地震保険とは? 補償内容から必要性、選び方まで徹底解説!

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保険の基礎知識
地震保険とは? 補償内容から必要性、選び方まで徹底解説!

近年、大きな地震が全国各地で頻発し、甚大な被害をもたらしています。「全国地震動予測地図2018年版」によれば、日本国内のなかで今後30年のうちに震度6弱以上の地震に見舞われる確率がゼロの地域はどこにもありません(*1)。

もし自分の住まう地域で大地震が発生したら、建物や家財が大きな損害を被ることは十分に想定できます。そんな地震の脅威に晒されている私たちにとって、地震が起こったときの経済的な備えは極めて重要だと言えるでしょう。

そうした地震への備えとして大いに活用できるのが地震保険。しかし、残念ながら地震保険はその重要性に反して、まだまだ十分に理解が進んでおらず、加入率も高くないのが現状です。

そこで、ここでは「そもそも地震保険とは何か?」「なぜ地震保険が必要なのか?」「地震保険を選ぶうえで必ず押さえておきたいポイントは何か?」といった点について分かりやすくお伝えしていきます。地震保険が気になっている方にとって必見の内容になっているので、ぜひ最後までお付き合いください。

1.地震保険とはどんな保険?

地震保険は、その名前の通り地震による損害を補償してくれる保険。地震そのものによる損害はもとより、噴火による損害、そしてこれらにともなう津波による損害(火災・損壊・埋没・流失など)も含めて幅広くカバーしてくれます。ここでは、地震保険の特徴と補償内容について見ていくことで、その概要を把握しましょう。

1-1 地震保険の3つの特徴

地震保険は損害保険のなかでも独特の保険で、さまざまな特徴を持っています。なかでも代表的なのは、「火災保険とセットでないと加入できない」「公共性が高い“半公的保険”」「どの保険会社でも保険料と補償内容が同じ」という3点が挙げられます。それぞれ具体的にどういうことなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

●火災保険とセットでないと加入できない
まず地震保険で注意したいのは、基本的に火災保険に加入していなければ契約ができない点です。火災保険は火災から風水災などの自然災害による損害全般を補償する保険ですが、地震による損害は補償されません。いわば地震保険は、その火災保険の補償の空白をフォローする「特約」のような位置づけなのです。したがって、地震保険は単独で契約することはできず、加入するためには火災保険とセットで入る必要があります。

●公共性が高い“半公的保険”
地震保険の大きな特徴として、公共性の高い保険だということが挙げられます。というのも、地震による損害額は非常に大きいので、地震保険を保険会社のみで運営することはできません。そこで、政府が再保険(いわば“保険の保険”)を通じて関与し、保険会社が保険金を支払えなくなるリスクをカバーしています。そのため地震保険は公共性が高く、「半公的保険」とも言われています。

●どの保険会社でも保険料と補償内容が同じ
上で地震保険は政府が関与した“半公的保険”だと述べました。それは言い換えるなら、地震保険は「保険会社の利益」が織り込まれていない保険だということを意味します。そのため、通常の損害保険とは違い、支払う保険料や受けられる補償についてはどの保険会社でも一律に設定されています。具体的な保険料や補償内容に関しては次節以降で詳述します。

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1-2 地震保険の保険料と補償内容

すでに述べたように、地震保険は政府と保険会社が共同運営している公共性の高い保険です。それゆえに、その保険料や補償内容は各損害保険会社ともに共通しています。

それでは、その地震保険の内容とは、いったいどのようなものなのでしょうか。ここでは「保険料」「保険金額と損害認定」の2つパートに分けて具体的にお伝えしていきます。

●保険料
地震保険の保険料は、①建物がどこに建っているか、②建物が何でできているかという2つの条件に応じて変わってきます。つまり、建物の「所在地(都道府県)」と「構造」によって保険料が決まっていくということです。

2021年1月からの地震保険の保険料の目安は、保険金額1,000万円当たりで、鉄骨・コンクリート建築(耐火)の場合には年間7,400円~2万7,500円、木造建築(非耐火)の場合には年間1万2,300円~4万2,200円となっています(*2)。

※地震保険料は改定になりました。2021年1月からの保険料はこちらの記事をご覧ください。また、2021年6月には新たな改定の届出が行われました。この届出の内容はこちらをご覧ください。

地域・構造別の地震保険の保険料

総体的に見れば、耐火建築のほうが非耐火建築よりも地震による損害リスクが低いと考えられるので、保険料も安くなる傾向のようです。とはいえ、地震保険の保険料は、その建物の構造だけではなく、所在地(都道府県)にも影響を受けます。そのため、必ずしも地震保険の保険料として耐火建築のほうがリーズナブルというわけでもありません。

●保険金額と損害認定
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で設定することになっています。また、それぞれ保険の対象ごとに建物が5,000万円、家財が1,000万円という形で金額の上限も設けられています。

とはいえ、地震の被害に遭ったら保険金額を満額で受け取れるわけではありません。建物や家財の損害状況に応じて、支払われる保険金額は変わってきます。

その認定基準は建物・家財ともに「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つの区分に分けられており、設定した地震保険の保険金額をベースにして、全損は100%、大半損は60%、小半損は30%、一部損は5%の割合で支払われる仕組みになっています。こうした認定基準が設けられたのは、いざというときに迅速かつ公平に加入者へ保険金を支払えるようにするためです。

それぞれの損害状況の具体的な規定と、それに対応した支払われる保険金額の割合については、以下の表をチェックしてみてください(*3)。

地震保険における保険金額と損害

ちなみに、2016年12月まで認定基準は「全損」「半損」「一部損」の3段階しかありませんでした。それが2017年1月に制度改正が行われ、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階へ変更となりました。

この旧区分と新区分のうち、どちらが適用されるかは、加入している火災保険の保険始期日によって判断できます。保険始期日が2016年12月31日以前であれば旧区分(3段階)、2017年1月1日以降であれば新区分(4段階)が適用されると覚えておきましょう。

2.なぜ地震保険が必要なのか?

ここまで地震保険がどのような保険なのか、その概要について見てきました。しかし、なかには地震保険が本当に必要かどうか疑問を抱いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの章では、地震保険の加入率や、日本の地震リスク、地震によって被害を受けたときの公的支援などについて概観し、地震保険の必要性を考えていきましょう。

2-1 地震保険の加入率は○○%!?

最初に確認しておきたいのが地震保険の加入率です。実際にどのくらいの人が地震保険に加入しているのでしょうか。

損害保険料率算出機構の統計によれば、2020年の時点で、日本全国の地震保険の世帯加入率はわずか33.9%に留まっています(*4)。直近の10年間を見ると毎年微増している傾向が見られるとはいえ、それでも多くの人が地震保険の必要性を感じていないのが現状と言えるでしょう。

「入っている人が少ないから加入する必要はない」「確かに必要なのは分かるけど保険料が高い」「そもそも地震保険って必要あるの?」と思っている方が少なくないのかもしれません。

2-2 超地震大国日本! その地震リスクは?

世界の陸地のうち日本の国土が占める割合はわずか1%にも届きません。しかし、世界で起こる地震の実に約10%が日本とその周辺地域に集中しているのです(*5)。それゆえに、日本は「超地震大国」とも言われています。

過去に甚大な被害をもたらした主な地震としては、関東大震災(死者・行方不明者数約10万5,000人)、阪神・淡路大震災(死者・行方不明者数6,437人)、東日本大震災(死者・行方不明者数2万2,010人)などが挙げられます(*6)。近年でも、熊本、大阪、北海道、新潟・山形、福島・宮城などが大きな地震に見舞われたことは記憶に新しいところでしょう。

極めて重要なポイントは、日本のどこに住んでいても、将来的に地震に見舞われてしまうリスクが付きまとうことです。「全国地震動予測地図2018年版(2019年1月修正版)」によれば、今後30年以内に震度6弱以上の地震の発生確率がゼロの地域は日本国内のどこにもありません。都道府県庁所在地別に見た場合、最も高確率なのが千葉市85%、次いで横浜市82%、水戸市81%、根室市78%、高知市75%と続いています(*7)。

いずれにせよ、日本に住まう以上、決して地震のリスクを免れることはできないと言えそうです。

2-3 地震のときの公的制度はあまり多くない

もしも建物や家財が地震の被害にあった場合、さまざまな経済的なマイナスが発生します。ダメージを受けた建物を修繕したり新たに購入したりするには大きな費用がかかります。まだ住宅ローンが残っていた場合、建物が壊れたとしても、継続してローンの返済は続けていかなければなりません。

それでは、そうした地震による経済的なダメージは、何か公的な制度によってまかなうことはできないのでしょうか。

代表的なものとしては、「被災者生活再建支援制度」があります。これは地震により自宅が全壊した等の被害を受けた被災者に、生活再建の手助けを目的として支援金が支給される制度です(*8)。しかし制度上、受け取れる支援金は最大でも300万円までとなっています。この金額で建物を建て直したり、家財をそろえ直したりすることができるかと言えば、残念ながら厳しいのが現実です。

やはり地震による経済的なリスクを補てんするためには何かしらの準備が必要だと言えるでしょう。

2-4 地震保険が必要な理由

日本は地震のリスクが非常に高いにも関わらず、必ずしもそれに対する公的な支援が充実しているとは言えません。

では、地震の被害にあったときの経済的なリスクはどのようにカバーすれば良いのでしょうか。その有効な方法の1つとして考えられるのが地震保険への加入なのです。

前章で確認したように、地震保険は地震により建物や家財が損害を受けたときに、まとまった保険金を受け取ることができるものです。その保険金の使い道は自由ですから、建物の修繕費、住宅ローンの返済費用、家財の購入費、借り住まいの宿泊費、当面の生活費など、自分の状況に合わせた用途に充てることが可能です。

このように、地震保険は被災者が生活を建て直していくうえで大いに役立ちます。その意味で、常に地震のリスクに晒された日本で暮らす私たちにとって、地震保険の必要性は非常に高いと言えるのではないでしょうか。

3.地震保険を選ぶうえで知っておきたいポイント

せっかく地震保険を考えるのであれば、できるだけ自分に合った好条件の商品を選びたいものです。

すでに見てきたように、基本的に地震保険は保険会社で保険料や補償内容に違いは見られませんが、実は知っておくと「オトク」なことがいくつかあります。ここでは、そんな地震保険を検討するうえで必ず知っておきたいポイントについてお伝えしていきます。

3-1 地震保険の保険料を安く抑える割引制度!?

実は地震保険には、「建築年割引」「耐震等級割引」「免震建築物割引」「耐震診断割引」という4つの割引制度が設けられています(*9)。これらを使うことで保険の対象となる建築物の建築年数や耐震性能などの条件に応じて10%~50%の保険料の割引を受けることできます。

まず「建築年割引」は、1981年(昭和56年)6月以降に新築された建物である場合に10%割引が適用される制度です。

次に「耐震等級割引」は、法律や官公庁の指針で定められた「耐震等級」の条件を満たしていれば、その等級に応じて10%、30%、50%のいずれかの割引を受けられる制度となります。

続いて「免震建築物割引」とは、法律で決まっている「免震建築物」の基準に合致していたときに50%の割引が適用される制度。

最後に「耐震診断割引」は、建築基準法で定められた耐震基準を満たした場合に10%の割引を受けられる制度です。

地震保険の4つの割引制度

注意したいのは、上記の4つのなかで複数の割引制度を適用することができない点です。もしも複数の制度に該当する場合には、それらのうち最も割引率の高い制度が適用されることになります。

また、保険料の割引と少し違いますが、2007年(平成19年)1月より、地震災害による損失への備えの自助努力を促すため、地震保険料控除が設けられました。これにより、地震保険に加入すれば、所得税で最高5万円、住民税で最高2万5,000円の控除を受けられるようになりました(*10)。

地震保険料控除

3-2 住宅別の地震保険の考え方

地震保険は持ち家や賃貸、一戸建てやマンションといった住宅の種類に応じて、考え方が若干異なります。

そこで、ここでは「持ち家一戸建て」「分譲マンション」「賃貸住宅」の3パターンに分けて、それぞれの地震保険に加入するうえでのポイントをお伝えしていきたいと思います。

●持ち家一戸建ての地震保険の考え方
まず、持ち家で一戸建ての場合は、すでにローンを完済した人や、十分に貯蓄を準備できている人以外は、基本的には建物と家財の両方の地震保険に加入したほうが良いでしょう。というのも、地震によって両方とも経済的リスクが発生する可能性があるためです。

どちらとも加入するのがおすすめですが、どうしても高額になってしまうことがあるので、そのときは各家庭の状況と照らし合わせてみて、保険金額を抑えるかどうかなどを調整していく必要があるでしょう。

●分譲マンションの地震保険の考え方
分譲マンションにおける建物の地震保険の対象は、建物のスペースを住んでいる室内の「専有部分」と、ロビーや廊下などの「共用部分」の2つに分けて考えます。

まず専有部分については、どうでしょうか。前提として分譲マンションを購入した方のほとんどは、住宅ローンを利用しているはずです。

よって、もしも被災したときには、生活を建て直すための費用を負担しながら、同時に住宅ローンの支払いを続けていかなければならないケースも十分に想定できます。そのような経済的なリスクをカバーする意味で、建物の専有部分の地震保険は家財ともにしっかり加入しておきたいところです。

次に共用部分は、どうすれば良いでしょうか。この部分については、分譲マンションの管理会社や管理組合の考え方によって異なります。

そもそも共用部分の地震保険に加入するかどうかは、管理組合の決議によって決めるほかありません。個人の裁量でどうにかできる問題ではありませんから、どうしても不安に思うのなら先ずは管理会社や管理組合の担当者に問い合わせし、加入の有無を確認してみましょう。そのうえで現状を変えたいのであれば、管理組合に働きかけを行うと良いでしょう。

●賃貸住宅の地震保険の考え方
最初に確認しておきたいのは、賃貸住宅の場合、建物それ自体は入居者のものではなく、大家のものであるという点です。つまり、住んでいる賃貸が被災したとしても、その建物の再建のために入居者が費用負担する必要はありません。よって、建物の地震保険については加入しなくても良いと言えるでしょう。

しかし、家財は別です。住んでいる賃貸の建物は大家のものですが、その中にある家財は入居者個人の所有物となります。被災して家財一式が大きな損害を受けて、それらを買い揃え直すのであれば、その費用負担は入居者自身がしなければなりません。もちろん所有している家財によっても変わりますが、基本的に家財の地震保険には加入しておくことをオススメします。

まとめ:地震保険は難しい! だからこそプロに相談して決めよう!

いかがでしたでしょうか?
ここでは、地震保険の補償内容や必要性、住宅別の地震保険の考え方いついてご説明しました。簡単にまとめると、次のようになります。

  • 【地震保険とは】
  • ・その名前の通り、地震による損害を補償してくれる保険。地震そのものはもとより、噴火による損害、そしてこれらにともなう津波による損害(火災・損壊・埋没・流失など)も含めて幅広くカバーしてくれる
  • ・主な特徴は「火災保険とセットでないと加入できない」「公共性の高い“半公的保険”」「どの保険会社でも保険料と補償内容が同じ」
  • 【地震保険の補償内容】
  • ・保険料は、木造建築(非耐火)と鉄骨・コンクリート建築の建物構造と、建物がある地域によって大きく異なる
  • ・保険金額の設定方法は、セットの火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で、上限は建物が5,000万円、家財が1,000万円
  • ・支払われる保険金額は、上限の範囲内で建物や家財の損害状況に応じて決まる
  • 【地震保険の必要性】
  • ・地震保険の世帯加入率は約34%
  • ・日本国内で今後30年以内に震度6弱以上の地震が起こる確率がゼロの地域はない
  • ・地震による経済的な被害は甚大だが、公的な支援制度は十分とは言えない
  • ・地震による損害リスクをカバーするうえで地震保険は有効な方法の1つ
  • 【地震保険を選ぶときに必ず知っておきたい3ポイント】
  • ・地震保険には「建築年割引」「耐震等級割引」「免震建築物割引」「耐震診断割引」の4つの割引制度がある
  • ・地震保険加入の考え方は「持ち家一戸建て」「分譲マンション」「賃貸住宅」によって違う

ここでお話したのは地震保険のごく基本的な事柄に過ぎません。地震保険は火災保険と一緒に加入するかどうかを選ばなくてはなりません。地震保険を検討するときは、火災保険との兼ね合いはもちろん、自分に必要な補償だけをつけることも賢い保険選びをするうえでは大事な作業となってきます。ただ、家庭の状況と照らし合わせて自分に合った補償内容を決めていくのは時間も手間もかかることでしょう。

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