3つのポイントから考える 年金保険の選び方

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保険の基礎知識
3つのポイントから考える 年金保険の選び方

「老後貧乏」や「老後破産」という言葉もささやかれる現代。「公的年金だけでは老後の生活資金が不安」と感じ、個人年金保険を購入したいと考えている方も多いのではないでしょうか。

個人年金保険は生命保険会社等が販売する保険商品の一種で、現役時代に払い込んだ保険料に利子が付いたものを、老後年金として受け取るのが基本的な仕組み。受取期間や支払い方法、運用方法などによってさまざまな種類があり、ライフプランに合わせて選べるのが魅力です。

しかし一方で、さまざまな種類があるために、どの商品が自分にピッタリなのか見つけるには比較検討してみる必要があります。そこでここでは、個人年金にはどのような商品があるのかをお話ししつつ、比較のポイントや、それぞれの商品がどんな人に向いているのかも紹介していきたいと思います。

1. 個人年金保険の基本的な性格

1-1 保険には「貯蓄型」と「保険型」がある

世の中にはさまざまな保険商品がありますが、大きく分けると「貯蓄型」と「保険型」の2つがあります。名前の通り、貯蓄型はお金を貯めることを目的にしている保険、保険型は保障を目的にしている保険。

すべての保険がどちらか一方にだけ分類されるというわけではなく、例えば契約期間が終了すると満期保険金が受け取れる生命保険のように、貯蓄型・保険型どちらの要素も併せ持っているものがほとんどです。例外的に、掛け捨ての死亡保険などは保険型に特化した保険だといえます。

1-2 個人年金は貯蓄型寄り

このうち、個人年金保険は貯蓄型の要素が強い保険です。

年金の支給開始前に被保険者が亡くなった場合は死亡給付金が、年金受給中に亡くなった場合には商品によって、遺族が年金を受け取ったり一時金が支払われたりしますが、その金額はそれまでに払い込んだ保険料相当額か、まだ支払われていない年金分であることがほとんど。特約で死亡保障や医療保障を付けられるものもあるものの、多くの場合保障機能はそれほど高くはありません。

しかし死亡保障と呼べるものがない分、加入時に医療保険にあるような健康状態の告知は不要。また、払い込んだ保険料に対して受け取れる年金額の割合も基本的に銀行の定期預金より高めなうえ、途中で解約した場合の返戻金が支払った保険料を下回る場合があります。この2点から、確実に貯蓄を続けることができるとされています。

基本的に個人年金保険は、保障よりも貯蓄機能を重視し、老後の資金をしっかり、確実に貯めたい人に向いている商品だといえるでしょう。

2. ポイント1 年金受け取りは一生涯or期間限定

2-1 自分で選ぶ年金の受取期間

では、いよいよ個人年金保険の種類のお話へと移っていきましょう。

個人年金を選ぶ上でまず1つ目のポイントとなるのが、年金を受け取れる「期間」をどうするかです。公的年金は生きている限り一生受け取れる「終身年金」なので、「年金」と付けば何となく一生もらえそうなイメージがありますが、個人年金には「終身型」と5年、10年などの「有期型」があり、どちらでも好きなものを選べます。

2-2 一生続く保障が魅力の終身型

「終身型」は被保険者が生きている限り、一生涯年金を受け取れるのが特徴です。

何歳まで生きても保障が続くという安心感が何よりのメリットですが、早くに亡くなってしまった場合には、支払った保険料より受取額が少なくなることがある、支払期間や支払額が多くなる傾向にある、元を取れるまでの期間が長い、などのデメリットもあります。元を取るには、おおよそ年金に加入した年齢から平均余命以上生きることが目安になります。

終身型の中には、夫婦のどちらかが生きている限り年金が支払われる「夫婦保険」というタイプもあります。年金の受給には基本的に被保険者が生きていることが条件ですが、例えば10年間などの保障期間が設定され、保障期間内に被保険者が亡くなってしまった場合、残りの保障期間の未払い年金を遺族が一括して受け取れる商品もあります。そういう商品を選ぶことで、早くに亡くなった場合に受け取れなくなるお金を減らすことが可能です。

10年保証期間付終身年金の例

2-3 小回りのきく有期型

「終身型」に対して、5年、10年など、年金を受け取れる期間が決まっているのが「有期型」です。期間の長さは契約時に選べます。予め定めた期間中は年金を受け取れるのが基本ですが、支払期間の途中に被保険者が死亡した時にどうなるかで、「確定年金」と「有期年金」の2種類に分かれています。

●確定年金
被保険者の生死に関係なく、定められた期間の間は年金を受け取れるのが特徴です。被保険者が生きている場合は本人に、途中で死亡した場合は遺族に残りの期間に対応する金額が年金または一時金の形で支払われます。

10年確定年金の例

●有期年金
途中で被保険者が死亡した場合は年金の支給は終了します。ただし終身型と同じく保障期間が設定されているタイプもあり、それを選べば保障期間内に被保険者が亡くなってしまった場合も、残りの保障期間の未払い年金を遺族が一括して受け取ることができます。

老後の安心ということで考えると終身型がよいと思われますが、終身型には保険料が高いなどのデメリットもあります。

同じ老後といっても、まだまだ体力もある60代と70代、80代とではお金の使い方も変わって来るものです。有期型は60歳から公的老齢年金の満額がもらえようになる65歳までの5年間の生活資金に充てる、比較的支出の多い前期高齢者の10年間に充てるなど、終身型にはない使い方もできるので、老後の支出全体を考えた上で選ぶのがおすすめです。

3. ポイント2 支払い方法で変わる保険料と所得控除

3-1 毎月コツコツか、まとめて一括か

個人年金を選ぶポイントの2つ目は、将来受け取る年金のもと、保険料の支払い方法をどうするかです。これには「月払い」と「まとめ払い」があります。

「月払い」は公的年金と同じように、毎月一定額の保険料を払っていく方法です。

そのメリットは家計への負担が少ないこと。時間をかけて年金原資を作っていくので、もし途中で解約した場合、払戻金は少なくなってしまいますが、解約時の払戻金とそれまでに払い込んだ保険料の総額に差益がない場合は非課税となります。

これに対し「まとめ払い」は退職金などのまとまった資金を一括で支払うもので、まとめて全額を支払う「一括払い」と、全額を保険会社に預けてそこから毎年(または毎月)の保険料を支払う形を取る「全期前納払い」とがあります。

メリットは月払いに比べて保険料が割安になること。全期前納払いより一括払いの方が割引率は高くなります。また月払いに比べて途中解約時の損も少なく、利益が出ることもありますが、解約時の差益に対しては課税されます。

3-2 保険料は一括払いがお得、ただし所得控除は1年分のみ

さてこの2種類、保険料だけから考えるとまとめ払いの方がお得なのですが、所得税等の控除については不利になる面もあります。これは少し分かりづらいのでもう少し具体的に説明します。

私たちが払う税金の主なものは所得税と住民税ですが、これらは収入総額に直接ではなく「年間の収入-経費-控除額」で求められる「課税所得」についてかかってきます。そして個人年金の保険料は、所得控除のうち「生命保険料控除」に含まれるので控除の対象となり、払った保険料のうち一定分を収入から差し引くことが認められています。

生命保険料控除には「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」、「介護医療保険料控除」の3種類があり、それぞれ支払った保険料に応じて、最大で所得税4万円、住民税2万8000円(ただし住民税は3種の合計で7万円まで)の控除が受けられます(*1)。「一般生命保険料控除」に分類される変額個人年金などを除き、多くの個人年金商品は「個人年金保険料控除」の対象になります。

そして最大控除を受けるための要件は、所得税なら年間の支払額が8万円以上、住民税なら5万6000円以上。したがって、仮に月1万円ずつ支払いをしていれば、支払いを続けている間は毎年所得税4万円、住民税2万8000円の控除が受けられるわけです。

控除額の関係

ところが一括払いでは、1年間ですべての保険料を払ってしまうわけですから、控除対象となるのは支払った年のみです(ちなみにこの場合は「一般生命保険料控除」になります)。なお「全期前納払い」は、あらかじめ預けておいた中から、毎年の保険料を支払っていくという形ですので、一括払いとは異なり毎年所得控除を利用することができます。

一概には言えませんが、長期にわたってコツコツと資産を貯めたいなら月々払い、退職金や子育てが終わったことなどで資金にゆとりがある、あるいは短期間で老後の資金を準備したいなどであれば一括払いが向いているといえるでしょう。

4. ポイント3 定額か変額か、運用方法の違い

4-1 ローリスク・ローリターンの定額型

個人年金を選ぶポイントの3つ目は、将来受け取れる年金額とも深い関わりがある、払い込んだ保険料(年金原資)の運用方法の違いです。「定額型」と「変額型」とがありますが、まずは個人年金保険のイメージとして広く知られている定額型からお話していきたいと思います。

定額型は、保険契約を結んだ時点で将来受け取れる年金額が決まっている商品で、年金を受け取る期間によって、終身年金や10年確定年金などのタイプがあります。

定額型個人年金の支払いイメージ

特徴は、払い込んだ保険料は保険会社が運用し、払い込みに対してどれだけのリターンがあるのかが契約の時から分かっていることで、元本割れを起こすことはありません。支払う額・受け取れる額が決まっているので、将来の計画が立てやすいなどのメリットがあります。

一方、安全性が高い半面大きな利益は望めませんし、インフレになっても受け取れる額は変わらないので、インフレ対応が難しいというのがデメリット。収益率は低くてもリスクを抑えたい人向けの、ローリスク・ローリターンの商品だといえるでしょう。

4-2 ハイリスク・ハイリターンの変額型

これに対し「変額型」は、払い込んだ保険料を運用するための金融商品を契約者自身で指定し、その収益結果により将来受け取れる年金額が変動する商品です。運用の結果は契約者の自己責任で、運用成績によっては元本割れを起こす可能性がある一方、高い収益を上げることも期待できます。貯蓄よりも投資の性格を持つ、いわば投資信託に近いハイリスク・ハイリターンの商品だといえるでしょう。

具体的な運用方法としては、契約者は保険会社が用意するリストから投資先のファンドを選び、どのファンドに何%投資するかを決めることになります。ファンドの種類は保険会社によって異なりますが、国内株式、海外株式、国内債券、海外債券など、さまざまなものが揃っており、これらを自由に組み合わせることができます。

変額型には定額型と同じく、期間は有期型と終身型があります。運用にはまとまった資金が必要なため、多くの場合、保険料の払い込み形式は一括払いになっています。

なお、投資信託との違いとしては、投資先のファンドを変更する時に税金がかからないという利点があります。

というのも、通常投資信託で投資先のファンドを変更しようとした場合、手数料のほかに利益に対して20.315%の税金がかかってきます(*2)。変額年金の場合は利益から税金が差し引かれることなしに、全額新しいファンドに投資することができるので、より複利の効果を活かすことができ、長期投資に向いています。

ただ日本人には「投資」を嫌う人も多く、保険会社の個人年金保険取扱本数では圧倒的に定額型のほうが多くなっているのが現状です。

5. 収益性を比べる指標について

5-1 保険のお得さを表す「戻り率」

ここまでに年金の受取期間、保険料の支払い方法、運用方法と3つのポイントを挙げてきましたが、同じ期間・支払方法・運用方法の中にも、さまざまな商品があります。そんな時に注目してみたいのが、「払い込んだ保険料に対してどれぐらいのリターンが得られるのか」を表す「戻り率(返戻率とも言います)」という数字。大雑把に言うなら、保険のお得さの指標です。

戻り率は以下の公式で求められます。
【戻り率 = 受け取れる年金の総額 ÷ 払い込んだ保険料の総額 × 100 】

例えば、40歳から60歳までの20年間、月2万円ずつ保険料を支払い、65歳からの10年間で560万円の年金を受け取れるという10年間の確定年金商品があったとします。

その場合の戻り率は以下の通りです。
【560万円 ÷ 480万円 × 100 = 約116%】

もちろんこの数字が高いほど、払い込んだ保険料に対して大きなリターンが得られることになります。

ちなみに、この戻り率は保険会社の「運用利率」と同じものというわけではありません。生命保険で使われる、生命保険の契約者に対して保険会社が約束する運用利回り「予定利率」ともちょっと違うところがありますが、ほかが同条件ならこの数字が高い方がお得な商品だと理解しておけばまず大丈夫です。

まとめ:年金保険の選び方で押さえておきたいポイント

ここまで、

  • ・個人年金は貯蓄したい人向けの商品であること
  • ・受取期間により「終身型」と「有期型」があること
  • ・終身型は安心が高く、有期型は細かいニーズに合わせた利用が可能なこと
  • ・保険料の支払方法には「月払い」と「まとめ払い」があること
  • ・総じて言えば、一括払いは保険料が割安になること
  • ・資産の運用により、「定額型」と「変額型」があること
  • ・定額型はローリスク・ローリターン、変額型はハイリスク・ハイリターンであること
  • ・保険の収益性は「戻り率」を見ることで比較できること

などについてお話してきました。

個人年金にはいろいろな種類があり、どれが最適かはそれぞれの目的や状況によって異なるため、万人によい商品というものもありません。また、例えば同じ公的年金にプラスアルファする資産形成方法として、確定給付企業年金や確定拠出年金、それらのハイブリッド型などさまざまなものがあり、なかなか簡単に選ぶことはできません。

老後を支える個人年金は、ご自身のライフプランにあったものであることが何よりも大切なこと。自分のニーズや目的をはっきりさせた上でじっくりと比較検討し、迷った時には保険のプロのアドバイスも参考にしながら、自分に合った商品を探してみてください。

保険見直し本舗でもみなさまの老後について一緒に考えられる専門家として、経験豊富なコンサルティングアドバイザーがご相談にお応えします。まずは無料相談から気軽にご利用ください。