自転車というと「誰でも気軽に乗れる身近な乗り物」といったイメージが強いかもしれません。たしかに自転車は運転するのに免許もいりませんから、誰もが買い物や通勤通学の足に使ったり、趣味としてのサイクリングを楽しんだりしています。
しかし、そんな気軽で身近な自転車が、一歩間違えたら自分や他人の人生の歯車を大きく狂わせる「凶器」になることは、普段あまり意識されていないのではないでしょうか。
自転車の速度はスポーツバイクで時速40キロ、いわゆるママチャリでさえ15~20キロだと言われています。改めてこう考えると、もし自転車事故が起こったら、被害者になるにせよ加害者になるにせよ、大ケガや後遺障害を負ってしまうケースは少なくないと言えるでしょう。
このような自転車のリスクに備えるのが自転車保険の役割です。自転車保険は、自転車が加害者となる事故の増加や、その際に加害者の負う賠償金が高額になる事例が相次いでいることから、すでに一部の自治体や都道府県では加入が義務づけられています。
とはいえ、同じ損害保険でも自動車保険や地震保険、火災保険などと比べ、自転車保険はあまりメジャーではありませんから、「具体的に自転車保険がどういう保険かよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では「自転車保険とは何か?」という点について分かりやすく解説していきます。
1.自転車事故のリスクはどういうもの?
自転車保険とは、自転車事故のリスクに対して備えるための保険だと言えます。
では、そもそも自転車事故のリスクとは何を指しているのでしょうか。大きく分けて、自転車事故のリスクには「他人を傷つけるリスク」「自分が傷ついてしまうリスク」があります。
それぞれのリスクについて、具体的に見ていきましょう。
1-1 自転車で他人を傷つけるリスク
自転車事故のリスクのうち、もっとも恐ろしいのが、自分が運転する自転車で他人や他人のモノを傷つけてしまうリスクです。
もしも自分が運転する自転車で他人を傷つけてしまったら、法律上の損害賠償責任を負うことになります。特にその自転車事故で、相手に大ケガを負わせてしまったり後遺障害が残ってしまったり、あるいは亡くならせてしまった場合、賠償金は高額におよぶことが予測されます。
実際、自転車事故の加害者に対して、「将来の介護や治療の費用」「後遺症に対する慰謝料」「事故によって得られなくなった利益」などを含め、数千万~1億円近くにもおよぶ賠償金を支払う義務が課された例も見られます。
通常、一般の方がこれだけ高額な賠償金を何の備えもなしに支払うことは難しいでしょう。その意味で、自転車事故のリスクのなかでも他人を傷つけてしまうリスクは、特に注意すべきだと言えます。
1-2 自転車で自分が傷ついてしまうリスク
もし自転車事故が起こったら、自分が身体的なダメージを負う懸念があります。
場合によってはケガの治療のために通院や入院、手術が必要になってくることがあります。あるいは最悪の場合、亡くなってしまうこともあり得るでしょう。そうなるとケガの治療や葬祭費用がかかってきます。
そのような自転車事故によりケガを負い、治療費や葬祭費用がかかることも、自転車事故のリスクの一つに数えられるでしょう。
2.自転車保険の補償内容~個人賠償責任補償と傷害補償~
前章では代表的な自転車事故のリスクとして、「自転車で他人を傷つけるリスク」「自転車で自分が傷ついてしまうリスク」の二つをご説明しました。
自転車保険は、これらの自転車事故のリスクをカバーするための「個人賠償責任補償」と「傷害補償」、それからいくつかの特約や付帯サービスがセットになっている保険です。
押さえておきたいポイントは、自転車保険の補償範囲は自転車利用にともなう損害にかぎらない、というところ。「自転車保険」という呼び方から、「自転車に関わる損害しか補償にならないのかな?」と思われがちですが、実は自転車事故を含めさまざまな損害をカバーできる保険なのです。
したがって、呼び名としては「自転車保険」ではなく「自転車“向け”保険」のほうが正しいのでしょうが、無用な混乱を避けるために、ここでは「自転車保険」と表記することにしています。
少し前置きが長くなりましたが、自転車保険を構成する個人賠償責任補償と傷害補償、そして特約や付帯サービスがどういったものなのか見ていきましょう。
2-1 個人賠償責任補償とは?
個人賠償責任補償は、日常生活において、意図せずに他人を傷つけてしまったり、他人のモノを壊してしまったりして法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金を受け取れます。
もしも他人や他人のモノを傷つけて損害賠償責任を負ったら、賠償金が数千万円から1億円近くに達することも考えられます。そうした経済的な負担への備えが、個人賠償責任補償の役割だと言えるでしょう。
先ほど触れたように、個人賠償責任補償では、自転車事故で他人を傷つけてしまったときだけでなく、さまざまな状況で損害賠償責任を負ったときにも補償の対象となります。
具体的に補償対象となるシチュエーションは、自転車事故で他人を傷つけしまったときのほかに、以下のようなものがあります。
このように並べていくときりがありませんが、どれも日常的に身のまわりで起こってもおかしくないトラブルです。
商品によっても違いますが、個人賠償責任補償の補償金額は5,000万円~3億円程度になっているようです。
2-2 傷害補償とは?
個人賠償責任補償が「自分が自転車で他人を傷つけたときの補償」であるのに対して、傷害補償は「自分が自転車でケガや後遺障害を負ったり、亡くなったりしたときの補償」であると言えます。
補償の対象となるケースとしては、「自転車に乗っているときに転倒してケガで入院」や「歩行中に他人の乗っている自転車と衝突してケガで入院・手術」などです。
傷害補償は、大きく分けて入院保険金、入院一時金、通院保険金、死亡保険金、後遺障害保険金の5つからなっています。
注意したいところは、あくまで傷害補償なので、病気で入院・手術をしたり亡くなったりしても補償の対象にならないことです。
2-3 示談代行サービスと自転車ロードサービス
すべての自転車保険に付いているわけではありませんが、その代表的な付帯サービスとしては、示談代行サービスと自転車ロードサービスが挙げられます。
まず示談代行サービスから見ていきましょう。
もしも自転車事故の加害者になったら、被害者との示談交渉に臨むことになります。しかし自転車保険の場合、自動車保険とは違い、強制加入で誰もが共通して入っている自賠責保険などはありません。
ですので、当事者同士の話し合いだと争点が定まらないまま示談交渉が難航し、お互いに望まないトラブルに発展してしまうケースもあり得ます。理想を言えば、示談交渉はプロに代行してもらいたいところですが、たとえばそれを弁護士に代行を依頼すると、それなりの費用がかかってきます。
そのようなときに、示談代行サービスが付帯している自転車保険に加入していたら、保険会社のプロが当事者にかわって示談交渉にあたってくれます。示談交渉の進め方によっても相手に支払う賠償金は変わってきますから、示談交渉サービスがあれば心強いと言えそうです。
次に自転車ロードサービスについてご説明します。
自転車のロードサービスは、自転車の事故や故障などによって身動きが取れなくなったときに、希望の場所まで自転車を搬送してもらえるサービスです。たとえば、タイヤがパンクしてしまった、カギを無くしてしまった、チェーンが外れてしまって自分では直せないなど、自転車を使えなくなったときに頼りになるサービスだと言えるでしょう。
ただし、商品によって対応可能時間、対応可能地域、搬送可能距離などが変わりますから、あらかじめしっかりチェックしておくことが大切です。
まとめ:自転車保険選びは慎重に!
いかがでしたか?
ここでは自転車事故をめぐる代表的なリスクと、それに対して備える自転車保険の補償内容について簡単にお伝えしました。
しかしながら、ここでお伝えしたことは自転車保険の基本にすぎません。実際に自転車保険を選ぶとなると、補償金額の設定や、特約の取捨選択、保険料とのバランスなど、より多くのことを含めて検討することになります。
また、自転車保険を検討するときに注意したいのは、すでに自分や家族が加入している保険のなかに個人賠償責任補償や傷害補償が付いていて、そもそも加入する必要がないこともある点です。
自転車保険は保険料もそれほど高額ではないコンパクトな商品ですが、今の保険と重複して加入しても意味がないので、検討するためには自分の保険を総合的にチェックすることが大切だと言えます。
「うーん、自転車保険を選ぶのって、かなり大変そうだな……」
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