医療保険は本当に必要!?世代別に考える医療保険の必要性

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保険の基礎知識
医療保険は本当に必要!?世代別に考える医療保険の必要性

保険への加入をご検討していらっしゃる方から、時々「本当に医療保険への加入は必要なのか?」という旨のご質問を受けることがあります。

また、さまざまな保険商品を研究しているFP(ファイナンシャルプランナー=主に個人向けに資金計画や資産運用に関する提案やアドバイスを行うエキスパート)のなかにも、「ある一定の条件を満たしている人なら、医療保険は必要とは限らない」と主張する人がいます。

ここでは、医療保険の実態を知り、病気やケガなどによる医療費負担リスクや、医療保険に加入することでそれらのリスクにどのように対応できるのかをご紹介し、皆様が「自分は医療保険に加入するべきか? そして、もし加入するならどのような医療保険を選ぶべきなのか?」といった場合の判断材料にしていただきたいと思います。

⇒医療保険はこう選べ!商品を比較する前に知っておきたい3つのこと

1. 医療保険とはどんな保険か?

1-1 医療保険の目的

医療保険は本来、不慮の事故や病気などによって医療機関で診療を受け、治療費が高額になってしまった場合に備える保険です。このため、一般的な医療保険商品の主な柱は、入院した際に「入院1日につき○○円」といった形で給付金が受け取れる「入院給付金」と、所定の手術を受けた際に「手術1回につき○○円」といった形で支払われる「手術給付金」のふたつとなっています。

しかし、現在の日本には国民皆保険制度(すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する制度)があり、会社員・自営業者・その扶養家族など、どのような立場の人でも被用者保険(健康保険)や国民健康保険に加入しているはずです。

公的医療保険の種類により、給付内容や給付額には違いがありますが、

  • ・医療機関での治療や入院にかかる費用の一部負担
  • ・医療費が高額になり、1カ月あたりの自己負担額が限度額を超えた場合、限度額以上の医療費は保険者(健康保険事業の運営主体)が負担する「高額療養費制度」

の2点は共通しています。

また、被用者保険の加入者であれば、療養のために会社を休んでも給料がもらえない場合に収入の一部を保障する「傷病手当金」ももらえます。なお、被用者の方の場合、業務上の原因による病気やケガに対しては労災保険による保障が受けられるでしょう。

このような背景から、日本における民間医療保険(公的医療保険に対し、民間の保険会社が販売している医療保険商品)は、「万一の場合の、医療費が支払えないことへの備え」というよりは、「月額8~9万円(後述)の医療費(自己負担分)+雑費が家計を圧迫することへの備え」および「(国民健康保険などの場合)傷病によって収入が途絶えることへの備え」といった位置づけで捉えられることが多いようです。

1-2 高額療養費制度の自己負担額について

高額療養費制度は、歴月(月の初めから終わりまで)に支払った医療費が一定額を超えた場合、超えた額を支給する制度です(*1)。

この「一定額」は保険加入者の年齢や所得水準によって違いますが、70歳未満で月収53万円未満の人の場合、1カ月の自己負担の上限額は
80,100円 + (医療費-267,000円) × 1%
で算出される額となっています。

高額療養費制度利用の場合の自己負担額の例
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

たとえば100万円の医療費がかかったとすると、窓口負担(3割)は30万円が必要となる計算になってしまいます。しかし上述の上限額の算出式に当てはめると、70歳未満で月収53万円未満の人の場合、月のはじめから終わりまでに医療費が仮に100万円かかったとしても、自己負担額は87,430円で済むということがわかります。

ただし、入院時の食費負担や差額ベッド代、病院への交通費、入院時の身の周り品の購入費などは高額療養費の対象になりません。これらの支出負担は意外に大きいようです。

もう少し具体的に言えば、生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査《速報版》」によると、1日あたりの入院時の経済的なマイナスは、こうした高額療養費制度の対象にならない自己負担部分と、病気やケガで働けなくなり得られなくなった収入(逸失収入)を合わせ、平均して28,400円となっています(*2)。

また、同調査の「直近の入院時の入院日数」は15.7日ですから、高額療養費制度があっても、入院時の費用としては約45万円(28,400円×15.7日)かかってくる可能性があります。もちろん、これはおおよその平均値なので、病気やケガの程度・種類などによっても変わってきますが、必ずしも高額療養費制度があるから安心だとは言えないようです。

詳しくは「公的医療保険制度」や「入院時の費用」について解説した記事でも触れていますので、そちらも参考にしてみてください。

参考記事:世界最高水準といわれる日本の公的医療保険制度とその意外な落とし穴

参考記事:入院費用は実際いくらかかる? 病院以外で必要になる費用まとめ

2. 医療保険を検討するべき場合とは?

2-1 自己負担額が家計を圧迫する場合

先ほどお伝えしたように、高額療養費制度によって、どんなに医療費がかさむケガや病気をしたとしても、医療費の自己負担額は上記のように月額8~9万円で済みます。ですが、差額ベッド代、交通費、身の回り品の購入費など、医療費以外の自己負担額が大きくなることもあります。

また、見落とされがちですが、病気やケガで働けない間の収入減(逸失収入)にも注意が必要です。

これらを踏まえたうえで「医療保険があまり必要ない」と考えられるのは、次のような方々でしょう。

【医療保険が必要ない方】
■不動産収入などの不労所得があるため、その程度の支出増は家計に響かない
■半年~1年程度、この程度の出費が続いても貯蓄で十分まかなえる
■親や身内などの支援が期待できる
■勤務先の福利厚生がしっかりしており、支出増はそちらでカバーできる

とはいえ、上記に挙げたような条件に当てはまる方は、かなり稀だと言えるのではないでしょうか。多くの方は「入院による予期せぬ支出や収入減で家計が圧迫されたらどうしよう……」とお考えだと思います。

【医療保険が必要な方】
■十分な貯蓄額(たとえば、半年から1年程度の治療期間に耐えられる額)がない
■いざというときの支援を期待できる相手がいない
■勤務先の福利厚生が十分ではなく、それだけでは入院時の費用をカバーできない

このような方は、ご自身やご家族のためにも、万が一の事態に備えて医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。

参考記事:医療保険を選ぶためにすべきこと ~保険の種類を知ろう~

参考記事:医療保険はこう選べ!商品を比較する前に知っておきたい3つのこと

2-2 働けない期間の生活費に備えたい場合

国民健康保険など、傷病手当金の給付がない公的医療保険に加入している人の場合、公的医療保険によって医療費の負担はさほど大きくないにしても、働けない期間の生活費をどうするかという問題が出てきます。

もちろん、十分な貯蓄がある方は問題ないでしょうが、そうでない方の場合、入院給付金の手厚い医療保険に加入することで、働けない期間の生活費を補うという考え方もあるでしょう。

なお、こういう場合は、医療保険とは別に、働けない期間の所得を補償する「所得補償保険(就業不能保険)」などを検討してみてもいいかもしれません。

また、傷病手当金が受け取れる方でも、傷病手当金の支給額は「被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額」ですから、収入ダウンになることは間違いありません。そうした事態への備えとして、医療保険の必要性をお感じになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

参考記事:就業不能保険とは

参考記事:傷病手当金とは

2-3 先進医療、自由診療に備えたい場合

高度な医療技術のうち、厚生労働大臣が認めたものを「先進医療」といいます。大学病院や医療研究機関などで先進医療の研究・開発が行われており、たとえばがん治療における重粒子線治療や陽子線治療などが先進医療に該当します。

2022年4月1日現在で84種類の医療が先進医療として認められています(*3)。

先進医療の場合、保険診療との併用が認められていますが、先進医療にかかる費用は全額自己負担となります。高額療養費制度の対象となるのは、一般治療と共有する部分のみです。

たとえば「がんの位置、大きさや形状に合わせて線量を調整し狙い撃ちすることで、従来の放射線治療よりも体にやさしく早期の社会復帰が期待できる」とされる重粒子線治療の場合、1件あたりの先進医療費は約319万円になります(*4)。

同様に「病巣のみに効率よく線量を集中でき、副作用を少なくできる」とされる陽子線治療では約265万円です。

医療保険のなかには、こうした先進医療に対応できる先進医療特約が付加できるものがあります(医療保険のすべてが先進医療に対応しているわけではありません。また、先進医療特約がすべての先進医療に対応しているとは限りません。詳しくは各保険商品の約款をご覧ください)。

「いざというとき、自分が望む先進医療を、経済的な理由であきらめなくてはならないといったことがないように」との理由で、医療保険を検討するという考え方もあるでしょう。

一方、自由診療とは、医療法および医師法の規定内で、患者と医療機関が個別に契約して行われる診療です。公的医療保険は適用できませんが、厚生労働省が承認していない治療方法や薬を使った治療が可能となります。

厚生労働省が保険診療や先進医療に認めていない治療法や薬のなかにも、国内では未承認ながら海外で承認され、実績があるものがあります。こうした治療法や薬を使った自由診療には当然、公的健康保険は適用されませんが、民間医療保険のなかには自由診療による医療費を保障してくれるものもあります。

また、約款の内容にもよりますが、医療保険の入院給付金や手術給付金は必ずしも保険診療(公的医療保険が適用される診療)だけを対象とするものとは限りません。もし約款にこのような取り決めがない場合、自由診療による入院や手術であっても、入院日数や手術の回数に応じた給付金が受け取れる場合があります。

3. 医療保険に関する社会の意識

3-1 「医療保険は生命保険より重要」と考える人が多い

生命保険文化センターが発表した「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」(*5)によれば、かんぽ生命を除く民間保険に加入している世帯のうち、93.6%が医療保険または生命保険の医療特約に加入しています。

また、同資料によれば、直近に加入した保険の加入目的としては、「医療費や入院費のため」という回答が59.0%ともっとも多く、これは医療保険もしくはがん保険、医療特約などに加入した人の回答であることが推定できます。

このデータをみるかぎり、「医療保険は生命保険以上に重要」と考えている人(世帯)が多いといえそうです。

なお同資料は全国400地点で、世帯員2人以上の一般世帯約4,000件の回答結果に基づいて作成されたものですが、どのような事態に備えているか(現在の世帯における生活保障の準備状況)というと、第1位は「世帯主の病気やケガの治療や入院した場合の医療費の準備」で57.2%、第2位は「世帯主が万一の場合の資金準備」の50.6%、第3位は「配偶者の病気やケガの治療や入院した場合の医療費の準備」の45.9%となっており、1位と3位に「医療費の準備」が挙げられました。

やはり、いざというときの医療費については多くの人が心配し、保険・貯蓄など、何らかの形で備えをしていることがわかる調査結果となっています。

さらに同資料の「世帯の生活保障意識」では、「世帯主が2~3カ月入院した場合、月にどれくらいの資金が必要と思うか?」という問いに対しては平均24.2万円、「世帯主が就労不能となった場合に必要と思われる生活資金」は平均27.2万円となっています。ちなみにこれは、生命保険未加入世帯を含む全回答世帯一世帯あたりの平均です。

医療保険に限らず、個人保険はあくまでも個人や世帯によって、必要とされる保障の内容や保障額は異なります。しかし、このような世間の動向や意識に目を向けてみることは、ご自分が医療保険を必要と考えるかどうか、また、必要とするならどんな保障内容・保障額の保険を選ぶかを考えるうえで参考になるはずです。

参考記事:医療保険は「見直し」で節約できる? 見直しのポイントとタイミングについて

4. ライフステージ別の医療保険の必要性

4-1 20~30代前半

20~30代前半の単身者は、保険全般に対して必要と感じる意識が希薄な人が多いようです。
若く体力があり、また、自分に万一のことがあっても守らなくてはならない人がいない(または少ない)からかもしれません。

しかし、いくら若く体力があっても、事故や災害に巻き込まれて大きなケガをしないとは限りませんし、乳がんや子宮頸がんなど、20代・30代の若い女性がかかりやすい重篤な病気もあります。働いている年数が少ないため、十分な貯蓄ができていない方も多いでしょう。

こうしたことを考えると、いくら若くても、医療保険の必要がないとはいいきれません。いわゆる「お守り」のような感覚で、医療保険への加入を見当してみてもいいのではないでしょうか。

また、この年代は就職・結婚・出産という大きな人生の転機を迎える人が多い年代でもあります。就職を機会に「これからは親に頼らず自分の備えは自分でしよう」と考えてみたり、結婚・出産に際して「自分がケガや病気で働けなくなっても、配偶者や子供の生活が守れるように備えよう」と考えてみたりすることも大切ではないでしょうか。

なお、若いうちに加入するのであれば、終身保険も検討してみていただければと思います。

終身保険は保障が一生続き、保険料が変わらない医療保険です。解約すれば解約返戻金が受け取れるため、掛け捨てではなく貯蓄性の面でも期待できます(ただし、加入期間が短いと解約返戻金は期待できません)。終身保険の場合、若いうちに加入したほうが保険料は安いというメリットがあります。

参考記事:新社会人の保険の選び方~初めての保険で失敗しないためのポイント~

参考記事:結婚したときの保険の見直し方

4-2 30代後半~40代

この年代は、所帯を持ち、子育ての真っ最中という方が多いのではないでしょうか。お子様の学資は年齢とともに負担が増加していきます。また、マイホーム購入などの出費がかさむ年代でもあります。

十分な額の貯蓄を続けることが難しく、場合によっては、貯蓄の取り崩しなどを検討しなくてはならないケースもあるでしょう。万一に備えて、ケガや病気の際にも貯蓄に手をつけずに済む医療保険を検討し、貯蓄と保険の両方でリスクに備えることを考えてみてはいかがでしょうか。

一方、この年代はそろそろ生活習慣病やがんのリスク上昇を意識しなくてはならない年代でもあります。医療保険に生活習慣病やがんの保障を手厚くする特約を付加したり、新たにがん保険を検討してみたりするのもいいでしょう。

参考記事:共働き夫婦に必要な保険とは

参考記事:離婚したら保険はどうする?~保険の手続きと見直しの方法~

4-3 50代~

子育てが一段落し、住宅ローンの完済も視野に入ってくる年代です。お子さんのいらっしゃらない世帯や単身の方であれば、さらに貯蓄にゆとりがある方も多いでしょう。

これからはリタイア後のセカンドライフの充実や、年齢とともにリスクの高まる心疾患や脳血管障害などに備え、長期入院などがあっても老後の生活資金を目減りさせないよう、医療保険を充実させていく必要性が高まるものと思われます。

将来、介護が必要になる可能性も視野に入れ、医療保険を含め、そろそろ具体的なセカンドライフプランを構築していくべき年代ではないでしょうか。

参考記事:老後・退職後に必要な保険

⇒医療保険はこう選べ!商品を比較する前に知っておきたい3つのこと

まとめ:長期的視点で、自分に本当に必要な備えを

ここでは、「医療保険は本当に必要か?」というテーマで、

  • ・医療保険の目的
  • ・公的医療保険の保障内容を知ったうえでの民間医療保険の必要性
  • ・特に医療保険が必要と思われる方
  • ・医療保険に対する世間の意識

などを説明し、最後にライフステージ別の医療保険の必要性についてご提案をさせていただきました。

ここまでお読みいただいて、十分な収入(不労所得)や貯蓄、あるいはいざというときに支援してくれる人・団体がある方にとっては、ひょっとして医療保険は必要のないものかもしれない、ということがおわかりいただけたことと思います。

ただし、そうではない人にとっては、いくら日本の公的医療保険制度が充実しているとはいえ、決してそれだけでは安心できる、ケガや病気による長期入院・療養への備えにはならないこともご理解いただけたことでしょう。

また、一家の働き手が長期間ケガや病気で働けなくなった場合の生活保障が必要な場合も考えられます。そして、ライフステージの変化によって、医療保険で備えるべきことが変わっていく点にも着目してください。

もし、これを読んで「医療保険が必要だ」とお感じになった方は、上記のようなことを念頭に置いたうえで「長期的視点に立って、自分にとって本当に必要な備え」となる医療保険をお選びになっていただければと思います。

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