現在、多くの人が生命保険に加入しています。生命保険に加入することで、万一の事態が発生した場合、その経済的な負担をカバーできるようになります。ただ、年齢やライフステージなどによって、リスクの大きさやリスクに対処する必要性に違いがあるでしょう。
この記事では、生命保険の加入率を年代別・年収別・ライフステージ別・就労形態別に取り上げます。また、生命保険に加入する必要性が高い人の特徴についても解説するため、ぜひご覧ください。
1.生命保険の加入率
生命保険の世帯加入率とは、調査に回答した世帯のうち生命保険に加入している方が少なくとも1人以上いる世帯の割合です。生命保険の加入率は、「1人以上が生命保険に加入している世帯数÷回答した世帯数×100」で求められます。
生命保険の世帯加入率の推移は、下記の通りです。
生命保険全体の加入率 | 民間保険の加入率 | |
---|---|---|
令和3年 | 89.8% | 80.3% |
平成30年 | 88.7% | 79.1% |
平成27年 | 89.2% | 78.6% |
平成24年 | 90.5% | 78.4% |
平成21年 | 90.3% | 76.2% |
出典:生命保険文化センター ホームページ「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
生命保険の世帯加入率は、約90%で推移しています。生命保険全体の数値には民保(かんぽ生命を含む)・簡保・JA・県民共済・生協などが含まれており、多くの方がもしもに備えて何かしらの保険に加入していることが分かります。
生命保険に加入する主な理由は、万一の事態が発生した場合の経済的負担への備えや老後資金の準備などです。それぞれの目的に合わせて加入する保険内容を決定している方が多く見られます。生命保険への加入を検討している方は、周りの加入状況を参考に判断することもおすすめの1つです。
年代や年収、ライフステージ、就労形態という項目別に、生命保険の加入実態を解説します。
1-1.年代別
生命保険の加入率は、世帯主の年齢によって数値に差があります。
令和3年度の世帯主年齢別生命保険の世帯加入率は、下記の通りです。
世帯主年齢 | 生命保険全体の世帯加入率 | 民間保険の世帯加入率 |
---|---|---|
29歳以下 | 70.2% | 65.4% |
30~34歳 | 90.7% | 80.5% |
35~39歳 | 89.4% | 81.1% |
40~44歳 | 93.2% | 81.6% |
45~49歳 | 94.0% | 87.0% |
50~54歳 | 93.0% | 84.6% |
55~59歳 | 94.8% | 84.7% |
60~64歳 | 92.4% | 84.6% |
65~69歳 | 93.8% | 84.1% |
70~74歳 | 88.2% | 77.6% |
75~79歳 | 85.0% | 73.4% |
80~84歳 | 80.2% | 69.1% |
85~89歳 | 67.5% | 55.4% |
90歳以上 | 52.2% | 52.2% |
出典:生命保険文化センター ホームページ「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
年代別に生命保険の加入率を比較すると、40~50代の加入率が高いことが分かります。年齢が上がるにつれて加入率が上がり、40~50代でピークを迎えて以降は減少傾向に転じます。
29歳以下は、生命保険全体・民間保険のどちらも加入率が低いことが特徴です。ライフステージの変化や周囲の人の病気などがきっかけで、30代から生命保険への加入を検討する方が多く見られます。
80代以降は加入率が大幅に下がるものの、医療費の軽減などを目的に加入を継続する方が一定数います。
1-2.年収別
世帯年収 | 生命保険全体の世帯加入率 | 民間保険の世帯加入率 |
---|---|---|
200万円未満 | 73.8% | 59.8% |
200万~300万円未満 | 83.4% | 69.2% |
300万~400万円未満 | 87.3% | 76.4% |
400万~500万円未満 | 89.7% | 77.9% |
500万~600万円未満 | 92.1% | 83.7% |
600万~700万円未満 | 94.0% | 86.6% |
700万~1,000万円未満 | 95.3% | 88.0% |
1,000万円以上 | 94.4% | 89.3% |
出典:生命保険文化センター ホームページ「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
世帯年収が高いほど、生命保険の世帯加入率が高くなる傾向にあります。
世帯年収が500万円以上の場合、加入率は90%を超えています。生命保険全体の世帯加入率は、世帯年収700万~1,000万円未満の世帯が最も高く、民間保険の世帯加入率は世帯年収1,000万円以上の世帯が最も高いことが特徴です。
一方、世帯年収が200万円未満の世帯は加入率が80%を下回っています。世帯年収500万~600万円の世帯と比較すると、20ポイント近く低いことが分かります。
ただ、世帯年収に関わらず70%以上の方が生命保険に加入していることから、病気やケガ、介護などに備えて生命保険に加入している方が多いと言えるでしょう。
1-3.ライフステージ別
ライフステージによって、生命保険加入率は大きく変わります。ライフステージ別の加入率は、生命保険の加入を考える判断材料になります。
ライフステージ別生命保険の加入率は、下記の通りです。
ライフステージ | 世帯加入率 | 世帯主加入率 | 配偶者加入率 | 子ども加入率 |
---|---|---|---|---|
夫婦のみ(40歳未満) | 71.0% | 65.6% | 55.9% | ― |
夫婦のみ(40~59歳) | 91.6% | 87.6% | 81.8% | ― |
末子乳児 | 88.5% | 83.3% | 74.6% | 25.0% |
末子保育園児・幼稚園児 | 93.6% | 89.3% | 81.4% | 39.5% |
末子小・中学生 | 94.4% | 89.6% | 83.4% | 55.3% |
末子高校・短大・大学生 | 93.7% | 90.3% | 86.2% | 51.2% |
末子就学終了 | 89.8% | 84.5% | 80.5% | ― |
高齢夫婦有職(60歳以上) | 93.0% | 89.1% | 84.0% | ― |
高齢夫婦無職(60歳以上) | 83.1% | 78.0% | 73.4% | ― |
出典:生命保険文化センター ホームページ「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
夫婦のみの世帯の場合、年齢によって加入率が大きく変わります。夫婦の年齢が上がるにつれて、老後の備えとして個人年金保険などに加入する方が増える傾向にあります。
また、子どもが生まれたタイミングで学資保険を含む生命保険に加入する方が多く、子どもの就学が終了するまでは加入率が高い状態が続くことが特徴です。
60歳以上の夫婦の場合、仕事をしている方のほうが加入率は高くなっています。仕事をしていない60歳以上の夫婦は、世帯主・配偶者ともに加入率が10ポイント近く減少しています。
1-4.就労形態別
世帯の就労形態は、「配偶者のみが就労」「共働き」の2つです。共働きはフルタイム勤務とパート・派遣勤務に分かれているため、それぞれの就労形態に合わせて数値を比較する必要があります。
世帯就労形態別生命保険の加入率は、下記の通りです。
世帯の就労状況 | 世帯主加入率 | 配偶者加入率 | 両方加入率 |
---|---|---|---|
世帯主就労・配偶者無職 | 89.9% | 82.3% | 81.2% |
共働き(配偶者はパート・派遣 | 89.2% | 81.3% | 79.6% |
共働き(配偶者はフルタイム) | 88.2% | 83.8% | 82.0% |
出典:生命保険文化センター ホームページ「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
世帯主加入率を比較すると、世帯の就労状況に関わらず90%弱の方が加入していることが分かります。配偶者加入率もそれぞれ80%を超えており、特に配偶者がフルタイムの共働き世帯の加入率が高い傾向にあります。
世帯主と配偶者の両方が生命保険に加入している割合は、フルタイムの共働き世帯が高いことが特徴です。配偶者がフルタイムの共働きの場合、お互いに家計を支えているケースが多く、生命保険の加入率も高くなりやすいと言えます。
2.生命保険の必要性が高い人
生命保険の必要性は、ライフステージや世帯の就労形態によって異なります。
生命保険の必要性が高い人の特徴は、以下の通りです。
- 配偶者が専業主婦(主夫)の世帯
配偶者が専業主婦(主夫)の場合、保険加入者(配偶者)が死亡したり働けなくなったりすると収入が途絶える可能性が高いと言えるでしょう。夫婦のどちらか一方が家族を扶養している世帯では、働けなくなっても生活費を確保できるように生命保険に加入しています。 - 子どものいる世帯
子育て世帯は、子どもの生活費や教育費などがかかります。子どもの進路希望によっては、まとまった金額が必要です。万が一への備えがあれば、子育て中の経済的な不安を軽減できます。子どもの人数が増えたタイミングや子どもの成長に合わせて、生命保険の加入や保障の見直しを検討しましょう。 - ひとり親世帯
シングルマザーやシングルファザーは、生命保険の必要性が高いと言えます。子どもの生活費を確保するには、十分な備えが必要です。受けられる公的サポートをチェックした上で、生命保険を準備しておくと安心です。
3.生命保険の必要性が高くない人
- 共働きで子どものいない世帯
共働きで子どものいない世帯は、どちらか一方が働けなくなっても、ある程度の収入を確保できます。配偶者が主婦(主夫)の場合と比べると、生命保険の必要性は低いと言えます。すでに子どもが独立している場合も同様です。 - すでに十分な資産を持っている世帯
貯蓄や金融資産が十分にある世帯は、生命保険の必要性はそれほど高くありません。家族の生活資金や子どもの教育費を確保できている場合は、経済的な不安への備えができている状態と言えます。 - 容易に頼れる親類縁者がいる場合
容易に頼れる兄弟や親戚などがいる場合は、経済的に困ったとしても援助を受けることが可能でしょう。生活が安定するまでの期間を経済的に支えてくれる親類縁者がいる方は、必ずしも生命保険が必要とは限りません。
ただし、生命保険の必要性が高くない人の特徴に当てはまる方でも、加入したほうが良い場合もあります。ライフプランや世帯の就労形態、資産状況などだけでなく、個別の事情や価値観も踏まえて検討することがポイントです。
まとめ
現在、およそ9割の世帯が、何らかの生命保険に加入しています。生命保険に加入する目的は、さまざまです。主な目的は、万一の事態が発生した場合の経済的負担への備えや老後資金の準備などです。
生命保険の加入率は、年代・年収・ライフステージ・就労形態によって異なります。子育て中の世帯や年収の高い世帯での生命保険の加入率が、高い傾向にあります。
生命保険に加入する必要性は、個々のケースで異なるものです。ご自身の状況を整理して、生命保険の必要性を検討しましょう。