高齢者が加入や見直しを検討したい保険は?

Column

保険の基礎知識
高齢者が加入や見直しを検討したい保険は?
保険の見直しのタイミングのひとつにライフステージの変化があります。今の保険を見直すべきか、または新しく保険に加入するべきか、お悩みの方もいるでしょう。 そこで今回は、高齢者向けの保険を紹介します。ここでは、老齢基礎年金が受給できるようになる65歳以上を「高齢者」として解説します。加入する目的やおすすめできるタイプの方についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
POINT
  • 終身保険は死亡保障が一生涯続く保険で、葬式代や相続に備えられる。
  • 民間の医療保険や介護保険は、公的保険だけではまかなえない生活費などをカバーできる。
  • 個人年金保険は私的年金の一つで、公的年金の上乗せに役立つ。

高齢者におすすめの保険

さまざまな保険の資料 厚生労働省では、高齢者とは65歳以上の方のことで、65歳から74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者といいます。年齢を重ねれば重ねるほど病気や要介護状態になるリスクが高まるため、早期に対策を立てておくことが大切です。

そういった死亡・病気・介護・長生きといった老後の経済的リスクに備えられる保険は、「生命保険」と呼ばれる終身保険、養老保険、個人年金保険と、そのほかの医療保険、がん保険、介護保険などが挙げられます。それぞれの保険の概要を紹介します。

終身保険

終身保険は、死亡保障のある生命保険のひとつです。途中で保険を解約しない限り、死亡保障または高度障害保障が一生涯続きます。契約時の年齢で計算した保険料が変わらないのも特徴です。

養老保険

養老保険は、保障と貯蓄性の両方を兼ね備えた保険です。保険期間中(10年や15年/60歳や70歳までなど)に亡くなった場合に死亡保険金が支払われる点は終身保険と同じですが、満期まで生存していた場合は満期保険金を受け取れる点が大きな違いです。主に死亡保険金と満期保険金は同額に設定されています。

個人年金保険

個人年金保険は、公的年金の上乗せとして活用できる年金のひとつです。厚生年金の適用を受ける会社に勤務する人は厚生年金、公務員や私立学校職員の人は共済年金がありますが、個人年金保険と確定拠出年金は任意加入の私的年金であり、将来受け取りたい年金額に応じた保険料を払い込みます。

ただし、契約できる年齢には制限が設けられており、中には60歳や65歳を超えると申込できないケースもあります。

(※平成27年10月1日に「被用者年金一元化法」が施行され、これまで厚生年金と共済年金に分かれていた被用者の年金制度が厚生年金に統一されました。)

医療保険

医療保険は、病気やけがによる入院・手術・通院などの治療費負担を軽減する保険です。公的な医療保険だけではカバーできない部分などを補うための保険です。

保障内容は各社バリエーション豊富であり、また特定の疾病を手厚く保障する特約や、公的な医療保険では対象外の先進治療に備える特約などがあります。

がん保険

がん保険は、がん治療に特化した医療保険です。がんの治療を目的として入院・手術・抗がん剤治療・通院などをしたときに給付金を受け取れます。また、がんと診断確定されたときに受け取れる一時金も用意されている商品もあります。

介護保険

介護保険は、介護サービスにかかる費用の負担を軽減する保険です。医療保険と同じく、公的な介護保険がありますが、カバーできない部分などを補うための保険です。

公的な介護保険は、給付対象者や給付の範囲などが決められていますが、民間介護保険は特約や保証金額や保険金の、金額や受け取り方の設定など自由度が高いのが特徴です。一時金や年金形式で受け取れ、介護費で負担した経済的ダメージを軽減できます。

高齢者におすすめの保険1「葬式代や相続に備える終身保険」

笑顔の老夫婦

終身保険は一生涯の死亡保障を確保できるほか、葬儀代や墓代などの死亡整理資金や、遺された家族のための生活立て直し資金などにも備えられる点がおすすめできるポイントです。具体的にはどのようなケースで役立つのか、またどのような方に適しているのか、順に解説します。

公的に支払われる葬式代

国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している方が亡くなった場合、申請すれば葬儀代について自治体から給付金を受け取ることができます。金額や名目は加入していた健康保険や制度、自治体によって異なります。 また、会社員の方など、国民健康保険や後期高齢者医療制度以外の健康保険に加入している方が亡くなったときにも、5万円を限度に「埋葬料」あるいは「埋葬費」の支給があります。ただしこれらを受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた方や、実際に埋葬を行った方です。

終身保険を契約する目的

では、終身保険を役立てられる場面をみていきましょう。

葬儀代を終身保険で備えるメリット

まず、葬儀代は公的な健康保険から支給される埋葬費用だけではまかなえない可能性が高いでしょう。一般的な葬儀を行う場合、式場使用料のほかに、通夜や精進落としなどの飲食費、会葬者への返礼品費用、お寺や神社などへのお布施代などがかかります。

一例として、鎌倉新書『第5回お葬式に関する全国調査』によれば、葬儀費用の総額は2020年で約184万円、2022年はコロナ禍の影響を受けて約110万円でした。以上から、終身保険の死亡保障を100~200万円ほどに設定していれば、平均的な葬儀費用はカバーできるでしょう。 もちろん、預貯金などでも葬儀代の準備は可能です。しかし、銀行などの金融機関は死亡を把握すると口座の凍結をするため注意が必要です。相続人であれば、葬儀費用などの名目で仮払い請求ができるものの、一定の金額に限られます。

その点、終身保険であれば、死亡保険金は受取人に支払われ、スムーズに葬儀に備えられます。いざというときに慌てたくない方、また家族を慌てさせたくない方には終身保険を検討してみては如何でしょうか。

遺産分割のトラブルを見越して終身保険を利用するメリット

葬儀に加えて相続手続きを進めなければいけませんが、現金をはじめとする分割可能な財産は、相続人全員が納得するまで話し合います。 しかし、死亡保険金は受取人固有の財産となるため、民法上の分割対象になりません。特定の相続人に一定額を残しておきたい場合に利用しやすく、トラブルを未然に防げる財産として役立つでしょう。 また、終身保険は「代償分割」の資金としても利用できます。代償分割とは、不動産など分割しにくい相続財産がある場合、特定の相続人がその遺産を取得する代わりに、残りの相続人には現金などを支払って精算する分割方法です。分割しにくい財産を相続する可能性がある人を終身保金の受取人にしておけば、代償分割の資金に充てられます。

高齢者におすすめの保険2「健康保険をカバーする医療保険」

さまざまな保険の資料 病院にかかったときの治療費の自己負担額は公的医療保険で軽減されますが、公的医療保険の対象外となる治療・サービスもあります。例えば、差額ベッドと呼ばれる特別療養環境室の部屋代は全額自己負担です。 以上を踏まえ、ここでは高齢の方が医療保険を活用できるシーンを解説します。

健康保険の高齢者の負担割合

健康保険の自己負担割合は、6歳以降は3割ですが、70歳以上の高齢者は自己負担割合がさらに軽減されます。

健康保険の自己負担割合
  • 70歳以上75歳未満:2割(現役並み所得者は3割)
  • 75歳以上の高齢者の負担割合は1割(現役並みの所得者は3割)

さらに健康保険加入者は、高額な医療費で家計が破綻しないよう、「高額療養費制度」も利用できます。高額療養費制度とは、1か月ごとの自己負担限度額を超える医療費が発生した場合、超えた部分を高額療養費として支給する制度のことです。

例えば、70歳以上の一般世帯(年収156万~370万円)の方は、個人での外来が18万円(年間14万4,000円)、1か月ごとの世帯上限では5万7,600円を超える自己負担を超える部分についての保障があります。 高齢になると病院にかかる事も増えるかもしれない為、できるだけ家計に支障が出ないように配慮されています。

出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf

医療保険を契約する目的

公的医療保険により、高齢者の方は現役世代よりも医療費の負担割合が軽減される仕組みになっていますが(※現役並み所得者を除く)、家計へのダメージが少ないとは限りません。高齢になると医療機関への受診率が上がる傾向にあります。 厚生労働省の『患者調査』(令和2年)によると、年齢階級別にみた受療率(人口10万人あたり)のうち、65歳以上の入院は2,512人、70 歳以上は2,899人、75歳以上は3,568人でした。外来になると、65歳以上は1万45人、70 歳以上は1万65人、75歳以上は1万167人と、ほかの年齢層よりも明らかに高い結果になっています。

出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/jyuryouriitu.pdf

さらに、入院してから退院するまでの平均在院日数は65歳以上が40.6日と最も高く、傷病分類別の平均在院日数でも他の年齢層を上回る例がほとんどです。中には他の年齢層より倍以上の入院が必要な傷病もあります。

出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/20/dl/heikin.pdf

以上のことから、高齢者は現役世代と同じく医療費の負担に備えたほうが安心といえます。生命保険文化センター『生活保障に関する調査』(令和二年度)が調査した入院時の自己負担費用の平均は19.8万円ですが、高齢者に限定した自己負担費用ではありません。また、公的医療保険以外の治療を受ける可能性もあります。

出典 (公財)生命保険文化センター「令和二年度生活保障に関する調査」より

「定年後の収入が現役世代の頃と比べて4~6割低下した」といった意識調査の結果も考慮すると、高齢者も民間の医療保険で備えておくと安心です

医療保険がおすすめな人

医療費の自己負担額や年齢階級別にみた受療率について解説しましたが、公的医療保険ではカバーできない治療やサービスもあります。

差額ベッドと呼ばれる個室(特別療養環境室)代がその代表例です。差額ベッド代は病院が独自に価格設定でき、無料という病院もありますが、1日5,000円や1万円、それ以上の病院もあります。入院が長引くほど負担額も増えるため、長期入院に備えたい方は民間の医療保険の準備をすると安心です

また、先進医療と呼ばれる評価段階の治療・手術は公的医療保険の対象外であり、全額が自己負担となります。先進医療にかかる費用はさまざまですが、医療保険の先進医療特約を付加すれば、通算で1,000万円や2,000万円といった額までカバーできます。公的医療保険の適用外の治療や手術に備えたい方も、民間の医療保険の準備をすると安心です

高齢者におすすめの保険3「介護に備える民間の介護保険」

介護保険の案内の用紙とボールペン 介護保険も医療保険と同じく公的保険があります。介護サービス利用者の負担は軽減されますが、対象者や対象の介護サービスの範囲は限定されます。その点、民間の介護保険は、介護にかかる負担を幅広くカバーできる点で有効です。 ここでは、介護保険の範囲と負担割合、契約する意義、また介護保険が適している方の特徴を解説します。

公的な介護保険の範囲と負担割合

介護保険は、社会全体で高齢者の介護を支え合うため、2000年に施行されました。40歳以上の全ての人が被保険者であり、介護や支援に掛かる費用の一部を給付する制度です。

65歳以上は要介護または要支援状態になったとき、40歳から64歳までは要介護または特定の原因で要支援状態になったときに、介護保険の受給が可能になります。また、介護保険の受給を受けるときの利用者の負担割合は1割です(一定以上の所得者は2割または3割)。

以下は、介護保険の給付対象となる介護サービスの一例です。
  • 訪問サービス(訪問介護、訪問リハビリテーション、など)
  • 通所サービス(通所介護、通所リハビリテーション、など)
  • 短期入所サービス(ショートステイ、短期入所訪問介護、など)
  • 施設サービス(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、など)
  • 福祉用具貸与や特定福祉用具販売
  • 地域密着型介護サービス(グループホーム、など)
幅広い介護サービスが対象ですが、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていない住宅型有料老人ホームなど、施設形態やサービス内容によっては介護保険の対象外になることもあります。

民間の介護保険を契約する目的

公的介護保険は、要介護や要支援のレベルに応じて給付されます。また、40歳以上65歳未満の要支援者が給付を受けられるのは、特定の疾患に起因する場合のみです。

一方、民間の介護保険は健康状態等の診査をクリアした被保険者に対しては、公的介護保険のように給付対象者の規定を設けていません。そのため、商品によっては公的介護保険の対象にならない事由でも給付を受けられることがあります。

また、認知症など特定の疾病を手厚く保障する保険があることも、民間の介護保険の特徴です。認知症保険であれば、各社所定の認知症と診断されたときに一時金などを受け取れます。一時金の用途は定められておらず、認知症の介護にかかるさまざまな費用に充てることが可能です。 このように、カバーする範囲を広げたり、特定の疾病に重点的に備えたりするために、民間の介護保険は活用できます。

民間の介護保険がおすすめな人

公的介護保険制度によって介護サービスの負担は軽減されますが、40歳以上の要介護者や要支援者に限られます。さらに、40歳以上65歳未満の場合は、要支援であっても給付を受けられないケースがあることにも注意が必要です。

その点、民間の介護保険は対象範囲が広く設計されていることもあり、40歳以降の介護サービスの負担に不安がある方に備える事が出来ます

また、民間の介護保険は現金給付で、給付金の使い方に規定はありません。「給付金を利用して介護に適した住宅改修に充てたい」「介護保険ではカバーできない手厚い介護サービスを利用したい」など、給付金や一時金を柔軟に活用が可能です

高齢者におすすめの保険4「公的年金にプラスで備える個人年金保険」

個人年金保険の案内の用紙と計算機 個人年金保険は任意で加入できる私的年金の一種です。契約時に定めた年齢から、一定期間もしくは一生涯、年金として契約した額を受け取れます。将来受け取る公的年金に上乗せしたいときに役立つ保険です。 公的年金の基礎をおさらいしながら、個人年金保険を契約する目的や、おすすめできる方について解説します。

老後に受け取れる公的年金

国民皆年金制度により、20歳以上、原則60歳までの方すべてが公的年金に加入する義務があります。公的年金制度は、国民年金(第1号被保険者)、厚生年金(第2号被保険者)、国民年金(第3号被保険者)に分類されます。 国民年金(第1号被保険者)の加入対象は、20歳以上60歳未満の自営業者や大学生などの方で、毎月一定の額を納めます。国民年金(第3号被保険者)は、第2号被保険者に扶養されている方が対象で、保険料の負担はありません。いずれも、厚生年金の加入時期がない場合は、基礎年金のみが支給されます。 厚生年金(第2号被保険者)の加入対象は、会社員や公務員の方です。厚生年金保険料の半分を会社が負担し、残りの半分を加入者が負担する仕組みになっています。年金は基礎年金に加え、所得に比例した厚生年金が支給されます。

個人年金保険を契約する目的

公的年金制度により、加入期間が10年以上の方は、将来一定の額を年金として受け取れます(10年未満でも任意加入や未納期間の解消などで資格を満たすことは可能です)。受給できる額は年金保険料の払込期間、厚生年金の加入期間や加入期間中の所得に応じて変動します。 個人年金保険は、公的年金以外に、将来のための資産形成を考えている方に有効です。もし個人年金保険加入者が年金受給前に亡くなったときは、払われた分の保険料が死亡保険金として支払われます。終身保険のように、葬儀費用の準備にも活用できる保険です。

個人年金保険がおすすめな人

個人年金保険は老後の生活資金の形成を目的にした保険のため、加入することで、将来の生活資金の準備になるほか、老後の娯楽費用などにも充てられます。 また、個人年金保険には、生死にかかわらず一定期間年金を受給できる「確定年金」、死亡するまで一定期間年金を受給できる「有期年金」、死亡するまで年金を受給できる「終身年金」といった受け取り方を選べます。60歳や65歳以降などに向けて幅広い選択肢から選びたい方、シミュレーション通りに年金を受け取りたい方におすすめできる保険です。

個人年金保険がおすすめな人

個人年金保険は老後の生活資金の形成を目的にした保険のため、加入することで、 将来の生活資金の準備になるほか、老後の娯楽費用などにも充てられます

また、個人年金保険には、生死にかかわらず一定期間年金を受給できる「確定年金」、死亡するまで一定期間年金を受給できる「有期年金」、死亡するまで年金を受給できる「終身年金」といった受け取り方を選べます。60歳や65歳以降などに向けて 幅広い選択肢から選びたい方、シミュレーション通りに年金を受け取りたい方におすすめできる保険です

まとめ

高齢者におすすめの保険として挙げられるのは、終身保険・医療保険・介護保険・個人年金保険です。死亡・病気やけが・介護・長生きリスクと、いずれも公的保険制度による支援はありますが、カバーできる範囲を増やしたい方、それ以上の手厚い保障を望む方は、民間の保険をうまく活用してはいかがでしょうか。

保険の加入や見直しは、高齢者の方でも遅くありません。ご不明な点があれば、保険見直し本舗の専任アドバイザーにご相談ください。