死亡保険(生命保険)の解約返戻金って何?

Column

保険の基礎知識
死亡保険(生命保険)の解約返戻金って何?

保険を選ぶ際には約款をはじめとして、支払期間、死亡時に支払われる保険金など、さまざまな要素を比較検討する必要がありますが、忘れてはならないのが「解約返戻金」です。

解約返戻金とは、簡単にいうと契約を解除したときに戻ってくるお金のことです。保険商品によっては支払った金額よりも多い金額が返ってくるプランもあれば、解約時に解約返戻金が戻ってこないプランもあります。一千万円以上の差額が出ることもあるので、損をしないためにもしっかりとシステムについて把握しておく必要があります。

今回はこれから初めて保険を検討する方に向けて、解約返戻金について分かりやすく解説したいと思います。さらに商品ごとの特徴から、資金計画の一環として効率よく貯蓄する方法まで、役立つ情報をご紹介しましょう。

1. 解約返戻金とは?

1-1 解約時に戻ってくるお金

「解約返戻金」(かいやくへんれいきん)とは、保険を解約したときに払い戻されるお金のことです。保険会社によっては「解約払戻金」(かいやくはらいもどしきん)と呼んでいるところもあります。

基本的に保険は長期にわたって加入するもので、短いプランでも10年から、長いものは加入者が死亡するまで続く無期限(終身保険)タイプなどもあります。しかし時間が経てばライフスタイルも変わるもので、ときには保険を変更・見直したり、解約したりする必要も出てきます。

このように、保険契約を解除するときに支払われるお金が「解約返戻金」です。しかし、保険商品によっては今まで支払ってきた保険料以上のお金が返ってくるものもあれば、まったくお金が返ってこないものもあります。なぜ保険によって解約返戻金の有無があるのでしょうか?

1-2 全額が戻ってくるわけではない

解約時に解約返戻金が戻ってくる保険のことを「積立型」、戻ってこない保険のことを「掛け捨て型」と呼びます。お金が戻ってくるのならば積立型の方がお得に見えますが、一概にそうとは言い切れません。

まず掛け捨て型の保険について解説しましょう。

掛け捨て型で徴収される保険料は、保険加入者が死亡した際に支払う「死亡保険料」と、保険会社の運営費に充てられる「付加保険料」の2つで構成されています。

加入者が契約解除する際、死亡時の条件を満たしていないので死亡保険料はでません。また付加保険料も必要経費として消費されているため戻ってきません。これが掛け捨て保険をやめてもお金が戻ってこない理由です。

次は積立型の保険です。

積立型で徴収される保険料は、保険加入者が死亡した際に支払う「死亡保険料」と、保険会社の運営費に充てられる「付加保険料」、そして加入者が生存しているときに支払われる「生存保険料」の3つで構成されています。

加入者が契約解除するとき「死亡保険料」と「付加保険料」については掛け捨て型と同じく戻ってきませんが、生存条件を満たしているので「生存保険料」だけは返ってきます。この生存保険料とその運用によって生じた利益を総称したものが「解約返戻金」です。

積立型保険の解約返戻金について

よくある誤解として、積立型保険では支払った保険料がすべて戻ってくると思われがちですが、保険料のうち「死亡保険料」と「付加保険料」は消費されています。また加入者は「生存保険料」を余分に支払っているわけですから、保険料の負担は掛け捨て型と比べて大きくなります。一概にどちらがお得とはいえません。

1-3 解約返戻金の種類

解約返戻金は、3つの種類に分けることができます。それぞれの特徴を見てみましょう。

・通常型
従来通りに保険料の一部を積み立てるタイプです。3つの分類の中では最も払戻金が多いのが特徴です。また、掛け捨て型保険のなかには、少額の解約返戻金が返ってくるものもあります。

・低解約返戻金型
通常型と比べて解約返戻金を低く抑える代わりに、保険料を安くしたタイプです。満期を迎えれば通常型と同じく、支払った保険料以上のお金が返ってくる場合があります。

・無解約返戻金型
解約返戻金をゼロにすることで、保険料を低解約返戻金型よりも抑えたタイプです。解約しても保険金が戻ってこないことから、法人が支払う場合は損金として計上できます(*1)。

支払われる保険料の金額を比べると、大きい方から通常型、低解約返戻金型、無解約返戻金型という順番になります。

1-4 満期保険金との違い

保険会社から支払われるお金として「満期保険金」というものがあります。満期(契約が切れる日)を迎えたときに戻ってくるお金のことで、「満期金」とも呼ばれます。

解約返戻金と混同されがちですが、

満期保険金:無事に契約期間を終えたときに支払われる生存保険金
解約返戻金:満期前に自ら解約または保険会社から解約された場合にもらえる生存保険金

というように、契約によって定められた期間を満たしているかどうかで名称が変わります。

2. 解約返戻金で損をしないために

2-1 まずは解約返戻金の有無をチェック

保険選びにおいて、解約返戻金の有無は最も重要なポイントのひとつです。保険商品によって解約返戻金が多いものと、少ないものがあります。それぞれどのような保険があるのか見てみましょう。

■解約返戻金が多い保険
積立型の保険は解約返戻金が多い傾向があります。満期を迎えれば投資した金額以上の金額を受け取れるかもしれません。

(1)終身保険
終身保険は生涯にわたって死亡保障される保険ですが、一定期間を超えると解約返戻金が支払った保険料を上回ります。貯蓄性の高い保険といえるでしょう。

(2)養老保険
保険加入者が契約期間中に死亡したときに死亡保険金を、高度障害状態に陥ったときは高度障害保険金をもらえる保険です。生存したまま満期を迎えたときは満期保険金を受け取れます。養老という名前ですが、結婚資金や養育費に充てることも可能です。

(3)子ども保険
子どもの成長段階に応じてお祝い金が出たり、満期時に満期保険金が支払われたりする保険です。 保険加入者に万が一のことがあれば、以後保険料を支払う必要がなくなります。その間も保障は続くので、残された遺族の経済的リスクを軽減できます。

■解約返戻金が少ない保険
掛け捨て型は解約返戻金が出ないケースがほとんどです。保険商品によっては出るものもありますが、積立型と比べると少ない傾向があります。

(1)定期保険
定期保険は積立金を削って保障に特化したタイプの保険であるため、ほとんど解約返戻金はありません。「保障さえあればいい」という方はこちらが向いているかもしれません。

(2)医療保険
医療保険は基本的に掛け捨てですので、解約しても払戻金は出ません。ただし保険会社によっては健康だったときにお祝い金が出たり、満期保険金が出たりするプランもあります。

(3)収入保障保険
保険加入者に万が一のことがあったときに、年金のように毎月保険金が支払われる保険です。子ども保険と似ていますが、こちらは満期保険金をなくすことで月々の保険料を割安にしているのが特徴です。

このように、すべての保険で解約返戻金が発生するわけではありません。また、同じタイプの保険であっても、保険会社やプランによって受け取れる金額が異なるので、注意してください。

気をつけたいのが、「特約をつけすぎると元金割れする可能性がある」点です。たとえば死亡保障と貯蓄が一緒になった養老保険の場合、死亡保障のほかに入院特約や特定疾病特約などの医療保険を付帯すると、戻ってくるお金が少なくなってしまうことがあります。

もちろん保障を手厚くしたい場合には有効ですが、貯蓄をメインに考えているときは特約を外してスマート化する方法もあります。

2-2 早期に解約するとペナルティが発生する

満期保険金が出る保険では、満期前に契約解除すれば解約返戻金を得られることがほとんどです。ただし、契約中には死亡リスクに対する保障サービスが提供されていたため、この部分については戻ってきません。保険料のうち解約返戻金として戻ってくるのは「積立金から解約控除を差し引いたお金」です。

解約控除とは、保険契約によって発生した未回収の費用です。

保険に加入する場合、審査の費用、手数料、保険の維持費、集金費用など、さまざまなコストが発生しています。これらのコストは月々の保険料から少しずつ回収しているのですが、保険契約者がすぐに解約してしまうとこれらの経費が回収できなくなってしまいます。保険会社は保険料の積立金部分から、未回収費用を解約控除として差し引いたのちに「解約返戻金」として返還しています。つまり、ペナルティが発生するわけです。

積立型の保険はもともと満期まで加入することを前提としているため、早期に解約するほどペナルティは大きくなり、戻ってくる金額は減ってしまいます。いわゆる元本割れ(投資した金額よりも受け取る金額が少なくなってしまうこと)が起こる可能性があるので、注意しましょう。

⇒保険の見直し時の解約返戻金や満期保険金についての注意点はこちらにも!

2-3 返戻金をアップさせる裏ワザ

満期前に解約した場合、ペナルティが発生するために受け取れる金額が少なくなってしまうことを解説しました。

しかし、なかには「保険を見直したい」「もっといい保険が見つかった」「保険料を払い続けるのが難しくなった」など、やむをえない理由で解約することもあります。そのような場合は保障期間を短縮してみてはどうでしょうか。

保険の保障期間を短くするということは、満期が早まるということを意味します。短縮した期間まで待てるのならば、本来の金額と比べると目減りしますがペナルティのない「満期金」を受け取れます。

今すぐ解約したいという場合でも、積み立てに必要な金額が変わっているので、期間短縮によって生じた差額分については手数料がかからなくなります。

ただし、短縮できる期間が短い場合は、あまり効果がありません。また、契約によって期間を短くできない場合などもあります。しかし、もし保障期間の短縮が可能ならば、いったん検討してみてはいかがでしょうか。

このように、ちょっとした工夫をすることで、解約返戻金が増える可能性があります。不要だからとすぐに解約するのではなく、まずは保険会社やファイナンシャルプランナーに相談することが大事です。

保険見直し本舗も保険の専門家としてコンサルティングアドバイザーがご相談を承っております。webまたはお電話にてご予約、またはご来店いただければ詳しくお話をお伺いいたします。ぜひお気軽にご予約ください。

⇒無料保険相談を上手に活用するための厳選ポイントはこちら

3. 低解約返戻金型はお得?

3-1 低解約返戻金型とは

1-3「解約返戻金の種類」でも軽く触れましたが、低解約返戻金型とは、従来のプランと比べて解約返戻金を減らすことで月々の保険料を抑えた保険のことです。

保険加入者のメリットは、「小さな負担で大きな死亡保障を受けられるところ」です。家計への負担を抑えつつ、万が一の死亡保障として機能します。あくまで低解約返戻金が低いプランというだけで、保障内容も通常タイプとほとんど変わりません。

また、「通常型と比べて返戻率が高い」というメリットもあります。

低解約返戻金型では、満期を迎えれば通常型の解約返戻金を受け取れます。少ない投資で大きなリターンが望める保険です。戻ってきたお金は、子どもの大学資金に充てたり、老後の資金として活用したりもできるため、「子ども保険」や「養老保険」の代わりとしても活用できます。現在のような低金利時代にはうれしい保険です。

このように幅広い運用ができるので、現在では多くの保険会社が主力商品のひとつとして低解約返戻金型保険を販売しています。「保険料を節約したいけれど保障は減らしたくない」という方に向いている保険といえるでしょう。

3-2 低解約返戻金型の注意点

保険の契約者にとって多くのメリットがある低解約返戻金型保険ですが、いくつか注意しなければならない点があります。加入の際には以下の点に気をつけてください。

(1)中途解約に弱い
低解約返戻金型保険は、通常型の保険と比べて返戻金の金額が少なくなっている保険なので、満期前に解約すると元本割れを起こす可能性が高くなります。どれくらい目減りするかは保険会社やプランによって異なるので、加入前には必ずチェックしておきましょう。

満期まで加入すれば大きなメリットを得られる一方で、「将来的に保険を見直す可能性がある場合」「保険料を支払えなくなる可能性がある場合」はリスクが高い保険です。加入者によっては解約返戻金が減額されない通常型のほうが向いていることもあります。

(2)インフレに弱い
低解約返戻金型保険は、金利が固定されている商品です。将来的にインフレが進むと金銭の価値が下がりますが、受け取れる金額は契約時の金利に準じたものですから、資産形成において不利になる可能性があります。当初予定していた教育資金や老後資金に満たないということもあるので注意しましょう。

インフレに備える場合は、市場の動向に応じて利率が変わる「積立利率変動型保険」に加入する方法があります。世の中の景気がよくなれば満期保険金や解約返戻金が増えますが、逆に景気が悪くなっていれば通常型よりも受け取れる金額が下がるリスクもあります。

低解約返戻金型は収入や雇用が安定しており、満期まで確実に払えるならばメリットが大きい保険です。ただし、中途解約やインフレに弱いという弱点も存在します。保険全般にいえることですが、保険はすべて一長一短です。「お得」な保険は人によって異なります。

いざというときに困らないためにも、保険選びの際には各商品の強み・弱みを知ることが大切です。

まとめ:解約を考えていない人も「解約返戻金」を要チェック

保険料は、保険加入者が死亡した際に支払われる「死亡保険料」と、保険会社の運営費として徴収される「付加保険料」、そして積立金である「生存保険料」の3つで構成されています。このうち「死亡保険料」と「付加保険料」は掛け捨てになりますが、解約時に加入者が生きていれば「生存保険料」が返却されます。

このときに戻ってくる生存保険料から手数料などを差し引いたものが解約返戻金です。これから保険を探そうというときに、やめるときのことを考えなければならないというのも変な話ですが、保険選びの際には極めて重要なポイントとなっています。

終身保険のように満期が設定されていない保険を除くと、解約返戻金は支払った保険金よりも少なくなることがほとんどです。

しかし、契約して10年20年と時が経てばライフスタイルも変わります。「子どもが生まれたから保険契約を見直したい」「もっといい保険に乗り換えたい」「保険が必要なくなってしまった」など、やむをえない事由で解約することもあるでしょう。契約によっては数百万円単位の差が出ることもあるので、今現在解約する予定がない人でも解約返戻金の項目をチェックする必要があります。

また、解約返戻金があるからといって「お得な保険」とは言い切れません。お金が戻ってこない掛け捨て型保険と比べて積立金分を余計に払わなければならないので、月々の保険料が多くなってしまうためです。「生命保険料を抑えたい」「貯蓄は自分でやるから大丈夫」という方ならば、解約返戻金のない保険の方が安上がりになるケースもあります。

このように、保険は加入者によって向き不向きが変わってきます。ライフプランにあった保険をしっかりと選ぶことが大事ですので、保険見直し本舗までお気軽にご相談ください。

「種類と内容が豊富すぎて、結局何を選べばいいのか分からない」となってしまいがちな保険商品のなかから、お客様に最適なプランを保険のプロフェッショナルとして、コンサルティングアドバイザーがご紹介させていただきます。