生命保険(死亡保険)は、万一の際、家族を経済的な困難から守る砦となり、医療保険は病気やケガの治療費をサポートします。生命保険・医療保険を申し込もうと考えている方の中には「どちらの保険が自分にとって合っているのか?」という疑問・悩みをお持ちの人も多いのではないでしょうか。自分や家族のために、生命保険と医療保険のどちらを選ぶべきか、また両方選ぶべきかどうかは、生活のステージや個々のニーズによって異なります。
当記事では、生命保険と医療保険の違いや、各保険の特徴や仕組みなどを分かりやすく解説します。
1. 生命保険と医療保険の違い
民間の医療保険は広義の生命保険に含まれるものの、保障内容は以下のように大きな違いがあります。
【生命保険(死亡保険)と医療保険の違い】
生命保険(死亡保険) | 医療保険 | |
---|---|---|
主契約 | 被保険者が死亡した場合の保障 | 被保険者が病気やケガをした場合の保障 |
受取人 | 原則、配偶者もしくは二親等以内の親族 | 原則、被保険者本人 |
主な目的 | 万一の時の家族の生活保障 | 病気やケガに対しての保障など |
生命保険、特にここでいう死亡保険とは、被保険者が死亡した際(または高度障害状態になった際)に家族などの受取人が死亡保険金を受け取れる保険のことです。
民間の医療保険とは、被保険者が病気やケガで入院や手術を必要とした場合に、治療費などの給付金を受け取れる保険です。給付金の額は、数千円から数十万円程度が一般的です。
民間医療保険の保障は継続的なものであり、生存中に複数回受け取る可能性があります。一方で、死亡保険は原則として被保険者の死亡時に適用される保険です。
2. 生命保険(死亡保険)とは
死亡保険は被保険者が亡くなった際、または特定の高度障害に陥った場合に、遺族に死亡保険金が支払われます。以下では、死亡保険の主な4つの種類について分かりやすく紹介します。
2-1. 定期型死亡保険
定期型死亡保険は、保険期間があらかじめ定められた保険です。保険期間内に、被保険者が亡くなった際や特定の高度障害になった場合に死亡保険金が支払われます。保険期間は通常、年数(例:15年間、20年間など)で設定される「年満了」や、被保険者の特定の年齢(例:60歳まで、80歳までなど)で定める「歳満了」があります。
定期型死亡保険は「掛け捨て型」の保険です。満期保険金や解約返戻金が少ない代わりに、保険料負担は小さい傾向にあるため、特定の期間だけ大きな保障を得たいと考える方に向いています。たとえば、子どもの教育費用や住宅ローンの返済期間をカバーするために、大きな保障をなるべく負担の少ない保険料でまかないたい方などです。
2-2. 終身型死亡保険
終身型死亡保険は、死亡保障が被保険者の一生涯にわたり続く保険です。
有期払いと終身払いの2つの保険料の支払い方法があり、有期払いはある一定の期間で保険料を支払い終えると、その後は追加の支払いがありません。終身払いは、被保険者が生きている間は、保険料を支払い続ける必要があります。終身型死亡保険の特徴としては、解約返戻金が存在する点です。契約途中で解約する場合には、一定の金額が返戻されます。
終身型死亡保険が向いているのは、たとえば一生涯にわたって自分の死亡リスクをカバーしつつ、かつ老後の生活資金や相続対策としての資金準備を考えている方です。保険料の支払いが一定であることを好む人や、将来的に解約返戻金を受け取りたいと考える方にも適しています。保険料負担は掛け捨ての定期型に比べると大きくなる場合が一般的ですが、それに見合う長期にわたる保障と、将来的な資産としての価値を見込めます。
2-3. 収入保障保険
収入保障保険は、被保険者が亡くなった場合に遺された家族が一定期間、年金形式で死亡給付金を受け取れる保険です。死亡給付金は毎月または年に1回、年金の形で支給され、被保険者の死亡時点から保険期間の終了まで続きます。保険期間中に被保険者が早期に亡くなれば、その分受取総額は大きくなりますが、保険期間終了間際に亡くなった場合、受け取れる総額は小さくなるのが特徴です。また、最低保障期間が設けられており、この期間内には収入保障年金の総額が減少しない保障があります。
自分(家計を支える者)が突然亡くなった場合に、遺された家族の生活費を確保したいと考える方に向いている保険です。
2-4. 養老保険
養老保険は、死亡保障と貯蓄性を兼ね備えた死亡保険の一種です。契約者が設定した一定の保険期間中に亡くなるか、特定の高度障害になった場合には死亡保険金や高度障害保険金が支払われます。何事もなく保険期間満了を迎えた場合には満期保険金が支払われる点が特徴です。
養老保険は、将来の資産形成と死亡保障を同時に考えている方、たとえば子どもの教育資金を計画的に準備したい保護者や、60歳前の退職後の生活資金を確保したい方に適しています。
3. 医療保険とは
医療保険は、病気やケガの治療に伴う費用を経済的にサポートするための制度です。主に公的医療保険と民間の医療保険の2つがあり、公的医療保険制度は国が運営して全国民が加入するもので、民間の医療保険は個人が自由に加入する保険会社の商品です。
3-1. 公的医療保険制度との違い
公的医療保険制度は、日本に住むすべての人が加入し、医療サービスを受ける際の経済的な負担を軽減する制度で、国が運営しています。
公的医療保険制度では、加入者が保険料を出し合い、必要な医療を窓口での自己負担のみで受けられる「国民皆保険」の原則に基づいています。どの医療機関でも自由に診療を受けられる「フリーアクセス」や、「現物給付」としての医療サービス(診察・入院・投薬など)を受けられる点が特徴です。
これに対して、民間の医療保険への申し込みは任意であり、公的医療保険制度でカバーされない部分を補う形で設計されています。民間医療保険には加入条件があり、保険料が健康状態によって変わる可能性がありますが、公的医療保険制度はすべての国民が平等に利用できる点が異なります。
出典:厚生労働省ホームページ
3-2. 定期医療保険
定期医療保険は、契約した一定期間内での病気やケガによる入院や手術に対して保障を提供する民間医療保険です。この期間は、たとえば10年単位や60歳までといった年数や年齢で定められ、期間終了後は契約の更新が必要です。更新時には年齢に応じて保険料が見直されるため、通常、保険料負担は大きくなります。若いうちは保険料負担が比較的小さく設定されているので、若くて健康な時期に低コストで保障を得られるメリットがあります。
定期医療保険が向いているのは、特定の期間だけリスクをカバーしたい方や、将来のライフステージや健康状態の変化に応じて保険を柔軟に見直したい方です。定期医療保険は、保障が必要な期間を選び、その後のライフプランに合わせて更新することが可能であるため、ライフステージの変化に合わせた保障を計画しやすいという特徴があります。
3-3. 終身医療保険
終身医療保険は、病気やケガによる医療費の一部を生涯にわたって保障する保険です。保険料の支払い方法には、一生涯にわたって定額を支払う「終身払い」と、一定期間や一定年齢までに支払いを完了する「短期払い」があります。終身払いは、長期的に見ると1回あたりの負担が軽減されますが、短期払いは早期に支払いを完了できる分、1回あたりの保険料負担が大きくなるのが特徴です。
終身医療保険は、将来にわたって継続的な医療保障を求め、かつ年齢を重ねても保険料が変わらない安定した保険料を希望する方に適しています。特に病気やケガのリスクが高まる高齢になっても保障を受け続けたい場合や、将来の保険料の増加を避けたい方に向いています。一方で、若い時期は定期医療保険より保険料の負担が大きくなることが一般的のため、自身の経済状況や将来設計を考慮し、必要な保障内容を選ぶことが大切です。
3-4. がん・三大疾病保険
がん保険はがんに対して、三大疾病保険は、がん・急性心筋梗塞・脳血管疾患(脳卒中)の3つの疾病に対して、保険会社が定める一定の条件を満たした場合に一時金が支払われる保険です。保険金の額は加入時に設定され、診断確定や治療を受けることで受け取りが可能となりますが、支払条件は保険会社によって異なります。
三大疾病保険は、がんだけではなく、日本人の死因の上位を占める急性心筋梗塞・脳血管疾患も含めた保障を望む方に向いています。ただし、保障対象が広いため、保険料負担はやや大きくなる傾向です。保険料払込免除特約がついている場合、所定の状態になった以降は、保険料の払い込みが免除されます。保険の継続も保障されるので、金銭的な心配を減らして、長期の治療に専念しやすいでしょう。
3-5. 女性保険
女性保険は、女性特有の病気に特化した保険です。乳がん、子宮頸がんなどの女性特有の疾病に対して、入院や手術時に通常の保障に加えて追加の給付金を受け取ることができます。単独で販売される場合もありますが、基本的には既存の医療保険に女性疾病特約として付加されることが一般的です。
女性保険は、女性特有の疾病に対するリスクが特に気になる方、将来的に妊娠や出産に関連する疾患に備えたい方、プライバシーを重視して個室に入院したい方などに向いています。女性特有の病気による長期の治療や高額な治療に直面した場合の、経済的な負担を軽減したいと考える方にとっても、女性保険は適しています。
3-6. 引受基準緩和型・無選択型医療保険
引受基準緩和型保険は、健康状態の告知項目が少ない保険のことです。無選択型保険は、健康状態の告知が必要ない保険です。過去に病歴がある方や既往症を持つ方など、通常の医療保険に入りにくい方でも、申し込みが通りやすいメリットがあります。
無選択型保険は保障開始までに免責期間が設けられていることが一般的で、契約直後に発生した病気やケガに対しては保障が適用されない場合があります。また、保険料負担が大きめである点や、特定の病歴や疾病には保障が適用されないケースもあるため、保険の選択時には確認が必要です。
4. 生命保険(死亡保険)と医療保険のどっちに入るべき?
ライフステージによって、死亡保険と医療保険のどちらが自分に向いているかは異なります。現在の家族構成や将来設計などを踏まえて、さまざまな視点から検討してみることが大切です。
4-1. 生命保険(死亡保険)に申し込むとメリットがある人の特徴
生命保険(死亡保険)に申し込むとメリットがある人の特徴は、主に以下の通りです。
- 現在世帯の家計を主に支えている人
- 子どもがいる人
万一の際、死亡保険金は遺された家族の経済的な支えとなり、日々の生活費や教育資金、老後資金など、将来の支出への備えに役立ちます。 - 保険を利用して資金形成をしたい人
生命保険の種類によっては、資産を築けるものもあるので、貯蓄や投資とは異なる方法で貯蓄ができます。特に解約返戻金があるタイプの保険は、満期時や契約解除時にまとまったお金を受け取れるため、資金計画の一環として利用できるでしょう。
4-2. 医療保険に申し込むとメリットがある人の特徴
医療保険に申し込むとメリットがある人の特徴は、主に以下の通りです。
- 病気やケガになった時、家計に支障が出る人
病気やケガや病気で収入が途絶えた際、給付金があれば家計の支障を補い、経済的な安定を保ちやすくなります。自営業者やフリーランスの方にも向いているでしょう。 - 受けられる治療の選択肢を広げたい人
たとえば、先進医療は保険適用外であり、医療費も高額です。公的保障でまかなえない部分をカバーできるのが、民間の医療保険のメリットでもあります。 - 入院した時の治療費、入院費以外の出費にも不安がある人
入院時には、治療費や入院費だけでなく、差額ベッド代、食事代、交通費などもかかります。こうした費用も、給付金で補填できるので安心感につながります。
4-3. 両方の保険に申し込むとメリットがある人の特徴
死亡保険と医療保険は、保障の範囲や保険の目的が異なります。
両方に加入していた場合、日常の病気やケガなどをカバーしつつ、万一のことがあっても遺された家族に死亡保険金が支給されるため、より安心できます。特に、既婚者や子どもがいる方は、両方の保険に入ることを検討してみてもよいでしょう。
5. 自分に合った保険を選ぶポイント
死亡保険・医療保険にはどちらも特約があり、ライフステージや世帯状況に応じて必要な保障を選ぶことが大切です。以下では、どのような点に注目して、自分に合った保険を選べばよいかについて解説します。
5-1. 保険に加入する目的で選ぶ
保険に加入する目的は、人によって以下のようにさまざまあります。
- 家族の将来を守りたい
- 病気やケガでの治療費に備えたい
- がん治療に特化した保障がほしい
- 仕事ができなくなった時の生活費を確保したい
- 子どもの教育費や老後の生活資金を準備したい
【例】
目的に応じて適切な保険を選ぶことで、必要な時に適切な保障を受けることが可能となります。
5-2. 加入期間で選ぶ
定期型は一定の期間だけ保障され、若いうちは保険料負担が小さいですが、更新時には年齢に応じて保険料負担が大きくなる傾向があります。ライフステージが変化する中で必要な保障を見直しやすい定期型は、一定期間だけ特定のリスクをカバーしたい場合に適しています。
一方、終身型は加入時から一生涯保障され、保険料は変わらないものの、若いうちの保険料負担は定期型と比べると大きいです。終身型の場合は解約返戻金が受け取れるため、貯蓄性を考慮したい場合にも適しているでしょう。
5-3. 保険料負担・保障額で選ぶ
年代・性別別の平均保険料や平均保障額などもチェックすると、自分が保険を決める際の1つの参考になります。下記の金額を目安として、保険料や保障内容を検討してもよいでしょう。
【年代・性別の平均年間払込保険料】
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 11.9万円 | 9.6万円 |
30代 | 19.9万円 | 14.0万円 |
40代 | 22.4万円 | 18.6万円 |
50代 | 25.5万円 | 19.0万円 |
60代 | 21.2万円 | 15.9万円 |
70代 | 16.4万円 | 13.0万円 |
出典:(公財)生命保険文化センター ホームページ「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」をもとに作成
【年代・性別の1日あたり平均入院給付金額】
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 7,400円 | 7,100円 |
30代 | 9,200円 | 8,000円 |
40代 | 10,500円 | 8,400円 |
50代 | 10,900円 | 8,700円 |
60代 | 9,600円 | 8,300円 |
70代 | 8,300円 | 7,000円 |
出典:(公財)生命保険文化センター ホームページ「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」をもとに作成
【年代・性別の死亡保険金の平均保障額】
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 1,001万円 | 751万円 |
30代 | 2,065万円 | 768万円 |
40代 | 1,883万円 | 807万円 |
50代 | 1,629万円 | 737万円 |
60代 | 1,071万円 | 507万円 |
70代 | 582万円 | 395万円 |
まとめ
年代別の平均年間払込保険料は、20代から徐々に上がり、50代をピークとして、その後は緩やかに下がっていく傾向です。また、女性よりも男性のほうが平均年間払込保険料の負担が大きいというデータが出ています。
生命保険と医療保険では、そもそも保障の目的が異なるため、どちらを選ぶべきかは、その方それぞれのニーズによって異なります。まずは、保険に加入する目的や、定期型と終身型のどちらが自分に合っているか、といった部分から考えてみるとよいでしょう。