養老保険とは? メリット・デメリットから税金の考え方まで徹底解説!

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保険の基礎知識
養老保険とは? メリット・デメリットから税金の考え方まで徹底解説!

近年の日本では高齢化が急激に進んでおり、もはや「人生100年時代」とも言われるほどです。誰にとっても「長生きリスク」が身近なものとなり、老後の経済的備えについて真剣に考えなければいけないと言えます。そんな老後の生活資金の備えの1つとして、養老保険があるのはご存知でしょうか。

養老保険とは生命保険の一種で、一定期間の死亡保障と将来に向けた貯蓄機能をうまく兼ね備えた保険です。保険期間中に万が一のことが起こった場合には死亡保険金が、生存して満期を迎えたときには死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れます。また、解約時には解約返戻金を受け取れます。養老保険は、万が一の保障を確保しながら、将来必要になる老後の生活費を準備することもできるのです。

この記事では、養老保険とはそもそもどんな保険なのか、メリットとデメリット、終身保険との違い、保険金にかかる税金まで、養老保険の基礎知識をわかりやすく解説していきます。この記事を最後まで読んでいただければ、おおまかな養老保険についてイメージできると思います。

1.養老保険とはどんな保険?

養老保険は生命保険に分類されますが、そもそもどのような特徴を持っているのでしょうか。そこで、まずこの章では、養老保険について保障内容、保険料、保険期間の3つのパートに分けて特徴を解説していきます。

ちなみに、同じ生命保険の「定期保険」や「終身保険」という名称は、保険期間が由来になっています。では、養老保険の「養老」とは、どういう意味なのでしょうか。それは、満期を迎えたときに受け取る保険金で「老後を養う」といった仕組みから「養老保険」と呼ばれているのです。養老保険の主な役割としても、「残された家族のための経済的な備え」「老後のための貯蓄」が挙げられます。

1-1 養老保険の保障内容

養老保険の保障内容の1つは、保険期間中に万が一のことが発生したときに、あらかじめ設定された金額の死亡保険金が受け取れることです。保険期間は一定期間となっており、この間に支払事由に該当したときはいつでも保険金が支払われます。支払事由に該当しないまま保険期間が終了すれば死亡保障も終了し、その後は死亡保険金が支払われることはありません。

これだけを見ると定期保険と変わらないような仕組みですが、養老保険の場合、もう1つ別の保障が備わっています。それは、万が一のことが起こらずに保険期間が終了したとき、つまり生きたまま満期を迎えたときには、死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れることです。また、途中解約をしたときには、終身保険よりも比較的に多くの解約返戻金を受け取ることが可能です。

このように、亡くなったとしても存命したとしても、どちらにしても保険金を受け取れることから、養老保険は「生死混合保険」とも呼ばれています。掛け捨て型保険とは異なり、万が一に備えるという死亡保障の要素にくわえて、将来に向けた資金作りもできる貯蓄型保険の特徴を持ち合わせているのです。

養老保険のイメージ

1-2 養老保険の保険料

養老保険の保険料は、定期保険などの掛け捨て型の保険はもちろん、終身保険と比べても割高になっています。

先述したように、養老保険からは死亡保険金や満期保険金、解約返戻金のいずれかが支払われます。裏を返せば、養老保険では死亡保障を備えながら貯蓄もできるように保険料が高く設定されていると言えるのです。

1-3 養老保険の保険期間

保険期間は一定で、10年や15年といった比較的に短い期間を保険期間としています。

保険期間の設定方法には「年満了タイプ」「歳満了タイプ」の2つがあります。年満了タイプは、10年間・15年間・20年間といった年数で保険期間を設定するもの、歳満了タイプは、50歳まで・60歳まで・70歳までなどといった年齢で保険期間を設定するものです。そして、養老保険は基本的に更新をすることができないので、満期を迎えたら保障は終了します。

⇒養老保険だけじゃない! 死亡保障がある生命保険にはどんなタイプがある?

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2.養老保険のメリット

前章では、養老保険とはどんな保険なのかを見ていきました。次にお伝えするのは、養老保険のメリット・デメリットです。それぞれ具体的にどのようなものがあるのか、まずはメリットから詳しくご紹介していきます。

2-1 死亡保険金と同額の満期保険金を受け取ることができる

掛け捨て型の定期保険では、万が一のことが起こらずに満期を迎えた場合には保険金は受け取れずに保障が終了します。また、終身保険では満期がないため、被保険者の存命中は保険金が支払われません。

これらに対して養老保険は、万が一のことが起こらずに満期を迎えた場合でも、死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れるというメリットがあります。

この満期保険金は老後資金などに活用できます。ですので、養老保険は「契約期間中は保障を備えて、満期を迎えたら将来に向けた資金を備えたい」というような方に向いています。保障とともに貯蓄機能も求めるのであれば、養老保険は有効と言えるでしょう。

2-2 解約返戻率の高い期間が長い

定期保険は基本的に解約返戻金がありませんので、途中で解約しても支払った保険料は戻ってきません。終身保険には解約返戻金がありますが、通常は保険料の払込みが終了するまでの期間は、解約返戻率が低く抑えられています。したがって、途中解約するとそれまでに払い込んだ保険料よりもかなり少ない金額しか戻ってきません。

一方で養老保険は、終身保険と比較して基本的に解約返戻率の高い期間が長く設定されています。このことも「貯蓄性が高い」と言われる理由です。また、もし契約期間中に条件の良い保険を見つけた場合、解約返戻金の多さを活用することで見直しをしやすいという特徴があります。

3.養老保険のデメリット

前章では養老保険のメリットについてご紹介しました。続いて、養老保険のデメリットについて見ていきましょう。

3-1 毎月の保険料の支払いが大きい

1章でもお話ししたように、養老保険では貯蓄性が高い分、定期保険や終身保険と比べて毎月の払込保険料が大きくなっています。保険期間が終了したときに満期保険金を確実に受け取れるように毎月支払う保険料が設定されているためです。

また、これもメリットの裏返しとも言えるのですが、高い解約返戻率を確保していることも保険料が割高になっている理由の1つです。保険料を安く抑えたい方には向いてないと言えるでしょう。

さらに言えば、もしも月々の保険料の支払いが難しくなって早期に途中解約をしたら、この解約返戻金が支払った保険料の総額以上になることは、まずありえません。大きく元本割れしてしまう可能性が高い早期での解約は、できるかぎり避けたいところです。

養老保険の加入を検討する際には、長期にわたって保険料を無理なく払い続けられるかどうかを良く考え、無理のない範囲での金額にすることをおすすめします。

3-2 現在は予定利率が高くない

保険では、支払われた保険料を運用して保険金を高くする仕組みになっていますが、現在は金利が低いため、高い運用利回り(予定利率)は期待できません。

1980~1990年代のバブル期までは、現在よりも金利がかなり高く設定されていました。養老保険の予定利率も今よりも高く、貯蓄性に優れていたので、比較的多くの満期保険金を受取れていました。しかし、現在は低金利時代が続いており、養老保険を含む円建て保険の予定利率は非常に低くなっています。

そのため、利回りを重視して保険で資産運用を考えている場合は、今は養老保険で高利回りを実現できるとは言えないでしょう。資産運用には様々な方法があるので、保障と運用は切り離して考えてみても良いかもしれません。少なくとも、養老保険を検討する際は、支払う保険料の総額と満期に受け取れる満期保険金の割合は忘れずにチェックするようにしましょう。

3-3 満期後に保障の更新ができない

基本的に養老保険では、保障は満期とともに終了し、それ以降更新することができません。もし、満期後も保障がほしいといった場合には、他の保険で補う必要があります。満期時の年齢や健康状態によっては、新たな保険に加入できない可能性もあります。万が一のことが起こったときの保障を一生涯にわたって備えたい方は、養老保険は向いていないと言えるでしょう。

4.養老保険と終身保険は何が違う?

前章まででも簡単に触れてきましたが、養老保険と同じように、貯蓄型の生命保険として終身保険があります。どちらの保険も、何かしら保険金が受け取れたり、途中解約をすれば解約返戻金が受け取れたりする点では同じですが、いったいどのような点で違いがあるのでしょうか。

この章では、改めて養老保険と終身保険を保険期間・解約返戻率・保険料・満期保険金の観点で比較し、違いを明らかにしていきたいと思います。

4-1 保険期間

養老保険と終身保険とでは、保険期間の長さに違いがあります。養老保険は「年満了」や「歳満了」など、一定期間で保障が終了するのに対し、終身保険は一生涯にわたって保障が続きます。あくまで養老保険は老後の資金作りに注力した保険なので、保険期間は一定期間で終了するようになっています。

4-2 解約返戻率

保険期間中に解約した場合の解約返戻率に違いがあります。途中解約をした場合、基本的に終身保険よりも養老保険のほうが解約返戻率は高く、多くの解約返戻金を受け取れるようになっています。ただ、商品や契約内容によっては、終身保険のほうが解約返戻金の総額が高くなる場合もあるので、かならず確認するようにしましょう。

4-3 保険料

同じ保障金額であれば、基本的に終身保険よりも養老保険のほうが、保険期間の終了時に満期保険金が支払われることと、途中解約時の解約返戻率が高いことで、保険料も高く設定されています。

4-4 満期保険金

養老保険は、満期を迎えると満期保険金が支払われますが、終身保険だと満期保険金は支払われません。養老保険の場合、満期になると死亡保険金と同額の満期保険金を受け取れるので、被保険者本人の生活資金に充てることができる、つまりは「長生きリスク」にも対応することが可能と言えます。

養老保険 終身保険
保険期間 一定期間で終了 一生涯続く
解約返戻率 終身保険より高い
※商品による
養老保険より低い
※商品による
保険料 終身保険より高い
※保障金額が同じ場合
養老保険より安い
※保障金額が同じ場合
満期保険金 あり なし

5.養老保険で受け取った保険金に対する税金は?

先述した通り、養老保険では死亡保険金、あるいは満期保険金、解約返戻金が受け取れます。基本的にこれらのお金には税金の支払い義務が発生します。

どのような税金がかかるのかは、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人を誰にしているかによって異なります。以下では、死亡保険金、満期保険金・解約返戻金に分けて、それぞれどのような税金が課されるのかを解説していきたいと思います。

5-1 死亡保険金にかかる税金

養老保険の死亡保険金を一時金としてまとめて受け取る場合、注目してほしいポイントとしては、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人を誰に設定しているのかというところです。その組み合わせに応じて、課せられる税金は次の3パターンに分けることができます。

5-1-1 契約者と被保険者が同じ場合は「相続税」

契約者と被保険者が同じ、たとえば契約者と被保険者が夫で、受取人が妻や子どものケースはどうなるのでしょうか。

この場合、妻や子どもが受け取った死亡保険金は亡くなった夫が積み立てた「相続財産」として扱われるので、相続税の課税対象となります。

ここでの重要なポイントは、この死亡保険金を被保険者の相続人である妻・子どもが受け取るときは、その死亡保険金は残された家族の生活保障という重要な目的を担う財産となることです。そのため、一定金額までは非課税になるという税法上の特典を受けることができます。具体的には、相続人1人あたり500万円となっていますので、覚えておくと良いでしょう(*1)。

5-1-2 契約者と受取人が同じ場合には「所得税」

続いて、契約者と受取人が同じ場合です。たとえば、妻が夫を対象とする養老保険を契約し、夫に万が一のことが起こり、妻が死亡保険金を受け取るといったケースを考えてみましょう。

この場合、妻が自ら支払った保険料をもとにした死亡保険金を受取ることになるので、保険金は「妻の所得」として扱われます。このような所得は「一時所得」に分類され、他の所得があれば合算して所得税が課されることになります。

なお、一時所得では「必要経費」と特別控除50万円を差し引けるうえ、その残額の半分が課税対象になります(*2)。つまり、受け取った保険金から「支払った保険料の総額+50万円」を差し引いた金額の半分に対して課税されますので、次でご説明する贈与税に比べて大幅に税負担は軽くなります。

5-1-3 契約者と被保険者と受取人がすべて違う場合には「贈与税」

次は、契約者と被保険者と受取人のすべてが異なっていた場合です。例を挙げると、契約者が妻、被保険者が夫、受取人が子どものケースなどです。

この場合、死亡保険金の受取人である子どもは、生きている母親が支払った保険料をもとにした死亡保険金を受け取ることになるので、母親からの「贈与によって得た財産」として扱われます。そのため、死亡保険金は贈与税の課税対象となります。

このケースでは、保険金を受け取る人は保険料を支払っていませんので、必要経費を差し引くことはできません。また、50万円の特別控除も認められていません。さらに、贈与税の税率は所得税よりも高めに設定されていますので、通常は所得税がかかるケースよりも税負担は重くなる傾向があります。

死亡保険金にかかる税金をまとめると、以下のようになります。

死亡保険金にかかる税金

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5-2 満期保険金・解約返戻金にかかる税金

養老保険の満期保険金や解約返戻金は、どのように課税されるのでしょうか。ポイントになるのは、契約者(保険料負担者)と受取人、つまり誰が保険料を負担し、誰が保険金を受け取るのかだけです。この組み合わせに応じて2パターンに分けることができます。

5-2-1 契約者と受取人が同じ場合には「所得税」

まずは、契約者と受取人が同じ、たとえば夫が契約者で自ら満期保険金や解約返戻金を受け取る場合です。このケースでは死亡保険金の2つめのケースと同様に、夫は自分で支払った保険料をもとにした満期保険金や解約返戻金を自ら受け取ることになるので、「夫の所得(一時所得)」として扱われ、所得税の課税対象となります。計算方法は死亡保険金と同じです。

5-2-2 契約者と受取人が違う場合には「贈与税」

契約者とは別の人が満期保険金や解約返戻金を受け取る場合はどうでしょうか。たとえば、契約者が夫で受取人が妻といったケースを考えてみましょう。やはり死亡保険金の3つめのケースと同じように、妻が受け取った満期保険金や解約返戻金は、保険料を支払った夫からの「贈与によって得た財産」として扱われるので、贈与税が課されます。

満期保険金・解約返戻金にかかる税金をまとめると、以下のようになります。

満期保険金の課税
  • ※一時払い養老保険などで保険期間が5年以内のものや、保険期間が5年を超えるものでも5年以内に解約した場合などは「金融類似商品」とされ、満期保険金・解約返戻金には一律20.315%の源泉分離課税が適用されます。この場合の満期保険金・解約返戻金による所得は他の種類の所得と合算されず、分離して課税されることで納税は終了します。(*3)

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まとめ:養老保険の加入はメリット・デメリットをしっかり検討してから

いかがでしたでしょうか。
養老保険について簡単にまとめると次のようになります。

  • ・養老保険は生命保険の一種で、一定期間の死亡保障を備えながら満期を迎えたときには満期保険金を受け取れるという、貯蓄性に優れた保険
  • ・メリットは、満期保険金を受け取れる、解約返戻率の高い期間が長い
  • ・デメリットは、毎月の保険料が高額、現在は予定利率が低い、満期後に保障の更新ができない

この記事で、みなさんも養老保険の大まかなイメージはご理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、実際に養老保険に加入してみようと思っても、満期はいつにすればいいのか、保険金額はいくらにすればいいのか、といった条件は悩みどころです。そもそも、保障を目的とするのか、将来の資産形成を念頭に置くのかによっても、選ぶ金融商品は変わってきます。保険選びでは自分のライフスタイルに合ったものを選ぶことが大切なのです。

「やっぱり、自分で保険を選ぶのは大変そうだな……」

少しでもそのように思われた方は、保険のプロに相談してみるのも一つの方法です。

保険見直し本舗では、知識と経験が豊富な、保険のプロとしてコンサルティングアドバイザーが数多く在籍しています。プロからのアドバイスはきっとアナタの役に立つはずです。ぜひ気軽にお悩みをお寄せください。お待ちしております。