生命保険でお金を借りられる!?契約者貸付制度の仕組みと注意点

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保険の基礎知識
生命保険でお金を借りられる!?契約者貸付制度の仕組みと注意点

まとまったお金が必要になったとき、保険に加入しているのならば解約することで解約返戻金を受け取ることもできますが、代わりに保障はなくなってしまいます。「お金は必要だけど解約するのは不安……」とお悩みの方は、「契約者貸付制度」を利用してみてはいかがでしょうか。当制度を利用すれば保険を解約せずにお金を借りられるのです。

金融機関よりも低い金利で借り入れできるので保険加入者にとってもメリットが大きいのですが、お金を借りているという点では変わりません。便利だからと利用しすぎると、本当に大切なときに保険金が下りないというトラブルに繋がることもあります。

今回は「契約者貸付制度」における基本的な説明と、利用する前の注意点についてご紹介したいと思います。これから契約者貸付制度の利用を考えている方は、ぜひ一度目を通してみてください。

1. 契約者貸付制度とは?

1-1 契約者貸付制度

契約者貸付制度とは、解約返戻金の一部を保険会社から借り入れできる制度のことです。

積み立て中のお金は契約者のものですが、満期保険金として支払われるまでは保険会社のお金となっています。それを切り崩すわけですから、保険会社からの「借金」という扱いです。制度を利用する方法は保険会社によって異なりますが、主に以下のような方法があります。

(1)店頭で申し込む
保険会社の店頭窓口で直接申請する方法です。本人確認のための印鑑や保険証などが必要になることもあるので、事前に電話などで問い合わせておくと安心です。

(2)担当者・コールセンターに問い合わせる
保険の担当者またはコールセンターに問い合わせると、手続き用の書類が送られてきます。必要事項を記入したあと、店頭へ持ち込むことで契約が完了します。

(3)電話による自動取引
保険会社によっては契約者貸付制度を利用できる専用電話番号が用意されています。IDやパスワードなどを入力するだけで口座にお金が振り込まれます。

(4)ホームページから申請する
保険会社によっては契約者貸付制度を利用できる専用のウェブサイトが設けられています。IDやパスワードを入力することで借り入れおよび返済が可能です。フィッシング(詐欺)サイトによる被害もあるので、必ず保険会社の公式ページから申請してください。

(5)ATMを利用する
銀行や郵便局、コンビニなどのATMから直接引き出すことができます。専用カードと暗証番号を入力するだけで借り入れおよび返済が可能です。

保険会社によっては窓口のみで受け付けを行っているなど、借り入れ・返済方法が指定されていることもあります。それぞれ利用可能な金額も異なるので注意してください。また、利率は各保険会社がホームページにて掲載していますが、金融情勢などによって変動することもあります。利用する際は、利率が変わっていないかチェックしておくと安心です。

1-2 同制度の利用条件

契約者貸付制度が利用できるのは、終身保険や養老保険などの「解約返戻金」がある保険に限られています。解約返戻金とは、保険を解約したときに支払われるお金のことで、保険会社によっては「解約払戻金」と呼ばれることもあります。

保険料は、死亡時に支払われる「死亡保険料」、保険会社の手数料となる「付加保険料」、そして生存しているときに受け取れる積立金「生存保険料」で構成されています。

このうち死亡保険料と付加保険料は戻ってきませんが、解約時に保険加入者が生存している場合は要件を満たしているので生存保険料は戻ってきます。この金額からさまざまな経費を差し引いて戻ってくるのが、解約返戻金です。

契約者貸付制度は、この解約返戻金を元手に借り入れする制度です。一般的な定期保険や、無解約返戻金型保険など、生存保険料を徴収していないタイプの保険では利用することができません。

ただし、解約返戻金が出る保険であっても、プランによっては同制度を利用できないケースもあります。詳しくは、保険会社の窓口やコールセンターにお問い合わせください。

1-3 利息について

契約者貸付制度は、保険会社から借金をしている状態のため、借入金額に応じて利息が発生します。利率は「制度の対象となる契約における契約日」によって決まります。借り入れをする時点の利率ではないので、気をつけましょう。

貸付金の利息は、借入日から発生します。利息が返済されない場合、1年後の借入日に残った利子は元金へ繰り入れられ、その金額に対して新たに利息が発生します。

2. 契約者貸付制度のメリット

2-1 保険を解約する必要がない

積立型の保険を解約した場合、今まで支払った金額から保険金に充てられる保険料や手数料などを除いた金額が返還されます。これを「解約返戻金」といいます。解約払戻金についてまとめた別の記事もありますので、詳しくはそちらもご確認ください。

⇒死亡保険(生命保険)の解約返戻金って何?

どうしてもまとまったお金が必要になったときは保険を解約して、解約返戻金を資金に充てることを考える方も多いのではないでしょうか。これは今まで自分が積み立ててきたお金を受け取るということなので、借金をするわけではありません。ただし、保険を解約することで以下のような問題が生じます。

(1)保障がなくなってしまう
保険を解約すると、当然のことですが保障がなくなってしまいます。いざというときのリスクに対応できなくなってしまう可能性もあるので、注意しましょう。

(2)再加入時のリスク
解約後、新たに保険に加入するときは年齢に応じて保険料が高くなってしまいます。また、健康状態によっては加入を断られてしまうこともあるので要注意です。特に高齢の方や、大きな病気をした方は慎重に考える必要があります。

(3)元金割れの可能性がある
積立型の保険は、満期になると支払ったお金よりも多いお金が戻ってくることがあります。 満期前に解約してしまうと、手数料などが差し引かれ、投資した金額よりも少なくなってしまうケースがほとんどです。

しかし、契約者貸付制度ならば、保険を解約せずに解約返戻金の一部を受け取ることができます。「お金が必要だけど保険を解約したくない」という方に便利な制度です。

2-2 カードローンと比べて金利が低い

まず契約者貸付制度のメリットとしてあげられるのが、カードローンと比べて利率が低いという点です。契約者貸付制度の利率は保険会社や金額などにもよりますが、おおむね2~6%前後になっています。カードローンと比べると利率が低いため、急にお金が必要になったときに便利です。

ただし、契約者貸付制度は解約返戻金の一部を借りるというシステムですから、保険に入りたてで積立金がほとんどない状態だと、利用できないことがあります。

2-3 返済の自由度が高い

一般的なキャッシングやローンでは、分割払いにした場合、月々の返済日に少しずつ借金を返していきます。しかし返済日に支払うお金がないことから、ほかの金融機関からお金を借りて返済に充てるという「負のスパイラル」に陥ってしまうこともあるようです。

一方、契約者貸付制度では借入金額が解約返戻金以下ならば返済方法は自由となっています。まとまった金額が入ったときなど、返済計画を比較的自由に立てられるのが魅力です。

3. 契約者貸付制度を利用する上での注意

3-1 保険が失効または解除される可能性がある

保険を解約しなくとも解約返戻金の一部を借り入れできる契約者貸付制度。多くのメリットがある一方で、リスクも伴います。なかでも注意したいのが、「保険が失効または解除される可能性がある」という点です。

保険会社の本業は、保険商品を介してさまざまなリスクから契約者を保障することであって、お金を貸すことではありません。したがって、契約者貸付制度で借りられるのは解約返戻金額の範囲内にとどまります。元利金(借りているお金と利子を足したもの)が解約返戻金を超えた場合、たとえ保険料を支払っていたとしても保険契約が失効、または解除される可能性があるので注意してください。

なかでも気をつけたいのは、利子が解約払戻金を超えてしまうケースです。利子には大きく分けて「単利」と「複利」の2種類があります。それぞれの違いについて見てみましょう。

■単利
元本に対して利子を決める方法です。 たとえば年利5%で100万円を借りたとき、1年目の利子は元金100万円×0.05=5万円となります。2年目も同じで、元金100万円×0.05=5万円、3年目も100万円×0.05=5万円と、完全に返却するまで5万円ずつ利子が発生します。これが「単利」です。

■複利
元本に利子を加えた金額を元に次の利子を決める方法です。たとえば年利5%で100万円を借りたとき、1年間の利子は元金100万円×0.05=5万円です。この年のあいだ利子分を返さなかった場合、2年目には合計105万円を借りていることになり、この金額に対して新たに年利5%が発生します。

つまり、2年目の利子は105万円×0.05=5.25万円となります。この年も利子分を返さなかった場合、3年目は110.25万円に対して年利5%がかかり、利子は約5.5万円となります。これが「複利」です。

1-3「契約者貸付制度の利息について」でも触れましたが、契約者貸付制度の多くは複利を採用しています。解約返戻金と同額を借りると利子が発生した時点でオーバーしてしまうため、限度額は「解約返戻金の一部」となっているわけです。

しかし、返済をまったくしないでいると利子が雪だるま式に大きくなり、解約返戻金を超える可能性があります。「気づいたら返済できない額になっていた」ということにならないためにも、借りっ放しにならないように必ず注意するようにしてください。

3-2 保険金やお祝い金などが返済に充てられることがある

契約者貸付制度はATMからお金を引き出すように借りられ、また口座に入金するように返済できる気軽さが魅力といえます。しかし、同制度を利用しているときに保険金・生存給付金・お祝い金などの支払いがある場合、そのお金が返済に充てられる可能性があります。

たとえばがんが発覚して高額な医療費が発生したとき、また子どもの高校入学に伴い多くの教育費が必要になったとき、出ると思っていたお金が全額返済に充てられたらどうなるでしょうか。特に後者は子どもの将来にも関わる大きな問題です。

本当に必要なときに保障の恩恵を受けるためにも、「車を買い換えたい」「お風呂をリフォームしたい」「海外旅行に行きたい」などの希望があっても貯蓄で対応できるときは極力使わず、「もはや保険を解約するしかない」というときまで残しておきましょう。

3-3 お宝保険ほど金利が高い

保険会社は保険加入者から預かった貯蓄金を運用して、契約時に定めた予定利率分を還元しています。貯蓄型保険が満期を迎えた際に、支払った保険料より多くもらえることがあるのはこのためです。しかし金利低下が続く現在、国債などの運用によって利益を出しづらくなったことにより、予定利率が1%を下回る保険商品も目立つようになりました。

かつてバブル期のように景気がいいころには予定利率は今よりもずっと高く、平成元年ごろの予定利率は6%台という高水準でした(*1)。

この高金利時代の保険商品は保険料が安く、またリターンも大きいことから、いわゆる「お宝保険」と呼ばれています。特に平成元年以前に加入した保険は予定利率が高く、保険金や解約返戻金が多いのが特徴です。

このように保険加入者にとってメリットが多い「お宝保険」ですが、契約者貸付制度においては、その高い利率が裏目に出てしまいます。なぜなら契約者貸付制度の利率はお金を借りたときの利率ではなく、保険加入時の利率がベースになるためです。

利率が高いといってもそれは現在の低金利タイプの保険と比べてのことで、カードローンなどの利率と比べると低い利率といえます。ただし、前述したように契約者貸付制度の多くは「複利」です。利率が大きいほど金利も増えていくため、同制度を利用するときは特に注意してください。

3-4 引き落としを前提にする場合はほかの選択肢も

契約者貸付制度は便利な制度ですが、多用しすぎると保険が解除されてしまうなどリスクも生じます。もし積み立てているお金を自由に使いたいという場合は、以下のような保険がふさわしいかもしれません。

(1)アカウント型保険
アカウント型保険とは、アカウント(自由に運用できる積み立て部分)のある保険のことです。保険料を支払うことで保障の恩恵を受けつつ、積み立てもできるのは積立型保険と同じですが、いわゆる銀行口座のように積み立て部分を自由に引き出したり、逆に資金を投入したりすることができます。

(2)保険金などを据え置くことができる保険
保険商品のなかには保険金・配当金・お祝い金などを受け取らずに、そのまま積み立てられる保険もあります。これらのお金には所定の利率が付き、必要なときは自由に引き出せます。これらのお金に関してはもともと受け取れる権利を有しているため、契約者貸付制度のように返済する必要はありません。

このように積み立て部分を自由に引き出せるタイプの保険プランも存在します。柔軟に資産運用をしたい場合は、これらの保険に加入するのもひとつの選択肢といえるでしょう。

まとめ:いざというときの契約者貸付制度

契約者貸付制度は、保険会社から解約返戻金の一部を借りられる制度です。保険を解約することなく、今まで積み立てていたお金を利用できます。一見すると便利なサービスですが、以下のようなデメリットも存在します。

(1)生命保険が失効または解除される可能性がある
元利金(借りているお金と利子を足したもの)が解約返戻金を超えてしまった場合は、保険料を支払っていたとしても契約が失効または解除される可能性があります。

(2)保険金やお祝い金などが返済に充てられることがある
契約者貸付制度でお金を借り入れていた場合、本来受け取れるはずだった保険金やお祝い金などが返済に充てられることがあります。

(3)お宝保険ほど金利が高い
契約者貸付制度の利率は借り入れ時ではなく、保険加入時期の利率によって算出されます。 利率が高い「お宝保険」ほど金利が高くなるので注意しましょう。

契約者貸付制度では「複利」が採用されているため、雪だるま式に利子が増えていきます。借り入れたお金をすぐに返すのならば大きな問題に発展することはありません。しかし借りっ放しにしていると、いざというときに保障の恩恵を受けられなくなってしまう可能性があります。

「マイカーの購入」「海外旅行の資金」など貯蓄で対応できるときはなるべく利用せず、あくまで最後の手段とお考えください。

いかがでしたか。保険についてお悩みの際は、保険のプロのコンサルティングアドバイザーが多数在籍している保険見直し本舗を是非ご利用ください。もちろん、何度相談しても無料です。お気軽にご利用ください。