変額保険とは? メリット・デメリットと賢い活用方法を解説!

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保険の基礎知識
変額保険とは? メリット・デメリットと賢い活用方法を解説!

「自分に万が一のことが起こった際に家族にお金を残したい」と思ったとき、ほとんどの方が考えるのが「死亡時や高度障害状態になった場合、〇千万円支払われる」という終身保険や定期保険への加入ではないでしょうか。

しかし、死亡時の保険は終身保険や定期保険だけではありません。運用によって保険金額が増減するタイプの商品もあるのです。今回は、運用次第で保険金の受取金額が変わる「変額保険」の特徴や、メリット・デメリットについてご紹介します。

1.変額保険とはどんな保険?

変額保険とはどのような保険なのか詳しく解説していきます。受取金額がどのようにして決まるのか、そして運用方法についてもチェックしておきましょう。

1-1 変額保険の受取金額について

変額保険とは、受け取る死亡保険金、満期保険金、解約返戻金の金額が運用実績によって変化する保険です。

ただし、受取金額のすべてが常に運用実績によって左右されるわけではありません。死亡保険金のみ「最低保証金額」が定められているため、運用実績が良くなかった場合でも一定金額の支払いは保証されています。反対に運用実績が良ければ、最低保証金額に上乗せして保険金が支払われるということです。

変額保険のうち満期が定められている有期型(詳細は後述)の場合は、生存して満期を迎えると満期保険金が支払われます。この場合は最低保証金額が設定されていませんので、受取額は運用実績によって増減し、払い込んだ保険料の合計金額を下回ってしまう可能性があります。

同様に解約返戻金にも最低保証金額はありません。この点はよく確認しておきましょう。

1-2 変額保険の運用について

変額保険の保険料(保険金原資)は「特別勘定」で運用されています。ちなみに終身保険や定期保険は「一般勘定」での運用です。特別勘定と一般勘定の違いは以下の通りとなっています。

  • <特別勘定>
  • ●比較的リスクのある金融商品(投資信託など)で運用する
  • ●保険金原資は他の種類の保険商品とは別に運用されている
  • ●運用実績に応じて将来の受取金額が変動する
  • ●投資信託の「運営費用」や「信託報酬」が定期的に保険料や積立金から控除される

変額保険の場合、「日経平均連動型」「世界株式型」など、保険会社が提示する運用方針の中から契約者が好きなものを選ぶことができます(この運用方針自体を「特別勘定」と呼ぶこともあります)。選ぶ運用方針によって、値動きのリスクや運用実績が変わるため、申し込む際は金融や経済の知識もある程度必要と言えるでしょう。

  • <一般勘定>
  • ●比較的に安定している金融商品(公社債など)で運用する
  • ●元本が保証されている
  • ●あらかじめ利率が定められている

一般勘定で運用を行う保険商品の場合は、契約者が運用方針を選ぶことができません。すべて保険会社にお任せとなりますが、利率は前もって契約者に約束されているため、どのくらいの保険金額をもらえるかは申込前から明らかにされています。

また、元本も保証されており、運用リスクは保険会社が負うため、特別勘定ほど資産運用に関する知識は身につけていなくてもいいでしょう。

1-3 保険料の払い込み方法について

保険料の払い込み方は、保険期間全体の保険料を一括で支払う「一時払い」、一定期間分をまとめて支払う「前納」以外に、「年払い」「半年払い」「月払い」も選択できます。

ただし、保険会社によっては「一時払いのみ」などに限定されている場合もあります。保険料をまとめて支払うことができない、という人は、月払いや半年払いができる商品を選びましょう。

2.変額保険の3つのタイプ

変額保険には3つのタイプがあります。それぞれ保障期間や保険金を受け取るタイミングが違いますので、よく確認してください。

2-1 終身型変額保険

終身型変額保険(保険料一時払い)のイメージ

変額保険の終身型では、死亡保障と高度障害保障が一生涯続きます。ただ、注意しておきたいのが、これらの保険金額についてです。特別勘定で運用するため、運用実績次第で受取金額が増減します。

とはいえ、最低保証金額(基本保険金)は決まっているので、運用実績が良くない場合でも受取金額が大幅に少なくなる=「元本割れする」という懸念は不要です。

しかし、途中解約の際に戻ってくる解約返戻金には最低保証金額が定まっていないため、注意が必要です。運用実績によっては払い込んだ保険料を下回ることもあるので、解約はなるべくしないことをおすすめします。

また、契約後10年以内の解約など、一定期間内の解約の場合、解約の手数料として解約控除が差し引かれる場合もあります。どうしても解約をせざるを得ない時は、この控除についても確認しておきましょう。

2-2 有期型変額保険

有期型変額保険(保険料一時払い)のイメージ

有期型は、「60歳まで」「70歳まで」など保険期間が決まっている変額保険です。保険期間内に死亡または高度障害状態になった場合の死亡保険金に最低保証額が定められている点、運用実績に応じて保険金が増減する点は終身型と同じです。

ただし、満期保険金と解約返戻金には最低保証金額が設定されていないところは気を付けておきましょう。満期や解約の時点で運用実績が悪いと、払い込んだ保険料よりも受取金額が低くなる可能性もあります。

また、終身型と同じく、一定期間内の解約の場合、解約控除が差し引かれるケースがあることに留意しておきましょう。

2-3 変額個人年金保険

変額個人年金保険のイメージ

変額個人年金保険は、年金形式(終身年金または確定年金)で保険金が受け取れる保険商品です。変額保険と同じように特別勘定で運用され、運用実績次第で死亡給付金・高度障害給付金や将来の年金額が増減します。

なお、運用期間終了後に受け取る年金額と、死亡給付金・高度障害給付金は、最低保証金額が定められている商品と定められていない商品に分かれます。もし、運用実績が悪かった場合、将来受け取れる年金額に関わるため、加入時には必ず確認しましょう。

また、解約返戻金には最低保障金額がなく、解約時に受け取れる金額も運用実績によって変わります。運用実績次第で払い込んだ保険料よりも解約で受け取る金額が少なくなる可能性もあります。この点にも注意しておきましょう。

なお、変額個人年金には、運用実績に応じて最低保証金額を引き上げるものや、特定勘定で運用をしつつ年金を受け取るものなど、さまざまなタイプがあります。定額個人年金との違いを含めて、以下の記事で詳しくご紹介しています。

⇒変額個人年金保険とは?他の個人年金保険との違いは?

最後に、それぞれのタイプ別に最低保証の有無をまとめておきます。

変額保険
終身型
変額保険
有期型
変額
個人年金保険
死亡・高度障害給付金 あり あり 商品による
満期保険金 なし
年金 商品による
解約返戻金 なし なし なし

3.変額保険のメリット

前章で3つの種類の変額保険について見ていきました。では、変額保険にはどのようなメリットがあるのでしょうか。順番にチェックしていきましょう。

3-1 死亡保険金の最低保証がある

変額保険は、運用実績次第で受取金額の増減がありますが、死亡保険金・高度障害保険金については運用実績に関わらず最低保証金額が決まっています。そのため、払い込んだ保険料よりも保険金額が少なくなるという事態は起こりません。

もちろん、運用実績が良かったら、それだけ受け取れる保険金額は多くなります。他のリスク性金融商品で運用するのに比べて、変額保険ではさらに保障が上乗せされていますので、その分メリットがあると言えるでしょう。

3-2 インフレリスクに強い

たとえば、物価が毎年1%ずつ上昇しているのに、預金金利が0.1%しか付かないとしたらどうなるでしょうか。物価の上昇のペースに金融商品(この場合は預金)の価値が付いて行っていないということになり、相対的に金融商品の価値が下がってしまいます。これがインフレ(インフレーション)と呼ばれる現象です。

インフレリスクのイメージ

金利(利息)が付かない手元現金やタンス預金、超低金利の預貯金はインフレリスクに弱い金融商品と言われています。

一方で、株式投資信託はインフレリスクに強い金融商品とされています。これは、物価が上がると企業業績も上がることが期待でき、株価にも良い影響があると考えられているためです。つまり、こういった金融商品で運用される変額保険もインフレリスクに強いと言えます。

「預金だけでは資産を増やせるのか不安」「将来インフレになるかもしれない」と考えるのならば、変額保険で資金の運用をするのも、資産作りの一つの手段としておすすめです。

3-3 生命保険料控除が受けられる

医療保険や終身保険と同様に、変額保険も一般生命保険料控除の対象となります。支払った保険料に応じて税金が安くなるため、お得と言えるのではないでしょうか。

なお、保険料が月払い、半年払い、年払いの場合は、毎年生命保険料控除の手続きを行えますが、一時払いに限り保険料を払い込んだ年度のみが控除対象となります。翌年度以降は控除手続きができませんので気を付けましょう。

3-4 証券口座を開設する必要がない

「預貯金より高い利益を得られそう」といった理由から、証券投資に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。しかし、株式や投資信託を購入する際は、証券会社や銀行に専用の証券口座を開設しないといけません。

一方、変額保険は株式等で運用していますが、証券口座を開設する必要はありません。口座を開く手間をかけずに株や投資信託で資産運用できるのは、変額保険の大きなメリットと言えます。

3-5 運用中は課税されない

証券会社などで株式や投資信託の運用を行った場合、少額投資非課税制度の「NISA」や「つみたてNISA」を使わない限り、通常は運用益や配当金・分配金に20.315%の税金がかかります。しかし、変額保険の運用中は税金がかかりません。

運用中に出た利益への課税は受取時に繰り延べされるため、税金の負担なく資産運用したいと考えている人にもメリットをもたらします。ただし、解約返戻金や満期受取金を受け取る際は所得税(一時所得扱い)や住民税がかかることに留意しておきましょう。

4.変額保険のデメリット

死亡保険金には最低保証がある、インフレリスクに強い、などの変額保険のメリットをチェックしてみましたが、当然デメリットもあります。こちらについても、必ず確認するようにしてください。

4-1 さまざまな手数料がかかる

変額保険には、以下のような手数料がかかります。

諸費用 費用の詳細
契約関連費用 契約時の初期費用、契約維持・管理のための費用 など
資産運用関連費用 信託報酬、信託事務関連の費用、特別勘定の運用費
解約控除 契約日から一定期間(10年など)の解約の際に差し引かれる費用
出典:生命保険文化センター「Q.投資性の強い生命保険とは?」をもとに作成(*1)

これらの手数料は、保険料や積み立てた金額の中から差し引かれます。変額保険は、一般の保険商品や投資信託よりもコストがかかることがデメリットと言えるでしょう。

4-2 投資信託に比べると利回りが悪い

変額保険を投資信託のように、資産運用の一手段として利用したいと考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、変額保険には投資信託にはない「保障」の部分があるため、この保障に関するコストも保険料に含まれているのです。

結果として、変額保険は、投資信託に同程度の金額を投資する時よりも利回りが悪くなってしまいます。「保障はいらない、資産運用だけしたい」というならば、株式や投資信託への投資だけに専念するのがベストだと言えるでしょう。

4-3 運用実績によっては損をする可能性も

変額保険は運用実績によって受取金額が変わります。死亡保険金と高度障害保険金部分については、最低保証額が決まっているため損をすることはありませんが、満期保険金や解約返戻金については最低保証額がありません。よって、払い込んだ保険料の総額よりも受取金額が少なくなる可能性もゼロではないのです。

運用方針など、ある程度契約者が決めていることもあり、運用についてのリスクは契約者自身が負わないといけないということを覚えておきましょう。

また外貨建ての変額保険の場合、株式や投資信託の運用実績が良くても、為替の動きによっては損失が出ることもあります。為替リスクについても知っておいてください。

5.変額保険に向いている人・向いていない人

変額保険とはどのようなものか、そしてメリットとデメリットについて解説しました。ご紹介した通り、変額保険には価格変動リスクはありますが、運用次第では予想以上の利益を得ることも可能な保険商品です。

これから積極的に資産を増やしたいという人にもピッタリですが、向き不向きもあります。以下の項目をチェックしてから変額保険への加入を検討してください。

  • <変額保険に向いている人>
  • ・死亡保障も欲しいが、投資信託などで積極的に資産運用もしたい人
  • ・将来の保険金や年金をなるべく増やしたいと考えている人
  • ・運用益の非課税で効率よく再投資したい人
  • ・投資経験があり、投資のリターンとリスクを十分に理解している人
  • ・経済状況や金融商品についてある程度詳しい人
  • <変額保険に向いていない人>
  • ・変額保険の仕組みがよく分からない人
  • ・既に手厚い死亡保障に加入している人
  • ・受け取るお金の元本割れを絶対に避けたい人
  • ・投資経験がなく、投資のリターンやリスクについて理解していない人
  • ・経済状況や金融商品に興味・関心がない人

どちらに当てはまったでしょうか。変額保険は、通常の終身保険や定期保険よりも複雑な仕組みの商品です。加入を検討する中で不明な点があれば、必ず保険会社に確認するようにしてください。

まとめ:変額保険はリスクを知ってから検討しましょう

少しでも将来のお金を増やしたいという人にとって、株式や債券、投資信託での資産運用は非常に有効な手段です。その中でも変額保険を選べば、死亡時の保障を備えながら資産運用もできます。

しかし変額保険は、運用次第では想定よりも受取金額が減る可能性もあります。メリットは多くありますが、リスクも少なからずありますので、必ず商品内容を把握した上で申し込むように注意しましょう。