テレビCMやニュースなどでよく見聞きするがん保険。
がん保険というと名前のとおり、がんの保険であることはわかります。ですが、よく「医療保険とはどう違うの?」「がん保険って必要?」などの声が挙がります。この二つは病気に備えるという点では似ていますが、保障する内容が異なる保険です。
そこでこの記事では、
・がん保険と医療保険の違い
・がん保険の必要性
・がん保険と医療保険、どちらが重要なのか
といった点についてわかりやすく解説していきます。
1.そもそもがん保険と医療保険とはどんな保険?
がん保険と医療保険の違いを説明する前に、まずはがん保険と医療保険はどんな保険なのかを簡単にみていきましょう。
1-1 がん保険はどんな保険?
がん保険は、がんに特化した保険です。医療保険の中の一種とも言えるのですが、通常は独立した保険種別として扱われることが多く、がん治療において最も手厚い保険となっています。
主な保障内容は、がん診断給付金、がん手術給付金、がん入院給付金、がん通院給付金、がん先進医療特約などがあります。がんに対する保障はとても手厚いですが、がん以外の他の病気やケガに対して保障はしていません。
がん保険の特徴的な保障としては、診断給付金が挙げられます。これは、がんと診断確定された時点で受け取れるまとまったお金のことです。治療の有無に関係なく支給され、使用用途も決まっていないので、治療費はもちろん、療養中の生活費や通院のための交通費などに充てることができます。
1-2 医療保険はどんな保険?
医療保険は、がんを含んだ様々な病気やケガに幅広く対応した保険です。がん保険は、がんに特化した保障であるのに対して、医療保険は病気やケガ全般の治療や療養費用に対する保障となっています。
主な保障内容は、入院給付金、手術給付金、先進医療特約などがあります。がんを含む様々な病気やケガに対して保障を受けることができるので、幅広い病気やケガの入院・手術などの備えとしては最も基本的な保険となっています。ただ、がんへの備えをするという点では、医療保険だけでは万全とは言えないでしょう。詳しくは次章以降でご説明していきます。
1-3 がん保険と医療保険の違い
がん保険と医療保険は、病気に対して保障する保険という点では同じです。では、この両者の違いは一体何でしょうか?
それは、保障の対象になる病気の範囲です。先述した通り、がん保険はがんに特化した保障であるのに対して、医療保険はがんを含む病気やケガ全般をカバーする保障となっています。両者とも入院保障や手術保障などが備わっているなど、一見すると保障内容で似ている部分はありますが、それぞれで別の役割を持っているのです。
2.なぜがん保険が必要?
がんも病気の1つであり、医療保険の対象になっているので、がん保険は必要ないように思えます。しかし、医療保険に加入しているとはいえ、がん保険が必要ないとは言えないのです。その理由としては、「がん治療にかかわる医療事情の変化」と「医療保険の性質」などが挙げられます。詳しく見てみましょう。
⇒【調査】がんの治療の平均的な費用は? がんの医療事情を徹底検証!
2-1 がん治療にかかわる医療事情の変化
がん保険は、がんに罹患したことによる経済的リスクに備えるものです。がんに罹患すれば、通常であればなんらかの治療を行うわけですが、がん治療にかかわる医療事情が変化していることに着目すると、がん保険の有用度が見えてきます。
厚生労働省の調査によると、1996年から2017年にかけての約20年間にわたって、がんの入院日数は年々短くなっています(*1)。具体的な日数で言うと、1996年が46日であったのに対して、2017年には約17日にまで短期化しています。このような入院日数の推移を見ると、入院保障は20年前ほどには手厚くする必要のないように思えます。
次の図は、やはり同じ厚生労働省の調査結果から、がんの外来治療率と入院治療率の推移を表したものです(*2)。図からわかるように、2005年を境に治療の主流スタイルが入院から通院に代わっています。
このように、近年のがん治療は入院日数が短縮化していることに加えて、入院よりも通院が多くなってきています。
これらの医療事情から、入院給付金が主体の医療保険に加入していても、がん治療の場合は、あまり多くの給付金を受け取ることができないと言えるでしょう。がんへの経済的リスクに備えるのならば、入院給付金が主体の医療保険に加えて、通院給付金や診断給付金への備えができるがん保険の加入も考えておきたいところです。
2-2 がん保険の必要性
ここまで、医療保険とがん保険はどんな保険なのかという概要と、近年の医療事情の変化についてまとめてきました。次にがん保険の必要性についてお話ししていきたいと思います。
前節でもお話ししたように、がん治療の入院日数は年々短くなっており、入院をせずに通院で治療を行うケースも多くなっています。このような事情からも、通院保障は是非とも準備しておきたいと言えるでしょう。
あるいは、通院保障が無くても診断給付金があれば、これで通院治療費をカバーすることが可能です。がん保険には、通院給付金や診断給付金がメインのものが増えてきており、がん治療の経済的なリスクにしっかりと対応できるようになっています。
一方で、医療保険は入院給付金をメインの保障にしているものが多く、今日のがん治療スタイルには充分に対応しきれていないケースも見られます。さらに医療保険には、まとまったお金を受け取れる診断給付金が備わっていないため、入院前後に多くかかりがちな医療費をまかないきれない可能性があります。そういった意味でも、医療保険だけで補てんしきれない部分は、通院給付金や診断給付金が備わっているがん保険でカバーするといった形で考えると良いかもしれません。
2-3 医療保険にがん特約を付加する方法もある!?
もちろん、医療保険ががんに備える方法としての選択肢にならないわけではありません。
医療保険には様々な特約があり、その中の1つに「がん特約」というオプションがあります。医療保険に「がん診断給付金特約」や「通院保障特約」を付帯すれば、医療保険でもがんへの備えをすることが可能です。
ただ、主契約である医療保険にオプションのがん特約を加えた形になっているため、それぞれ保障についての見直しがしにくくなることに留意しておきましょう。
3.がん保険と医療保険、どちらが重要?
ここまで、がん保険と医療保険の違い、がん保険の必要性についてまとめてきました。本章では、がん保険と医療保険、どちらを優先すべきかお話していきたいと思います。
先に述べたように、そもそもがん保険と医療保険では目的が異なります。どのようなリスクに対応したいのか、保険の加入目的によって選び方は決まってくるでしょう。さらに、年齢や職業、家族構成、他に加入している保険の保障内容などによっても、がん保険と医療保険の優先度は変わってきます。そのため、がん保険と医療保険のどちらが重要であるとは言えないのです。
もしがんに罹患した場合には、できるだけ効果の高い治療を選ぶことになるのではないでしょうか。陽子線治療や重粒子線治療などの先進医療を受けるとなると、多額の費用を負担することになります。また、がんは再発することも珍しくありません。そうなると、長い期間にわたって継続的に治療を行っていくことになります。
そのため、このようなケースにも対応できる、保障が手厚いがん保険を選ぶのも1つの方法です。家計が許す限り、がんを含めた病気やケガを幅広く、また手厚く保障したいときは、がん保険と医療保険の両方に加入すると安心でしょう。
そして、どうしても経済的な面で両方加入するのが厳しく、ある程度のがんへの備えがあれば充分というのであれば、幅広い保障を備えた医療保険から先に検討するのが得策と言えるのではないでしょうか。
まとめ:がん保険、医療保険選びには加入目的が重要!
いかがでしたか?
ここでは、がん保険と医療保険のそれぞれの概要と違い、必要性などについて解説してきました。そして、どちらに加入したらよいのかについては、
- ・基本的には、病気やケガを幅広く対応できるといった意味でも医療保険を考えると良い。
- ・がんへの保障を手厚くしたい場合は、医療保険とがん保険の両方、もしくはがん保険のみの対応も視野に入れる。
という見解を述べました。つまり、保険を比較検討するための重要なポイントは、まず何のために保険に入りたいのかを考え、それをベースに自分に合った保険を決めていくことなのです。
ただ、保険会社によっても商品はさまざまで、その中から自分の希望に沿ったものを選ぶのは決して容易ではありません。さらに、がん保険はなかなか大きな買い物です。慎重に決めていくにもどうしたらいいのか分からなくなることもあるでしょう。そのようなときは、保険のプロの意見もひとつの参考にしてみてはいかがでしょうか。