日本の公的医療保険制度とは?自己負担金や受けられる給付金を解説

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保険の基礎知識
日本の公的医療保険制度とは?自己負担金や受けられる給付金を解説

日本には公的医療保険制度があり、国民全員が保険に加入しています。万が一病気や怪我をしてしまったときは、窓口での医療費負担が軽減され、場合によってはさまざまな給付金も受け取れます。

具体的に公的医療保険制度にはどのような種類があり、どのような保障を得られるのでしょうか。民間の医療保険との違いを知り、申し込むべきかどうか判断するためにも、公的医療保険制度でカバーされる範囲や金額などを把握しておきましょう。

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1.公的医療保険制度とは?

日本の公的医療保険制度は、国民全員が加入する国民皆保険制度です。決められた保険料を支払うことで、医療機関窓口での医療費の負担が軽減されます。

出典:厚生労働省ホームページ

出典:日本医師会「日本の医療保険制度の仕組み」

最初に、日本で導入されている公的医療保険制度の内容を詳しく解説します。

 

1-1.公的医療保険制度の種類

公的医療保険制度は、職業や年齢によって加入する保険が異なります。公的医療保険制度の種類は、以下の4つです。

・国民健康保険

都道府県および地方自治体が運営する公的医療保険制度です。自営業者や特定の企業に属さない方とその扶養家族、退職済みで75歳未満の年金生活者などが申し込みます。

・健康保険

特定の企業に所属する従業員とその扶養家族が申し込む公的医療保険制度です。健康保険には、大企業の従業員等が申し込む「健康保険組合」や、健康保険組合のない企業に所属する従業員等が申し込む「協会けんぽ」など、複数の種類があります。

・共済組合

国家公務員や地方公務員、教職員等およびその扶養家族が申し込む公的医療保険制度です。

・後期高齢者医療制度

75歳以上の方、および一定の障がいを持つ65歳以上の方が申し込む公的医療保険制度です。

出典:厚生労働省ホームページ

出典:日本医師会「日本の医療保険制度の仕組み」

公的医療保険制度に申し込んでいる人の年齢や収入によって、窓口での自己負担分は異なります。

 

1-2.公的医療保険制度での自己負担額

公的医療保険制度による自己負担の割合は、下表の通りです。

自己負担割合
75歳以上 課税所得28万円未満:1割
課税所得28万円以上:2割
課税所得145万円以上(現役並み所得者):3割
70歳~74歳 課税所得145万円未満:2割
課税所得145万円以上(現役並み所得者):3割
義務教育就学後~69歳 3割
義務教育就学前
(6歳に達する日以降、最初の3月31日まで
2割

出典:厚生労働省ホームページ

出典:厚生労働省ホームページ

70歳以上の場合、所得額により窓口での負担割合が異なるため注意してください。

75歳以上の場合、基本的には1割負担ですが、現役並みの所得(課税所得145万円以上)がある方は3割負担です。一定以上の所得(課税所得28万円以上)がある方は、2割負担となります。

70〜74歳の場合、基本的には2割負担ですが、現役並みの所得(課税所得145万円以上)がある方は3割負担です。なお、居住している自治体によっては、医療費の助成により負担割合が上表と異なる場合があります。

 

2.公的医療保険制度で受けられる主な給付

公的医療保険制度は、医療機関窓口での負担が軽減されるだけでなく、さまざまな給付を受け取れます。ここでは、公的医療保険制度で受け取れる主な給付の種類や内容について詳しく解説します。

出典:金融庁ウェブサイト

出典:公益社団法人 全日本病院協会「医療保険の仕組み」

出典:全国健康保険協会「保険給付の種類と内容」

 

2-1.傷病手当金

傷病手当金は、病気やケガで休業した際に、被保険者とその家族の生活を保障するための給付金です。被保険者が仕事以外の病気やケガで会社を連続して3日以上休んだ際、4日目以降の休業日に対して支給されます。支給期間は、同じ病気やケガに対して、支給開始日から通算1年6か月までです。

1日あたりの支給金額は、以下の計算式で求められます。

「支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額」÷30日×(2/3)

なお、支給開始日以前の期間が12か月未満の場合、計算には以下のうち、より低い金額が用いられます。

  • 当該被保険者の被保険者期間における標準報酬月額の平均額
  • 当該被保険者の属する保険者における全被保険者の標準報酬月額の平均額

出典:全国健康保険協会「傷病手当金」

出典:厚生労働省ホームページ

 

2-2.入院時食事療養費・入院時生活療養費

入院時食事療養費とは、被保険者の方が入院した際の食事療養にかかる費用のうち、被保険者が支払う一定の標準負担額を控除した金額を負担してもらえる給付金です。

入院時生活療養費とは、療養病床に入院する65歳以上の被保険者の生活療養にかかる費用のうち、一定の標準負担額を控除した金額を負担してもらえる給付金です。自己負担が必要な標準負担額は、被保険者の年齢や年収、症状などにより異なります。

入院時食事療養費の給付を受けた場合、食事療養費の自己負担額は1食あたり110〜490円(令和6年6月1日以降)です。入院時生活療養費の給付を受けた場合、自己負担額は食事1食あたり100〜460円、居住日は1日につき0〜370円程度に抑えられます。

出典:全国健康保険協会「入院時食事療養費」

出典:全国健康保険協会「入院時生活療養費」

出典:東京都保健医療局「入院時食事療養費・入院時生活療養費」

 

2-3.療養費

公的医療保険制度では、医療機関の窓口で被保険者証を提示して、保険適用を受けるのが基本です。しかし、やむを得ない事情により全額自己負担で診療を受けた際は、一部負担金を除いた金額が療養費として支給されます。

療養費の支給を受けられるのは、例えば以下のような状況です。

  • 被保険者証の取得手続き中で保険診療を受けられなかった
  • 医師の指示で義手・義眼・義足・コルセットを装着した
  • 生血液の輸血を受けた
  • 柔道整復師などの施術を受けた
  • 外国への旅行中の急病やケガで、やむを得ず保険医療機関でない病院で自費診療を受けた

なお、保険医療機関でない病院で自費診療を受けた場合、やむを得ない事情が認められなければ、療養費が支給されないことがあるため注意しましょう。

出典:全国健康保険協会「療養費」

出典:大阪市ホームページ

 

2-4.訪問看護療養費

訪問看護療養費は、自宅療養をしている方がかかりつけの医師の指示に従って訪問看護師の世話や診療補助を受けた際、訪問看護にかかる費用が現物支給される給付金です。訪問看護療養費の支給額は、かかった費用の7割です。残りの3割は、基本利用料として患者が自己負担する必要があります。

出典:全国健康保険協会「訪問看護療養費」

 

2-5.出産に関する給付

被保険者およびその扶養家族が出産した際は、出産育児一時金・家族出産育児一時金を受け取れます。出産育児一時金・家族出産育児一時金の給付額は、出産時の妊娠週数や医療機関の産科医療補償制度への加入の有無によって、1児につき48.8万円または50万円です。出産育児一時金は妊娠85日以降であれば、早産や死産・人工妊娠中絶をした場合も、給付の対象となります。

また、被保険者が妊娠のために休業し、事業主から報酬を受け取れないときは、出産手当金が支給されます。支給期間は、出産日前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の翌日以降56日目までの間で、会社を休んだ期間です。

1日あたりの支給金額は、以下の計算式で求められます。

「支給開始日の以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額」÷30日×(2/3)

なお、支給開始日以前の期間が12か月未満の場合、計算には以下のうち、より低い金額が用いられます。

  • 当該被保険者の被保険者期間における標準報酬月額の平均額
  • 当該被保険者の属する保険者における全被保険者の標準報酬月額の平均額

出典:全国健康保険協会「出産に関する給付」

出典:慶應義塾健康保険組合「本人・家族が出産した」

 

3.公的医療保険制度と民間の医療保険の違い

民間の医療保険とは、民間の保険会社が主体となって運営する保険商品です。相互扶助の精神に基づいて保険の加入者がお金を出し合い、病気やケガの際の経済的負担を補填します。公的医療保険制度はすべての国民に加入義務がある一方、民間の医療保険は希望者が任意加入する仕組みです。

民間の医療保険のメリットは、特約の付帯などにより、先進医療にかかる費用や入院中の食費・差額ベッド代など、保障の範囲を広げられることです。ただし、公的医療保険制度とは別に保険料の納付が必要で、年齢や健康状態によっては加入できないこともあるため注意してください。

公的医療保険制度でもさまざまな給付を受けられるものの、万が一の事態に備えて保障を手厚くしたい場合は、民間の医療保険への加入を選択するのも1つの手です。

 

まとめ

日本の公的医療保険制度は、国民全員が加入する国民皆保険制度となっています。窓口での医療費負担が軽減されるほか、場合に応じて傷病手当金や療養費、入院時食事療養費・入院時生活療養費などさまざまな給付を受け取れます。

対して、民間の医療保険は保障の範囲を広げられ、公的医療保険制度でカバーできない費用に対しても備えられます。保険料を負担する必要はあるものの、万一に備えたい方は民間の医療保険への加入を検討してもよいでしょう。

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