火災保険の保険料は自然災害の増加で値上げ! 地震保険は最新の改定案で値下げに!

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保険の基礎知識
火災保険の保険料は自然災害の増加で値上げ! 地震保険は最新の改定案で値下げに!

私たちの住まいや家財を火災や水災のリスクから守ってくれる火災保険。また、地震や津波など火災保険ではカバーされない自然災害による損害を補償してくれる地震保険。自然災害が多い日本ではぜひ入っておきたい2つの保険ですが、この火災保険と地震保険の保険料が値上げされることはご存知でしょうか。

火災保険は2019年10月から値上げされる予定です。また、地震保険はすでに2019年1月に値上げされており、時期は未定ながらもう1回改定が行われます。ここでは、値上げの背景と具体的にどうなるのか、そして対応方法についてお話ししていきます。

<2019年6月追記>
5月28日に損害保険料率算出機構より、地震保険の次回の基準料率改定の届出が金融庁に提出されました。今回の届出は2017年から続く3段階の改定の最終回となります。こちらの内容は最後の「2-3 3回目の料率改定は2021年1月に決定!」でお伝えします。

<2019年12月追記>
火災保険は予告通り2019年10月に値上げされました。しかし、2019年も大規模自然災害が多発していることから、2021年1月にも火災保険料が引き上げられる見通しです。値上げ幅は企業向けが4%程度で、個人向けは調整中とのことです。

<2020年6月追記>
改定が続いている地震保険ですが、2019年5月の金融庁への届出が承認され、2021年1月に最終の3回目の改定が行われることが決定しました。都道府県別の保険料率や長期係数などは「2-3 3回目の料率改定は2021年1月に決定!」でお伝えしている通りです。

<2021年7月追記>
2021年6月に地震保険の新たな改定の届出が金融庁へ提出されました。今回は全国平均では値下げとなります。こちらの内容は「2-4 2021年の改定届出は全国平均で0.7%の値下げ!」でお伝えします。

1.火災保険の保険料は細かな見直しで値上げ傾向に!

1-1 天候が荒れると保険料が値上げされる!?

2019年10月から大手損害保険会社の火災保険料が引き上げられることになりました。引き上げ幅は地域によって異なりますが、全国平均で5~10%程度となりそうです。

今回の値上げには、2018年に相次いだ自然災害が関係しています。

2018年は7月に西日本で豪雨災害が起こりました。また、9月の台風21号と24号も各地に大きな被害をもたらしました。これらの大きな風水害が起こると火災保険の保険金支払いが急増することになります。現に、2018年度の保険会社各社の保険金支払額は過去最大規模になっています。

火災保険の保険金は、加入者が支払った保険料でまかなわれます。保険金の支払いが増えれば保険会社で蓄積している責任準備金が減るため、収支を均衡させるために保険料を値上げせざるを得なくなります。

正確には、支払い実績という過去のデータだけでなく、被害予測なども参考に保険料は算出されていますが、いずれにせよ、火災保険の支払い対象になる自然災害が増えれば保険料が上がるという具合です。

近年は地球規模で気候変動リスクが高まり、日本でも大きな自然災害が増えている傾向が見て取れます。2019年以降もこうした風水害が多発するようであれば、火災保険の保険料は引き上げが続く可能性も考えられます。

⇒火災保険とは? 補償内容・必要性について知りたい方はコチラ!

1-2 保険料値上げにはどう対応したらいい?

それでは、このような保険料の値上げに対しては、どのような対応策を取ればいいのでしょうか。

そもそも火災保険は、住宅や家財が火事や災害に見舞われて損壊してしまったときに、生活基盤の再建に向けて再取得するための費用を補償するものです。ですので、値上げされるからといって、災害リスクが高まるなかで火災保険に加入するのをやめたり解約したりするのは本末転倒と言えるかもしれません。それに、火災保険の第一目的である火災リスクは、自然災害にかかわりなく常に存在します。

反対に、「より多くの災害に対応できるように」と補償範囲を広げれば、値上げとのダブルパンチで保険料はますます高くなってしまいます。ここはやはり、保険加入の基本的なアプローチとして、補償対象が本当に必要なものなのか、補償内容はオーバースペックになっていないかなど、充分かつ無駄のない補償の組み合わせを検討していくことになります。

具体的には、国土交通省や自治体が開示しているハザードマップなどを見て、自宅がさらされているリスクを再評価することから始めます。

もし洪水や浸水などの水災被害の危険度が高いエリアであったら、水災オプションは欠かせないという判断になります。逆に、自宅が高台にあったり高層マンションにお住まいで浸水被害の恐れは少ないということでしたら、水災補償は外すことも考えられます。

また、火災保険に個人賠償責任補償特約を付けている場合、もしかしたら自動車保険や傷害保険でも付加していて、重複加入となっている可能性があります。このように不要と判断されるオプションを減らしていくことで、保険料の節約につながります。

なお、住宅などの新価(再調達価額)以上の保険金額を設定していないかどうか、念のため確認しておきましょう。

もし自宅が全損となった場合、一見して手厚い補償を受けられるように思えますが、火災保険の補償は新価が上限額になっているため、その額を超えた補償を受けることはできません。これは「超過保険」と呼ばれているもので、新価を超える部分の保険金額に対する保険料がムダになってしまいます。

保険の契約期間と保険料の支払い方法でも節約は可能です。火災保険の保険期間は基本的に1年~最長10年(※下記追記参照)までの間で設定することができ、保険期間に応じて保険料の割引率が大きくなる商品があります。さらに、先に保険料をまとめて払い込むことで、月払いに比べて割引を受けられます。

このような「長期契約」+「一括払い」などを利用することで、保険料の節約につなげられるのです。ただし、一時的な出費が大きくなることは注意しておきましょう。

そして、現契約の更新時期が値上げのタイミング直後などといった場合は、値上がりする前に切り替えるというのも1つの対応方法です。その場合、残り期間に対する返金額は月割り額よりも少なくなることに留意してください。また、解約・切替するときは、もしかしたら来年以降は値下がりする可能性もゼロではないことも想定して判断するようにしてください。

<2021年7月追記>
損害保険料率算出機構は2021年5月に火災保険参考純率の変更に関する届出を行っています(*4)。これによると、近年の自然災害リスクの増加による保険料の引き上げとともに、長期的なリスク評価が難しくなっていることで最長の保険期間が5年に短縮されます。改定時期は2022年度中と見られています。

2.地震保険の保険料は段階的に値上げされている

2-1 地震保険の保険料は3度値上がりする!?

地震保険は、火災保険の補償範囲外である地震・噴火による損害や、これらによって起こる津波被害をカバーする保険です。基本的には火災保険と同じように、支払い保険金が増えると予測されれば保険料は値上げされます。

この地震保険の保険料が、2017年から3段階に分けて値上げされているのはご存知でしょうか。

これは、地震に関連する各種基礎データを更新し、被害予測シミュレーションによる危険度計算を行った結果、全国平均で保険料の値上げとなる改定が必要であることが判明したためです。ただし、このように算出された料率で値上げを一気に実施すると大幅な保険料引き上げになってしまうため、3段階に分けられたというわけです。

すでに2017年1月に1回目の改定が行われており、保険料は全国平均で5.1%値上がりしました。続く2019年1月の2回目では、再計算が行われて1回目よりもやや低くなったものの、全国平均で3.8%の値上げになりました(*1)。そして、時期と改定率は未定ですが、この後に3回目の見直しが控えています。

ところで、先ほどから「全国平均で値上げ」と断っていることにお気づきでしょうか。読んで字のごとく、全国平均では1回目・2回目ともに値上げされたのですが、じつは都道府県によっては値下げになったところもあるのです(都道府県ごとの改定率の詳細は*1にある損害保険料率算出機構のサイトの「記者発表資料」をご覧ください)。

先述したように改定は3段階に分けて行われていますので、1回目に値下げされたところは2回目も値下げされました。3回目がどうなるか現時点では不明ですが、おそらく同じ傾向になると予想されます。⇒「2-3 3回目の料率改定は2021年1月に決定!」をご覧ください。

なお、値上げ幅が大きい都道府県が「より危険な地域」で、反対に値下げになったところは「安全な地域」と単純には考えないでください。これらの数字はあくまで改定率で、もともとの危険度は都道府県別に決められている保険料そのもので判断したほうが良さそうです。

たとえば愛知県などは、今回は約16%も値下げされていますが、それでも岩手県などと比べると保険料率は2倍以上になっています。

⇒あなたがお住まいの都道府県の保険料は?(2021年1月~)

⇒地震保険とは? 補償内容から必要性、選び方まで徹底解説!

2-2 次回の保険料値上げにはどう対応したらいい?

さて、このような保険料改定の話を聞くと、「うちの県では次も値上げされそうだから早めに入ったほうがいいな」と思われる方も多いのではないでしょうか。たしかに地震保険は最長で5年契約が可能ですから、値上げされそうな地域にお住まいで、これから地震保険への加入を検討している方は早めに決断したほうが賢明と思われます。

さらに、2019年1月の2回目では、保険料改定の他にも「長期係数」の見直しも合わせて行われています。

長期係数とは、2~5年契約の地震保険の保険料を一括で支払う場合に使用する係数で、1年分の保険料に乗じる数値です。たとえば、2年契約の場合、2倍ではなく1.9倍に割り引かれる、すなわち1年あたり5%引きになるという仕組みです。これが最長の5年契約の場合は、4.45(11%割引)から4.60(8%割引)に見直されました(*1)。

地震保険料の長期係数

※2021年1月以降の長期係数については次節をご覧ください。

以上のことから、次回も保険料が値上げとなる地域で5年契約する場合、値上げ前と後では保険料にそれなりの差が出てくることになります。反対に値下げが見込まれる地域では、とりあえず1年契約で加入して様子を見ながら値下げを待つという方法が考えられます。

このように、値上げ要素と値下げ要素が複雑に絡み合っており、また次回の見直し内容が決まっていない段階では、どんなケースでも確定的な計算は不可能です。

さらに言えば、地震はいつ起こるか予想できませんので、本来であれば保険加入のタイミングを見計らう性格のものではありません。ですので、ご自身の住環境や経済状況を最優先で考えながら加入を検討するのが正しい地震保険の入り方と言えるのではないでしょうか。

2-3 3回目の料率改定は2021年1月に決定!

損害保険料率算出機構は、地震保険基準料率の変更に関する届出を2019年5月28日付で金融庁長官に行いました(*2)。今回の届出は2017年から続く3段階の改定の最終回となります。

届出によると、地震保険の基本料率は全国平均で5.1%引き上げされます。これは1回目と同じ引き上げ率です。都道府県別・構造別の保険料は下表のようになっています。

地域・構造別の地震保険の保険料

地域別に見ると、今回も引き上げられるところが多いものの、前回同様に引下げられるところもあります。引き上げ率が最も大きいのは福島県の非耐火構造(ロ構造)の+14.7%、逆に引き下げ率が最も大きいのは愛知県・三重県・和歌山県の耐火構造(イ構造)の-18.1%となっています。

前々節でも触れましたが、これらの数字はあくまで改定率で、もともとの危険度は都道府県別に決められている保険料そのもので判断したいところです。たとえば今回、岩手県は4.2%引き上げられ、愛知県は18.1%も引下げられますが、それでも愛知県の保険料率は岩手県の1.6倍程度になる予定です。

また、2回目に続いて今回も「長期係数」の見直しが含まれています。届出によると、前回2.75(8.3%割引)から2.80(6.7%割引)に見直された3年契約は、今回さらに割引率が縮小され、2.85(5%割引)となっています。他の契約年数は下の表を参照してください。

地震保険料の長期係数

さて、実際の改定時期ですが、現時点では不明です。この届出が法令に規定されている「合理的かつ妥当なものでなければならず、また、不当に差別的なものであってはならない」という条件に適合するかどうかの審査が行われ、適合性審査が承認された後、実際の保険契約へ適用されます。

ただ、過去2回の状況を見ると、1回目が2015年9月届出→2017年1月適用、2回目が2017年6月届出→2019年1月適用と、それぞれ1年以上かかっているので、今回も同じくらいの期間が経過した後の2021年1月前後になる可能性が高そうです。

<2020年6月追記>改定は2021年1月に決定しました。

改定への対応としては、2回目と同じように、保険料の値上げが予定されている地域では改定前に5年契約してしまうのが得策でしょう。反対に値下げが見込まれる地域では、とりあえず1~2年契約で加入し、料率改定後に長期契約するという方法が考えられます。長期係数の改定によって割引率が小さくなりますが、この影響は引き下げ率が低い愛媛県の耐火構造(イ構造)の3年契約以外は現れないようです。

2-4 2021年の改定届出は全国平均で0.7%の値下げ!

損害保険料率算出機構は、2021年6月10日に地震保険の基準料率変更にかかる届出を行いました(*3)。

今回の届出は、

①本来必要な保険料に対する不足分(2017年からの3段階の料率引き上げ後の上乗せ分)の解消として1.6%の引き上げ
②保険料算出の基礎となる各種データの更新や耐震性の高い住宅の普及などによる影響として2.3%の引き下げ

という2つの要素から、全国平均で0.7%の引き下げとなっています。

そして、都道府県・建物の構造区分別の改定率は、多くの区分では据え置きか引き下げとなりますが、これまでの改定で大幅な引き上げが生じるため改定率を抑えられてきた区分では、一部で引き上げとなります。

なお、各種基礎データにより危険度が減少した大分県は、基本料率が大幅に引き下げられます。その結果、今回の届出での構造別の最大引き上げ率と引き下げ率は以下のようになっています。

耐火構造 非耐火構造
最大引き上げ率 +29.9%
(茨城・埼玉・徳島・高知)
+12.3%
(茨城・埼玉)
最大引き下げ率 ▲38.1%
(大分)
▲47.2%
(大分)


そして、都道府県別・構造別の保険料は下表のとおりです。

地域・構造別の地震保険の保険料

また、近年の金利状況を踏まえて、今回も「長期係数」が一部で見直されます。2~4年契約は変更されませんが、5年契約の係数は4.65から4.70になり、割引率は7%から6%に引き下げられます。

地震保険料の長期係数

今回は値下げが中心であり、特に大分県では大幅な引き下げとなりますので、少しでも保険料を安くしたいという方は、届出の保険料でシミュレーションしてみるのもいいかもしれません。

ただし、今回も届出が承認されて実際の料率改定が行われる時期は未定ですので、早計な判断は禁物です。保険ショップなどで火災保険の専門家などに相談してみることをおすすめします。

まとめ:気候変動リスクの高まりに備えて、住まいの保険は万全に!

本文でもお伝えしたように、近年は地球規模で異常気象が相次いで観測されています。わが日本も例外ではありません。そのため、住まいを守る火災保険と地震保険の保険料が引き上げられるのは仕方のないところでしょう。

そして、このような気候変動リスクが高まっているからこそ、住宅関連の補償は確実に備えておくべきと言えます。

しかし、火災保険は補償内容が多岐にわたり、やや複雑な体系の保険です。また、地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットになっています。火災保険をどのような設計にしたらいいのかわからなくなったときには、保険のプロに相談してみてはいかがでしょうか。

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