ペット保険とは? イチから分かる動物保険の基礎知識

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保険の基礎知識
ペット保険とは? イチから分かる動物保険の基礎知識

ペット専門の保険として、ペット保険というものがあることをご存知でしょうか。ペットが病気やケガをしたり、他人を傷つけてしまったりしたときなどに備えることができるものです。比較的新しい保険のため、まだ認知度の低い存在ですが、ペット保険は犬や猫以外の動物でも加入できる、今注目の保険商品のひとつなのです。

どんなペットであっても病気やケガをするリスクはついて回るもの。しかし、ペットの医療費は全額自己負担となることから、費用が高額になってしまうこともよく知られています。

そこで、高額になりがちな治療費の負担を軽減する役割をもつのがペット保険です。さらに、他人にケガを負わせてしまった場合などに発生する損害賠償や、死亡した場合の葬儀費用などの補償を追加できる商品もあるのが特徴です。

しかし、いざペット保険の商品を見てみると様々な専門用語や種類の多さから、「どういった補償内容なのかがわからない」という声も。

そこで、この記事ではペット保険とはどういったものなのか、ペット保険選びに役立つ基礎知識をイチから分かりやすくまとめました。ぜひ最後までご一読いただき、今後のペット保険選びに役立ててください。

⇒ペット保険の選び方~トラブルにならないために押さえておきたいポイント

1.ペット保険とはどんな保険?

日本でのペット保険は歴史が浅いせいか、そもそもペットに掛けることのできる保険があることを知らない人も多いようです。どんな保険であるのか、加入する必要性があるのかといった疑問を持つ人も少なくありません。

このことを表しているのがペット保険の加入率で、日本での加入率を見てみるとおよそ12%であり、海外に比べてかなり低い数字になっています(*1)。ですので、今後は日本でも加入者が増えていく可能性があります。

では、具体的にペット保険とはどんな保険なのか、概要から見ていきましょう。

1-1 ペット保険は生命保険ではなく損害保険

ペット保険は、保険を大きなカテゴリーで見とときには第二分野というグループに属し、火災保険や自動車保険と同じ損害保険に分類されています。

ペットが病気やケガによって動物病院で治療を受けたときに、飼い主が負担した費用の一部を補償するのがペット保険です。その補償内容から「医療保険なのでは?」と思われるかもしれませんが、生命保険や医療保険は「人」を対象としている保険であることが条件として決められているため、ペット保険は該当しません。損害保険では人を対象としていないため、ペットを対象とするペット保険は損害保険となるのです。

1-2 ペット保険の基本補償は医療補償

ペット保険は、ペットの病気やケガの治療による通院・手術・入院費用の補償がメインです。

私たちが病気やケガで治療を受けたときには健康保険が適用され、現役世代の方は治療費の3割負担で済みますが、ペットには公的な健康保険が存在しません。ペット保険に未加入の場合は、病気やケガをした際の通院費や入院費、手術費など全額が自己負担となります。

また、ペット保険に加入した場合であっても治療費の全額を補償するタイプは少なく、多くの商品では補償割合に応じて実費を補償するプランが主流です。

1-3 ペット保険専門の会社が多い

ペット保険は損害保険ですが、他の保険にくらべ比較的少額で短期の保険であるという特性から、損害保険会社以外にも「少額短期保険業者」での販売が認められています。少額短期保険業者も財務局の登録審査を通過した会社ですので安心です。

現在、国内でペット保険を取り扱っているのは損保会社が5社、少額短期保険業者が12社ほどです。少額短期保険業者はペット保険専門会社の比率が多くなっています。

ペット保険は海外にくらべ国内ではまだ加入率の低い保険であることから、今後シェアが拡大するとみられており、ペット保険専門会社の数も増加することが予想されます。

1-4 ネット申込みできるペット保険もある

では、ペット保険に加入するには具体的にどのような方法があるのでしょうか。

現在、ペット保険の加入方法は、以下の3通りのルートがあります。

  • ・ネット
  • ・保険代理店
  • ・ペットショップ

ネットからの申込みが可能なペット保険は年々増えており、今ではほとんどのペット保険がネット申込み可能となっています。しかし、商品によって補償内容が細かく違うため、説明を詳しく聞きながら最適なペット保険に加入したいという方には代理店での契約がおすすめです。

また、ペットを購入したペットショップでもペット保険の取り扱いがあれば加入することができます。これからペットの購入を検討している人は、行きつけのペットショップでペット保険の取り扱いがあるのかもチェックしてみてください。

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2.ペット保険の補償範囲は? 他の人を咬んだときは?

ペット保険の一般的な補償内容は、下記のようになっています。

  • <基本補償>
  • ・通院費…通院治療でかかった費用を補償。50%~100%で補償割合が設定される
  • ・入院費…入院治療でかかる費用を補償。日額制限のあることがほとんど
  • ・手術費…手術にかかった費用を補償。一般的には年2回まで

  • <その他の補償>
  • ・賠償責任…他人にケガをさせてしまったときなど賠償責任が発生した際の費用補償
  • ・葬儀費…死亡後の葬儀などにかかった費用補助
ペット保険の補償内容

次節以降で補償内容を詳しく見ていくことにします。

2-1 実費補填タイプだが補償割合が設定されている

ペット保険の基本補償は、治療にかかった費用に対してその何割かを補償するものがほとんどです。

しかし、中には100%補償するプランを持つ商品もあるなど、補償割合の設定は各社それぞれに違いがあります。補償割合が100%に近いほど自己負担金額は少なくすみますが、一方で支払う保険料は高くなります。

2-2 商品によって補償されるペットの種類が違う

一言でペットといっても、犬や猫をはじめウサギやハムスターのような小動物、鳥類や爬虫類に至るまで様々な種類がいます。

犬や猫の寿命は10年~15年ほどですが、動物の種類によって寿命に差があり、オウムなどの鳥類では60年以上の寿命を持つものも。かかりやすい病気やケガについても多種多様です。

そのため、ペット保険では対象となるペットの種類が商品によって決まっています。多くのペット保険では犬と猫のみが対象となり、鳥類や小動物、爬虫類などが加入できる商品は少数です。自分が希望する補償内容のペット保険であっても、飼っているペットが対象外の種類である場合には加入することができません。

2-3 補償の対象となる治療が決められている

ペット保険は、すべての病気やケガを補償するものではありません。健康上問題ないとされる治療や、ワクチンの接種で予防可能な感染症などは、多くのペット保険で補償対象外です。

代表的な例として、下記のようなものが補償対象外となっています。

  • ・歯の治療やトリミングなど健康体への処置とされるもの
  • ・予防接種やワクチン接種で防げる感染症(狂犬病・フィラリアなど)、予防接種費用
  • ・妊娠・出産、妊娠中の病気やケガ
  • ・避妊手術、去勢手術

一見、補償されそうな治療や手術でも対象外となるものもありますね。上記は例として挙げましたが、ほとんどのペット保険が対象外としている場合であっても、商品によっては補償対象となるケースもあります。各社の商品によってその補償内容は多岐に渡るため、事前の確認が必要です。

また、犬や猫、鳥といった動物の種類でも補償の内容は違い、それぞれに補償される病気やケガ、そして年齢による制限があります。

例えば犬の場合、小型犬でよく見られる病気に「膝蓋骨脱臼」(しつがいこつだっきゅう)というものがありますが、この病気は補償の対象外となるケースがほとんど。このことを知らない状態で加入してしまうと、発症して治療をしても保険が適用されず、せっかくのペット保険がムダになってしまいます。

ペット保険に加入する前に、飼っているペットがかかりやすい病気やケガなどの特性を知ることも重要なポイントです。

2-4 商品によってはペットによる損害賠償が付いている

もう1つ、ペットを飼っていて心配なのは「他人を傷つけてしまう」こと。飼い犬が他人を咬んでしまったり、ひっかいてしまったりなど、いくらしつけをしていたとしても100%防げるわけではありません。

ペット保険では、万が一飼っているペットが他人の身体や財産を傷つけてしまい、損害賠償を請求された場合に備えるための「賠償責任補償」が付いているものがあります。これは、日常生活の事故により他人や他人の財産などに損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる補償です。

賠償責任補償が用意されているペット保険では、補償を付けるか付けないかをオプションとして選択できるようになっており、希望する場合のみ基本補償に追加することができます。

この補償は、ペット保険では「ペット賠償責任特約」といった名称になっていることが多いのですが、自動車保険や火災保険では「個人賠償責任特約」といった名称で販売されています。保険金額の上限に違いがあるものの、どちらも補償内容は同じです。

ペット賠償責任特約と個人賠償責任特約の両方に加入していても、適用されるのはどちらか一方のみとなりますので注意してください。すでに個人賠償責任特約を付けている場合は、ペット保険で新たに付ける必要はありません。

2-5 保険金の受け取り方法は2つ

ペット保険の保険金の受け取り方法は2通りあります。1つは後日請求し受け取る「後日請求型」、もう1つは治療費などを支払うときに精算する「窓口精算型」です。

  • ・後日請求型…治療した病院で費用を全額支払い、後日、領収書などの書類を保険会社に提出し保険金を受け取る
  • ・窓口精算型…治療した病院の窓口で保険金を精算できる。病院窓口での支払いは自己負担分のみの支払い
ペット保険の保険金の受け取り方

受け取り方法は上記の2通りとなりますが、商品によっては保険金の受け取り方法があらかじめ決まっています。そのため、加入時に受け取り方法も含めた検討が必要です。

2つの方法を比べてみると、窓口精算のほうが手続きも少なくその場で精算できるため、一時的な費用負担も少なくすみます。しかし、窓口精算ができるペット保険は商品数が限られていますので、補償内容を優先したい場合には後日精算の商品となる可能性が高いです。

⇒ペット保険の選び方~トラブルにならないために押さえておきたいポイント

3.ペット保険の保険期間や保険料は?

人間よりも寿命が短いペット達。人間に対する医療保険であれば終身型や10年ごとの定期・自動更新型など保険期間を選ぶことはできますが、ペット保険で契約できる保険期間は最高で何年になるのでしょうか。

また、気になるのは保険料です。家族同然のペットには長生きして欲しいものですが、あまりにも保険料が高額になってしまっては家計を圧迫してしまいますよね。

ここではペット保険の保険期間と保険料について解説します。

3-1 ペット保険の保険期間は1年ごと

保険期間とは、契約後に補償がいつまで続くのかということで、この期間の中で病気やケガをした場合の治療費に対して保険金が支払われます。

人の医療保険では終身や10年単位など様々な保険期間を選ぶことができますが、ペット保険の場合は1年となることがほとんどです。そのため、更新についても1年ごとになります。

3-2 保険料は基本的に3つの要素で決まる

ペット保険の保険料のベースは下記の3つの要素で決まります。

  • ・ペットの種類や大きさ
  • ・ペットの年齢
  • ・補償割合

まず、種類や大きさです。

ペットの種類とは、犬や猫、鳥類・爬虫類・小動物などのことで、さらにその中で大型か小型かなどで保険料が変わります。例えばペットが猫であれば、大きさで制限のある場合はほとんどありません。しかし犬の場合には、小型犬・中型犬・大型犬で保険料が変わり、大型犬のほうが保険料も高くなります。

次の年齢ですが、これは人間と同じように、ペットも高齢になればなるほど病気やケガのリスクは高まりますので、保険料も年齢とともに上昇していきます。なお、人間のように1歳区切りではなく、ある程度の幅を持って保険料が設定されているケースもあるようです。

犬の大きさと年齢による保険料のおおよその相場を表にしてみましたので、参考にしてください。

犬の大きさと年齢別の保険料相場

猫の場合は大きさによる区別はなく、年齢で保険料が変わってきます。

猫の年齢別の保険料相場

そして、第2章でも少し触れたように、治療費をどこまで負担するのかという補償割合によっても保険料が変わります。補償割合は商品により異なりますが、基本的に50%~100%の間で設定されており、その中から選択する形です。補償割合が100%に近いほど、保険料も高くなります。

⇒ペット保険の選び方~トラブルにならないために押さえておきたいポイント

4.そもそもペットに保険は必要なの?

ペット保険は比較的新しい保険であることから認知度がまだ低く、加入率も高くありません。また、1年単位の更新型の掛け捨て保険であるという特性から、「ペット保険は不要なのでは?」と思われる方も多いようです。しかしその一方で、経済面や精神面から「やはりペット保険に加入しておいたほうが安心だ」という意見も多くあります。

近年では、飼育環境の改善によってペットの寿命も延び、ペットが高齢となるケースも珍しいことではありません。しかし、高齢になれば人間と同じように様々な疾患やケガのリスクも高まります。また、手術や入院が必要となる場合には医療費が高額となるケースも。

すべてのペットが病気やケガをするとは言い切れませんが、すべてのペットが健康であり続けるわけでもありません。最終的には飼い主の判断となりますが、家族の一員として共に過ごしたペットには充分な治療を与えられる環境を築いておきたい方も多いでしょう。

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まとめ:ペットの特性に合わせた保険を選ぼう!

ここまで、ペット保険とはどういった保険なのか、その概要から補償内容、必要性に至るまでをまとめました。

ペットといっても様々な種類の動物が存在します。そして、同じ種類であっても人間がひとりひとり違うように、動物にもそれぞれ体質や個性があります。 ペット保険を申し込む際は内容をよく確認・検討し、それぞれに合ったものに加入しましょう。