保険は本当に必要なの?~保険の起源からひも解く保険の必要性~

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保険の基礎知識
保険は本当に必要なの?~保険の起源からひも解く保険の必要性~

「そもそも保険って必要なんだろうか?」

保険について考えようとしたときに、ふとこのような疑問が頭をよぎったことはないでしょうか? たしかに保険は必要なものだと何となく頭で分かっていても、そもそもなぜ保険が必要かまで掘り下げて考える事はほとんどありません。

そこで、ここでは保険の起源について見ることによって保険の必要性を確認した後に、医療保険、がん保険、介護保険など、それぞれ個別の保険の必要性に関して分かりやすくご紹介していきます。

1.保険の起源から考える保険の必要性

1-1 保険の起源は中世ヨーロッパ

「なぜ保険が必要なのか?」を理解するためには、そもそもの保険の起源から考えると非常に分かりやすくなります。

保険の起源に関しては諸説ありますが、そのうちの一つに中世ヨーロッパを保険の発祥とする説が存在します。

当時ヨーロッパでは、同じ職業の人たちが、ギルドと呼ばれる同業組合のような寄り合い所帯を作っていました。いつしかギルドでは、病気、ケガ、死亡など、予期せぬリスクが所属するメンバーの身に降りかかったときに備えるためのルールが設けられるようになります。

単純化していえば、そのルールは次のようなものです。

・ギルドのメンバーは日ごろから少しずつお金を出し合い、共有資金としてプールしておく
・予期せぬリスク(病気やケガ、死亡など)に見舞われ生活が苦しくなったメンバー、もしくはその家族は、プールしてある共有資金からから生活資金や葬祭費用をまかなうことができる

「え? これが保険の起源なの?」と、あまりピンと来ていない方も中にはいらっしゃるかもしれません。そこで実際に例を挙げて考えてみましょう。

1-2 もし大工のギルドに属している男がケガで働けなくなったら?

大工のギルドに属している男の話を例に考えてみましょう。ちなみに、舞台はもちろん当時のヨーロッパです。ですので当然、「公的医療保険制度」や「公的年金保険制度」など、そのような現代の洗練された公的保険制度はないものとします。

大工をしている一家の大黒柱の男が、仕事中に高い所から足を滑らせ、地面に背中を強かに打ちすえ、大けがを負いました。打ち所が悪く、おおよそ全治6ヶ月。それまで働くことはおろか、日常生活にも支障をきたすようなひどい有様です。

彼には愛する妻も子もおり、家族は彼の大工としての収入で日々の生活を送っています。しかし、しばらく彼は働くことができず、家計の収入は完全に途切れてしまいます。そればかりでなく、ケガの治療もタダではありません。もちろん今までと同じように、家族の生活費もかかってきます。

幸いコツコツ蓄えてきたなけなしの貯金があるので、それでもどうにか最初の3ヶ月は乗り切れそうです。しかし、貯金だけでは、それよりも先の生活の目処が全く立ちません。大工の妻の疲れがにじんだ深い溜息が聞こえてくるようです。

さて、大工一家はこのまま路頭に迷う道しか残されていないのでしょうか?

もちろん、決してそんなことはありません。思い出してみてください。ギルドでは、常日頃からメンバー全員が少しずつお金を出し合って共有資金をプールしていました。大工一家も、決まったペースで決まった金額を納めてきたので、今回そこから生活費や治療費をまかなうことができ、かろうじて難を逃れたのでした。

1-3 保険が必要なのはリスクに備えるため!

この大工の一家の窮地を救ったギルドのルールこそが、「保険の起源」です。そして、これは時代も国境も隔たった現代日本に生きる私たちにとっても大いに示唆に富む挿話ではないでしょうか。

もちろん時代や社会によってリスクの種類は異なりますが、今も昔もこれからも私たちが何かしらのリスクに晒されている状況は本質的に変わりません。そして、そのリスクのなかには自分の蓄えだけでは対処しきれないものも存在します。

若くして大病を患いしばらく働くことができなくなったり、自動車で他人を傷つけてしまい賠償責任を負ったり、いろいろな例を想定できます。そういったリスクに直面したときに、自分や大切な人たちに負担をかけてしまうかもしれません。

そうならないためにこそ、私たちには保険が必要なのです。

2.具体的に保険が必要なリスクって?

前章では保険の起源について見ていくことで「保険とはリスクに備えるために必要なもの」という点について見てきました。

ですが、具体的に「保険で備えるべきリスク」とはどのようなものを指すのでしょうか? ここでは、今の日本では具体的にどのようなリスクがあり、それに対してどのような保険で備えれば良いのかを見ていきましょう。

2-1 入院・手術のリスク

もしも、病気やケガで入院・手術をすることになったら、「治療費の負担」が発生します。

いくら日本には優れた公的医療保険制度があるとはいえ、治療費が全くかからないわけではありません。入院して個室に入った場合に負担する部屋代(差額ベット代)を始め、食費や被服費や雑費など、公的医療保険制度の対象にはならない費用も少なくないのです。

病気やケガの程度によっては、長く入院することや高額な治療を受けることも考えられます。もしそうなったら治療費は家計をきつく圧迫することになります。

そのような入院・手術のリスクに備えるのが医療保険です。主に医療保険は入院給付金と手術給付金から成り立っています。入院1日につき5,000円~10,000円、手術1回につき50,000円~200,000円といったタイプが一般的です。

病気やケガで入院・手術をしたとしても、しっかり医療保険を備えておけばひとまず安心だと言えそうです。

■参考記事:医療保険は本当に必要!?世代別に考える医療保険の考え方

2-2 がんのリスク

しかし、病気やケガのなかでも、医療保険だけでは費用負担をカバーしきれないケースが存在します。その最たる例として挙げられるのは「がん」でしょう。

現在のがん治療は、抗がん剤、温熱療法、放射線治療などによる通院治療が主流になりつつあります。そうなると、必ずしも入院日数は長くなりませんし、手術をともなわないことも少なくありません。

それでいて、がん治療は高額な費用を要しますから、あくまで入院・手術に対する保障が中心の医療保険だけでは十分にカバーできないことがあり得るのです。そのようながんの治療に対して有効なのが、がん保険です。

がん保険は、医療保険では補いきれないがん治療の費用をカバーするための保険だと言えます。

保険会社や保険商品によって異なりますが、がんと診断された時点で受け取れる「がん診断一時金」、がん治療を目的として通院するたびに受け取れる「がん通院給付金」、抗がん剤治療を受けるたびに受け取れる「抗がん剤治療給付金」など、医療保険ではカバーし切れない部分を補う保障が中心になっています。

■参考記事:がん保険はなぜ必要なのか?

2-3 収入減少のリスク

病気やケガによる治療費の負担にくわえて、それらにより働けなくなってしまったときの「収入減少」のリスクが想定できます。

当然、働けなくなったからといって、必ずしも直ちに収入が途絶えるわけではありません。たとえば会社員であれば、有給休暇や傷病手当金といった公的制度で当面の生活の目処は立つでしょう。

しかし、そうした手当を利用できるとしても、もし働けなくなってしまったら、それまでよりも収入が少なくなることはほぼ確実と言えます。場合によっては、家族に生活水準を下げることを強いたり、子供にやりたい事を諦めさせたり、苦労して購入したマイホームを手放さざるを得なかったりする確率もゼロではないでしょう。

このような働けなくなってしまった状態(就業不能状態)による収入減少をカバーするのが就業不能保険です。

就業不能保険は、働けなくなったときに毎月の給与のように保険金を受け取れます。万が一、働けなくなったとしても、就業不能保険の備えがあれば、著しい生活水準の低下を避けられるのです。

■参考記事:就業不能保険の必要性は?

2-4 介護のリスク

病気やケガのリスクでもう一つ注意したいのは、介護のリスクです。たとえば、病気やケガで後遺障害が残ったりした場合、自分一人では日常生活を送ることができず、日常的に誰かの助けを借りなければならない状態になることも考えられます。

もし介護状態になったら、家の段差の解消工事や特殊寝台・エレベーターの設置、介護用品の購入など、さまざま初期費用がかかります。家までヘルパーに来てもらって介護サービスを受けたり、施設へ通って介護サービスを受けたりすることが一般的ですが、もちろんその介護サービス費用の負担もあります。さらに介護施設に入居する場合には、施設入居費が必要になります。

生命保険文化センターの『2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)』によれば、介護にかかる費用は、一時的な費用の合計が74万円、毎月かかる費用が8.3万円、介護に要する期間は平均61.1ヶ月(5年1ヶ月)という結果が出ています(*1)。それをもとに計算すると、平均的な介護費用の合計は581万円となります。

日本には公的介護保険制度がありますが、それを利用したとしても、自己負担をする介護費用はこの金額に達します。これだけの金額を貯蓄のみでカバーするのはかなり骨が折れそうです。

それに対する備えとして考えられるのが、民間の介護保険だと言えます。民間の介護保険に加入していれば、所定の支払い条件に該当した場合、介護一時金や介護年金としてまとまった保険金を受け取ることができます。

■参考記事:介護保険は本当に必要??~民間の介護保険の必要性について~

2-5 亡くなったときのリスク

まず一つ目は「葬祭費用の負担」です。

無宗教だと言われがちな日本ですが、人が亡くなったときには多くの人がお葬式を行います。お坊さんを呼ぶにも葬祭屋での葬儀にも、当然お金がかかってきます。

一般葬なのか、家族葬なのか、直葬なのか、お葬式の規模や形式によっても変わってきますが、一般的に葬祭費用としては200万円~300万円程度がかかると言われています。もしも、お葬式の規模が大きければ、より多大な費用が必要になってきます。残されたご家族としては、精神的な負担はもちろん、これだけのまとまった金銭的な負担も決して楽ではないでしょう。

次に二つ目が「残された家族の生活費の不足」です。

たとえば、自らの収入で家族を養っている方に万が一のことがあったとしたら、残された家族は生活に困ってしまいます。また、仮に就学前の子供がいる家庭だった場合、将来的な学費の工面などはどのようにすればよいのでしょうか。

現役で働いている方が亡くなられたら、通常その家族には遺族年金などが支給されるますが、それでも家計全体の収入は大きなダウンが見込まれます。

これらのリスクに備えるのが死亡保険(生命保険)です。

死亡保険は保険期間や支払条件によって様々な種類がありますが、基本的には契約者に万が一のことが起こった場合、その残された家族に対して数百万円から数千万円まで、まとまった保険金が支払われるタイプの保険と言えます。残された家族は、死亡保険の保険金をもとに日々の生活費や、子供の教育資金を工面することができるのです。

■参考記事:9割の世帯が加入する死亡保険(生命保険)は本当に必要か?

3.将来のための積み立てとしての保険

保険が必要なのは、リスクに備えるためだけではありません。将来的に必要になる可能性が高い資金を用意するための積み立て方法として、保険が有効に活用できるケースもあります。

3-1 子供の教育資金

現在、日本では高校進学率は98.9%(*2)、大学・短大進学率も58.9%となっています(*3)。

教育費用は、それぞれの進学先が公立か私立かによって変わってきますが、文部科学省の『学校基本調査』で発表されている各進学ステージの在校者数の割合から考えると、標準的な進学ルートとしては私立幼稚園⇒国公立小学校⇒国公立中学校⇒国公立高等学校⇒私立文系大学というルートが一般的なようです(*4)。

この場合、おおよそ教育費用として1,000万円以上は必要な計算になります(*5・*6)。
⇒詳細な解説は「【まとめ】子どもの学費にはいくらかかる?~幼稚園から、小学校、中学校、高校、大学まで~」をご覧ください。

もちろんこの金額を一度に支払うことはありませんが、たとえば文部科学省の『私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について』によれば、私立大学に入学する場合、初年度納付金(授業料、施設整備費、入学料)として約136万円を一括で納めることになります(*6)。

それに加えて、大学入学前には、滑り止めの大学への入学料や受験にかかる交通費といった受験費用なども大きくなってきます。

子供の学費は将来的にほぼ確実に必要になる費用の一つですが、これだけの金額を何の準備もなしに乗り切るのはかなり大変です。また、自分自身の手で貯金をしていくにしても、長いスパンで続けていかなければならないので、最後までやり遂げるのは決して簡単ではありません。

こうした教育資金の準備に特化した保険が学資保険です。

学資保険は、毎月保険料を支払う代わりに、決まった時期(子供の大学入学前など)にまとまった保険金を受け取れる保険です。支払う保険料の総額に対して、受け取る保険金の総額の方が上回る場合が多く、効率的に子供の教育資金の積み立てをできる点が魅力的な保険と言えます。

■参考記事:学資保険は本当に必要?~結局、子供の学費にはいくらかかる?~

3-2 老後の生活資金

現在、若い世代を中心に老後の不安が募っています。しかし、今後の公的年金制度がどうなるのか見通しが不透明なため、何をどのように準備をしたら良いか分からない方も少なくないのではないでしょうか?

生命保険文化センターによれば、ゆとりある老後生活費として必要な金額は夫婦二人で平均月額約36万円だとされています(*7)。

そして、たとえば、老後の期間を65歳から85歳だとした場合、36万円×12ヶ月×20年=8,640万円がなければ、夫婦二人でゆとりある老後を送れないことになります。

ですが、日本には公的年金制度があるので、この金額すべてを自らの手で用意する必要はありません。老後になれば公的年金から給付金を受け取ることができます。

では、公的年金でどの程度カバーできるのでしょうか。会社員の夫と専業主婦の家庭を例に考えてみましょう。

厚生労働省年金局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、平均的な公的年金受給額は次のようになっています(*8)。

  • 国民年金:56,358円
  • 厚生年金:146,145円

会社員だった夫は厚生年金を、専業主婦だった妻は国民年金を受け取りますので、月額でいうと夫婦合計の年金受給額は約20万円。対して、ゆとりある老後の生活を送るためには約36万円が必要になりますから、公的年金だけでは老後の生活資金は足りない計算です。

その差分を埋めるために活用できるのが、個人年金保険です。

個人年金保険は、一定期間の毎月保険料を支払う代わりに、おもに60歳・65歳など決まった時期から年金形式で保険金を受け取れます。基本的には、支払った保険料の総額よりも、受け取る保険金の総額のほうが多く、効率的に老後の資金を積み立てられるのが特徴と言えます。

■参考記事:リアルな数字から考える 老後の資金と生活費

まとめ:保険は必要だが、必要な保険は人によって違う!

いかがでしたか?
ここまで保険の起源や、それぞれの保険の必要性について見てきました。ですが、実際に必要な保険は、お客様一人ひとりに応じて全く異なります。年齢、職業、家族構成、将来のライフプランなど、そうした様々な要素によって必要な保険は変わるのです。

「これだけ保険の種類がある中から自分に本当に必要な保険を選ぶのは大変そうだな……」

少しでもそう思われた方は、一度プロの助言を聞いてみるのも一つの手かもしれません。保険見直し本舗でも、経験も知識も豊富なプロがお客様一人ひとりの保険に関するお悩みに誠心誠意、お応えしサポートいたします。

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