50代はがんや生活習慣病のリスクが高まるため、病気やけがに備えて民間の医療保険に申し込んでおくと安心です。医療保険では主契約の他にがんや生活習慣病、女性疾病に特化した特約も付帯できるため、リスクや必要性を考えながら保険を選びましょう。
当記事では、50代におすすめの医療保険や特約を紹介します。医療保険が必要な理由についても解説するので、申し込みを迷っている方もぜひ当記事を参考にしてください。
1.50代の保険加入率
最初に、医療保険を含めた生命保険加入率を紹介します。
下記の表は、2022年における生命保険加入率を性別・世代別に表したものです。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
20歳代 | 46.4% | 57.1% |
30歳代 | 81.5% | 82.8% |
40歳代 | 86.1% | 86.3% |
50歳代 | 86.9% | 87.8% |
60歳代 | 85.8% | 86.5% |
70歳代 | 72.5% | 78.8% |
全体 | 77.6% | 81.5% |
出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」より
50代の生命保険加入率は40代と同程度の水準であり、全世代の中で最も加入率が高くなっています。男女ともに全体平均を上回っており、リスクに備えるため保険のニーズが大きい年代です。
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疾病入院給付金の日額の平均
被保険者の入院日数に応じて受け取れる、疾病入院給付金の日額の平均を紹介します。
男性 女性 20歳代 7,386円 7,136円 30歳代 9,212円 8,047円 40歳代 10,502円 8,447円 50歳代 10,883円 8,669円 60歳代 9,638円 8,315円 70歳代 8,299円 7,025円 全体 9,576円 8,058円 出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」より
疾病入院給付金の日額の平均は、50代の男性・女性はいずれも全体平均を上回っていて、全世代の中で最も大きい金額となっています。
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疾病入院給付一時金の平均額
被保険者の入院時にまとまった金額が一度に受け取れる、疾病入院給付一時金の平均額は下記の通りです。
男性 女性 20歳代 25.0万円 11.1万円 30歳代 20.7万円 18.1万円 40歳代 23.8万円 16.9万円 50歳代 18.7万円 19.7万円 60歳代 22.9万円 12.6万円 70歳代 20.7万円 15.5万円 全体 21.6万円 16.4万円
疾病入院給付一時金の平均額は、50代の男性は全世代の中で最も小さい金額となっていて、全体平均も下回っていました。
反対に、50代の女性が設定している疾病入院給付一時金は全世代の中で最も大きい金額であり、全体平均を上回っています。
2.50代に医療保険が必要な理由
医療保険を含めた生命保険加入率は、年代別に見ると50代が最も高くなっています。
疾病入院給付金の日額の平均も50代が最も大きく、50代の医療保険は手厚い傾向にあると言ってよいでしょう。
なぜ50代に医療保険が必要であるかを、3つの理由から解説します。
2-1.病気のリスクが上がるため
50代になるとがん(悪性新生物)や心疾患、高血圧症・糖尿病といった生活習慣病などのリスクが上がります。
出典:厚生労働省ホームページ
特に50代の方が注意したい病気が「がん」です。厚生労働省が公表するデータによると50代の死因は下記の通りとなっていて、がんの占める割合が高いことが分かります。
死因1位 | 死因2位 | 死因3位 | |
---|---|---|---|
50~54歳 | 悪性新生物(40.0%) | 心疾患(12.3%) | 自殺(12.2%) |
55~59歳 | 悪性新生物(45.4%) | 心疾患(12.0%) | 脳血管疾患(8.3%) |
出典:厚生労働省ホームページ
また、50代におけるがんの罹患率(人口10万人あたりのがんの診断数)は下記の通りです。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
50~54歳 | 357.2例 | 579.7例 |
55~59歳 | 673例 | 692例 |
出典:がん情報サービス「全がん:[国立がん研究センター がん統計]」
特に男性のがんの罹患率は、55~59歳を境に急増する傾向が見られます。
がんなどの病気は、治療のために長期間の通院・入院が必要です。民間の医療保険に申し込んでいると高額な医療費の支払いにも対応でき、病気のリスクに備えられます。
2-2.健康寿命に備えるため
健康寿命とは、健康上の問題によって日常生活に制限が加えられることなく生活できる期間のことです。健康寿命が長くなると、自立して生活できる期間を長く持てるようになります。
日本人の健康寿命の平均は、2019年時点で男性が72.68歳、女性が75.38歳です。近年において日本人の健康寿命は延伸の傾向が続いています。
出典:内閣府ホームページ
しかし、健康寿命の平均が伸びていても、誰もが平均値通りの健康寿命を持てるとは限りません。がん・心疾患・脳血管疾患などの生命に危険が及ぶ病気にかかると、健康寿命は短くなるケースもあるでしょう。
50代は病気のリスクが上がる年齢であり、健康寿命にかかわる病気に罹患する可能性もあります。できるだけ健康寿命を伸ばせるよう、病気にかかったときの備えをしておくことが大切です。
2-3.早く申し込むほうがメリットが大きいため
保険には「給付反対給付均等の原則」があり、被保険者の病気・死亡リスクの高さに応じて、被保険者が支払う保険料が調整される仕組みとなっています。
出典:一般社団法人 生命保険協会「STEP. 3 生命保険の仕組み」
病気・死亡リスクが低いほど保険料の設定は小さくなるため、早めに保険に申し込むと保険料負担を軽減することが可能です。病気のリスクがより高くなる60代になってからよりも、元気に働いている50代のうちに医療保険に申し込んだほうが保険料のメリットは大きくなります。
また、保険を申し込む際には自身の健康状態や病歴を保険会社側に伝える告知義務があります。健康状態によっては契約できない可能性があるため、できるだけ健康なうちに申し込むことが大切です。
ただし、保険商品の中には持病があっても申し込める保険も存在します。
3.医療保険と生命保険、どちらを選ぶとよい?
50代が申し込む保険として、医療保険と生命保険のどちらを選ぶとよいかで悩む方もいるでしょう。
そもそも医療保険と生命保険には主に3つの違いがあります。申し込む保険を選ぶときは、下記の違いを押さえることが大切です。
・保険の役割
医療保険は、被保険者が病気やケガによって医療機関への通院・入院をした場合に、医療費請求による経済的負担の軽減を目的とした保険です。一方で生命保険は、被保険者が死亡や高度障害の状態となった場合に、遺された家族の生活を守ることを目的としています。
・保障内容
医療保険の保障内容は「入院給付金」と「手術給付金」が主契約です。主契約に付帯する特約として「先進医療特約」「がん特約」「通院特約」などがあります。
生命保険の保障内容は「死亡保障」「医療保障」「三大疾病保障」「就業不能保障」などが主契約です。付帯できる特約には「定期保険特約」「収入保障特約」「介護特約」などがあります。
・保険金の受取人
医療保険では、保険金の受取人は基本的に被保険者本人です。一方、死亡補償では、基本的に被保険者本人が死亡もしくは介護状態となっているため、一般的に保険金の受取人は被保険者の家族となります。
万が一の場合にも家族の生活を守れる生命保険は、必要性が高い保険と言えます。しかし、病気やケガの治療にかかる幅広い費用をカバーするためには、医療保険への申し込みも大切です。
4.50代におすすめの医療保険・特約
医療保険の保障には、メインの保障である「主契約」と主契約に付帯できる保障の「特約」があります。
主契約や特約の具体的な保障内容は保険商品によって異なるため、必要に応じ主契約の水準や付帯する特約を決めるとよいでしょう。
以下では、医療保険の主契約と代表的な特約の内容を解説します。
4-1.入院給付金
入院給付金は、被保険者が病気やケガの治療を目的として入院した場合に受け取れる給付金です。医療保険の主契約に設定されており、医療保険に申し込めば自動的に保障内容に含まれます。
入院給付金は基本的に、契約時に定めた日額に入院日数を掛けた金額が給付金として受け取れる仕組みです。
ただし、入院給付金には、入院給付金の日額が受け取れる最長の日数を定めた「支払限度日数」が設定されています。支払限度日数を超えた部分の日数については給付金が受け取れないため、必要な支払限度日数は何日であるかを考えて選びましょう。
なお、入院給付金には、入院日数にかかわらずまとまった金額を受け取れる「入院給付一時金」タイプもあります。
4-2.手術給付金
手術給付金は、被保険者が病気やケガを治療するために手術を受けた場合に受け取れる給付金です。入院給付金と同様に、手術給付金も医療保険の主契約に設定されています。
手術給付金は、入院がない外来手術であっても給付金の支給対象となります。
しかし、支給対象となる手術の種類は、医療保険によって異なる点に注意してください。対象となる手術は、下記の2タイプに分かれています。
- 公的医療保険の対象となる手術
- 88種類の所定の手術
一般的な医療保険の手術給付金は、主に「公的医療保険の対象となる手術」を保障するタイプです。
なお、医療保険の約款に記載がない手術や、治療目的ではない手術を受けた場合は、手術給付金は受け取れません。
4-3.先進医療特約
先進医療特約は、厚生労働省への届出をした病院で先進医療を受けた場合に、技術料相当額の給付金などを受け取れる特約です。
そもそも先進医療とは、厚生労働大臣に承認された治療法や医療技術の中でも、公的医療保険制度の適用が受けられない医療のことです。先進医療の技術料などは全額自己負担となり、医療費負担が高くなります。
先進医療特約を申し込むと、先進医療を受けた場合に給付金を受け取れるため、医療費負担の軽減が可能です。
なお、先進医療として承認されている治療法・医療技術などは随時見直しがされています。特約を申し込んだ時点で先進医療として承認されていても、実際に治療を受けるタイミングでは承認が取り消されていて、特約が適用されないケースがある点には注意しましょう。
4-4.がん特約
がん特約は、がんによって医療機関を受診したときに、給付金を受け取れる特約です。
がん特約には「がん診断特約」と「がん入院特約」の2種類があります。それぞれの保障内容は下記の通りです。
がん診断特約 | 医療機関でがんと診断されたときに、診断給付金を受け取れる |
---|---|
がん入院特約 | がんの治療のために入院したときに、がん入院給付金を受け取れる |
医療保険の主契約である入院給付金・手術給付金はがんの場合も保障が適用されるものの、がん治療をカバーできるほどの手厚い保障が受けられるとは限りません。
がん特約を申し込むと、がんの診断や入院時の給付金を上乗せできるため、がんに対して手厚く備えられます。
4-5.三大疾病特約
三大疾病特約は、三大疾病(特定疾病)と呼ばれるがん・急性心筋梗塞・脳卒中により所定の状態となった場合に、給付金などが受け取れる特約です。
出典:(公財)生命保険文化センター「特定疾病(三大疾病)保障特約」より
がん・急性心筋梗塞・脳卒中はいずれも50代の死因の上位を占める病気であり、リスクへの備えが必要となります。三大疾病特約に申し込むと、3つの病気すべての保障を手厚くすることが可能です。
なお、三大疾病特約とよく似ている特約には「八大疾病特約」や「生活習慣病特約」があります。
八大疾病特約は、三大疾病に糖尿病・高血圧症・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎を加え八大疾病を対象とした特約です。
もう1つの生活習慣病特約は、三大疾病に加えて糖尿病・高血圧症を対象とすることが一般的です。
出典:(公財)生命保険文化センター「生活習慣病(成人病)入院特約」と「がん入院特約」の保障内容は?|医療保障に関するQ&A」より
4-6.女性疾病特約
女性疾病特約は、乳がん・卵巣がん・子宮頸がん・子宮筋腫や出産時の合併症など、女性特有の病気で医療機関を受診したときに給付金が受け取れる特約です。
女性疾病特約に申し込むと、女性特有の病気で入院したときに、主契約の入院給付金に上乗せされる形で「女性疾病入院給付金」が受け取れます。保険会社によっては、所定の手術をした場合に主契約の手術給付金に上乗せされる形で「女性疾病手術給付金」が受け取れるケースもあるでしょう。
子宮外妊娠・多胎分娩・帝王切開など、出産にかかわる手術も保障対象となるケースがあり、妊娠・出産を考えている女性にとって心強い特約です。
4-7.通院特約
通院特約は、入院状態から退院をしたのちに通院を続ける場合に、通院給付金が受け取れる特約です。
通院をすれば無条件で受け取れるわけではなく、通院特約が適用されるには基本的に2つの条件を満たす必要があります。
- 入院給付金の給付対象となる入院をしていて、現在は退院している
- 退院後も、入院の直接原因となった病気やケガを治療するために通院をしている
通院特約に申し込むと、退院後の通院をしたときに通院給付金が受け取れるため、通院にかかる医療費や交通費の負担を軽減可能です。
なお、保険商品によっては、入院前の通院についても通院特約で保障を受けられるケースがあります。
5.【50代向け】医療保険の選び方
50代で医療保険に申し込む場合は、自分の家族構成やライフステージに合わせて主契約の内容と特約を決めることが重要です。
最後に、3つのライフステージ別におすすめの医療保険を説明します。
5-1.独身の場合
独身の場合、病気やケガで長期入院・療養が必要になり収入が減少する可能性があります。入院が長引き生活費に困るケースもあるため、入院給付金の支払限度日数が長い医療保険を選ぶことが重要です。
また、50代になるとがん・心疾患・脳血管疾患といった生命にかかわる病気のリスクが高くなります。がん特約や三大疾病特約などの特約を付帯すると、病気の診断確定時や手術時に保険金を受け取れることにより、高額な医療費や収入減少の対策ができます。
独身の場合、男性・女性による医療保険の選び方に大きな違いはありません。
ただし、女性の場合は女性特有の病気によるリスクがあるため、女性疾病入院特約の付帯を検討しましょう。
5-2.既婚の場合
既婚の場合は、共働き世帯か片働き世帯かによって保険の選び方が変わります。
まず共働き世帯の場合は、夫婦のどちらかが病気やケガで入院・通院することになっても、もう1人の収入状況によっては生活への影響を防げる可能性があります。お互いの収入状況を確認した上で、主契約の保障内容が充実していて、がん特約・三大疾病特約・通院特約などの付帯ができる医療保険を検討しましょう。
一方で片働きの場合、家計を支えている人が入院・通院する状態になると、収入減少により生活が苦しくなります。万が一に備え、入院給付金や手術給付金の保障が手厚い保険を選びましょう。特約は種類を増やすと保険料の負担が大きくなるため、保険料とバランスを考え特約を選択することが大切です。
5-3.子どもがいる場合
子どもがいる場合は、子どもの年齢や独立しているかどうかで保険の選び方が変わります。
子どもが就学している年齢の場合は、子どもの教育費による出費があります。特に大学進学を考えている家庭では、大学入学費用・授業料の積立のために家計に余裕がないケースもあるでしょう。
しかし、子どもの就学中に夫婦のどちらかが入院・通院することになると、医療費の発生によって家計への負担はより大きくなります。保険料の支払いが家計や教育費に影響しない範囲で、万が一の入院・通院に備えられる医療保険に申し込むことが大切です。
子どもが就学している年齢の場合にメリットが大きい特約としては、「保険料払込免除特約」が挙げられます。
保険料払込免除特約とは、約款に定められた所定の身体障害状態となったときに、以降の保険料支払いが免除される特約です。家計を支えている人が働けない状態となった場合でも、保険料払込免除特約がある医療保険であれば、家計への影響を抑えられる可能性があります。
一方で子どもが独立している場合は、すでに紹介した「既婚の場合」を参考に保険を選びましょう。
まとめ
50代の方は、他の世代に比べて生命保険の加入率が高く、万が一の病気やけがに備えている方も多くいます。一般的な医療保険の主契約には入院給付金や手術給付金があり、入院や手術の費用をカバーできます。
また、医療保険には先進医療特約やがん特約、女性疾病特約など、さまざまな特約を付帯できるのも特徴です。どのようなリスクに備えたいのかを考えながら、月々の保険料負担も考慮しつつ特約の付帯を検討しましょう。