就業不能保険の選び方~考えるべき4つのポイント~

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保険の基礎知識
就業不能保険の選び方~考えるべき4つのポイント~

就業不能保険は「働けなくなったときに備えるため」のもので、比較的新しい保険です。

また、各保険会社も就業不能保険については各社で保障内容にバラツキが見られることも、就業不能保険の全容を見えにくいものにしているのは確かでしょう。

実際、「よし!就業不能保険を選ぼう!」と思い立ったとしても、医療保険や死亡保険ほど情報が多くないため、一体なにを基準に自分にあった就業不能保険を選べば良いのか途方に暮れている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで、ここでは4つのポイントに絞り「自分にあった就業不能保険の選び方」を分かりやすくお伝えしていきます。是非、皆さんの就業不能保険選びのご参考にお役立てください。

1.保険金額はいくらにする?

就業不能保険は、働けなくなったときに月に一度、給与のような形で保険金を受け取れる保険です。基本的に保険金額は、毎月10万~50万円の間から5万~10万円刻みで選ぶことができます。

では、なにを基準にして自分に合った保険金額を設定すれば良いのでしょうか。ここでは、就業不能保険の保険金額を決める基準についてお伝えしていきます。

そもそも保険は何かしらのリスクに対して備えるための金融商品です。たとえば、医療保険であれば入院・手術のリスクに備える保険ですし、生命保険であれば亡くなった時のリスクに備える保険です。

もしも、医療保険や生命保険の保険金額を考えるときには、「入院・手術をしたときにいくらかかるだろう?」、「亡くなったときには葬祭費用がどのくらいかかるだろう?」という風に、それぞれのリスクに具体的な形を与え、そこから逆算するようにして保険金額を決めていくのが一般的ではないでしょうか。それと同じように、自分にとって適正な就業不能保険の保険金額を考えてみましょう。

1-1 就業不能保険の保険金額は自分の収入をベースに!

就業不能保険は、病気やケガにより働けなくなるリスクに備える保険です。

働けなくなったときの影響としては、代表的なものとして「収入の減少」が挙げられます。収入が減少しても、今までの生活水準を維持し、家族へ負担をかけないようにするのが就業不能保険の役割なのです。だとすると、就業不能保険の保険金額は「収入の減少をカバーできるくらいの金額に設定するのが良い」と言えそうです。

しかし、このような言い方をすると、「なるほど!働けなくなったら給与は途絶えるわけだから、就業不能保険の保険金額はそのまま月収に合わせれば良いのか!」と思われるかもしれません。就業不能保険の保険金額は、月収30万円の方であれば30万円、月収50万円の方であれば50万円という訳です。

もちろん収入は就業不能保険の保険金額を決めるうえでひとつの目安にはなりますが、実はそのほかにも考慮すべき要素があります。

1-2 会社員と自営業とでは必要な保険金額が違う!

たとえ月々の収入が同じくらいだとしても、一人ひとりの働き方や家族構成に応じて、働けなくなったときの収入の減少度合は大きく違ってきます。

働けなくなったときの収入の減少度合を大きく左右するのは、「会社員か自営業か」という点です。会社員と自営業とでは、働けなくなったときに受けられる公的医療保険制度の保障が異なるので、収入の減少の幅も変わってきます。

したがって、就業不能保険の保険金額を決めるときに重要なのは、自分が働けなくなった時にどのくらい収入が減少するのかを正確に把握することです。それをしっかり明確にしておけば、自ずと就業不能保険の適正な保険金額が浮かび上がってきます。

1-2-1 会社員の場合は傷病手当金を加味した程々の保険金額を!

まず会社員の場合、病気やケガで働けなくなった場合、連続して会社を休んで4日目から通算して1年6カ月にわたって働けない状態が続く限り、健康保険から給料の約2/3に当たる「傷病手当金」を受け取ることができます。月収(標準月額)30万円の方であれば月20万円、月収60万円であれば月40万円の傷病手当金を受け取れる計算です(*1)。

さらに会社員は、働けない状態が1年6カ月以上に及び、かつ所定の条件を満たしたとしたら、基礎年金と厚生年金からそれぞれ「障害基礎年金」と「障害厚生年金」が支給されます。

もちろん、これらの公的医療保険制度をフルに利用できたとしても、もともと健康だったときより月収は少なくなることが殆どですが、会社員には様々な制度が用意されているのは確かなようです。

1-2-2 自営業の場合は手厚い保険金額の用意を!

それに対して自営業の場合、働けなくなったとしても、傷病手当金やそれに類する制度は何もありません。自営業で病気やケガに見舞われて働けなくなったら、すぐ次の日から収入が途絶えてしまう懸念があるのです。

自営業でも、働けない期間が1年6カ月以上に及び、所定の条件を満たしたときに、障害年金が受け取れることは会社員と変わりません。しかしながら、先程お伝えしたように会社員は障害基礎年金+障害厚生年金を受け取れますが、自営業は障害基礎年金のみです。総じて自営業の場合、会社員と比べると働けなくなったときの公的医療保険制度は充実はしていないようです。

このように就業不能保険の保険金額は、健康時の自身の収入をベースにし、そこから実際に働けなくなったときに受け取れる公的医療保険制度の保障を差し引いた金額を1つの基準にすると、自分にとって適正な保険金額を導きやすいのではないでしょうか。

2.満期・保険期間はいつまでにする?

生命保険・損害保険に関係なく、どの保険でも「保険が適用される期間」が設定されています。これを満期や保険期間と呼びますが、就業不能保険の場合、おおよそ50歳~70歳のうち5年刻みで選ぶことができます。

たとえば、65歳満期の就業不能保険だとしたら、「65歳でこの保険は終了する」「65歳までの間に所定の就業不能状態になったら、65歳まで所定の保険金を毎月1回受け取ることができる」といった事を意味しています。

では、就業不能保険の満期・保険期間は何を基準に設定すれば良いのでしょうか? ポイントは、「働いている期間のうち全期間をカバーするか」「働いている期間のうち一定期間をカバーするか」です。

2-1 働いている期間のうち全期間をカバーするなら退職にあわせて60歳~70歳!

たとえば専業主婦/主夫家庭の場合、世帯収入の多くを夫婦のどちらか一方が担っています。

もしも、主に世帯収入を得ている方が病気やケガで長期間働けなくなると、世帯収入は極端に少なくなってしまうので、その家族は生活水準を下げざるを得なくなってしまう可能性も考えられます。場合によっては、子どもに将来の夢を諦めさせることになったり、苦労して手にしたマイホームを売り払ったりしなければならないかもしれません。

そのような専業主婦/主夫家庭を始めとした、夫婦のどちらか一方が世帯収入の多くを担っている家庭では、就業不能保険の満期は退職のタイミングに合わせて(60歳~70歳などに)設定すると良いでしょう。

2-2 働いている期間のうち一定期間をカバーするなら50歳~60歳!

家計にはどうしても大きく出費がかさんでしまうタイミングがあります。例を挙げるなら、子どもの進学時期であったり、車や住宅ローンの支払い期間であったり、そのような時にはどうしても出費は大きくなってしまうものです。

たとえば、共働き夫婦のように世帯収入が分散されている家庭であっても、出費が大きくなる時期に夫婦の一方が働けなくなった場合、かなり生活は苦しくなることが予想されます。そのような出費が大きくなる一定期間のみ、働けなくなったときの保障を用意したい方は、満期の設定をそういった出費が大きくなる時期(多くは50歳~60歳など)に設定すると良いかもしれません。

3.保険金の受け取り方はどうする?

繰り返しお伝えしているように、就業不能保険は働けなくなったときに、給与のように毎月一定の保険金を受け取れるタイプの保険です。

しかし、実は必ずしも保険金の受け取り方は一律ではなく、保険会社や保険商品によって違っています。具体的には以下が考えられます。

  • ・働けなくなってどのくらいの期間が経過してから保険金を受け取るか?
  • ・時期に応じてどのように保険金額を設定するか?

それぞれ見ていきましょう。

3-1 働けなくなってどのくらい経ってから保険金を受け取る?

就業不能保険では、病気やケガで働けない状態になったときに保険金を受け取れることはすでに述べましたが、その受け取り開始日を指定することが可能なタイプが一般的です。保険会社や保険商品によって異なりますが、就業不能状態に陥ってから60日後、180日後、1年6カ月後など、いくつかのパターンがあります。

原則としては、働けなくなってから短期間のうちの収入減少をカバーする傷病手当金がない自営業の方は、できるだけ早い受け取り開始日を選ぶと良いでしょう。

それに対して会社員の場合、働けなくなっても1年6カ月間は傷病手当金が支給されるので、必ずしも早い段階に受け取り開始日を設定しなくても良いと言えます。

3-2 時期に応じてどのように保険金額を設定する?

また、就業不能保険のなかには時期に応じて保険金額を変えられるものが存在します。

働き方によって異なりますが、会社員をはじめとして日本では働けなくなってから最初のうちは傷病手当金などの公的制度で収入減少の多くをカバーできる方も少なくありません。ですから就業不能保険では、例えば保険金額の満額を毎月30万円に設定している場合、働けなくなってから収入減少を公的医療保険制度である程度まかなえる間(多くの場合1年6カ月間)は半額の毎月15万円、それ以降は満額の毎月30万円といったように時期に合わせて保険金額の調整ができるタイプがあります。

基本的にこのような時期に応じた保険金額の設定も、傷病手当金を受け取れる会社員であれば最初は半額で良いでしょうし、逆に傷病手当金を受け取れない自営業であれば最初から満額の設定にしておいたほうが良いでしょう。

4.保険金の支払い条件にご注意を!

就業不能保険を選ぶときに重要なポイントの一つが「支払い条件」です。

原則的に就業不能保険では、働けなくなった状態=就業不能状態に該当したときに保険金が支払われます。就業不能状態とは、具体的にいうと次のような状態を指しています。

  • ・病気やケガの治療を目的として、病院あるいは診療所で入院している状態
  • ・病気やケガにより、医師の指示のもと在宅療養で治療に専念している状態

しかしながら、まだ比較的新しい保険である就業不能保険の支払い条件は、医療保険や生命保険ほど各保険会社で一律の基準は設けられていないのが現状です。言うなれば「就業不能状態に陥ったときに保険金を支払う」という大まかな方向性は共通しているものの、各保険会社や保険商品によって、就業不能状態の内実や、就業不能状態になっても保険金を支払われない例外の規定が大きく異なっている場合が少なくなりません。

一例を挙げるとすれば、「就業不能状態の定義が国民年金法の定める障害者等級1級もしくは2級相当の状態」であったり、「出産・精神疾患による就業不能状態の場合、保険金の支払いは受けられない」など様々です。

先述したようにこれらの保険金の支払い条件は各保険会社によって変わってくるので一概には言えませんが、一般的にいえば支払い条件が厳しければ月々の保険料は高くなり、逆に支払い条件が甘ければ月々の保険料は安くなります。

自分自身が備えるべきリスクと、就業不能保険に投じることのできるコストを冷静に見極め、自分にあった支払い条件の就業不能保険を選びたいところです。

まとめ:就業不能保険選びは慎重に!

いかがでしたか?
ここでは、就業不能保険の選び方について4つのポイントをお伝えしました。

  • ・保険金額は自身の収入と活用できる公的医療保険制度から考える!
  • ・満期や保険期間はカバーしたいリスクが続く期間に応じて決める!
  • ・保険金の受け取り方は働けなくなったときにどのように収入が減少するかを具体的にシミュレートして決める!
  • ・加入前に保険金の支払い条件は必ず確認する!

しかし、ここでお伝えしたことは就業不能保険を選ぶ上でのごく基本的なことに過ぎません。

就業不能保険を選ぶ場合には、現在の収入はもちろん、職業や家族構成、住宅ローン、将来のライフプランなども含めて総合的に考えていかなければなりません。特に就業不能保険の場合、まだ歴史の浅い保険なので、仕事や家事の合間をぬって情報を集めるのも一苦労です。

「就業不能保険に興味はあるけど、ちょっと自分だけで選ぶのは大変そうかも…」

少しでもそう思われた方はプロの助言を聞いてみるのも良いのではないでしょうか。保険見直し本舗でも、皆さんの保険選びのお手伝いをいたします。

保険見直し本舗には知識も経験も豊富なプロとして、コンサルティングアドバイザーが多く在籍しており、皆さんの保険に関するお悩みに一つひとつ丁寧にお答えいたします。まずはお気軽にご相談ください。心よりお待ちしております。