保障内容から考える、失敗しないがん保険の選び方

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保険の基礎知識
保障内容から考える、失敗しないがん保険の選び方

多種多様な商品が並ぶがん保険。似たような名称でも保険会社が異なれば保障の内容にも違いがありますし、保障額の規模もさまざま。しかもがん保険は多くの特約が用意されていますから、その一つひとつを選んでいくのはなかなか骨の折れる作業です。

自分に合った保険を見つけるには、どのような手順を踏み、どのような基準で選んでいけば良いのでしょうか?

1.がん保険を選ぶ前に

1-1 まず、自分に必要なものを知ることから

がん保険の選び方についてお話しする前に、まず知っておかねばならないことは「自分にはどんな保障が必要なのか」ということです。逆に、これさえはっきりしていれば、どの商品を選べば良いかと悩むことはありません。自分の希望通りの商品を探し、もしも不足があるのなら特約をつけるなどすれば問題ありません。

では、もしも自分ががんになったら、どんな保障が必要になるでしょう? それを知るには、さらにその前段階として「がん治療にかかる費用」というものを、ある程度知っておかねばなりません。

がんにはいろいろな種類があり、診断されたときの状況も人によって違います。早期に発見できた場合と、かなり進行してから見つかった場合とでは、それぞれに治療法も経過も違います。比較的短期間に治療できることもあれば、ある程度の期間が必要になることもあります。

こうしたさまざまな場合を想定した上で「では、自分には何が必要なのか」を考えることがポイントなのです。

1-2 がんについて、おさらいしてみる

ではここで、がんについてあらためておさらいしてみましょう。その上で、あなた自身にとって必要な保障は何かを考えていくのです。

■がんの種類
がんは、ほぼ全身に発生する可能性がありますが、部位別に見ると、男女それぞれで明確な違いが見てとれます。

下記は国立がん研究センターがん情報サービスの2018年の統計(*1)で、がんと診断された人々の部位別の罹患率です。男性では前立腺、胃、大腸、肺がそれぞれほぼ同じくらいの数字ですが、女性では乳房が最多、そのあとに大腸、肺、胃、子宮と続いています。

部位別がん罹患率

がんは発生部位によって病状の進行や転移の危険度が変わったりしますし、選択される治療法が異なる場合もあります。そうなると必要な治療費や入院日数にも影響してくるでしょう。

いずれにしても 「早期発見・早期治療」が肝要ですので、がん保険による備えだけでなく、定期的な検診を受けることがポイントでしょう。早く発見できれば、それだけ治療もしやすく、また早期の回復を図ることもできます。

■がんの治療法
保険適用となる治療についていえば、三大療法である手術・化学療法・放射線治療です。手術には部位によって多くの方法があり、また進行の程度によっても手術範囲が変わってきます。化学療法や放射線治療は、手術に耐えるだけの体力がなかったり、がんそのものが広い範囲に分布してしまっていたりする場合などに行われます。

これら保険診療以外にも、がん治療においては自由診療として数多くのメニューが用意されています。いわゆる先進治療も、そのひとつです。ですが、これらの治療はどこの病院でも受けられるというものではありません。健康保険が使えないために割高になりますし、ことに先進医療は数百万円という高額に達することも珍しくないのです。

■がんの治療期間
これは明確にしにくい数字ではあります。たとえば手術を選択した場合、手術のために入院する日数は(かなりのばらつきはありますが)おおよそ2~3週間です。

ですが、がん治療というものは「手術が済めばそれで終わり」ではありません。これは化学療法でも放射線治療でも同様で、ひと通りの治療が済んだからといって治療が完了したことにはならないのです。

がんには「転移・再発」という特性があります。ですから一度は病巣を叩き、取り除くことができたとしても、その後の経過にも目を光らせる必要があります。たとえ手術で大きな病巣を切り取っても、その後すぐに新たな病巣ができてしまっては意味がありません。

そのためがん治療では「5年生存率」という言葉をよく使い、これを治癒の目安にすることがよくあります。治療のあと、5年が過ぎてもがんが見つからなければ治癒したと見なすのです。そのため治療から最低でも5年は定期的な検査を受ける必要がありますし、場合によっては再び治療を受けることになるかもしれません。

がんは、1回の治療ですべてが終了するわけではありません。それだけに治療も長期になりやすいのです。

1-3 平均的な治療費はどれくらい?

がんは、その進行状況や患者さんの希望によって、さまざまな治療法を組み合わせることがよくあります。しかもがんが発生した部位によっても治療法は違いますので、一概に必要な治療費をはじき出すことができません。

ですが厚生労働省が行っている「医療給付実態調査」の統計(*2)からすると、がんの治療費は次のようになります。

がん治療1件あたりの平均費用例

日本では公的医療保険制度の「高額療養費制度」を使うことができますので、最終的な自己負担額はそれほど重くないように見えます。しかし、がん治療の中には公的医療保険制度の適用にならない高額な治療も存在します。さらに、直接的な医療費はもちろん、それ以外にも周辺のさまざまな費用が掛かります。

入院先に家族が通うにしても交通費がかかりますし、通院治療でもそれは同様です。何より、治療を受けている間は仕事ができませんから、その分収入は削られてしまいます。しかも治療期間は長期にわたることが多いため、それだけ出費も増えていきます。1回の治療に必要な治療費、入院費だけに注目していると、その周辺に目が届かず、いざその時になって「えっ、こんなに?」と慌てることにもなりかねません。

そして、そうならないための有効な備えの一つとして、がん保険があります。もちろん、貯蓄などで長期の入院による治療費や、その間の収入減に対する準備ができているのなら別ですが、それだけの費用をカバーできる貯蓄がある方は少数派ではないでしょうか。それゆえに、多くの場合、特に経済的なリスクの高いがんに対して「がん保険」で備えます。

「がん保険に入っていない……」「昔がん保険には入ったけど今の医療事情に対応しているのかな……」など少しでも心当たりのある方は、自分のためにも、大切な家族のためにも、優先的にがん保険を検討してみてはいかがでしょうか。

⇒がん保険の見直しのポイントとは!?

2.自分に合ったがん保険はどれ?

2-1 まず、がん保険の種類を見直してみる

がんの特徴をおさらいしたところで、次にがん保険のバリエーションについて見直してみることにしましょう。

これは他の項目でも折に触れてお話ししていることですが、実際にがん保険の種類というのは非常に数多くあります。しかも特約という形でさまざまなオプションを付けることができますから、それらすべての保険を知るということは、がん保険のことを調べ始めたばかりの方にはかなり難しいでしょう。

だからといって「どれでも変わらないから、何でもいい」というものではありません。自分自身と家族のための保険はその内容や特徴を理解した上で、自分に合った保険を選びましょう。「詳しいところがよく分からない」となれば、保険見直し本舗のコンサルティングアドバイザーなどの専門家に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

では、いくつかのがん保険をタイプ別に見ていくことにしましょう。

■バランス型
このような商品名があるわけではありませんが、全体的にバランスのとれた内容の保険です。

がん保険では入院給付金が一般の医療保険よりもやや高めの設定となっているほか、診断給付金や退院療養給付金など、独特の保障が用意されています。これらすべての保障をバランス良くセットしたのが、このタイプの保険です。がんに対する備えとしては幅広い範囲をカバーしていますから、スタンダードなタイプといえます。

ただし、すべての保障を欲張ってしまうと、その分保険料が高額になってしまいます。保障額を抑えておき、「ここはもっと手厚い保障がほしい」という部分を別に特約でカバーするなどすれば、ニーズに合った内容にカスタマイズすることもできるでしょう。

■診断給付金充実型
がん保険に特徴的な「診断給付金」が充実したタイプを、このように名付けてみました。いろいろな保障のうち、がんと診断されたときに支払われる診断給付金に重きを置いたタイプです。

病気が見つかって入院・治療となると、何かとお金がかかります。ことにがん治療は治療費が高額になりがちですから、日頃の貯えが心細いと、医療費が大きな負担になることは多々あるでしょう。ですが診断給付金が充実していれば、まずはまとまったお金を手にすることができます。直接的な治療費のほか、こまごまと必要になってくる費用を心配することもなくなるでしょう。

近年では手術法の改良・開発が進み、より短い入院日数で治療効果を上げる手法が開発されてきています。それを考えると「入院日数×定額」という入院給付金に重きを置くよりも、診断給付金をしっかり充実させた保険のほうがいいという判断もできるでしょう。

■実損補填型
かかった費用をそのまま保障するというタイプの保険で、近年になって登場してきたものです。保障対象は治療費や入院にとどまらず、通院のための交通費や宿泊代、先進医療の治療費や健康保険適用外の自由診療までカバーする場合もあり、非常に現実的なスタイルといえます。

ただし、細かな条件となると商品によってかなりの差がありますから、契約の前には細部にいたるまでしっかりチェックし、「どのようなケースで支払われるのか」「保障の対象外となるのはどんな場合か」というところを、見きわめておくことが肝心です。保険料は割高になるかもしれませんが、「安心を買う」という意味では、まさにぴったりな保険商品といえるのではないでしょうか。

このように、保険商品はそれぞれのタイプによって、その特性はさまざまです。他にも保険期間が定期か終身か、定期なら何年満期なのか。保障内容はどれくらいかという点で、保険の特性は変わってきます。こうした違いをまず知っておき、それを自分自身のセレクトに活かしていくことが、後悔しない保険の選び方なのです。

2-2 どんな場合にどのタイプを選ぶ?

では実際に保険に加入するとき、どのような商品を選べば良いでしょう? これは人それぞれのニーズに関わってきますので、単純に決めつけることができません。

ですが、その人の置かれた状況や希望によって、ある程度は絞り込むことができます。あくまでも例として、いくつか挙げてみましょう。

■生涯の安心がほしい
長い保障がほしい場合には、終身タイプのものが良いでしょう。ただし、あまり保障内容を欲張ってしまうと月々の保険料が高額になりがちですから、特約の種類は絞り込みが必要です。ある程度の貯蓄があるなら、当座の治療費等は貯蓄でまかない、不足する部分を保険で手当てする、という考え方もできます。

■ライフプランに合わせたい
家族を支える立場なら、複数の保障がバランス良くパッケージされた商品が良いかもしれません。定期型に加入しておき、更新のたびに内容を見直していけば、その時々に合った充分な保障内容を得られます。

■将来への貯蓄も考えたい
こうしたニーズには、貯蓄型の保険商品を活用するというのも一法です。定期的に給付金を受けられるものや、満期時にまとまった返戻金が支給されるものなどさまざまです。ただし、がん保険はあくまでも「がんへの備え」が主眼。貯蓄にも目を向けるなら、別の方法をとったほうが良い場合もありますから、そこはしっかり調べる必要があるでしょう。

■大きな出費に備えたい
がん治療は高額になりがちで、しかも多くはある程度の入院期間が必要になります。すると直接的な医療費に加え、こまごまとした出費が増えていきます。医療費については「高額療養費制度」がありますが、事前に手続きを取らなければ、入院後に申請してすぐに支払われるわけではありません。3か月ほどの時間差が、どうしても発生してしまいます。その間の出費をサポートするなら、診断給付金や入院給付金を重視した商品が良いでしょう。あまり貯蓄がない、という方でも安心です。

■収入の減少に備えたい
会社にお勤めの方は健康保険の「傷病手当」が使えますが、自営業の方にはそれができません。ケガや病気で仕事ができなくなると、それは収入の減少に直結します。ましてがんは2~3週間の入院が必要ですし、その後の経過観察のための通院もありますから、収入減への備えがほしいところです。そんなニーズには収入保障保険があります。がんと診断されると、年金が支払われるというものです。ただし保険料は高めですので、この保険をかけるか、あるいは入院給付金の額をアップすべきか、検討は必要でしょう。

このように、がん保険のバリエーションは非常に多く、ニーズによっても保険商品の選択は変わってきます。

しかし、まず自分のニーズを明確にするには、上記で挙げたもの以外でも、職業、性別、家族構成、ライフプランなども含めて丁寧に考えていかなければなりません。そして、ニーズが明確になったら終わりではなく、次はそれをもとに無数のがん保険の中から自分にとってベストながん保険を絞っていくことになります。

がん保険以外にも言えることではありますが、このような保険選びを自分一人の手でおこなうのは、かなりの知識と時間が必要でしょう。なかには「保険を選ぶって面倒だな……」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

そのようなときには、自分にとってベストな保険はどれか、専門家の知恵を借りてみてはいかがでしょうか。きっと、今まで気づかなかった、あなたに相応しい保険を見つけるヒントが得られるはずです。

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3.保険を選ぶときには

3-1 とにかく細かい「条件」

保険を選ぶときに忘れてはいけないのが、さまざまな「条件」です。これは契約の前に…というより、保険商品を選ぶ段階で確認しておかねばなりません。この条件によっては、その保険があなたのニーズに合っていないかもしれないからです。

たとえば、私たちは「がん」と聞くとどれも同じもののように思いますが、医学的には「悪性新生物」「上皮内新生物」という分類がなされます。このうち後者は初期のがんともいえるもので、きちんと治療すれば再発を起こすことはほとんどないとされています。保険の種類によっては、この上皮内新生物については適用外となるものがあります。

また特約の組み合わせに制限があったり、複数の特約を組み合わせた際の上限額が決められていたりと、思わぬところに制限や条件が設けられていることも多々あります。こうしたことはパンフレットを見ただけではなかなか分かりませんので、注意が必要です。

3-2 具体的な保障内容と「条件」のバリエーションは?

それでは、実際にどのような保障があり、制限や条件はどうなっているのでしょうか。保険期間と保険料払込期間のバリエーションとともに、がん保険で支給される給付金ごとに見ていきましょう。

■保険期間
一生にわたって保障が続く終身タイプと、あらかじめ定められた期間で保障が終わる定期タイプに分かれます。がん保険の定期タイプの保障期間は10年間が多いようです。

がんは加齢とともに罹患率が高まる特性がありますので、高齢になるまでの長い保障がほしいという方は終身タイプを選んでおきたいところです。終身タイプのメリットは、がんに罹りやすい年齢になっても加入したときのまま保険料が変わらない点です。

一方で、医療技術は時代とともにどんどん進んでおり、10年も経てば画期的ながんの治療方法が確立されているかもしれません。こうした事情をふまえて、とりあえず保険料を抑えた定期型に加入し、医療技術の進歩を見ながら保障が見直されているかもしれない新しいタイプの保険に更新していく、という方法も考えられます。

また、家族の状況や年齢を考えて、「向こう10年間だけ特に保障を厚くしたい」というような場合も、保険料を抑えられる定期タイプも候補になります。ただし、更新時には現在よりも保険料が上がる可能性が高いことに留意しておきましょう。

■保険料の払込期間
終身タイプのがん保険は、保険料を支払う期間によって2つに分けることができます。保険期間と同じく一生にわたって支払う終身払いプランと、60歳や65歳などの一定の年齢までで支払いが終わる定期払いプランです。

支払い期間は終身払いプランのほうが長くなりますが、そのぶん毎月の保険料は低額に抑えられています。逆に定期払いプランは、毎月の保険料は高いぶん、払い込み期間が短く設定されています。基本的に定期タイプのがん保険の場合、保険期間と保険料払い込みの期間が同じとなります。

保険タイプ 保険期間 保険料払込期間
終身払いプラン 終身 終身、一定年齢(60歳・65歳など)まで
定期払いプラン 10年間など 保険期間と同じ

■診断給付金
がん保険の診断給付金は、がんと診断されたときに給付される一時金のことです。以前は病巣が悪性新生物(がん)か上皮内新生物(初期のがん)かによって診断給付金の金額は変わってきましたが、今ではどちらも区別せず同額保障するタイプも多くなっています。

診断給付金の金額は、50万円や100万円、200万円、なかには300万円というものもあり、50万円や100万円単位のまとまった一時金を受け取れるイメージです。ただし、なかには上皮内新生物の場合、悪性新生物の診断給付金の10分の1~半分の金額であったり、支給されないものもあるので、検討するときにはしっかりとチェックしましょう。

この診断給付金の支給回数は、がんと診断されたら何回でも受け取れるタイプと、初回のみしか受け取れないタイプがあります。

注意したいのは、何回でも受け取れるタイプにも支給回数に条件が設けられていることです。基本的に支給回数は「2年に1回を限度」とされています。これは「2年の間に複数回がんの診断を受けても、診断給付金を受け取れるのは1回のみ」ということです。また、「悪性新生物は1回のみ/上皮内新生物は2年に1回を限度として複数回」であったり、その逆の「悪性新生物は2年に1回を限度として複数回/上皮内新生物は1回のみ」といった組み合わせで受取り回数を制限しているタイプもあります。

がん保険のなかには診断給付金が出ないタイプもありますが、そのような場合、あとでご説明する入院や通院、治療に対する給付金が充実しているケースが多いです。

がん分類 診断給付金金額 給付条件
悪性新生物 50万円、100万円、200万円、300万円など 1回のみ
無制限(2年に1回を限度)
上皮内新生物 悪性新生物の1/10・1/4・1/2・同額など 1回のみ
無制限(2年に1回を限度)

■入院給付金
がん治療のため入院したときに支給されるものです。「入院1日につき○○円」と決まっており、この金額の入院日数倍の金額が支給されます。がん保険の場合は、一部の医療保険にあるような「4日以上の入院で4日目から保障」というような免責期間や、「契約日から1年以内は半額」というプランは見られません。

ただし、がん保険には「待期期間」というものが設けられており、たいていは90日間とされています。つまり、待期期間の間にがんが見つかっても、入院給付金だけではなく、すべての保障を受けることができませんので注意が必要です。

給付日額は、5000円、1万円、2万円などがあり、3万円という高額のプランもあります。給付日数は無制限としているプランがほとんどです。そして、日額5,000円のプランでは、入院期間が60日以上など所定の日数を超えた場合に増額した形で支給される「長期入院給付金」を備えているタイプもあります。

一方、最近では入院しないで通院だけでがんを治療するケースも増えています。このような現状に合わせて、入院給付金を設定していないプランも存在します。入院給付金が無いプランの場合は、通常は診断給付金や通院給付金、あるいは治療給付金で保障を受けられるようになっています。

給付基準 入院給付金金額 長期入院給付金金額
日額 5,000円、1万円、2万円、3万円など 1万円(入院61日目からなど)

■通院給付金
がん治療のため通院したときに支給されるものです。「通院1日につき○○円」と決まっており、この金額の通院日数倍の金額が支給されます。入院給付金があるプランの場合、日額が同じに設定されているものがほとんどで、5000円、1万円、2万円などがあり、こちらも3万円という高額のプランもあります。

この通院給付金は、入院給付金と違って、支給条件が細かく設定されている場合があります。たとえば、支給対象となる通院を「入院を伴う通院」に限定しているものや、支給対象となる期間を「入院前○日間・入院後の1年間」などとしているものがあります。また、通算で支給される日数も、無制限のものから、1回の入院で○日、年間○○日、通算○○日というように制限されているものなど、さまざまなプランが見られます。

通院給付金も、診断給付金や通院給付金、あるいは治療給付金を充実させることで設定されていないプランが存在します。

給付基準 通院給付金金額
日額 5,000円、1万円、2万円、3万円など
給付条件
入院有無 通院だけでも給付、入院を伴う通院に限る
給付対象期間 無制限、入院前60日、退院後1年間など
1回の給付日数制限 無制限、1回の入院で45日・60日・120日など
年間の給付日数制限 無制限、60日、120日など
通算給付日数制限 無制限、730日、1,000日など

■治療給付金
がんの治療内容によって一定の金額が支給される給付金です。

手術によりがんの治療を行った場合には、手術治療給付金が支給されます。手術治療給付金は、1回の手術につき一律の金額が支給されるタイプと、手術の種類に応じて金額が変わるものがあります。5万円~40万円のプランが中心ですが、80万円が支給されるものもあります。

放射線治療を受けたときには、放射線治療給付金が支給されます。こちらの支給金額は1回の治療につき10万円、あるいは20万円となっています。

抗がん剤治療を受けたときには、抗がん剤治療給付金が支給されます。こちらの支給金額は治療を受けた月ごとに5万円、10万円、20万円となっています。

ホルモン剤治療を受けたときには、ホルモン剤治療給付金が支給されます。こちらの支給金額は2.5万円~20万円となっていますが、乳がんと前立腺がんだけに限定されていたり、月ごとに1回・1年に1回・通算10回までなどというような回数制限があるのが通常です。

この治療給付金も設定されていないプランがありますが、たいていは診断給付金や入院給付金、あるいは通院給付金でカバーできるように設計されています。

給付基準 手術治療給付金金額
1回につき 5万円、10万円、20万円、40万円、80万円など
給付基準 放射線治療給付金金額
1回につき 10万円、20万円など
給付基準 抗がん剤治療給付金金額
1か月につき 5万円、10万円、20万円など
給付基準 ホルモン剤治療給付金金額
1回につき 2.5万円、5万円、10万円、20万円など
給付条件
がん種別制限 無制限、乳がん・前立腺がん限定など
給付回数制限 1か月に1回、1年に1回など
通算給付回数制限 無制限、10回など

■先進医療給付金
がんの治療方法は研究開発が活発に行われており、その一部は先進医療として活用されています。未承認の抗がん剤や重粒子線治療、陽子線治療などが代表的ですが、これらは最先端の技術を用いている治療のため非常に高額になりがちです。

また、先進医療は公的医療保険の適用外のため、その費用は全額自己負担になります。つまり、個人が先進医療を受けたとしたら、場合によっては数百万円~1,000万円以上を支払わなければならないこともあるのです。

このような先進医療を受けたときに支給されるのが先進医療給付金です。

他の給付金との大きな違いは、先進医療を受けたときにあらかじめ決められた金額が支給されるのではなく、実際にかかった先進医療の技術料が実費保障される点です。支給上限金額は通算で1,000万円や2,000万円という安心の高額保障ですが、2,000万円のプランでは1回に1,000万円までという制限が付いているものもあります。

また、先進医療にかかったときに一時金が上乗せで支給されるプランもあります。こちらは1回15万円や、先進医療給付金の10%~20%という設定で、やはりプランによっては1回100万円までとなっています。

給付条件 先進医療給付金 先進医療一時金
上限金額 通算1,000万円・2,000万円 1回15万円、先進医療給付金の10%・20%など
1回の上限金額 無制限、1,000万円など 100万円など
  • *保障の対象となる先進医療は、厚生労働大臣が認める医療技術で、医療技術ごとに適応症(対象となる疾患・症状等)および実施する医療機関が限定されています。また、厚生労働大臣が認める医療技術・適応症・実施する医療機関は随時見直されます。


■その他の保障や特約
・女性がん特約
女性特有のがんに対する上乗せ保障が特約として備わっているプランがあります。乳房、子宮、卵巣などの手術を受けたときに10万円~20万円が支給されます。また、乳房の再建にかかわる給付金として10万円~50万円が設定されています。

・保険料払込免除
悪性新生物と診断された場合に、それ以後の保険料の支払いが免除されます。主契約に付帯しているもの、特約になっているもの、両方のプランがあります。


ここでご紹介したバリエーションは、すべてのがん保険の保障内容と給付条件を網羅したものではありません。上記以外にもさまざまな保障内容と給付条件が存在します。そして、各給付金の有無や金額、条件を組み合わせると、非常に多くのプランが設定できることがお分かりいただけると思います。

もちろん、保障内容によって保険料も変わってきます。保険期間が長いほど、給付金の種類が多いほど、給付金額が多いほど、そして給付条件が緩いほど保険料負担は大きくなります。保障と保険料のバランスをいかに見極めるかが、がん保険選びの最大のポイントと言えるでしょう。

3-3 時代の変化にも注意しておく

保険を選ぶときというよりも、加入した後に気をつけておいていただきたいこと、それが「時代の変化」です。

医療の進歩は日進月歩で、常にさまざまな研究開発が行われています。ですから、今まで以上に効果的な治療が登場し、「胃がんの手術が二泊三日でできる」などということが現実になるかもしれません。画期的な新薬が開発されたり、より手軽に受けられる放射線治療が登場したりということもあり得ます。

また、制度や法令が改変されることもあります。現在は自由診療となっているさまざまな治療法が、特定の条件のもとで保険診療に含まれることも考えられるでしょう。そうなれば、がん治療の選択肢に今以上の幅が生まれます。

もちろん、良いことばかりとも限りません。たとえば現在の高額療養費制度の支給額が減額されたり、適用条件が厳しくなったりということは充分に考えられることです。そうなると、それに合わせて保険も見直さなくてはなりません。

そして医療保険、がん保険そのものも、そうした変化に合わせて姿を変え、新たな商品が作られていきます。

保険は「契約したら終わり」ではありません。こうした変化に敏感に気付き、必要に応じて保険を見直していくことが、“いざというとき”に自分や大切な家族を守ることに繋がっていくのです。「ずいぶん前に保険に入ったけど、ずっとそのままにしてるな……」という方は、是非一度ご自身の保険を見直してみると良いかも知れません。

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まとめ:時間をかけて賢い保険選びを

さまざまなところでお話しすることですが、保険を選ぶときに重要なのは「どれにするか」という前に「何がほしいか」をしっかり決めておくことです。急な出費への備えがほしい。生涯の安心がほしい。「何があっても大丈夫」という安心感がほしい。人によってほしいもの、必要な保障は大きく異なります。こうした自分自身のニーズを理解していなければ、保険を選ぶことはできません。

自分のニーズに合わない保険を選んでしまったら、保険料を払い続けた結果、いざという時にまったく役に立たない、ということにもなりかねません。がん保険のパンフレットを手にする前に、まず「自分は何がほしいのか、何が必要なのか」をじっくり考えてみることです。

難しいことではありません。「あれとこれと、それからこれもほしい。でも保険料は安いほうがいい」。まずはそうした視点で保険商品を眺めてみることです。そのうえで専門家に相談すれば、より話は早いでしょう。「そこまでは難しいですが、近い商品がありますよ」というように、具体的なアドバイスをもらえるはずです。あとは、そこから少しずつ軌道修正していけば自分の希望に最も近い保険商品に出逢えるはずです。

保険見直し本舗でも、みなさまの率直なご要望をお待ちしております。保険選びのプロフェッショナルがそろっていますので、必要なもの必要ないものを遠慮無くおっしゃってください。

保険選びは難しく、自分一人ではなかなか先に進めません。「本当にこれでいいのか?」と不安になることもあるでしょう。そうした時、専門家は力強い味方になってくれるはずです。

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