医療保険に入ると税金の負担が軽くなるってホント?
聞いたことがあるわ。でも手続きが難しそう…
医療保険に加入すると、保険料の金額によっては、税金の負担が軽くなることがあります。これは「生命保険料控除」の1つで、「医療保険料控除」とも呼ばれる制度があるためです。医療保険料控除は、会社にお勤めの方ならば毎年12月の「年末調整」、自営業の方であれば3月の「確定申告」によって行われます。すでに医療保険に加入している方や、これから加入しようという方は、ぜひ活用してみることをオススメします。 とはいえ、医療保険料控除を活用することがオススメだと言われても、 「医療保険料控除って具体的にどのくらい税金の負担が軽くなるの?」 「医療保険料控除の手続きってどうやるの?」 といった疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか? そこで、この記事では、以下の3つのポイントを分かりやすく解説しています。 ・そもそも医療保険料控除とは何か ・医療保険料控除でどのくらい税金が安くなるか ・医療保険料控除の手続きはどうやるのか この記事を読んで、“かしこく医療保険料控除を活用する方法”を身につけましょう! ⇒医療保険はこう選べ!商品を比較する前に知っておきたい3つのこと1. 払った税金が返ってくる!
1-1 所得控除制度とは何か
警察や消防をはじめ世の中の行政サービスは、その多くが税金でまかなわれています。そのため私たちはそれらのサービスが滞りなく運営されるよう、納税の義務を負います。納税はサラリーマンの方ならば給与から差し引かれていますし、自営業の方であれば年間の損益を計算した上で、税務署に申告して決められた割合の税金を納めます。 これら支払うべき税金の税率は所得額によって決められており、所得が高ければ税額も高く、所得が低ければ税額も低めに抑えられています。つまり収入に応じた額の税金を納める、という形になっています。 ですが人にはそれぞれの事情があり、生活状況も異なります。そのため所得額だけで納税額を決めてしまうと、不公平な結果にもなりかねません。 たとえば年収500万円の家庭が2つあったとします。一方は夫婦二人の世帯、もう一方は夫婦と十代の子ども二人という世帯だとしたら、同じ年収でも生活状況は明らかに異なるでしょう。後者は夫婦だけでなく子どもたちの世話をして教育して育てていかなくてはならないのですから、それだけの手間と時間とお金がかかります。にもかかわらず、前者と後者の納税額が、同じ年収という理由で変わらないとしたら、不公平になるケースもあると言えそうです。 そこで、このような各世帯の事情や生活状況に合わせ、所得から一定の金額を差し引くことを「所得控除」と言います。私たちが納めるべき税額は、この「所得控除」の多い少ないによって調整されています。たとえば、「仕事をしていない配偶者や両親を養っている」「働きながら学校に通っている」といった場合、そのぶん所得から決められた額が差し引かれ、残った金額に課税される仕組みです。1-2 「使ったお金」も控除対象になる
控除の対象となるものはさまざまです。前項でお話しした例ですと「配偶者控除」や「扶養控除」、「勤労学生控除」という制度があり、一定の条件を満たすと控除対象となります。 また、実際に使ったお金も「何に使ったか」によって、控除対象になることがあります。たとえば共同募金や日本赤十字社、公益団体や政治団体への寄付や献金は「寄付金控除」となり、寄付金額から2,000円を引いた額が「控除」として総所得から差し引かれます(上限額あり)。 自然災害や火事、盗難などによって住宅や家財が損害を受けたときに負担した費用も「雑損控除」の対象になる場合があります。いずれも一定の条件を満たす必要があり、また控除できる金額にも上限がありますが、これらの制度を知っておくと、いざという時に税金を低く抑えることができます。 さらに、国民年金や厚生年金などの公的年金、健康保険や共済、雇用保険の保険料も「社会保険料控除」として全額が控除対象となっています。 日本では「国民皆保険制度」が敷かれており、ほぼすべての国民が健康保険・共済に加入しています。つまりほぼすべての世帯にとって、これらの保険料は避けられない出費です。しかも健康保険にしろ年金にしろ、それは行政サービスの一角を占めるものですから、会社でいうところの「福利厚生費」、つまり必要経費ともいえるものです。そのため控除対象として所得から差し引き、そこに支払った分には課税しない仕組みになっているのです。
1-3 民間の保険料も控除対象になる
民間の生命保険料のうち、控除対象となるのは生命保険、介護医療保険、そして個人年金保険です。- ※2011年12月31日以前に契約した医療保険については介護保険とともに「旧生命保険料控除」として合算されますが、それ以降に契約した医療保険と介護保険は「新生命保険料控除」とは別に「介護医療保険料控除」として独立して適用されるようになりました。
保険に関する控除額(所得税) | |
---|---|
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |

2. 医療保険料の控除のしかたは?
2-1 控除を受けるなら申請を
納税は国民の義務ではありますが、誰もが同じ額の税金を納められるわけではありません。そのため所得に応じた課税額というものが割り出され、世帯(一定額以上の所得がある人)ごとに課税されています。そして生活状況や各世帯それぞれの事情によって、さまざまな控除や減免が行われ、できるだけ公平な税負担がなされるように考えられています。 よく時代劇などで、「年貢の取り立てが厳しくて、食うや食わず」という農民の苦しい生活を描いたシーンがありますが、そうしたことのないように配慮されているのです。 ですがこれらの控除や減免措置は、自動的に行われるわけではありません。自ら申請しないと適用されないのです。さして手間がかかるものでもありませんので、きちんと申請して還付を受けるようにしましょう。2-2 年末調整と確定申告
保険料控除に限らず、税金の控除や減免を受けようとするときは、多くの場合、「年末調整」または「確定申告」で行います。 呼び方は違いますが、これらはいずれも「その年の所得をきちんと計算し、控除や減免を行った上で、支払うべき税金の額を確定する」という作業です。会社勤めの方は文字通り年末に行われる年末調整、自営業の方は翌年の3月に行う確定申告で税額を算出し、納税します。 サラリーマンの方の場合、毎月の給与からすでに税金が引かれていますが、これは前年の収入をもとにした「見込み額」です。本人の収入に加えて、健康保険や厚生年金などの公的年金の保険料、配偶者や扶養家族に関する控除など、会社側が把握できる数字は織り込んでありますが、それ以外はまったく反映されていません。ですからこの1年の間に控除対象となる支払いがあったとすれば、その分の税金を「すでに納め過ぎている」ということになります。それを調整し、正しい税額を算出するのが年末調整です。 年末調整では、先ほどお話しした政治団体への寄付金、そして個人が自由に加入する民間保険の保険料など、控除対象になる支払いについて控除申請を行います。そして前金として税金を払いすぎているということになれば、その分を払い戻すことになります。2-3 どうやって申請するのか
医療保険料の控除を受けるためには、まず「保険料控除申告書」が必要です。「年末調整で保険料の控除を受けたい」と会社に申し出れば、出してもらえるでしょう。記入項目がこまごまとありますが、書き方そのものは特に難しいものではありません。保険会社名、保険の種類・期間、契約者名、受取人名、この1年間に支払った金額などとともに、計算式によって得られた控除額を記入していけば、それでOKです。
2-4 重要な「保険料控除証明書」
さて、年末調整で保険料控除の申告をする際には、保険会社が発行する「保険料控除証明書」が必要になります。保険料控除証明書は、毎年秋頃に保険会社から郵送されてくるもので、あなたがその年に保険料をいくら支払ったのか、そして年末までにいくら支払う予定であるのかを証明するものです。 この証明書で重要なのは、保険料の支払額もさることながら、保険の種類と「新契約・旧契約」の区別です。先に少しだけお話ししたように、2012年の1月1日を境にして、それ以前に契約したものとそれ以降に契約したものとでは、控除のしかたが変わってきます。 そのため控除証明書にもそれぞれを区別できる表記がなされています。「旧」「旧制度」などの表記があるのは旧制度が適用されるもので、逆に「新」「新制度」などとあるのは現行の控除制度の対象となります。それぞれ扱い方が異なりますから、申告書に記入するときには注意してください。 「新契約」と「旧契約」での保険料控除の適用範囲と限度額は、以下の図をご覧ください(*2)。