「医療保険は不要」というケースはある?

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保険の基礎知識
「医療保険は不要」というケースはある?

民間の医療保険については、その必要性をめぐって、二つの意見が対立しています。ある人々は「医療保険は必要なものだ」と主張し、対するグループは「民間の医療保険など、いらない」と考えています。

こうした違いが生まれる背景にはさまざまな要因があり、そのひとつが「日本では公的医療保険制度が充実しているから」という論拠です。

確かに、日本の公的医療保険制度は非常に発達しており、国はもちろん各自治体においても、独自の助成制度を設けるなどして国民の健康増進に寄与しています。ですが、だからといって「民間の保障はいらない」というのは短絡的にも思えます。実際のところはどうなのでしょう?

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1. 保険は何のためにあるのか

1-1 そもそも、保険ってどんなもの?

医療保険は必要なのか不要なのか。それを論ずる前に、まず「保険とは何か、何のためにあるのか」をあらためておさらいしてみましょう。

まず、保険とは何でしょうか。それは予定外のトラブルやアクシデントに見舞われたときのために用意しておく予防策です。

私たちは誰でも心身ともに健康で、いつも元気でいたいと願いますが、なかなかそうはいきません。階段で足を踏み外して怪我をしたり、思いもしなかった病気にかかり、入院するはめになったり…長い人生、そうしたトラブルも時には起こります。

そしてそんなトラブルには、決まって出費がつきものです。病院に行けば治療費がかかりますし、たとえ数日間といえども、その間の仕事ができなければ収入も減ってしまいます。 そうした「予想外の出費」に備えるのが医療保険です。

1-2 保険は誰にとっても必要なもの

保険そのものは、誰にとっても必要なものです。

たとえば自動車保険です。どんなに安全運転を心がけても、事故を起こす可能性は必ずあります。そのために誰かに怪我を負わせてしまったり、他人の車を壊してしまったりということは、誰にでも起こりうることです。そんなときは、相手の怪我の治療費なり車の修理代なりを支払わなければなりません。「今はお金がないから、しばらく待ってくれ」というわけにはいきませんし、「月々1万円ずつ払うから」というわけにもいきません。そんな突然の出費を補償するために保険があるのです。

「じゃあ、あり余るほどお金を持っていれば保険はいらないじゃないか」

確かにそうしたことも言えるでしょう。ですが交通事故などでは、相手に支払う賠償額は決して小さくはありません。死亡事故でも起こしてしまうと、数千万から1億円単位のお金が必要になることもあります。5万円、10万円程度ならまだしも、そんな大きな額を一度に支払わねばならないというのは、資産家であっても非常に大きなリスクです。

だからこそ保険が必要なのです。

1-3 医療保険の意味するところは

前節でお話しした自動車保険のほか、実に幅広い分野で保険は活躍しています。

身近なものだけに限ってみても、医療保険のほか、加入者が亡くなったときに支払われる生命保険、火事などによる損害を補償する火災保険、旅行先での事故や盗難などのトラブルのための旅行保険もあります。そのほか私たちが直接目にしないようなところでも、さまざまな保険が存在し、有効に活用されています。

それら数多くの保険の中でも、医療保険は非常に重要です。それは医療というものが人の健康、ひいては生命にまで関わるものだからです。

実際のところ、医療というのは高額なものです。ですが医療を提供する側から見れば、そこには多くのコストがかかっています。一人の医師が知識を身につけ、技術を磨くまでには何年もの時間とお金がかかりますし、病院でもらう薬ひとつにしても、長い時間と膨大な手間をかけて作り上げられたものです。それを提供するのですから、高額になるのは仕方がありません。

ですが「病院には行きたいが、お金がかかるし……」と受診をためらうようになったら、どうでしょうか? ちょっとした怪我や鼻風邪くらいなら、それでも良いかもしれません。しかし体の不調が重大な病気の前触れだったとしたら? 最悪の場合、命に関わることにもなりかねないのです。

このように、医療保険は「突然の出費に備える」だけでなく、人の健康と命を守るという側面も持っています。だからこそ国や自治体が積極的に関わり、公的医療保険制度を設けているのです。

2. 「医療保険はいらない」は本当か

2-1 公的保険制度の充実ぶり

医療は、人の健康と命に関わるものです。そうした現実を踏まえて、日本では「国民皆保険制度」をとり、すべての国民に公的医療保険制度への加入を義務づけています。この公的医療保険制度の充実ぶりのために、「民間の医療保険は必要ない」という意見が生まれているようです。

別の項目でもお話ししましたが、日本の健康保険制度は非常に充実しており、手厚い保障が用意されています。医療費のうち7割を保険機関が負担してくれますから、病院に支払うのは3割で済みます

それでも支払額が大きくなる場合には、所得に合わせて上限額を設定し、それ以上は支払わなくて良い仕組みもあります。治療の難しい特定の病気については自己負担分も免除されるうえ、病歴によって保険の引受を拒否されたり保険料が上がったりすることもありません

公的医療保険制度がここまで充実していると、「これ以上、民間の医療保険は必要ない」という話にもなるでしょう。ですが、本当にそうでしょうか?

2-2 「医療保険不要」な人々とは

ここで少し考えてみることにしましょう。「公的保険制度だけで充分。民間の医療保険なんかいらない」という人々がいるとしたら、それはどのような人でしょうか?

■資産家
すでに有り余るほどの資産を持っている人ならば、医療保険は不要かもしれません。確かに医療は高額ですし、怪我や病気は天災のようなものです。いつ我が身に襲いかかるか分からない、というリスクはあります。

ですが公的医療保険制度があれば、自己負担分は高くても数万円、高度な手術などを受けたとしても数百万円もかかるわけではありません。「その程度の費用ならすぐ出せる」というほど余裕のある資産家であれば、医療保険にはあまり必要性を感じないでしょう。

■不労所得がある人
怪我や病気で困ることは多々ありますが、「回復するまで仕事ができず、収入が絶たれる」というのは大きな問題です。そのための備えとして民間の保険があるわけです。

しかし、不動産の賃貸料や配当利益などの、安定した不労所得のある人は、そうした心配がありません。治療費そのものが高額になれば、それはそれで心配かもしれませんが、休業中の収入を心配する必要がないのですから、医療保険の必要性は高くはない、といえるでしょう。

■すでに充分な保障のある人
勤務先の会社の福利厚生が充実している人であれば、「もうこれ以上の保障は必要ない」というケースはあり得るかもしれません。

そもそも企業の福利厚生のレベルというのはまちまちで、また就業規則もそれぞれに違います。法律で定められた最低限のルールはありますが、そこから先は企業の考え方次第です。福利厚生は社員各自の判断に任せ、その分を給与や賞与で支給するという会社もあるでしょうし、社員が安心して働けるよう、福利厚生をしっかりと充実させるという企業もあるでしょう。

会社側にしてみれば、医療保険が必要ないほどのレベルまで福利厚生を充実させるには大きなコストがかかりますが、こうした会社に勤められるということは、それだけで恵まれたことかもしれません。

医療保険の必要性が高くない人というと、これくらいでしょうか。ですがここに挙げた人たちでさえ、「医療保険は不要」と断言することはできません。特に三番目の「会社の福利厚生が充実している」というケースは問題です。

会社の業績というのは景気の動向に左右されますし、現在の好調ぶりが永遠に続くというものではありません。業績が悪くなれば、社員への待遇も変えざるを得ないでしょう。

それに、一生その会社に勤め続けるのならまだしも、転職ということもあります。そうなれば福利厚生はガラリと変わりますし、独立するということになれば、もう頼れるものは自分自身しかありません。

こうしたことを考えると、「医療保険は不要」といえる人々はごくわずかだということが分かります。

2-3 医療保険の必要性が高いケースは

では逆に「医療保険の必要性が高い人」というのは、どのような人々でしょうか? このカテゴリには、かなり多くの人々が該当します。

■自営業の方
会社にお勤めの方は健康保険に加入しているため、入院などで長期にわたって仕事ができなくなると「傷病手当金」を受け取ることができます。ところが、自営業の方が加入する国民健康保険には、こうした仕組みがありません。そのため、自営業の方はこうした場合の備えを自分自身で用意しておく必要があります。

自営業の方々にとっては、もしもの場合には医療費以上に、逸失収入のほうがはるかに大きな問題になりやすいためです。

■貯蓄が充分でない方
貯蓄というのはそれ自体が「万一のときのための備え」です。ですから貯蓄が少ない、まだ充分ではないという方ほど、保険の必要性は高いといえます。

社会に出て間もない若い頃は、あまり収入も多くないため、「保険までお金が回らないよ」ということになりがちです。しかし、こうした方にこそ医療保険は必要なものなのです。

■小さなお子さんをお持ちの方
赤ちゃんの頃はまだしも、子どもは成長するにつれて何かとお金がかかります。そんなときに一家の大黒柱が怪我や病気で一時的にせよ働けなくなってしまったら、一家にとって大きな痛手です。

人生に不測の事態はつきものとはいえ、そのために子どもに不自由な思いをさせるのは、親としても不本意なことでしょう。そんなときの備えは、しっかりと確保しておきたいものです。

こうしてみると、とても多くの人々にとって医療保険は必要なものだということがうかがえます。その必要性が高くはないという人はいるにしても、「医療保険なんかいらない」と断言できる人はほとんどいない、と言っても良いのではないでしょうか。

3. あらためて、医療保険の要・不要を考える

3-1 医療保険は必要なもの

このように、医療保険の必要性が低いというケースは考えられますが、「不要だ」と言い切ることは誰にもできません。

先にお話しした資産家の方や充分な不労所得をお持ちの方は、確かに保険の必要性は低いでしょう。「保険なんてなくても、それだけお金があれば充分じゃないか」と、はた目には思うかもしれません。

ですが、大きな資産を持っている人ほど保険という概念には敏感です。彼らは自分が持っている資産を安定して維持し、管理していくという意識が高いため、その資産に増減をもたらすトラブルやアクシデントを嫌います。

そして、そうした不測の事態が起こっても資産を安定的に保てるよう、各種の保険を有効に活用しています。ですから医療保険に関しても、その必要性は高くはないながら「不要」とまで断ずることはできないでしょう。

それを思えば、大多数の人々にとって医療保険は必要なものだということができるのです。

3-2 公的保険制度はいつまで続くのか

医療保険不要論で必ず挙げられるのが、公的保険制度の充実ぶりです。国民皆保険制度をとっている日本は、こと公的医療保険制度にかけては非常に充実しています。収入の多寡にかかわりなく、ほとんどの人が必要な医療を受けられるという、素晴らしいシステムができあがっています。そのため「これ以上の保障が必要ない」という論が発生してくるわけです。

ですがこの優れた保険制度が、これからも変わりなく続く保証は、どこにもありません。極端な話をすれば、数年後にはなくなってしまうかもしれないのです。

公的医療保険制度は、国が用意する福祉政策の大きな柱です。健康な心身は生活の基礎ですし、怪我や病気になっても安心して医療を受けられる仕組みがあってこそ、国民は仕事や学問に励むことができます。そのため長い間、日本の公的医療保険制度は維持されてきました。

ですが現実には、その仕組みはかなり疲弊しています。しかも、これまでその仕組みを支える中核となっていた団塊世代が、逆に「支えられる側」となっていきます。これでは、ただでさえ苦しい状況にあるこの制度に、ますます負荷がかかることになってしまいます。

だからといって、この制度がすぐに廃止されてしまうということはないでしょう。そんなことをしたら日本中がパニックになってしまいます。ですが、ある程度の時間をかけて、少しずつ修正されていくというのは大いにあり得る話です。

日本の公的医療制度は、非常に優れた制度であり、高度の医療サービスを国民に提供している仕組みです。ですがその手厚さゆえに、今のままの形でこれからも存続できるかどうかということになると、かなり疑問です。制度が改変されることになれば、当然のように私たち一人ひとりの負担は増えていくでしょう。

そう考えると、公的制度ばかりに頼り切るのは危険であり、今のうちから民間の医療保険も活用していくべきだということにもなるのです。

3-3 「入りたいけど入れない」という場合には

医療保険は必要ない、という主張の陰で「入りたいけど入れない」という人も数多くおられることでしょう。こうしたケースでは2通りのパターンが考えられます。

ひとつは経済的な理由によるもの。もうひとつは持病があるなどで、保険会社から引受を拒否されるパターンです。それぞれの場合について、見ていくことにしましょう。

■経済的な理由で保険に入れない
医療保険の必要性は認めているものの、そこまでお金をかけられない、というケースです。特に若い方には多いタイプと思われます。

確かに、元気一杯の若い方にとっては医療保険そのものがピンと来ないでしょう。親許を離れ、月々の給料をやりくりしながら暮らしていくわけですから、「そんなものに使うお金の余裕はないよ」という気持ちも理解できます。

ですが、保険というのは経済的な余裕がないからこそ必要なものでもあります。ある程度の貯えがあり、しかも充分な収入もある方ならば、保険は不要かもしれません。医療費という予定外の出費を支払い、一時的に収入が絶え、貯えを切り崩すことになっても、元気になれば「また稼げばいいさ」で済むかもしれません。

しかし、貯えも収入もまだ充分ではない状況で不測の事態に見舞われたら、それこそ窮地におちいってしまいます。だからこそ保険が必要なのです。

■保険会社が引き受けてくれない
持病があったり、既往歴があったりして、保険に加入できないケースです。

民間の医療保険は公的制度と異なり、加入にあたって本人の健康状態が審査されます。そのため過去に大病を患っていたり、持病があったりすると、保険に加入できないケースが出てきます。ですがこうした場合でも、「引受基準緩和型医療保険」であれば、加入できる可能性はグッと高まります。

⇒医療保険はこう選べ!商品を比較する前に知っておきたい3つのこと

まとめ:STOP!「医療保険は不要」という決めつけ!

医療保険にはさまざまなタイプがあり、保障内容も保険料もまちまちで、かなりの幅があります。ここでは

  • ・医療保険の意味
  • ・医療保険の必要性が低い場合について
  • ・医療保険の真価が発揮される場合

などについて整理して解説してきました。

「必要ない」と決めてしまうのは簡単ですが、その裏に潜むリスクについても把握する必要があるということはご理解いただけたのではないでしょうか。多くの方にとって医療保険は必要なものです。自分自身の経済状況や健康状態のためとはいえ、簡単に諦めてしまうのももったいない話です。

具体的に医療保険として自分の月々の収入と支出がどれくらいか、その中で加入できる保険にはどんなものがあるか。そうした検討を客観的に行うには、自分一人では難しいものです。

そんなときこそ専門家の知恵を借りて、自分にフィットした保険を探すといのが賢い選択ではないでしょうか。保険は、今のあなただけではなく、将来のあなたと、さらには、その将来のあなたのそばにいる大切な人々を守るためのものでもあるのですから。

もし多くの選択肢がある中で迷われてしまうようであれば、保険見直し本舗へお気軽にご相談ください。幅広いお客様の相談対応してきた専門スタッフが、あなたの悩みひとつひとつにしっかりと解決策を提案させていただきます。ご相談お待ちしております。

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