生活設計に影響が出てしまうケースも少なくありません。
そこで本記事では、年代やライフステージ別に、本当に必要な保険と保障額の考え方を詳しく解説します。
特に、「保険の見直しを考えている方」「新規で保険加入を検討している方」「家計の支出を見直したい方」は、保険選びの指針として参考になるはずです。
ご自身に本当に必要な保障は何か、適切な保険料はいくらなのか。保険の基本から具体的な選び方まで、わかりやすく解説するため、ぜひ最後までご一読ください。
目次
必要な保険は3つだけ?最低限入っておくべき保険とは
一般的に、最低限入っておくべき保険には、『生命保険・自動車保険・火災保険』の3つがよく挙げられます。それぞれ異なるリスクに対応しており、私たちの生活を様々な面から守る役割を果たしているからだと考えられます。
以下では、各項目について、なぜそういわれるのかを見ていきましょう。
死亡保険
死亡保険は、被保険者が亡くなった際に受取人へ保険金が支払われる保険です。
万が一、収入の柱となる人が亡くなった場合、残された家族は経済的に困窮する可能性があります。死亡保険は、そのリスクに備え、家族の生活を安定させるための保険金を用意することを考えると、必要性は自然に高まります。
また、生きている間の医療費や生活費は公的制度や貯蓄でカバーできるケースが多く、遺族には公的な遺族年金制度もありますが、葬儀費用の準備は死亡保険でしか対応できないのが現状です。
いい葬儀(【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)の調査によると、一般的な葬儀費用は100~160万円程度と言われており、高額な葬儀費用へ備えるために死亡保険が必要だと考えられています。
関連記事:9割の世帯が加入する死亡保険(生命保険)は本当に必要か?
出典:いい葬儀(【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年) アフターコロナで葬儀の規模は拡大、関東地方の冬季に火葬待ちの傾向あり)(https://www.e-sogi.com/guide/55135/)
自動車保険
自動車保険は、運転に伴うリスクから自身と他者を守る重要な保険です。主に、以下のような補償が含まれます。
- 対人賠償:他人の生命や身体への損害補償
- 対物賠償:他人の財物への損害補償
- 人身傷害:自身や同乗者のケガへの補償
- 車両保険:自車の損害への補償
特に重要なのが、対人・対物賠償保険で、事故により他人にケガをさせたり、物を壊したりした場合、数億円規模の賠償責任が発生する可能性も捨てきれません。
自動車保険は、こうした高額な賠償金に備えて負担を軽減するために、加入する必要があるといわれています。
火災保険
火災保険は、火災だけでなく風水害などの自然災害や盗難による建物や家財の損害も補償する保険です。主な補償の対象としてよく挙げられるは以下のとおりで、住宅ローンを組む場合は加入を必須とするケースが多いことから身近な保険の1つです。
- 建物の損害
- 家財の損害
- 自然災害による損害
- 盗難による損害
※地震による損害は火災保険では補償されないため、別途で地震保険の追加加入が必要。
火災は、住宅や家財を一瞬にして失ってしまう可能性があります。火災保険は、そうした損害発生時に必要な再建費用や家財の買い替え費用に備えるために加入する必要性の高い保険商品といえます。
必要な保険は3つだけと言われる理由は?
死亡保険・自動車保険・火災保険の3つだけ準備しておけばよいと考える方に共通している理由には下記2つが挙げられます。
- 医療費をカバーできる貯金があるから
- 公的保障や制度が充実しているから
医療費をカバーできる貯金があるから
医療費や入院費用などをカバーできる貯金がある場合、医療保険などに加入する必要性を感じない方もいます。
公的保障や制度が充実しているから
日本の社会保障制度は世界的に見ても充実しており、さまざまな状況で公的な保障を受けることができます。
公的制度を適切に活用すると、民間の保険に頼らなくても基本的な生活保障を確保できることから、必要最低限でよいと考える方も一定数います。
例えば、医療費が高額になった場合は高額療養費制度により、一定額を超えた分が給付されます。
そのほか、
- 世帯主が亡くなった場合:「遺族基礎年金」
- 失業した場合:「雇用保険からの給付」
- 病気やケガで働けない場合:「傷病手当金」
などを受け取れ、医療費の自己負担割合も、状況に応じて3割から1割に軽減される場合まであります。
では、生命保険に限った場合、年代やライフステージ別に考えるとどの保険に入ったらよいのでしょうか。次章では、最低限入っておくべき保険をご紹介します。
出典:全国健康保険協会(高額な医療費を支払ったとき(高額療養費))(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/)、日本年金機構(遺族年金)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-03.html)、厚生労働省(社会保障とは何か)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21479.html)
【年代・ライフステージ別】最低限入っておくべき保険
必要な保険は、ライフステージや扶養家族の有無によって変わってきます。基本的には死亡・自動車・火災の3つの保障が土台となりますが、年齢や家族構成によって備えておきたい保障は異なるものです。
ここでは、各ライフステージで最低限必要となる保険について解説します。
独身:20代~40代の場合
独身の働き盛り世代でもっとも大切なのは、自身の生活を守るための保障です。
特に医療保険は、長期入院による収入減少や高額な治療費への備えとして重要です。20代の貯蓄額の中央値は20万円程度と少なく、突然の入院で経済的な困難に陥るリスクが高いためです。
また、就業不能保険も検討すべき保険の1つです。自営業やフリーランスの場合、会社員のような傷病手当金制度がないため、長期の就業不能は深刻な収入減少につながります。医療保険と就業不能保険を組み合わせることで、働けなくなるリスクに備えることができるでしょう。
出典:金融広報中央委員会(各種分類別データ(令和4年))(https://www.shiruporuto.jp/, https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/tanshin/2022/22bunruit001.html)より、金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む) <問2(a)>の中央値
既婚:20代の場合
既婚20代で必要な保険は、配偶者の生活を守るための死亡保障が中心となります。配偶者が働ける状況であっても、当面の生活費や住宅ローンの返済などに備えた保障は、万が一の備えとなるためです。
基本的な保障の組み合わせとしては、死亡保険、医療保険、就業不能保険が推奨されます。
特に住宅ローンがある場合は、団体信用生命保険だけでなく、追加の死亡保障を検討するとよいでしょう。
団体信用生命保険は確かに借入者が亡くなった場合に住宅ローンの残債が返済されますが、「借金がなくなる」だけです。残された家族が継続して生活していくために必要な費用(例:お子様の教育費、配偶者の老後の生活費、光熱費などの毎月の生活費)はカバーされないことが多いです。
そのため、家計の大黒柱が亡くなった後も、残された家族が安定した生活を送れるよう、追加で死亡保障保険への加入を検討できます。保険料は若いうちの方が安くなりやすいため、20代のうちに必要な保障を準備しておくとよいでしょう。
既婚:30代~40代の場合
子育て世代となる30代~40代では、家族の将来設計を見据えた保障が必要となりやすい状況です。死亡保険や医療保険、就業不能保険に加えて、子どもの教育資金を準備するための学資保険も検討しましょう。
学資保険は、親が万が一のときでも払込免除となる機能があり、単純な貯蓄よりも安心感があります。また、教育資金の積立と保障を兼ねることができ、計画的な資金準備が可能です。子どもの年齢や教育プランに合わせて、必要な保障を設計しましょう。
独身・既婚:50代の場合
50代は、老後への備えを本格的に考える時期です。独身・既婚を問わず、老後の生活資金確保が重要な課題となるため、死亡保険や医療保険に加えて個人年金保険の活用を検討しましょう。
個人年金保険は、保険料の支払い方法を工夫することで、より効率的な資金準備が可能です。例えば、一括払いや年払いを選択したり、受取時期や受取方法を調整したりするなどで、同じ保険料でもより多くの保障を確保できる場合があります。
独身・既婚:60代の場合
60代になると、子育ての負担が軽減し、独身・既婚問わず保険ニーズは似通ってきます。この年代で特に大切なのは、医療保障の見直しです。年齢とともに疾病リスクは高まり、新規の保険加入が難しくなる可能性もあります。
加入中の医療保険の保障内容を見直し、必要に応じて特約を追加することも検討しましょう。更新がある保険では10年程度で更新となるため、更新のタイミングで適切な保障内容に調整できれば、将来の医療リスクに備えることもできます。
必要最低限の保険金額を考えるには?
必要最低限の保険金額は、加入する保険の種類によって考え方が異なります。3つの主要な保険について、具体的な金額の目安を見ていきましょう。
死亡保険
まず死亡保険については、独身の場合は葬儀費用と残された家族への負担を考慮して160万円程度が目安(※)となります。一方、既婚者の場合は、遺族の生活費や住宅ローンの返済、子どもの教育費なども考慮して考えましょう。
死亡保険について知る:死亡保険の平均保障額はいくら?必要な保障額の相場も解説
※いい葬儀(【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)の一般葬の葬儀費用の総額(平均)より(https://www.e-sogi.com/guide/55135/)
医療保険
医療保険では、入院給付金の日額設定が重要です。公的医療保険の自己負担分と差額ベッド代、入院中の食事代などを考えると、日額1万円以上必要な場合もあります。高額療養費制度でカバーされない部分を補完できる金額を目安にしましょう。
医療保険について知る:入院日額は平均いくら?1日の入院費用や日額の決め方も解説
就業不能保険
就業不能保険については、傷病手当金が支給される1年6か月間の収入減少分の補填と、その後の長期的な生活費を考慮して設定します。基本は、「支出」ー「収入」=「就業不能保険で備える必要額」で計算します。なお、自営業の方は傷病手当金がないため、より手厚い保障を検討しましょう。
就業不能保険について知る:収入保障保険の必要性と選び方とは? 失敗しない保険選びの厳選ポイントを徹底解説!
このように、必要保険金額は自身の収入や家族構成、ライフスタイルによって変わってきます。過不足のない保障額を設定するためにも、現在の生活状況や将来の見通しを踏まえて慎重に検討しましょう。
まとめ
必要最低限の保険としては、一般的にリスクへ備えるために以下の3つがよく挙げられます。
- 死亡保険
- 自動車保険
- 火災保険
いずれも、「発生確率は比較的低いものの、一旦発生すると経済的影響が甚大」という特徴を持つためです。ただし、生命保険においては年代やライフステージによって必要な保障も変化します。
20代独身なら自身の生活を守る医療保障、30~40代の子育て世代なら家族の将来を見据えた死亡保障と教育資金の準備、50~60代なら老後に備えた医療保障と年金保険が重要になってきます。
まず自身の貯蓄状況を確認し、利用可能な公的制度を把握することからはじめましょう。現在のライフステージで本当に必要な保障を見極め、適切な保険金額を設定することが大切です。
また、定期的な見直しも忘れずにおこない、常に最適な保障を備えられるようにしましょう。
よくある質問(FAQ)
最低限入っておくべき生命保険は?
必要な保険は、年齢やライフステージ、家族構成、収入状況等によって異なりますが、「死亡保険」「医療保険」「がん保険」の3種類を備える方が多い傾向にあります。
保険の種類 | 主な保障内容 | 特徴と検討ポイント |
---|---|---|
死亡保険 | • 死亡時の遺族への保障 • 子どもの教育資金の確保 |
• 家族の生活保障が主目的 • 住宅ローンがある場合は特に重要 • 扶養家族がいる場合の必要性が高い |
医療保険 | • 入院費用の保障 • 手術費用の保障 • 入院中の収入減少への対応 |
• 公的医療保険の自己負担部分をカバー • 入院による収入減少にも対応 • 基本的な医療保障として重要 |
がん保険 | • がん診断時の一時金 • がん治療費用の保障 • 長期治療時の生活費保障 |
• がん特有の高額治療に対応 • 治療の長期化に備えられる • 若年層では経済的な余裕をみて優先順位を要検討 |
ただし、あくまでも一般的な例であり、ご自身の状況に応じて必要な保障を見極めることが重要です。
公的保障制度の活用や貯蓄との組み合わせも考慮に入れながら、適切な保障を選びましょう。
生命保険に入ってる人はどれくらいの割合ですか?
生命保険文化センターの2022年度調査によると、生命保険の加入率は男性で77.6%、女性で81.5%となっており、全体では約8割の方が何らかの生命保険に加入している状況です。
なお、この統計には民間の生命保険会社だけでなく、郵便局(かんぽ生命)、JA(農協)、県民共済・生協などで取り扱っている生命保険や生命共済も含まれています。ただし、個人年金保険やグループ保険、財形保険は含まれていません。
出典:生命保険文化センター(リスクに備えるための生活設計)(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1221.html)
生命保険は平均で何個入ってる?
生命保険文化センターの2021年度の調査結果によると、生命保険に加入している世帯の平均加入件数は3.9件となっています。
複数の保険に加入している理由としては、1つの保険では補いきれない保障を組み合わせることで、より手厚い保障を実現したいというニーズがあるためと考えられます。
ただし、加入件数が多いことは必ずしも適切な保障を意味するわけではありません。重複する保障がないか、本当に必要な保障なのかを定期的に見直すことが重要です。
出典:生命保険文化センター(1世帯あたり何件くらいの生命保険に加入している?)(https://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/846.html)