入院費用の自己負担が増えた!? 地味に痛い入院時の食事代と居住費の値上げについて解説!

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保険の基礎知識
入院費用の自己負担が増えた!? 地味に痛い入院時の食事代と居住費の値上げについて解説!

またしても、入院費用の自己負担が増えました。

入院費用の自己負担増というと、入院や手術にかかる医療費をイメージしがちですが、今回のご紹介するのは「食事代」と「居住費」の自己負担の段階的な増加についてです。

すでに食事代と居住費の自己負担は大きくなりましたが、この改訂によって私たちが入院したときにどのくらいの費用の変化が起こるのでしょうか。ここで分かりやすく解説していきます。

1.そもそも入院費用の自己負担額はどうやって決まる?

冒頭で入院時の食事代と居住費が段階的に引き上げられたとお伝えしました。それらが具体的にどのように引き上げられるかを見ていく前に、私たちが入院したときにかかった費用の自己負担額を左右する公的医療保険について見ていきましょう。私たちが入院したときの費用の自己負担が決まる仕組みをおさらいするイメージで読んでみてください。

私たちは病院で入院をして治療を受けたときに、すべての費用を自分で負担することはありません。なぜなら、日本では「国民皆保険制度」のもと、全国民が何かしらの公的医療保険に加入しており、それによって入院したときの費用の自己負担上限が定められているからです。

公的医療保険では、「入院したときの費用」と一言でいっても、「医療費」「食事代」「居住費」など様々な費用があり、年齢や所得に応じてそれぞれの自己負担額が決まっています。なかでも、最も有名なのは医療費の自己負担でしょうか。この医療費の自己負担を例に、大まかな公的医療保険のイメージをお伝えします。

公的医療保険において、私たちの医療費の自己負担は2つの仕掛けによって少なく済むようになっています。それが「医療費の自己負担割合の上限」「1か月のうちに自己負担する医療費の上限額(=高額療養費制度)」です。

おそらく「医療費の負担は3割」という話はどこかで聞いたことがあると思うのですが、これが「医療費の自己負担割合の上限」で、未就学児童やご高齢の方を除いて、基本的に一般の方は外来・入院に関わりなく、かかった医療費のうち3割のみの負担で良いことになっています。

もちろん所得によっても自己負担割合は違うのですが、とりあえず3割負担の一般の方を例にして、残りの7割がどうなるかというと、公的医療保険制度から病院に支払われる仕組みになっています。

ですが、いくら3割といっても、もともとの医療費が高額な場合、自己負担も大きくなります。極端な例ですが、重い病気で長期入院をしたり、高額な治療を受けたりして、医療費が1か月で合計300万円かかったとしましょう。そうなったら、自己負担割合は3割ですから、90万円は自分で負担しなくてはならない計算です。こんな大金を本当に払うのでしょうか?

そのような事態を避けるために、公的医療保険制度では自己負担割合の上限とは別に、「高額療養費制度」という個人が1か月のうち自己負担する医療費の上限が設けられています(*1)。こちらも年齢や所得に応じて設定額の差があるのですが、一部の例外を除いて70歳未満の一般の方の医療費の自己負担の上限は次のようになっています。

  • ●70歳歳未満の一般の方の場合
  • 80,100円+(かかった医療費の10割相当-267,000円)×1%=自己負担する医療費の上限額

この式で算出された金額が医療費の自己負担の上限になるので、それを超えて支払った部分は払い戻されます。

先ほどの例でいえば、仮に1か月で300万円の医療費がかかったとしても、まず「自己負担割合の上限」によって3割負担で自己負担は90万円になります。さらに、その90万円も「1か月のうちに自己負担する医療費の上限(=高額療養費)」によって、結局のところ最終的な自己負担は107,430円のみです。

非常にザックリとご説明しましたが、このように私たちは「自己負担割合の上限」「1か月のうちに自己負担する医療費の上限」という公的医療保険制度の二層構造で、病気やケガによる医療費が少なく済むように守られているのです。

ある見方をすれば、このように公的医療保険制度は私たちが病気やケガをしたときにかかった費用の自己負担部分を軽減してくれる大変ありがたい制度です。そして、公的医療保険制度では、この医療費と同じように入院したときの「食事代」と「居住費」についても自己負担の上限を設けていたのですが、その上限が段階的に引き上げられているのです。

いったい、どのくらい引き上げられたのでしょうか。

2.地味に痛い食事代と光熱費の値上げ

前章では「自己負担割合」と「高額療養費制度」についてご紹介し、公的医療保険の恩恵で医療費の自己負担が軽減される過程を素描することで、大まかな公的医療保険のイメージをつかんで頂きました。

続いて見ていきたいのは、公的医療保険制度における「食事代」「居住費」の扱いです。
これらの費用にも上限は設定されているのですが、その上限が段階的に引き上げられた、というのがこの記事でお伝えしたい趣旨です。

では、それぞれどのくらいの上限が引き上げられた=入院したときに自己負担する費用が増えたのか具体的に見ていきましょう。

2-1 入院したときの食事代

正確に言えば、入院したときの食事代は「入院時食事療養費」と呼ばれますが、いわゆる入院したときの病院食の費用のことだと考えてください。

この病院食の値段ですが、基本的に年齢に関係なく全国一律で決まっていて、2016年4月以降は「1食につき360円」でした。2016年3月までは1食につき260円だったので、その頃と比べると260円から360円で100円値上がりした計算です(*2)。

さらに、この食事代は平均的な家計の食費などを参考にしながら厚生労働大臣が定めることになっていますが、2018年4月からまたしても100円の値上げが行われ、「1食につき460円」となりました。

食事代

一般的に私たちは朝・昼・晩の3回ご飯を食べますから、2018年4月以降、入院したときの食事の自己負担が1日につき300円増えたことになります。もし2016年3月以前と比べるなら、1日につき600円の自己負担の増額です。塵も積もれば山となると言いますが、長期入院のケースなども考えれば、決してバカにはできない金額でしょう。

なお、図表にもある通り、先ほどは「入院したときの食事代は全国一律で決められている」とお伝えしましたが、所得に余裕がなく住民税が非課税になっている世帯の方や、そのうち所得が一定の基準に満たない方は、入院中の食事代の軽減措置を受けることができます。

2-2 入院したときの居住費

入院したときの居住費とは、具体的に言うといわゆる「光熱水費」のことです。改めて言われるまでもないかもしれませんが、病院でも各種インフラを維持していくうえで、他の施設と同じように、水道代、電気代といった費用がかかります。病院だからと言って特別に免除されるわけではありません。

その居住費は基本的に保険給付+患者の自己負担、つまり国と個人の折半でまかなわれていたのですが、実は2017年10月からその折半の割合が変わり、個人が負担する部分が大きくなりました。

理由としては、「自宅や介護施設で療養している方は居住費(光熱水費)を負担しているのに対して、病院で入院している方はその負担が少ない。これは不公平なので、公平性を保つために入院で療養している方の居住費の負担を少し増やす」とされています。

では、具体的にどのくらい居住費の負担が増えたのでしょうか。

まず1点確認しておきたいのは、この居住費の引き上げが65歳以上の方を対象としていることです。そして、公的医療保険制度では、入院で療養している65歳以上の方を、(1)入院医療の必要性が低い方、(2)入院医療の必要性が高い方、(3)指定難病の方など の3つに区分しており、各区分に応じて1日あたりの居住費の負担額を定めています。

居住費の負担額は、2017年10月と2018年4月の2段階に分けて引き上げが行われ、具体的な値上げの金額としては次の通りになりました(*3)。

居住費

このように見ていくと、決して大きい金額には見えないかもしれません。

しかし、たとえば65歳以上の一般の方が指定難病以外で入院したとしましょう。その場合、先ほどの食事代の値上げと合わせて考えれば、1日につき1,380円(3食の食事代)と370円(居住費)がかかるので、医療費とは別に1,750円の自己負担の費用が発生することになります。

この例にのっとり、30日入院したとしたら5万2,500円、60日入院したとしたら10万5,000円です。そして、その費用とは別に医療費の自己負担もあるのです。

そう考えると、小さな変化に見えても、家計へのダメージは少なくないと言えそうです。

まとめ:これは公的医療保険制度の見直しの一部でしかない!

いかがでしたか?
ここでは、公的医療保険制度の見直しのなかで、「食事代」と「居住費」にフォーカスを当てて解説してきました。しかし、公的医療保険の見直しはこれだけではなく、肝心の「医療費の自己負担の費用」も引き上げられる傾向が見られます。

公的医療保険制度は、主に国のお金で運営されています。しかし、今の国の資金繰りは少子高齢化の進行によって必ずしもうまくいっているとはいえず、特に財政を圧迫している公的医療保険制度をはじめとした公的な制度を徐々に縮める方向に進んでいるのです。

今回ご紹介した公的医療保険制度の食事代や居住費の自己負担の引き上げも、そのような大きな流れの先触れに過ぎません。これから私たちは、“いざというとき”に民間の保険や貯蓄などで「自衛」していかなくてはいけない時代を生きていくことになるかもしれないのです。

保険見直し本舗では、そのような自衛の方法の1つである保険選びのお手伝いをしております。知識と経験も豊富な保険のプロが、皆さんのご質問に一つ一つ丁寧にお応えします。安心して日々を過ごしていただくためにも、まずはお気軽にご相談をお寄せください。心よりお待ちしております。