「出産にかかる費用、保険は適用されるの?」
出産を控えた女性の皆さんにとって、出産にまつわる費用や保険の問題は切実な悩みかもしれません。
本記事では、出産にかかる費用を少しでも抑えたい方や、子どもが生まれた後の保障が気になる方に向けて、出産と保険に関する最新情報や知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。また、出産に関する保険の適用時期や、それまでの間に利用できる様々な支援制度・保険の活用方法もご紹介。
出産前後の経済的な不安を解消し、新しい家族を迎えるための準備ができるよう、ぜひ最後までご一読ください。
目次
出産は保険適用?
出産費用は、基本的に全額自己負担となります。通常の出産が医療行為ではなく、自然な生理現象とみなされるためです。
しかし、すべての出産が保険適用外というわけではありません。異常分娩と判断された場合には保険が適用されるケースもあります。この判断基準となるのは、医療行為とみなされるものであるかどうかです。
例えば、緊急帝王切開術は医療行為とみなされるため、健康保険が適用されます。児頭を牽引して出産のお手伝いをする吸引・鉗子分娩も異常分娩の1つで、医療行為とみなされた場合には保険の適用となります。
その他、妊娠高血圧症候群や切迫早産などの合併症が発生した場合も、医療行為を必要とするため、保険が適用される可能性があります。
医療行為に該当するのか、という基準における保険適用の有無は個々の状況によって異なります。妊娠中は定期的に産婦人科医と相談し、自身のケースについて確認することが重要です。
出典:厚生労働省(「正常分娩」の保険化に対する日本産婦人科医会の考え方)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001282557.pdf)
出産が保険適用外なのはなぜ?
出産が保険適用外となる主な理由は、出産が病気ではなく、正常な生理現象とみなされるからです。健康保険は本来、病気やケガの治療に対して適用されるものであり、出産はこれらとは異なります。
出産費用の負担が重いことで、経済的理由から出産を躊躇する人も多く、厚生労働省によると、「出産費用を高いと思う」が64.7%にも上り、「公的な負担がもっとあるといい」と考えている人も67.6%います。
出典:厚生労働省(第3回妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001291295.pdf)より弊社で作成
また、もう1人以上産みたいが躊躇する(25.0%)という回答もあり、一度は出産を経験したものの、4人に1人は次の出産に前向きでないという結果もわかっています。
出典:厚生労働省(第3回妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001291295.pdf)より弊社で作成
こうした背景を踏まえて正常分娩を保険適用にするか、という点は国や専門家の間で議論が続けられています。次で、もう少し詳しく解説します。
いつから?出産の保険適用は2026年が目処
出産費用の保険適用については、2026年度を目途に導入が検討されています。2023年12月22日に閣議決定された「こども未来戦略」において示された方針です。
現在、出産に関する費用は基本的に公的医療保険の適用外となっており、妊婦健診や出産費用のほとんどが自己負担となっています。この状況を改善するため、政府は出産費用の保険適用に向けた検討を進めているという状態です。
ただし、2026年度という目標年度は、あくまでも目途であり、具体的な実施時期や適用範囲については、今後さらなる議論と検討が必要です。具体的な制度設計や財源確保などの課題が残されており、実現までにはまだ時間がかかる見通しです。
出典:こども家庭庁(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fb115de8-988b-40d4-8f67-b82321a39daf/b6cc7c9e/20231222_resources_kodomo-mirai_02.pdf#page=17)
妊娠中・出産時にかかる費用の一覧
妊娠・出産には、以下のように様々な費用がかかります。下記の表は、主な費用項目とその相場をまとめたものです。
費用項目 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
妊婦健診費用 | 1回あたり3,000円〜10,000円程度 | 妊娠期間中に14回程度の受診が推奨 |
出産・分娩費用 | 平均約50万円 | 出産育児一時金(50万円)で一部カバー可能(※) |
入院費用 | 出産費用に含まれることが多い | 個室利用などで追加料金の可能性あり |
出産準備品 | 10万円〜30万円程度 | マタニティウェア、ベビー用品など |
里帰り出産関連費用 | 状況により変動 | 交通費、追加の妊婦健診費用など |
(※)妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は、支給額が48.8万円となります。
この費用は地域や医療機関によって異なるほか、自治体による助成制度を利用できる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
妊娠・出産を機に保険の見直しは必要?
妊娠・出産は人生の転機であり、保険の見直しを考えやすいタイミングと言えます。新しい家族を迎えるにあたり、これまでの生活環境が変わることを踏まえ、保障内容を再検討するのに良い機会となるためです。
ただし、多くの保険商品は、妊娠中や出産直後の加入に制限を設けています。そのため、妊娠前に保険の準備を整えておくことが望ましいです。
保険見直し本舗では、出産前後の時期に合わせた保険をご提案いたします。
「今の保険で十分かな?」「家族が増えて保障を見直したい」など、保険のことでお悩みがありましたら、些細なことでもお気軽にご相談ください。
出産前後で「備え」になる保険は主に3種類
出産前後で「備え」になる保険は、主に以下の3種類です。
- 死亡保険
- 医療保険
- 学資保険
それぞれの特徴と必要性について詳しく見ていきましょう。
死亡保険
死亡保険は、家計の中心となる世帯主に万が一のことがあった場合、残された家族の生活を守るためにお金が受け取れる保険です。
生命保険文化センターの調査によると、世帯主が亡くなった場合、残された家族の生活を維持するために平均で約5,700万円が必要とされています(※年間必要額327万円を17. 1年間分として計算)。もちろん、遺族年金などの公的制度もありますが、死亡保険への加入は万が一の際に家族の生活を守る備えとなります。
関連記事:死亡保険の平均保障額はいくら?必要な保障額の相場も解説
出典:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」より(https://www.jili.or.jp/press/2021/3672.html)
医療保険
医療保険は、病気やケガで入院や手術をした場合に保障が受けられる保険です。日本の公的医療保険制度は充実していますが、妊娠における入院時の食費や部屋代、交通費などは自己負担となります。
また、入院の際に購入した寝巻きや洗面用具などの身の回り品、外部から取り寄せた出前や外食した場合の食事代は、医療費控除の対象にはなりません。こうした予期せぬ医療費の負担から家族を守る備えとして、医療保険を検討できます。
関連記事:おすすめの医療保険の選び方は?保障内容や医療保険の種類も解説
出典:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」より(https://www.jili.or.jp/press/2021/3672.html)、国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1124.htm)
学資保険
学資保険は、子どもの教育資金を計画的に準備するための保険です。文部科学省の調査によると、子どもが幼稚園から高校までにかかる教育費用は、約1,087万円にもなります。
- 公立学校のみの場合の総教育費用:5,435,958円
- 私立学校のみの場合の総教育費用:18,304,926円
- 公立学校と私立学校の教育費用の平均:11,870,442円
文部科学省(平成30年度子どもの学習費調査の結果について )より、弊社で作成。幼稚園は3年間、小学校は6年間、中学校は3年間、高校は3年間とし、平均は公立学校の総教育費用と私立学校の総教育費用の合計を2で割ることで算出。
学資保険の主な特徴は、以下のとおりです。
- 教育資金が必要なタイミングで保険金を受け取れる
- 長期加入ほど返戻率(支払った保険料に対する受取保険金の割合)が高くなる傾向がある
- 万一(死亡または高度障害状態)があったときに保険料の払込は免除されて予定通りの時期に予定通りの金額を受け取れる
この特徴により、学資保険では子どもの将来の教育に向けて計画的に教育資金を確保できます。教育という支出に備えるための有効な手段であり、妊娠・出産を機に検討する価値があると言えるでしょう。
関連記事:学資保険のおすすめは?加入のメリットや保険の選び方も解説
出典:文部科学省(平成30年度子どもの学習費調査の結果について )(https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf)
保険だけではない?出産を対象とした制度
出産に関しては、保険制度以外にも以下の支援制度が用意されています。
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 高額療養費制度
- 傷病手当金
- 医療費控除
- 産科医療補償制度
この制度は、出産にかかる経済的負担を軽減し、出産・育児に臨めるよう支援するものです。それぞれの制度の詳細を見ていきましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金は、健康保険や国民健康保険の被保険者またはその被扶養者が出産した際に支給される制度です。この制度の目的は、出産に伴う経済的負担を軽減することにあります。
近年の出産費用の上昇傾向を踏まえ、令和5年4月からは支給額が50万円(産科医療補償制度の掛金1.2万円を含む)に引き上げられました。
出産育児一時金は、原則として医療機関等へ直接支払われる仕組みになっています。そのため、妊婦の方が多額の現金を用意する必要がなく、手続きの手間も軽減されています。
出典:厚生労働省(医療保険制度改革について)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001011528.pdf)
出産手当金
出産手当金は、女性労働者が出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けられない場合に支給される制度です。健康保険から支給され、産前産後の休業期間中の収入を補償する役割を果たします。
支給額は、原則として1日につき、休業開始時の標準報酬日額における3分の2相当額です。支給期間は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日から出産の日後56日までの範囲で、仕事をしていなかった期間となります。
ただし、会社から休業中に給与が支払われ、その額が出産手当金を上回る場合は、出産手当金は支給されません。
出典:厚生労働省(育児休業 、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します)(https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_r02_01_04.pdf)
高額療養費制度
高額療養費制度は、医療費の家計負担が重くならないよう設けられた制度です。1か月(歴月:1日から末日まで)の医療機関や薬局の窓口での支払いが一定額を超えた場合、その超過分が後日支給されます。
この制度は、通常の出産では適用されません。ただし、妊娠・出産に関連して高額な医療費がかかった場合に利用できます。
支給額の上限は年齢や所得に応じて定められており、さらに負担を軽減する仕組みも設けられています。申請方法や具体的な計算方法については、保険に関する相談窓口に確認するのが良いでしょう。
出典:厚生労働省(高額療養費制度を利用される皆さまへ)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html)
傷病手当金
傷病手当金は、業務外の理由で病気やケガのために働けなくなった場合に、一定期間の所得を保障する制度です。出産に関連する疾患で働けなくなった場合にも、適用される可能性があります。
支給開始は、労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日からとなります。支給期間は、同一の疾病・負傷に関して、支給を始めた日から通算して1年6か月を超えない期間となっています。
支給額は以下の計算式で求められ、休業した日単位で支給されます。
- 1日あたりの傷病手当金=直近12ヵ月の標準報酬月額の平均額÷30×2/3
出典:厚生労働省(傷病手当金について)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000619554.pdf)
医療費控除
医療費控除は、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を行うことで所得控除を受けられる制度です。出産に関連する医療費もこの控除の対象となります。
控除額は、実際に支払った医療費から保険金などで補填された金額を差し引いた額のうち、10万円(所得が200万円未満の場合は所得の5%)を超える部分です。
出産に関連する医療費控除の対象としては、以下のようなものが挙げられます。
- 妊婦健診の費用
- 出産時の入院費用
- 出産後の母体ケアにかかる費用
- 新生児の医療費
医療費控除を使うことで、出産にかかった医療費の一部を取り戻すことができます。ただし、出産育児一時金で補填された部分は控除の対象外となるので注意が必要です。
出典:国税庁(No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1124.htm)
産科医療補償制度
産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性まひのお子さまとご家族の経済的負担を速やかに補償する制度です。この制度は、産科医療を受けられる環境整備の一環として、平成21年1月に創設されました。
補償金は、準備一時金600万円と補償分割金2,400万円(20年×120万円)の総額3,000万円となっています。加入している分娩機関では、「産科医療補償制度」のシンボルマークが掲示されています。また、妊婦さんには「登録証」が交付されるため、大切に保管しておくことが重要です。
出典:厚生労働省(産科医療補償制度について)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/i-anzen/sanka-iryou/index.html)
まとめ
通常の出産は保険適用外ですが、出産育児一時金や出産手当金など、様々な支援制度が用意されています。
さらに、高額療養費制度、傷病手当金、医療費控除、産科医療補償制度など、出産に関連する様々な制度もあります。上手に使うことで、経済的負担を軽減して出産・育児に臨むことができるでしょう。
出産前後には、将来の子育てや教育費に備えて適切な保険を検討することも重要です。学資保険や医療保険、生命保険などの保険は、お子様の成長に合わせて必要な保障を提供し、万が一の際の経済的な備えとなります。
出産前後に、ぴったりの保険プランをお探しではありませんか?
保険見直し本舗では、あなたの生活環境や将来の計画をじっくりお聞きし、最適な保険プランをご提案いたします。
「今の保険で足りているかな?」「家族が増えることを想定して保障を見直したい」など、保険のことでお悩みがありましたら、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
出産したらお金がもらえる保険はありますか?
出産時に直接お金がもらえる「保険」はありませんが、出産育児一時金という制度を使うことで経済的支援を受けられます。
健康保険から支給される給付金で、出産1回につき50万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関での出産の場合は48.8万円)が支給されます。
出典:全国健康保険協会「出産育児一時金について」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r310/)
妊娠したら保険に入ったほうがいいですか?
妊娠したら、死亡保険と学資保険への加入をおすすめします。ただ、以下3つの理由から、医療保険は妊娠前に保険に加入しておくことがベストです。
- 切迫早産に備えられるため
- 帝王切開は増加傾向にあるため
- 万一の妊娠高血圧症候群に対応するため
詳しくは、以下のページでも触れています。
出産前に保険に入るべきか?
以下の理由から保険への加入をおすすめします。
- 妊娠・出産に伴う予期せぬ合併症や緊急事態に備えられる
- 妊娠中や出産直後は、保険加入が制限される
- 子育てにかかる将来の費用に備えられる
- 万が一の際、残された家族の生活を守ることができる
出産前に保険へ加入することで、子どもの誕生後に必要となる保障(例:教育資金)についても、早めに準備を始められるメリットがあります。妊娠・出産に伴う予期せぬ合併症や緊急事態に備えられるほか、妊娠中や出産直後は、保険加入が制限されることもおすすめの理由です。