ペットが抱える病気やケガなどのリスクに備えて、近年ではペット保険に加入する人が増えています。
しかし、いざペット保険に加入しようとして調べてみると、取り扱っている保険会社がたくさんあり、さらに細かな補償内容の違う保険商品がズラリ。これでは「どれにすればよいか」というよりも、「どうすればよいか」と頭を抱えてしまいそうです。
さらに、せっかく加入したペット保険であっても内容を正しく理解していないと、いざというときに保険金が支払われないなど、トラブルに発展するケースも。保険金を受け取れないとなると、今までに払った保険料がムダになってしまうだけでなく、費用的な面からペットの治療を断念せざるを得ない状況になる可能性もあります。
ペットには少しでも健やかな毎日を送って欲しいもの。飼い主としては万が一の際にも責任をもって後悔することのないような環境作りをしておきたいものです。
そこでこの記事では、ペット保険を選ぶときに押さえておきたいポイントや注意点をわかりやすく解説していきます。ペット保険にどのようなメリット・デメリットがあるのか、また、どのようなトラブルが起こりがちなのかを事前に知ることで、ペットの特性に合わせた最適なペット保険選びができるはずです。
⇒ペット保険の仕組みや補償内容などのキホンを知りたい方はこちら
1.ペット保険に加入するメリットは?
ペット保険と聞けば、高額になりがちな医療費の負担を減らすことや、ペットが他人に損害を与えた際の賠償責任補償を追加できることがまず思い浮かびます。しかし、実はそれ以外にも様々なメリットを得ることができるのです。
ここではペット保険のメリットについて具体的に解説していきます。
1-1 家族同然のかわいいペットを守ってあげる
「ペット保険に入っているから何かあっても安心だ」と思えること。意外にもこの安心感というのはペット保険の大きなメリットなのです。
例えば犬や猫の場合、ある程度の風邪であれば自然治癒で治すことができますが、治りは遅くなります。これは私たち人間にも言えることであり、自然に治すとなると辛いですよね。さらに症状が長引くと悪化し、命を奪う危険性も高まります。これは犬や猫でも同じだと言えるでしょう。
大切なことは、早めに動物病院で診察を受け、症状に合った適切な処置をしてもらうことです。しかし動物病院に通った経験がなければ、どの程度の処置で費用がいくらになるのかも見当がつかない状態ですから、自然と腰も重くなりがちです。
そこで、ペット保険に加入していれば補償割合に応じた保険金を受け取れるため、経済的な面で動物病院へ行くことへの抵抗感も減ります。その結果、早期治療を行うことで長生きできる環境作りができ、ペットを守ることができるのです。
1-2 ペットにかかる医療費の負担が軽くなる
ペットには私たちの健康保険が適用されないのはもちろん、そもそもそういった公的な制度もありません。したがって動物病院で治療を受けた場合の費用は全額が自己負担です。
もしペットの治療費が家計を圧迫してしまう原因になると、ケガや病気をしても動物病院に連れていくのをためらうことになります。結果、辛い思いをするのは他でもないペットです。
しかし、ペット保険に加入することで、通院費・手術費・入院費といった費用負担を軽減することができます。高額になりがちなペットの医療費であっても、安心して通院させることができますよね。
1-3 商品によっては病院の窓口で精算できる
ペット保険のメリットとして特徴的なのが、保険金を窓口で精算できることです。
窓口精算が可能な商品はペット保険の中でも一部となりますが、かかった治療費に対してその場で保険金を適用することができるため、加入時に決めた補償割合が50%であれば、窓口で支払う金額も治療費の50%、つまり半額で済むのです。
大半の商品では保険金の受け取りが後日精算となることが主流で、一度窓口で全額を支払い、後日保険金の請求手続きをする必要があります。しかし、窓口精算が可能な商品に加入していれば、全額をその場で支払う必要がありません。
急なケガや病気のときには、すぐにでも病院へ連れていきたいものですよね。窓口精算であれば、金銭的に余裕がない場合にも費用負担が少なく済み、面倒な保険金請求手続きも不要です。
1-4 飼い主としての責任を果たすことができる
ペットを室内で飼う人が増え、医療技術も発達していることからペットの寿命は伸び、最近では平均寿命以上に高齢となるペットも珍しくありません。これまで家族同然に可愛がってきたペットを最期まで見届けることも、ペットが亡くなった後のことを考えることも、飼い主の責任です。
ペット保険には、万が一の病気やケガ・事故はもちろん、亡くなった場合の葬儀費用補助なども追加できるオプションサービスがあります。元気なときにはあまり考えたくないことであっても、保険でカバーしておけば、いざというときにも安心です。
2.ペット保険のデメリットは?
ペット保険は、加入条件や補償内容によってはデメリットになってしまう部分もあります。「思っていたような補償がされなかった」というような加入後のトラブルを防ぐためにも、加入前にデメリットを把握したうえで検討するようにしましょう。
2-1 補償対象にならない治療がある
ペット保険は、どんな治療でも補償してくれる保険ではありません。動物病院にかかったとしても、補償されない治療もあるのです。
大まかにいうと、「病気ではない治療」が補償対象外の治療にあたります。例えば、避妊・去勢手術、出産など、ペットを飼ううえで必要とされることの多い手術や、ワクチン接種など予防を目的としたものがそうです。また、先天性異常と呼ばれる生まれつきの症状に対する治療は、ほとんどが補償の対象外となります。
下の表はアニコム損害保険における補償対象外となる治療の一例です(*2)。ただし、表にある治療であっても他のペット保険商品によっては補償対象に含まれていたり、反対に表に無い治療でも補償対象外になっている商品もありますので、あくまでも参考としてください。
2-2 治療費が全額補償されないタイプが主流
ペット保険では保険金額の補償割合(負担割合)を設定する商品がほとんどです。一般的には50%~90%程度の費用を保険会社が負担する商品が多くなっていますが、一部では100%補償のペット保険もあります。
そして、補償割合をベースに基本補償となる通院・手術・入院の上限金額が決まることが一般的です。補償割合を100%に近づけるほど自己負担金額は少なく済みますが、支払う保険料は高くなります。家計の状況に合わせた保険料と補償内容のバランスが重要です。
2-3 長期契約ができない
ペット保険の契約は、基本的に1年ごとの更新契約となります。そのため、私たちの医療保険のような、10年単位の長期契約や終身契約をすることができません。
また、長期的な治療が必要となる疾患の場合には、加入中のペット保険でも翌年の更新ができないケースもあります。
2-4 ペットが歳を取るごとに保険料が上がっていく
ペット保険の保険料は、ペットの年齢とともに上がります。
ただし、何歳で保険料がどの程度上がるかは、ペット保険の商品や対象となるペットの種類によってさまざまです。3歳ごとに高くなるものもあれば、毎年上がっていくものもあり、一定の年齢に達した後は定額になるというペット保険もあります。
飼っているペットの平均寿命などを考慮し、加入条件を確認するようにしましょう。
2-5 年齢によっては加入できなくなる
高齢のペットを飼う場合に心配なのが、新規加入におけるペット保険の年齢制限です。各社の商品を見てみると、現在は犬・猫の場合で最高で12歳まで新規加入が可能となっているものが多いようです。
一度加入すれば終身まで契約更新が可能な商品もありますが、一定の年齢を超えると更新ができないものもありますので、加入前にあらかじめ加入条件を確認しておきましょう。
3.ペット保険を選ぶときのポイントは?
ここからはさらに実践的に、どのようなペット保険をどのような条件で選べばよいのか、実際にペット保険に加入するにあたって注意するべき点と、ペット保険を選ぶときのポイントをまとめました。現在加入中の方も、これから加入を検討している方も、ぜひ参考にしてください。
3-1 自分のペットの健康状態とかかりやすい病気を把握
まず、飼っているペットの種類や、その特性がどういったものかを知ることが重要になります。なぜなら、ペットの種類によってかかりやすい病気は違い、同じ動物であっても犬の種類や猫の種類のような品種によっても病気やケガをしやすい部位などが変わるからです。
下記の項目は最低限必要な情報となりますので、事前に確認しておきましょう。
- ・年齢……何歳なのか。不明の場合は動物病院で推定年齢を調べる
- ・健康度……これまでにかかった病気やケガの状況。現在の健康状態
- ・ペットの種類の特性……かかりやすい病気やケガの種類など
年齢が不明の場合には、動物病院で推定年齢を確認してもらうことができます。また、これまでの病歴やケガの内容に加えて、現在の健康状態を事前にチェックしておくことも大切です。加入時に持病が判明した場合は加入自体ができませんし、加入してもすぐに補償が開始されるわけではありません。
ペットの特性を知り、かかりやすい病気やケガを知ることで、その症状をカバーできる最適な保険を探すことができます。
3-2 何歳まで更新できるかを確認する
前章のデメリットの部分でも述べましたが、加入後、終身まで更新が可能なペット保険と、更新年齢に制限のある保険があります。
更新年齢に制限がある場合には、一定の年齢に達するとその後の更新ができません。新規で加入可能な年齢の保険があれば乗り換えも検討できますが、新規加入ができない年齢になってしまうと、その歳を境に無保険状態になります。
将来の経済状況や加入時点でのペットの年齢などを考慮して、加入時に何歳まで保険をかけるかもあらかじめ決めておくと保険選びがスムーズです。
3-3 補償範囲をどこまでにするか
ペット保険の補償範囲は、飼っているペットがかかりやすい病気やケガなどを把握したうえで選びます。
具体的には、
- ・基本補償となる通院・入院・手術すべてをトータルでカバーするタイプ
- ・基本補償の中から通院のみ、入院や手術のみといった限定的なタイプ
のどちらにするかです。
トータル補償タイプであれば、広範囲の治療費用をカバーすることができますが、保険料は高くなります。限定プランであれば、例えば手術のみを補償するといった形で、保険料を抑えつつも補償したい内容のみを厚くすることができます。
3-4 補償割合や支払い限度日数などの各種条件は?
ペット保険には補償割合があり、通常は50%~100%の割合で保険会社が支払う保険金の割合を決めることができます。さらに、補償割合をベースに基本補償(通院・入院・手術)の限度額や限度日数がプランによって分かれていることが一般的です。
この部分は支払う保険料に直接影響してきますので、経済状況などを考慮し検討しましょう。補償割合を100%に近づけるほど、自己負担金額が減る一方で保険料が高くなります。
また、ペット保険は契約後すぐに補償が開始される商品もありますが、一定の待機期間の経過を条件としているものがほとんどです。通常で30日程度の期間となりますが、がんになったことのあるペットの場合は120日程度となることが一般的です。
保険料を加味しながらそれぞれの条件面を調整しましょう。
3-5 保険金の支払い方法を確認する
ペット保険の保険金の支払方法には2通りあります。1つは窓口で一度全額を支払い後日保険会社に請求するタイプ、もう1つは窓口で精算が可能なタイプです。
窓口精算タイプであれば、動物病院の窓口で治療費を保険金で精算することができるため、決められた補償割合に応じた残りの額のみの支払いで済みます。また、その場で精算するため面倒な保険金の請求手続きも省略できます。
しかし、窓口請求のできる商品数は少なく、加入条件や補償内容の選択肢が少ないのが現状です。
3-6 損害賠償特約や健康診断などの付帯サービスは?
ペット保険では基本補償以外にも「特約」と呼ばれる有料オプションを追加することができます。
主な特約としては、ペットが他人を咬んでしまった場合や、他人のモノに損害を与えたことによって発生する損害賠償を補償する「賠償責任特約」があります。損害賠償は高額となるケースが多く、1,000万円以上の請求をされるケースも珍しくありません。したがって、なるべく追加しておいたほうが安心な特約です。
しかし、すでに自動車保険や火災保険など他の保険契約で「個人賠償責任」という補償がある場合は同じ内容となり、どちらかの保険でしか適用されませんので、ペット保険で追加する必要はありません。
その他にも、各社で様々な特約が用意されています。主なものを一覧にまとめました。
また、追加保険料が不要な付帯サービスには以下のようなものがあります。
3-7 あくまで自分や家族の保障を優先する
かわいい家族同然のペットだからこそ、充分なケアが受けられるように、最大限の補償をつけたいという方も多いはず。とはいえ、補償内容や特約を追加するほど、もちろん保険料も高くなります。
もし保険料が家計の負担に感じる場合には、自分や家族の保障を優先する決断をしましょう。ペットは家族同然ではありますが、飼い主であるあなたや家族がいなければ生きていくことはできません。
3-8 ネット保険で完結させるか、対面で相談しながら決めるか
ペット保険の申込みには、主に2つの方法があります。
・ネットでの申込み
・保険代理店での申込み
この他に、ペットショップでもペット保険の取り扱いがあれば申込みができますが、取り扱っている商品数が少なく、他の商品と比較検討できない可能性があります。ですので、ここではネットからの申込みと保険代理店での申込みについて詳しく解説していきます。
まず、ネット申込みのメリットは、保険料が代理店契約に比べて安く済み、自宅で申込みを完結できる点にあります。
一方でデメリットとして、豊富なペット保険のラインナップの中から自分のペットに適した保険を選ぶには、商品内容を理解するための保険知識と商品を調べるための時間的コストがかかることが予想されます。
その点、保険代理店での申込みであれば、保険のプロが飼っているペットに適した保険を提案してくれます。相談時間や移動時間といった時間的コストは同様にかかりますが、疑問や不安な点を解消したうえで、納得のいく保険選びができると言えるでしょう。
ペット保険は1年ごとの更新契約ですので、迷った場合は「今回は代理店で契約し来年以降はネット申込みにする」といった方法もあります。
4.ペット保険でよくあるトラブルは?
ペット保険加入後、思っていた補償ではなかったり、保険金の支払条件に合わなかったりとトラブルになるケースがあります。せっかく選んだ保険がムダにならないよう、支払条件や補償内容を理解することが重要です。
ここでは、ペット保険でよくあるトラブルを解説します。保険を選ぶうえでとても大切な部分も多くありますので、ぜひ参考にしてください。
4-1 年齢制限を知らずに契約し短期間で補償が終了してしまう
加入条件でよくあるトラブルが、加入年齢制限です。保険期間中に加入年齢制限を超える場合には、契約途中で補償が終了してしまう場合があります。
加入年齢制限は商品によって違いますので、A社の商品で12歳までOKだったとしてもB社の商品では必ずしも同じとは限りません。検討する際に思い違いをしてしまうことでもあるので、加入前にもう一度条件を見直すようにしましょう。
4-2 更新時に健康状態が悪化していて更新できない
契約期間中に病気などにかかり、1年以上の長期的な治療が必要な場合などでは、加入しているペット保険の更新を断られることがあります。
ペット保険は持病や疾患があると契約できないことがほとんどです。保険に入っているからどんな病気でも安心というものではなく、比較的短い期間の治療で完治するケガや病気を補償してくれる短期保険であるという性質を理解しておきましょう。
4-3 ペットだからといって告知をおろそかにして保険金が下りない
私たちは生命保険や医療保険に加入する際に、これまでの病気の状況や持病がないかなどを報告する義務があります。これを告知義務と言いますが、ペット保険も同様に、加入の際にペットの状態について告知が必要です。
この告知について虚偽があると保険金が支払われません。安易に「ペットだからバレないだろう」と告知を怠ることは告知義務違反となり、保険金が支払われませんので、正しい情報を告知するようにしましょう。
4-4 ペットがかわいいあまり補償外の高額治療を受けてしまう
ペット保険に加入していても、高額治療を受けたときに支払いの対象外である場合があります。動物病院で緊急を要する判断が必要な場合などもありますが、不明な場合は一度、加入している保険会社に電話で確認し、治療を受けるかどうかを判断するようにしましょう。
かわいいペットにはできるだけ長生きして家族のそばにいてもらいたいもの。今では動物医療が発達し、ペットも様々な治療を受けることができます。しかし、ペット保険はすべての治療に対して補償されるとは限らないのです。
4-5 補償割合を理解せずに全額補償されると思い込んでしまう
よくありがちなトラブルの1つに、補償割合の認識がずれているケースがあります。
ペット保険では、通院・入院・手術といった基本補償の保険金の支払いに対して、通常は何割までを補償するのかという補償割合が設定されています。しかし、この補償割合を理解していないまま契約し、全額補償されるものだと思い込んでしまうことからトラブルに発展することがあります。
補償割合がどのように設定されているのか、契約時にしっかりと理解したうえで加入をするようにしましょう。
とはいえ、暮らしの中で加入する保険はペット保険だけではなく、火災保険や自動車保険、生命保険といった数々の保険があります。また通常であれば保険を活用する場面は、そう多くはありません。そのため、補償内容を理解して契約をしたとしても、保険を使う際には補償内容を忘れていてもおかしくはないのです。したがって、万が一の際にすぐにペット保険の補償内容を確認できる状態にしておくことも大切です。
4-6 待機期間中に治療を受けて保険金が下りない
多くのペット保険では、契約後すぐに補償が開始されるわけではありません。
ペット保険の加入条件として、ペットが健康体であることが前提としてあります。そのため、病気やケガをしても補償がされない一定の期間を「待機期間」として定めているものがほとんどです。この待機期間の日数は商品によって変わり、通常は契約後30日間、がんの場合には120日程度が一般的となります。
このように待機期間の設定のあるペット保険では、契約したからといってすぐに治療を受けたとしても補償がされません。なお、商品によっては待機期間のないものもありますので、商品を選ぶ段階でよく検討するようにしましょう。
まとめ:ペット保険の内容を理解して最適なペット保険を選ぼう!
この記事では、ペット保険の選び方を中心に、そのポイントと注意点やトラブル対策にいたるまでをまとめました。
ペット保険を提供する会社は多くあり、その補償内容や加入条件も多岐に渡ります。それと同じように、飼っているペットの特性も多種多様です。せっかく加入した保険が適用されないといったトラブルにならないよう、まずはペットの特性を知り、そのうえで最適なペット保険を選びましょう。