定期保険と終身保険、医療保険はどちらを選ぶべき?

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保険の基礎知識
定期保険と終身保険、医療保険はどちらを選ぶべき?

現在、各社から販売されている医療保険には実に多くの種類があります。保障内容を絞り、その分保険料を安くしたもの。反対に、支払う保険料は高くなるけれども、充実した保障内容で安心感を高めたもの。特定の疾病に特化したものや、持病があっても加入できるものなど、本当にさまざまです。

ですがこれら多くの保険商品は、「定期保険終身保険か」によって2つに分類することができます。この項では、これら2つの違いについて、考えてみることにしましょう。

⇒医療保険はこう選べ!商品を比較する前に知っておきたい3つのこと

1. 医療保険の大きな違い、定期型と終身型

1-1 車でわかる、定期型と終身型の違い

現在、医療保険と一口で言っても、さまざまな種類がありますが、基本的に「定期タイプ」「終身タイプ」のどちらかに属しています。

中には、ひとつの商品に「定期タイプ」「終身タイプ」という、異なるタイプ設定が用意されている場合もあります。こういうケースを見ると「定期と終身とは『別バージョン』のようなもの」と思われるかもしれません。実際にそうした認識をお持ちの方も多いでしょう。ですが実際には、そのようなものではありません。たとえ話でご説明しましょう。

乗用車で考えてみましょう。

現在の車はそのほとんどがオートマ車(オートマチックトランスミッション、いわゆるAT)ですが、それとは別に数は少ないながらもMT、つまりマニュアルトランスミッションを積んだ車もあります。MTはドライバーの技術がそのまま走行性能に大きく影響しますし、それによって乗り心地や燃費も変わってきます。運転のしやすさ、面白さという点でも大きく異なるでしょう。たとえ同一車種であっても、ATとMTではまったく違う車であるかのような差が生まれることもあります。

医療保険における「定期」と「終身」の違いは、まさにこのATとMTほどの違いがある、と考えていただければ良いでしょう。

1-2 定期型と終身型、いったい何が違うのか?

たとえ同じ商品であっても大きな違いを生む「定期」と「終身」。いったい何がそこまで違うというのでしょう? そもそも、定期と終身の違いとはどこにあるのでしょうか?

これは簡単に言ってしまうと「保障期間の違い」ということになります。定期保険はある定められた期間のみを保障し、その期間が満了すれば保険契約が消滅、保障はなくなってしまいます。一方の終身保険は一度契約すると、一生涯を通じて保障が続きます

こうした違いは、人それぞれの将来設計、ライフプランに対する考え方の違いに対応したものと考えると良いでしょう。

そもそも医療保険は、思わぬ怪我や病気にかかり、医療費が必要になったときのためのものです。つまり予定外の出費に備えるためのものであって、この点では他の保険と考え方は同じです。

ですが「その保障が、いつ頃必要なのか」という点に関しては、人それぞれにニーズが違うのです。そのため、定期型の保険と終身型の保険の2種類が、それぞれ存在しているのです。

詳しくは後ほどお話しますが、定期型の保険は人生のある一時期、ことに20代から30代あたりまでの若い時代に適したタイプだと言えます。この年代はまだ貯蓄も多くなく、急な怪我や病気で出費がかさむと生活が苦しくなりかねません。そのため、低く抑えた保険料でまかなえるよう、期間を区切った医療保険が用意されているのです。短期契約に向いた保険商品です。

また終身型の保険は、一生涯の保障を確保できます。若い頃にはあまりピンと来ませんが、人は年老いていくにつれ、病気に見舞われやすくなります。現役をリタイアしたその頃、十分以上の貯蓄があれば良いですが、そうでなければ「医者に行きたいがお金がない」という状況にならないとも限りません。そんなときにも安心できるのが終身型の医療保険です。遠い将来の自分に対するセーフティネットを、若いうちに用意しておける保険商品なのです。

次章以降、定期と終身の具体的違いや、それぞれのメリット・デメリットなどを細かく見ていきます。大切なのは定期と終身の違いを踏まえたうえで、どちらが自分に適しているのかを理解し、最終的に自分に合ったタイプの保険を選ぶことです。是非そのような視点で読み進めてみてください。

2. 定期保険は流動性の高さが特徴

2-1 定期保険はどのような保険なのか

定期保険はその名の通り、保障期間が決められているのが特徴です。その保障期間は数年から数十年までありますが、医療保険の場合には、10年契約というものが多いようです。

ようするに期間限定の保険契約なので、契約期間を満了すれば保険契約は終了、つまり消滅します。ですが定期保険の多くは自動更新の扱いになっていて、契約期間を満了すると契約者から特に申し出のない限り、自動的に更新されるものがほとんどです。

定期医療保険の仕組み

更新の際にはこれまでの契約内容をそのまま踏襲しますが、保険料については再設定され、更新のたびに値上がりしていきます。ですから更新を重ねるたびに保険料の負担は大きくなりますが、それを負担し続けている間は更新が可能ですので、20年、30年と同じ保険に加入し続けることもできます。

ただし、ほとんどの定期保険は70歳、あるいは80歳を区切りとして、それ以降の更新ができません。これくらいの年齢になると、何らかの医療を必要とする確率が極めて高くなりますから、保険会社にとっては大きなリスクです。「保険料を高く設定しても、リスクが大きすぎる」という理由から、更新できないようにされているのです。

2-2 定期保険のメリットは?

定期保険は、「期間限定である」という特徴そのものがメリットであると言えます。

すでにお話ししたように、医療保険というのは「予想外の怪我や病気による出費を、保障するためのもの」です。ですから若い方々にとってはとても有益なものです。社会に出たばかりの彼らは、まだ収入も多くなく、その中でやりくりしながら生活していかねばなりません。日々の生活費に加えて将来のための貯蓄も必要ですから、毎月の給料の中から自由に使えるお金というのはごく限られています。

そんな状況の中、ある日突然、怪我や病気になってしまったら。手術やリハビリを受けなくてはならなくなったり、数週間におよぶ長期の入院を強いられたりしたら。そのために高額な医療費を請求されることになったら…。そんなときにも安心できるように、定期型医療保険があるのです。

定期タイプの医療保険は、保険期間を限定しています。一般に、病気になるリスクは年をとるにつれて高まりますから、若い人には保険料を安く、年をとるにつれて保険料を高く設定していきます。ですから満期を迎えるたびに保障内容を見直したり、他の保険に乗り換えたりできるようになっているのです。

こうした流動性の高さは、定期型保険の大きなメリットです。

若い頃は収入も貯蓄も少ないので、そのような状態で急な出費を強いられるのは辛いものです。年齢とともに収入が増え、ある程度の貯蓄ができれば、そうしたトラブルにも対処できるようになるでしょう。ですがそれまでの間は、もしもの時の備えとして定期型の医療保険への加入も検討したほうが良いかもしれません

2-3 長期の契約では保険料負担が割高に

定期保険のメリットである「期間限定」ということが、一方でデメリットにもなります。

たとえば30歳のときに加入した10年型の定期保険が、満期を迎えたとしましょう。解約せずに更新する場合、保障内容をこれまで通りとすると、保険料をグッと値上げされてしまいます。「今までと同じ保障内容なのに、どうして値上げするんだ?」と、文句のひとつも言いたくなるかもしれません。ですが、これは仕方のないことなのです。

定期型の保険は、文字通り保険期間を区切っています。

たとえば、20歳の方が10年型の定期保険に加入するときのことを考えてみましょう。この保険の保障期間は10年ですから、加入者が30歳になるまでの10年間を保障することになります。20歳から30歳までといえば元気いっぱいの年代ですから、病気のリスクはさほど高くはありません。ですから保障内容を充実させても、保険料は比較的低く設定できます。

この方が30歳になり、保険も満期を迎えました。そのまま更新するとなると、この方が40歳になるまでの10年間が保障期間になります。この年代は社会的には中堅どころ。昇進や転勤、また結婚などの環境の変化もあり、心身に変調をきたしやすく、そのため健康を害するリスクも徐々に増えてくるでしょう。それゆえ20代の頃と比べて保険料負担は重めに設定されます。

さらに50代、60代と年齢を重ねるごとに病気のリスクはますます高まりますから、保険料はどんどん高くなる一方です。保障内容を小さくすれば保険料は抑えられますが、保障内容が小さくなりすぎては、そもそも保険の意味がありません。

このように、定期型の医療保険は若い頃に一時的に加入するだけならば良いのですが、長期にわたって更新していった場合、支払う保険料の総額が大きくなり、それがデメリットとなってしまうことが多いのです。

3. 長期にわたる安定感が終身保険の特徴

3-1 終身保険はどのような保険なのか

次に、終身型の医療保険を見ていくことにしましょう。

終身保険は「保険料は変わらず、一生涯の保障」というのが売りです。そしてそれが、終身型保険の最大の特徴でもあります。

終身医療保険の仕組み

終身保障ですから、保険の契約期間というものが定められていません。そのため定期型のように「満期」「更新」という概念もありません。一度契約したならば、保障内容も保険料も変わりません。70歳、80歳になっても保障は続きます。

終身型は基本的に「解約せずに生涯加入し続ける」ことを前提に設計されています。ですから途中で保障内容を変更することはできません。そうしたい場合には、一度解約してからあらためて新規で契約し直すことになりますが、そのような手順を踏んでしまうと、以後の保険料がかなり割高になってしまいます

ですから契約時にはしっかりと将来を見据え、自分自身のライフプランに合ったものを選ぶことが肝要になります。

なお、終身型の医療保険は保障が続く限り、つまり生涯にわたって保険料を払い続けるのがスタンダードなスタイルですが、「60歳まで」「70歳まで」と、払い込みの完了時期を指定できる商品もあります。

3-2 終身保険のメリットは?

終身保険のメリットは、なんといっても「変わらない」という安定感です。

まず、保険料が変わりません。定期保険のような更新という概念がありませんし、年をとるたびに支払う保険料が値上がりしていくということもありません。契約時のままの保険料がずっと続きます

若いうちに契約をしたほうが保険料が安くなるというのは、定期型と同様です。具体的な金額は商品によって異なりますが、一般的な例を挙げるならば、30歳で契約すると月々の保険料は3,000円台。この額で、今後一生涯の保障を確保することができます。

また前項でも触れたように、60歳や70歳を区切りとして、そこまでは保険料を払い込み、それ以降は一切の支払いが不要になるという商品もあります。

どんなにしっかりとした将来設計をしていても、計算通りにはいかないのが世の常であり、何が起こるかわからないのが人の一生です。60歳、70歳を過ぎて、ある程度の資産を確保した悠々自適の生活ができていれば良いですが、そうでなければ、たとえ月額3,000円程度であっても、保険料の負担は大きいものです。

そうした事態を見越して、ある程度の年齢に達するまでに一生分の保険料を払い込んでおくのです。月々の支払金額は上がりますが、そのぶん安心感を得られるでしょう。

また保険料と同様に、保障内容も変わりません。契約時に定めた保障内容が一生涯続くのです。これは終身保険ならではの大きなメリットです。

人は年をとるにつれて、さまざまな病気にかかるリスクが高くなるものです。そんな中でこうした安心が得られたならば、特に中高年になってからではさぞかし大きな恩恵に見えることでしょう。こうした終身型医療保険のメリットが一般にも知られるようになったためか、現在では医療保険の主流だと言えるほど、終身型保険がよく売れています。

そして「売れる」ということは、各保険会社から見れば「競争が激しい分野」でもあるわけで、そのために「より魅力的な商品を開発しよう」という流れにもつながっていきます。

実際に私たち保険見直し本舗では、100人以上の保険のプロの販売実績をもとに「お客様に選ばれている医療保険ランキング」をご紹介していますが、そこでも終身タイプの医療保険が上位を占めいています。是非あなたの保険選びの参考にチェックしてみてください。

3-3 メリットとデメリットは表裏一体

こうして見てくると良いことばかりのようにも思えますが、終身保険にもやはりデメリットはあります。そしてそれは、メリットと表裏一体の関係でもあるのです。

第一のデメリットは保険料です。

終身保険は一生涯を保障するものです。若いうちはまだしも、70代、80代となると、病気にかかるリスクは非常に高くなります。このリスクは保険料にも反映されるのですが、定期保険であれば契約期間が限られているため、若いうちは安く、年齢を重ねるたびに高くなるように設定されています。ですが終身保険の場合には、高齢になった場合のリスクまで一律の保険料の中からまかなわねばなりません。

つまり、定期保険の場合には段階的に値上がりしていく保険料の値上がり分を、若いうちから前払いしていくような形になるのです。そのため、若いうちはどうしても定期保険よりも高い保険料になってしまうのです。

また契約期間が非常に長くなるというのも、デメリットとして働く場合があります。

終身保険には「更新」という概念がありません。そのため、加入の際には自分自身の将来設計をしっかりとイメージし、そのうえで必要な保障内容で契約することが重要です。

しかし、そこにどれほどエネルギーを費やしたとしても、数十年という契約期間中に、医療制度や保険制度が大きく変わってしまう可能性は排除できません。そうなると「契約時には良かったが、法改正でもっと良い商品が登場してきた」ということもあり得ます。かといって、そこで乗り換えとなると、結果的には割高になってしまうことも考えられます。

こうした法制度の変化とともに、インフレやデフレといった経済状況の目まぐるしい変化にも対応しにくい、という欠点があります。

定期保険も同様なのですが、医療保険はメリットとデメリットが背中合わせで、すべて完璧な保険は存在しません。ですからどんな商品を選ぶにしても、その長所と短所を理解し、自分には何が必要なのか、どんな保険商品が合っているのかをじっくり考え、複数の会社の医療保険を比較検討うえで決断するのが、何よりも重要なことだと言えるでしょう

⇒医療保険はこう選べ!商品を比較する前に知っておきたい3つのこと

まとめ:定期と終身は自分に合ったタイプを選ぶこと

これまで定期保険と終身保険、それぞれの特徴やメリット・デメリットについてお話してきました。すでにお気づきだと思いますが、定期保険と終身保険はそれぞれが補完し合う存在で、それぞれのメリットとデメリットは表裏一体なのです。ですから「どちらが良いか」ということを、簡単に決めることはできません。

若い頃に、ある程度の経済力を身につけるまでの「つなぎ」として定期型の医療保険に加入する。これは一つのやり方として有益な方法です。一方で、若いうちから将来を見据えて、数十年後の自分が困らないように終身型の医療保険をかけておく。これもまた賢い方法でしょう。

こうして考えていくと、医療保険のかけ方というものには決まった正解というものがなく、すべては人それぞれの考え方、ライフプラン次第なのだということが見えてきます。そしてそこを出発点にすることが、自分に合った保険を見つけるための、いちばんの近道でもあるのです。

これは医療保険に限りませんが、保険を選ぶときのポイントは「自分には何が必要なのか」をきちんと見きわめることです。どのような保障、どの程度の保障が必要なのか、過不足なく検討することです。それには、正確なデータとそれに基づいた検討と判断が必要になってきます。

たとえば、もろもろのデータを集めて試算した結果、「1度の入院でこうむる家計へのマイナスは平均55万円」という結論に至ったとしましょう。このマイナスを保険で保障しようと思ったら、「保険金20万円」の保険では力不足だということになります。たとえ月々の保険料が安くても、これではいざというときに十分な保障を受けることができません。

では「保険金200万円」の保険ではどうでしょう。これなら保障が不足することはまずありません。ですが必要以上に保険金が手厚い分、保険料も割高になるはずで、これは無駄な出費だということになります。

このように、保険商品は選び方を間違えると、いざという時にさして役に立たなかったり、月々の保険料が無駄に高くなってしまったりと、好ましからざる結果を招いてしまいます。だからこそ、専門家の知恵が必要なのです。

あなた自身のライフスタイル、将来設計、経済状況、さらには「何を大切にするのか」といった、いわば人生の価値観までも踏まえたうえで、あなたのニーズを満たす最適な保険商品を選択する。そうした「賢い保険選び」は、保険のプロの協力があってこそ実現するものなのです。

保険見直し本舗でも保険のプロとしてコンサルティングアドバイザーがご相談を承っております。おそらく一人では思いもつかなかったような意見やアドバイスに触れることができます。保険選びで迷ったら、まずプロに相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

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