イデコ(iDeCo)のデメリットは!? どんなことに気を付けるべき?

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資産形成・貯蓄
イデコ(iDeCo)のデメリットは!? どんなことに気を付けるべき?
イデコ(iDeCo)は確定拠出年金のうちの「個人型」で、加入者一人ひとりが毎月掛金を出して老後の生活資金を積み立てていく私的年金制度です。 このイデコは、他の資産運用に比べて、税制優遇をはじめとする多くのメリットを備えた制度だと言われています。しかし、メリットもあればデメリットもあることを忘れてはいけません。そこで、この記事ではイデコのデメリットをいくつかご紹介していきます。 デメリットと言っても、たいていのものはメリットの裏返しでもありますので、制度の特徴をしっかり把握すれば決して恐れるものではありません。7項目をピックアップし、どんなデメリットがあるのかということをご説明するとともに、留意しておくべきポイントも解説していますので、ぜひ最後までお付き合いください。

イデコ(iDeCo)のデメリットと留意しておきたいポイント

1.原則60歳まで引き出すことができない

イデコは「個人型確定拠出年金」の愛称です。名前のとおり「年金」ですので、老後の生活のための資金となります。 公的年金が一定の年齢にならないと支給されないのと同じように、イデコで積み立てた資産も、原則的に60歳になる前に解約して現金として引き出すことができません。これは企業型の確定拠出年金でも同じです。 「自分で積み立てたお金なのに自由に引き出せないのは腑に落ちない」という方もいらっしゃるかもしれません。そのような仕組みになっている理由は、確定拠出年金が導入された目的に関係しています。 そもそもイデコを含む確定拠出年金は、老後の資産形成に関して、自助努力によって公的年金を補完してもらうことを目的に導入されました。そのため、途中で現金化してしまってはその目的を果たせなくなってしまいます。その代わりに、自助努力をサポートするための大幅な税制優遇が与えらえている制度なのです。 60歳になるまで引き出せないことは、逆にメリットとしても考えられます。預貯金のようにいつでも現金化できるとなると、ついつい「少しだけなら」という気持ちで使ってしまう可能性もあるでしょう。 よほどの資産家でない限り、「老後はバラ色の人生が待っている」と若いうちから断言できる方はそう多くないと思います。だからこそ、“60歳まで開けられないけどメリットがたくさんある貯金箱”に若いうちから少しずつお金を貯めていけることは、公的年金がおぼつかないと言われる今の時代では、とても意義があることでしょう。 なお、引き出しの制限に「原則的に」とあるのは、一定の要件を満たせば60歳以前でもイデコを脱退することができ、「脱退一時金」を受け取れるケースがあるからです。 ただし、この要件はかなり厳格で、イデコ(企業型確定拠出年金も含む)の加入者資格がなくなったうえで、それまでの加入期間が短く、かつ資産残高も少ない場合に限られます。法改正でほとんどの方がイデコに加入できるようになった今では、この脱退要件を満たすケースはほとんどなくなっています。
確定拠出年金の脱退要件
さて、イデコ最強のメリットである税制優遇を最大限に活用するためには掛金を上限額に設定すればいいのですが、60歳まで引き出せないことを考えれば無理は禁物。イデコのせいで今の生活が苦しくなっては本末転倒です。家計を圧迫しない程度の金額を毎月積み立てていくのがイデコの正しい利用方法と言えるでしょう。 また、掛金の額は年に1回変更ができますので、どうしてもお金が必要になった場合は最低額の5,000円に切り替えることも可能です。さらに言えば、いつでも掛金の拠出を中断、つまり積み立てを中止することもできるようになっています(再開もいつでも可能)ので、ご自身の経済状況に合わせて資産形成を続けていくことができます。

2.老後に受け取る年金額が事前に確定しない

国民年金(基礎年金)や厚生年金は、現役世代が支払う保険料でリタイア世代の年金をまかなう方式です。したがって、人口構成の推移や国の財源状況で将来の給付予定額が少しずつ変わっていきますが、おおよその年金額は事前に計算されています。 これら公的年金額の計算結果は、年に1回「ねんきん定期便」でみなさんのお手元に届けられているのはご存知でしょう。 また、企業の退職給付制度である退職一時金や確定給付企業年金も、将来に受け取れる金額が事前に確定するように設計されています。 ⇒自分の公的年金はいくらもらえる?「ねんきん定期便」の見方を解説! これらに対して、イデコを含む確定拠出年金では、60歳以降に受け取れる年金額は事前に計算できません。これは次節のデメリットと関係してくるのですが、受け取り時まで積み立てている資産の運用を加入者自身が行い、その成果によって将来受け取れる年金額が変わってくるためです。 ちなみに、毎月の掛金を支払うことを「拠出」と言い、この「拠出金額」が決まっている(=確定している)ため「確定拠出年金」という名称になっています。

3.運用のリスクは加入者自身が負う

前節では確定拠出年金の運用は加入者自身が行うと書きました。正確に言えば、運用そのものは投資の専門家が行うのですが、加入者は金融機関が提示する運用商品を指定する必要があります。つまり、どの運用商品に掛金を投資するかの選択肢はすべて加入者にあると言えます。 リスク性商品である投資信託で運用した場合、運用の結果次第では資産を大きく増やすことができるかもしれません。反対に運用が思うようにいかなければ、資産がほとんど増えないケースも考えられます。場合によっては、これまでの掛金総額よりも受け取れる年金額が少なくなってしまう、つまり元本割れしてしまう可能性もゼロとは言いきれません。この点は確定拠出年金の大きなデメリットとされています。 運用が想定通りにいかずに積立金が減ってしまったら、その結果は自分が受け取る年金額にダイレクトにはねかえってきます。年金資産の運用リスクを加入者自身が負う。そういった点で、確定拠出年金は「自己責任」の考え方がベースになっていると言えるでしょう。 ただ、確定拠出年金の運用商品は分散投資されている投資信託が中心ですので、リスクが比較的抑えられているものが多いとされています。また、掛金支払い時、運用時、受け取り時の3つの局面での税制優遇が備わっていますし、もともと長期にわたって投資を続けていくため複利効果を存分に享受できるようになっています。 そう考えると、他の手法で老後資金を蓄えていくよりも、確定拠出年金はかなり有利な積立方法であると言えるではないでしょうか。 それでも、「元本割れはどうしても許容できない!」という方は、定期預金や保険といった「元本確保型商品」で運用してみてはいかがでしょうか。ただし、最近のような超低金利が続く状況では、資産を大きく増やすことはほぼ望めません。 また、定期預金については、運用による損失のリスクは回避できますが、利息よりも手数料のほうが高くなってしまう可能性が高いことに留意しておく必要があります(手数料のデメリットについては第5節をご覧ください)。 大きなリターン(収益)を目指すのであれば、ある程度のリスクを取ることも必要です。自分が取れるリスクを考えながら、商品をバランスよく選んで運用していきましょう。

4.自分で金融機関を選んで手続きをする必要がある

確定拠出年金では、まず銀行や証券会社、保険会社などの金融機関に自分の口座を作ります。そして、その金融機関が提示する運用商品の中から、毎月の掛け金で購入していく商品を指定して積み立てを行っていきます。この金融機関を「運営管理機関」と呼びます。 企業型の場合は会社が委託した運営管理機関で積み立てを行っていくので、加入者に運営管理機関の選択の余地はありません。これに対してイデコでは、自分の好きな運営管理機関を選ぶことができます。このことはメリットである反面、イデコを取り扱っている運営管理機関を自分で選んで加入手続きをしなければならないというデメリットとも言えるでしょう。 運営管理機関を選ぶポイントとしてまず挙げられるのは、各社が取り扱っている運用商品のラインナップです。 ラインナップは単純に商品本数だけにとらわれずに、そのバリエーションにも注目しましょう。日本国内・海外・債券型・株式型など、値動きが異なるような投資先を対象としている商品を取りそろえていることがポイントです。投資先を分散させることで、一方が値下がりしたときでも、もう一方は下がらない、などというように資産全体のリスクを低減できる可能性があるからです。 また、運用中にかかるコストも見逃せません。毎月かかる口座管理手数料は運営管理機関によって大きく違います。さらに「信託報酬」と言われる商品の運用費用も必要で、こちらは商品ごとに比率が決められているのですが、同じタイプの商品でも運営管理機関によって割安なものが採用されていたり、割高のものしかラインナップになかったりします。 ほかにも、制度や運用に関する情報提供サービスの充実度、そして困ったときに頼りになるコールセンターの利便性なども運営管理機関を選ぶときにはチェックしておきたいところです。 実際の加入方法ですが、まずは自分で運営管理機関を選び、ネット経由で申込書類を取り寄せます。このときには複数の運営管理機関から書類を取り寄せて、サービス内容などを比較してみるのもいいかもしれません。加入したい運営管理機関が決まったら申込書に必要事項を記入し、本人確認書類などとともに返送します。 この一連の流れは、会社で申込書類を準備し加入手続きを案内してくれる企業型に比べれば、それなりの手間はかかります。ただ、書類の書き方がわからない場合はコールセンターに連絡すれば親切に教えてもらえますので、それほど心配する必要はないでしょう。

5.手数料がすべて自己負担となる

イデコに加入して積み立てを行っていくには、すべての手数料を自分で負担しなければなりません。 まず、加入するときに口座開設のための手数料がかかります。この費用は加入時だけに必要で、イデコを主管している国民年金基金連合会の事務費用に充てられます。大部分の運営管理機関が2,829円となっています。 次に、口座を保持している期間中には毎月「口座管理手数料」が掛金から差し引かれます。前節で触れたように、こちらは運営管理機関によって金額が異なり、月額171円から600円台までさまざまです。また、資産残高が多い、たとえば50万円以上や100万円以上保有している場合などには減額している運営管理機関もあります。 なお、この手数料は、毎月の積み立て(掛金の拠出)をしないで、それまでの保有資産の運用だけを行う「運用指図者」の場合でも、口座があるかぎり支払う必要があります。ただし、積み立てを行う「加入者」の手数料よりも月額で100円ほど安くなっているところがほとんどです。 2つの手数料を合計すると、加入初年度では年額でおおよそ5,000円~1万円、2年目以降は2,000円~7,000円程度がかかることになります。 運用商品ラインナップには元本確保型商品も含まれていますので、リスク商品での運用を好まない方はこれらの商品を指定するのもいいでしょう。しかし、上記の手数料を考慮すると、現在のような低い金利水準では「手数料負け」してしまう可能性がかなり高いことを心得ておきたいところです。 前節で、企業型の確定拠出年金では運営管理機関を自由に選べないことをお伝えしました。その代わりというわけではありませんが、企業型では会社が制度の導入を決めて従業員は自動的に加入することになるため、通常これらの手数料を徴収されることはありません。このように手数料を自己負担しなければならない点は、イデコの大きなデメリットと言えるのではないでしょうか。 もっとも、イデコ最大のメリットとされる掛金の全額所得控除による税制優遇も合わせて考えると、上記の手数料を差し引いてもお釣りがくるケースが多いと思われます。 たとえば、掛金を月額1万円、所得税率を5%(独身であれば年収350万円程度)、住民税率を10%、口座管理手数料を月額600円とすると、一般的には以下の計算式が成り立つのではないでしょうか。
    • 掛金合計:1万円×12か月=12万円(全額所得控除)
    • 所得税節税額:12万円×5%=6,000円
    • 住民税節税額:12万円×10%=1万2,000円
    • 節税額合計:1万8,000円
 
  • 初年度の手数料:2,829円+600円×12か月=1万29円 ⇒ +7,971円
  • 2年目以降の手数料: 600円×12か月=7,200円 ⇒ +1万800円
上の式では口座管理手数料を600円として算出しましたが、これが最低水準の171円の場合は、それぞれさらに5,000円以上のプラスになります。このように、手数料の額によって積み立ての効率が大きく変わってくることに留意しておきましょう。 なお、商品の運用費用である「信託報酬」は商品ごとに個別で設定されているため、イデコ・企業型を問わず、その商品を保有している期間にかかるコストです。イデコに限って必要になる費用ではありません。

6.受け取るときに課税されることがある

イデコを含む確定拠出年金は、掛金支払い時、運用時、受け取り時の3つの局面での税制優遇が備わっています。ただし、このなかで受け取り時だけは、自分で積み立てた資産であるにもかかわらず課税対象となってしまうケースがあるのです。このデメリットは、一定金額までは非課税で受け取れるという税制メリットの裏返しと言えます。 受け取り方法は、①一時金、②年金、③一時金と年金の併用、の3通りがあります。それぞれ具体的に見ていきましょう。 ●一時金で受け取る場合 一時金で受け取る場合は退職所得控除が適用されます。退職所得控除は、掛金の積立年数が2年未満ならば80万円、2年以上20年以内なら1年につき40万円ずつ、それ以降は1年につき70万円ずつ控除額、つまり非課税となる金額が大きくなっていきます。たとえば積立年数が25年の場合は、40万×20年+70万×5年=1,150万円となります。
退職所得控除額の計算方法
ところが、60歳以降の退職時に会社からの退職金と確定拠出年金の両方を受け取ると、それぞれで退職所得控除が適用されるのではなく、合算して計算することになっています。 控除額は勤続年数と掛金の積立年数のうち長いほうで計算されますので、たとえば勤続年数30年・積立年数25年であれば「30年」とされ、40万×20年+70万×10年=1,500万円が非課税枠となります。つまり、退職金と確定拠出年金の合計額が1,500万円を超える場合は所得税がかかるということです。 このように、勤続年数や積立年数が比較的に短いながらも退職金をある程度もらえる方は、非課税枠に収まらない可能性が大いに考えられます。 ●年金で受け取る場合 年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。公的年金等控除は、受け取る時点の年齢が65歳未満の場合は年間60万円までが、65歳以上の場合は110万円までが非課税枠となります。 こちらも税務上、確定拠出年金の受け取り額は国民年金や厚生年金などの公的年金の受け取り額と合算されます。厚生年金は給与などの金額に応じて多くなりますので、現役時代に高収入だった方は課税対象になるケースが出てきます。 ●一時金と年金を併用して受け取る場合 3つ目の受け取り方として、年金形式と一時金形式を併用して受け取る方法があります。金融機関によっては利用できないところがありますが、両方の所得控除を利用できるため、節税対策としては有効な手段と言えるでしょう。   ここで、受け取り方法に関連して、少し別の視点で考えてみましょう。 年金形式での受け取りでは、積み立てた資産を徐々に取り崩していくことになりますので、残高はそのまま非課税で運用を続けられることになります。 一方、一時金での受け取りでは、受け取った全額を使い切るわけではなく、残りを貯金なり投資なりの一般的な方法で運用するとなると、運用益は課税対象となります。これを考えると、確定拠出年金に預けたまま非課税で運用したほうが有利と言えるでしょう。 しかし、またここで別のデメリットが頭をもたげます。年金を受け取るときには1回ごとに給付事務手数料がかかるため、受け取る回数が多くなればなるほどコストも多くかかってしまうのです。また、受け取りが終わるまでは毎月の口座管理手数料もかかってきます。なお、受け取り時は「加入者」ではありませんので、これらの費用はイデコでも企業型でも同様にかかります。
一時金受け取りと年金受け取りの比較イメージ
このように、確定拠出年金をできるだけ有利に受け取るためには、さまざまなコストや税制を考える必要があります。 もっとも、その時点になってみないと積立額も退職金額も公的年金額も正確にはわかりませんし、税制も変更になる可能性があります。さらに言えば、そもそも何歳のときにどの程度の資金が必要なのかによって受け取り方針は変わってきますので、今からそれほど神経質になることはないでしょう。

7.投資に関する知識がある程度必要

繰り返しになりますが、イデコでは自分で運営管理機関を選び、運用方針を決めて商品を選択し、運用の結果について自己責任を負うことになります。運用商品には元本が確保されている定期預金などもありますが、将来の年金資産を増やすためには、リスク性商品である投資信託もある程度は組み入れて運用していかなければ難しいでしょう。 リスク性商品で運用していくには、ある程度の投資に関する知識を身につける必要があります。知識を身につければ必ず資産が増えるというわけでは決してありませんが、少なくとも運用商品ごとの特性(リスクとリターン)を理解し、自分のリスク許容度に応じた運用ができるようにしておきたいところです。 イデコをきっかけに投資や金融の知識を身につければ、毎日の仕事においてはもちろん、住宅ローンや保険の仕組みなどにも詳しくなり、日常の生活でも役に立つ機会がきっと出てくるはずです。

まとめ:イデコのデメリットを正しく理解して賢い資産形成を!

いかがでしたか。この記事ではイデコのデメリットをいくつか挙げてみました。 イデコを含む確定拠出年金は、老後資産形成という長期にわたる資産運用を後押しするために、強力な税制優遇のもとに導入された画期的な制度です。そして、ネットを使える世代であれば誰もが利用できるように、実際の運用指示はとてもカンタンにできるようになっています。上でお伝えしたデメリットを理解しながらうまく活用していけば、決して怖いものではありません。 しかし、加入するにあたっての運営管理機関や運用商品の特徴を理解するには、それなりの知識があったほうがいいと言えるでしょう。また、毎月の掛金をいくらにするか、自分のリスク許容度はどれくらいかなども、多くの方にとって最適解を出すのはそう容易なことではありません。
メリット、デメリットをよく理解したうえで、イデコの活用を検討されてみてはいかがでしょうか?