生命保険に申し込む際に最も注意が必要なのは、保険会社への告知義務に違反してしまっていないかということです。告知義務に違反すると最悪の場合、保険金が受け取れなくなってしまいます。告知義務に違反しないように、正しく告知を行わなければなりません。
この記事では、告知義務違反とはどのようなものであるのかに関して、分かりやすく解説します。また、告知を行う理由やうっかり告知義務に違反してしまった場合の対応についても取り上げるので、ぜひ参考にしてください。
1.告知義務違反とは?
生命保険の告知義務とは、生命保険への申込時に健康状態・既往歴などを生命保険会社に伝える義務のことです。
告知は、申込者が生命保険に加入しても問題ないかどうかを生命保険会社が審査するために不可欠なものです。健康状態・既往歴などは漏れなく、ありのままに告知することが義務付けられています。
もし故意または重大な過失によって、告知をしなかった場合や事実と異なる告知をした場合は告知義務違反となります。わざとでない場合も告知義務違反に該当する可能性があるため注意が必要です。
1-1.なぜ告知をしなければならないのか?
生命保険は、不特定多数の方が保険料を出し合い、必要な方に保障し合う相互扶助の仕組みで成り立っています。保険料も年齢・性別などに応じたリスクの高さから算出されており、契約者同士の公平性を保つための配慮がなされています。
ところが、申込時から健康状態が悪い方や病気・怪我のリスクが大きい職業に就いている方が同じ条件で保険加入した場合、契約者同士の公平性が保てません。左記のような方は、ほかの方に比べて保険金を受け取れる確率が高いためです。そこで、保険会社が申込者の過去・現在の健康状態や職業などを確認し、契約者を平等に引き受けるために告知が必要となっています。
なお、一般的な告知方法は申込者が記入する告知書によるものですが、場合によっては医師による診査も必要になります。
2.告知書への記載内容
告知書への記載内容は生命保険会社や保険の種類・保険商品によって異なりますが、被保険者本人に関する基本的な情報が必要である点は共通です。告知書への記載が必要な内容は以下の5つとなっています。
(1)職業・仕事内容
被保険者の現在の勤務先名や業種、職種、仕事内容について記載します。ほかの契約者に比べて怪我や病気をしやすい仕事に就いている方かどうかを確認するために必要な項目です。
(2)健康状態
被保険者が現在病気や怪我をしているかを確認するための重要な告知事項となっています。以下のような内容の回答を求められるため、正確に告知しましょう。
- 病気または怪我によって入院中である
- 病気または怪我の治療中である
- 投薬または経過観察を受けている
- 検査または治療を勧められている
(3)既往歴
既往歴とは、現在までの病歴のことです。過去数年以内に特定の病気にかかり、治療・投薬を受けた場合は告知の必要があります。過去数年以内の健康診断で異常が見つかった場合や指摘項目があった場合にも告知が必要です。指定される期間は保険商品や生命保険会社ごとに異なるため、よく確認の上回答しましょう。
(4)障害の有無
手・足の欠損・機能障害や、視力・聴力・言語・そしゃく機能などの身体障害がある場合は、告知する必要があります。
(5)妊娠の有無
女性の場合は現在妊娠しているかどうかの告知も必要です。
大半の項目は「はい・いいえ」もしくは「あり・なし」の選択式であり「はい」や「あり」の場合は詳細を記入することになります。
自身が該当する項目があった場合、傷病名や医療機関名、入院・手術をした時期、服用した薬などを詳しく記載します。告知書を記入する際には、前もってお薬手帳や健康診断結果、入院・通院時の診療報酬明細書などを準備しておくとよいでしょう。
3.告知義務に違反した場合
生命保険会社は、申込書や告知の内容などが事実かどうかを調査する場合があります。
調査を行った結果、契約者の告知義務違反が発覚した場合は、以下のいずれかの措置を取られる可能性があるため注意しましょう。
契約解除 |
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故意または重大な過失によって、正しい告知がなされていない場合や虚偽の告知をした場合、保険契約自体を解除される場合があります。 契約解除となった場合、それより以前に発生した支払事由についても保険金・給付金は支払われません。ただし、契約解除された際に解約返戻金がある場合、解約返戻金を受け取ることは可能です。 |
取り消し |
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告知義務違反の内容が特に重大な場合は、詐欺行為とみなされて保険契約は取り消しになります。契約取り消しになった場合、保険金の受け取りは不可能となり、支払い済みの保険料は払い戻されません。 |
なお、告知義務違反の時効は保険法で以下のように定められています。
- 責任開始日から5年以内に保険金・給付金の受取事由が発生しなかった場合
- 保険会社が告知義務違反の内容を知ってから1か月以上経過した場合
3-1.告知義務にうっかり違反してしまった場合
生命保険の加入手続きをする中で、自覚なく告知義務違反をしてしまう可能性もゼロではありません。自分が告知義務違反をしていることに気付いた場合、速やかに再度告知を行うことが必要です。まずは生命保険会社の営業担当者やコールセンター、契約者窓口などに連絡し、告知義務違反をしてしまったことを伝えましょう。
正しい内容で再度告知するためには、口頭で伝えるだけでは十分ではありません。生命保険会社の指示に従い、追加告知を行う、生命保険会社指定の医師の診察を受けるなどの対応を行ってください。
4.告知義務違反にならない告知を行うためのポイント
告知義務に違反しない告知を行うためには、以下の3つのポイントを押さえることが大切です。
ありのままの事実を伝える |
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事実を漏れなく正確に記載することで告知義務違反を防げます。告知書に書かれた質問をよく読み、正確に回答することを心掛けましょう。ただし、質問項目にないことまで記載する必要はありません。 |
詳細に記載する |
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告知が必要な項目によっては、記憶があいまいで記入が難しい部分もあるでしょう。
しかし、告知内容は可能な限り詳細に記載する必要があります。記憶がない場合も空欄にはせず、診療報酬明細書やお薬手帳などを確認しながら記入し、健康状態を正しく伝える努力をすることが大切です。
告知書には書き方の指示が細かく記載されています。事前にしっかりと目を通すことで、記載方法で迷う確率を下げられるでしょう。 |
過去の病気は現在の状況も併せて記載する |
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過去に病気に罹患した経験がある方は、病気の現在の状況も記入する必要があります。状況によっては契約内容に特別条件が付されたり、契約を断られたりするケースもありますが、事実を正確に記載しましょう。 |
5.持病があっても入れる保険はある?
一般的に、持病がある方は保険に申し込めないと言われています。しかし、持病があっても入れる保険もあります。持病や既往歴がある方が保険に加入できるケースの1つが、特定部位(疾病)不担保ありで医療保険に加入することです。
特定部位(疾病)不担保ありの契約では、特定の部位または疾病が保障の対象から一定期間外れることになります。例えば、契約以前に胃潰瘍の治療歴がある方が胃を2年間部位不担保に指定した場合、2年以内に胃潰瘍になって入院しても給付金の支払い対象とはなりません。
また、「引受基準緩和型保険」や「無選択型保険」のように、持病があっても入りやすい保険も存在します。引受基準緩和型保険は、一般的な保険に比べて加入基準が緩和されている保険です。
無選択型保険は加入の際に健康状態の告知や医師による診査を必要とせず、引受基準緩和型保険よりもさらに入りやすい保険となっています。
まとめ
生命保険に申し込む場合、保険会社に現在の健康状態や既往歴などの告知を行わなければなりません。もし告知内容に誤りがあり、それが故意・重過失による場合は、契約解除や取り消しといった厳しい対応が取られる可能性があります。
告知義務に違反しないためには、事実を詳細に伝えることが大切です。生命保険に加入してから告知義務を巡ってトラブルにならないように、告知の際には誠意を持って慎重に保険会社に事実を伝えましょう。