変額個人年金保険とは?他の個人年金保険との違いは?

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保険の基礎知識
変額個人年金保険とは?他の個人年金保険との違いは?

将来もらえる年金についてどう考えていますか。「今の水準よりも受け取る額が少なくなるのでは?」「数十年後は年金をもらえるのかどうかさえも不安」とは思っていませんか。

これからの時代、公的年金制度だけは老後の生活には足りないといわれており、自分で老後の生活資金を作ることも考えないといけません。そこで、老後の資金作りの一つとして「変額個人年金保険」をご紹介します。

どのような種類や特徴があるのか、そして他の個人年金保険との違いについても確認していきましょう。

1.変額個人年金保険の概要と押さえておきたいポイント

1-1 変額個人年金保険とはどんな保険?

変額個人年金保険は、保険料の運用実績に応じて、将来受け取る年金額や解約返戻金額が増減する保険です。

変額個人年金保険のイメージ

この変額個人年金保険を含む変額保険全般は、他の保険商品とは別の「特別勘定」で運用され、国内外の株式や債券が主な投資先となっています。安定的といわれる公社債を投資先とする「一般勘定」で運用される他の多くの保険商品と比べ、価格変動リスクが高いといえます。

そのため、運用実績が好調な場合は、想定よりも高い年金額を受け取ることができますが、運用実績が不調だった場合は、年金受取額が少なくなる、もしくは元本割れをする可能性もあります。この点には、十分注意をしておきましょう。

なお、老後の資金準備に目的を限定していない、死亡保険と資産運用を兼ね備えた「変額保険」については、以下の記事で詳しくご紹介しています。

⇒変額保険とは? メリット・デメリットと賢い活用方法を解説!

1-2 契約時に必ず確認したい3つのポイント!

変額個人年金保険に加入する際には、確認しておきたいポイントが3つあります。

●死亡保障
変額個人年金保険は、万が一年金受け取りよりも前に亡くなってしまっても死亡給付金が支払われるのが特徴です。この死亡保障は、商品によって最低保証金額が設定されている場合と、されていない場合があります。

●年金の受取金額
年金の受取金額には、基本的に元本保証はありませんが、元本保証される商品もあります。なお、積立期間が終わった後は、一般的には特別勘定から一般勘定に移して運用されるため、受け取れる年金額は確定します。一方で、積立期間終了後も特別勘定で運用されるタイプもあります。

●保険料の払い込み方法
多くの商品で一時払いを基本としていますが、月払いや年払いも選ぶことができます。一時払いの場合、1年間で払い込んだ保険料に応じて税金が差し引かれる「生命保険料控除」の対象となるのは初年のみです。

1-3 年金の受け取り方にもバリエーションがある

年金の受け取り方法も、商品によって以下のように決まっているため、商品を選ぶ際は必ず確認してください。

  • 確定年金:5年や10年など、年金の受取期間が決まっている。年金の受取期間中に亡くなった場合は、一時金や残りの年金が遺族に支払われる
  • 保証期間付有期年金:5年や10年など、年金の受取期間が決まっている。年金の受取期間中に亡くなったとしても、一定の保証期間内は遺族に年金が支払われる
  • 保証期間付終身年金:被保険者が生存している限り年金は支払われる。年金の受取期間中に亡くなったとしても、一定の保証期間内は遺族に年金が支払われる

1-4 変額個人年金保険は運用コストがかかる

変額個人年金保険は、運用時にコストがかかることを忘れてはいけません。運用中は「特別勘定運営費用」や「信託報酬」、年金支払開始日以降は「年金の支払いや財産管理のための費用」などが保険料や積立金から差し引かれます。

その他にも、さまざまな運用コストがかかるため、契約前に確認しておきましょう。具体的には、以下のとおりです。

諸費用 費用の詳細
契約初期費用 保険契約締結時の費用*
保険関係費用 契約維持費、死亡給付金の最低保証費用
運用関係費用 特別勘定の運営費用、信託報酬
解約控除 契約後一定期間内(1~10年など)に解約した際、積立金から差し引かれる費用*
年金管理費用 年金受け取り開始後の財産管理費用
スイッチング費用 運用期間中に積立金の運用を行う特別勘定を別の特別勘定に変更する回数が、年間で一定回数を超えた際に発生する費用
*費用がかからない商品もあります。
出典:生命保険文化センター「変額個人年金保険(投資型年金)とは?」をもとに作成(*1)

2.変額個人年金保険にはバリエーションがある

変額個人年金保険は、1-1 変額個人年金保険とはどんな保険?でご説明している基本型のほかに、大きく3つのタイプのバリエーションがあります。タイプによって最低保証額や年金額に違いが出てきますので、詳しく知っておきましょう。

2-1 ターゲット型

ターゲット型は、払い込んだ保険料が一定期間(多くは1年~3年程度)以降に、110%や120%などの目標値に達成すると定額年金保険(一般勘定)に移行するタイプの変額個人年金保険です。

移行した積立金は、年金支払い開始日の前日まで保険会社所定の利率で積み立てられ、年金や一時金にて受け取れるのが特徴です。

ターゲット型(保険料一時払い)のイメージ

目標値に達成したら特定勘定での運用が終わるため、大きな利益を狙うのではなく、ある程度の実績を確保したい人におすすめのタイプといえるでしょう。また、一般勘定へ移行せずに即時年金もしくは一時金で受け取ることもできる商品もあります。

また、このタイプでしたら年金等の受取額が元本割れするリスクも少ないといえます。

ただし、運用が終了した後に株価や債券価格が上昇したとしても年金額に変化はありません。この点は運用益を狙っている人にとってはデメリットにもなるため、気を付けておいてください。

2-2 ラチェット型

ラチェット型は、積立金が運用により増加した場合、年金の受け取り総額および死亡給付金の最低保証額が引き上げられるという方式の変額個人年金保険です。

支払った保険料と運用実績は定期的に比較され、運用実績が保険料を上回っていれば、その金額が新しい最低保証額(ラチェット保証またはステップアップ保証)となります。下回っていた場合は、最低保証額は変更されません。この比較は、毎年や毎月の契約応当日に行われますが、比較頻度は商品によって異なります。

ラチェット型(保険料一時払い)のイメージ

最低保証額が増えた後は、その後の運用実績が芳しくなかったとしても減ることはありません。そのため、「将来の運用実績が良好であることを予想している人」「一度上がった保証金額を下げたくない人」に向いているといえます。

ちなみに、解約返戻金についてはラチェット保証や元本保証がありませんので、途中解約は避けるようにしてください。

2-3 早期年金開始型

早期年金開始型は、一般的に契約日から1年以上経てば年金の受け取りが可能なタイプで、「すぐにでも年金を受け取りたい」という人に向いています。

早期年金開始型(保険料一時払い)のイメージ

他のタイプとは違い、年金受け取りが始まっても特別勘定で運用が続けられます。なお、早期年金開始型の中には以下のような商品もありますので、加入時にはよく確認しておきましょう。

  • ●5年ごとなど定期的に運用実績の見直しが行われ、実績に応じて翌年度以降の年金額が上がる商品
  • ●年金支払開始日の変更ができる商品
  • ●一般勘定で運用する年金へ変更できる商品

早期年金開始型も、解約返戻金については元本保証がありません。なるべく途中解約を避けるようにしてください。

3.定額個人年金保険との違いとは?

自身で老後に備える私的年金の一つである「個人年金保険」は、変額個人年金保険の他に「定額個人年金保険」というものもあります。どのような特徴がある商品なのでしょうか。そして変額個人年金保険との違いも知っておきましょう。

3-1 定額個人年金保険とは

定額個人年金保険は変額個人年金保険と同様に、老後の資金作りに利用される保険です。

主に以下のような特徴があります。

  • ●他の多くの保険商品と同じく「一般勘定」で運用される
  • ●あらかじめ決まった利率(予定利率)で運用されるため、加入者は運用実績で高い利益が得られるわけではない
  • ●元本割れのリスクが少ない
  • ●死亡給付金の最低保証額が定められている
  • ●円建てだけでなく、外貨建ての商品もあり、外貨建ての場合は為替変動の影響を受ける
  • ●年金受け取り前に死亡した場合、死亡給付金が支払われるが、給付金が少なめになる商品もある
定額個人年金保険(保険料一時払い)のイメージ

また定額個人年金保険は、年金の受け取り方法も次のように選べるのが一般的です。

  • 確定年金:生死に関係なく、定められた期間で年金が支払われる
  • 終身年金:生存している限り、年金が支払われる
  • 保証期間付有期年金:保証期間内は、生死に関係なく年金が支払われる。保証期間終了後は、あらかじめ定められた期間中に生存している場合に年金が支払われる(保証期間内に死亡した場合は、残りの保証期間分の年金もしくは一時金が遺族に支払われる)
  • 保証期間付終身年金:保証期間内は、生死に関係なく年金が支払われる。保証期間終了後は、生存している場合に年金が支払われる(保証期間内に死亡した場合は、残りの保証期間分の年金もしくは一時金が遺族に支払われる)

3-2 定額個人年金保険と変額個人年金保険の違い

定額個人年金保険の特徴が分かったところで、変額個人年金保険とどのような違いがあるのかを一覧で見てみましょう。

定額個人年金保険 変額個人年金保険
運用 保険会社が運用する 自分で運用先を決める
勘定 一般勘定
(他の保険商品と一緒に運用される)
特別勘定
(単独で運用される)
運用利率 あらかじめ決まっている 運用により変動する
死亡給付金 最低保証あり 最低保証あり
年金の受取金額 契約時に確定している 運用次第で増減する
元本保証 あり なし
リスクとリターン ローリスク・ローリターン ハイリスク・ハイリターン
対インフレリスク 弱い 強い

特に注目しておきたいのが、「勘定」および「運用利率」と「対インフレリスク」です。

変額個人年金保険は、国内外の株式や債券で運用し、運用実績次第で利率が変わります。一方、定額個人年金保険は、加入の時から運用利率が提示されています。その点は預貯金と似ています。

これらの点から、定額個人年金保険は、安定的な運用を好む人、元本割れリスクを避けたい人、株式や債券に詳しくない人におすすめの年金保険といえます。

ただし、定額個人年金保険を選ぶのならば、対インフレリスクについては理解しておかないといけません。あらかじめ利率が定められている定額個人年金保険の場合、年金受け取り時になってインフレ状態が進んでいると、受け取った年金の価値が物価に比べ低くなるためです。

<インフレリスクとは?>
たとえば、返戻率*が110%で30年後に満期を迎える定額個人年金保険を500万円で契約したとすると、30年後には約550万円を受け取れます。ところが、物価上昇率が年1%で進行すれば、500万円で購入できていたものの価格は、30年後には約674万円にまで上昇してしまうのです。

このように物価の上昇(インフレ)が続くと、年金の価値は物価に比べて相対的に下がってしまうことになります。

  • *返戻率:払い込んだ保険料に対してどれぐらいのリターンが得られるのかを表す戻り率のこと。「受け取れる年金の総額÷払い込んだ保険料の総額×100」で求められ、100%で保険料と年金額が同じとなる。
インフレリスクのイメージ

その点から考えると、インフレ状態であれば、リスク性商品の利率(利回り)はインフレ率に連動する傾向があるため、運用次第で大きく年金受取額が増える可能性がある変額個人年金保険の方が有利といえるでしょう。

3-3 「変額」と「定額」それぞれの向いているタイプ

最後に、変額個人年金保険が向いている人、定額個人年金保険が向いている人について簡単に確認しておきます。

  • <変額個人年金保険に向いている人>
  • ●株式、債券など金融商品について知識がある人
  • ●ある程度の価格変動リスクを許容できる人
  • ●運用益を狙いたいと思っている人

  • <定額個人年金に向いている人>
  • ●金融知識があまりない人
  • ●絶対元本割れをして欲しくないと思っている人
  • ●どのくらい年金をもらえるか事前に把握しておきたい人
  • ●預貯金のように運用益を追求せずに安定的な運用を好む人

個人年金保険への加入を考える際は、自分がどちらのタイプに当てはまるかをよく考えるようにしましょう。

まとめ:自身に合った「個人年金保険」を選びましょう

変額個人年金保険は、他の保険と比較して値動きが大きい国内外の株式や債券で運用するため、金融市場の動向や運用次第で大きな利益を得ることも可能です。反対に、期待する運用実績が出ない場合は年金額が減少、場合によっては元本割れする恐れもあります。

変額個人年金保険に加入したいと考えるならば、どのような保険なのか把握するのと同時に、金融市場の動向についても勉強する必要があるといえそうです。

もし、リスクを取りたくない、運用益はそこまで出なくてもいいから安定的に年金が欲しいという人は、加入時から利率が決められている定額個人年金保険で老後の資金作りをすることをおすすめします。